著者
黒川 正剛
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
雑誌
コンタクト・ゾーン = Contact zone (ISSN:21885974)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.211-231, 2015-03-31

呪術/魔術が西欧社会で問題化したのは魔女裁判が猖獗を極めた16・17 世紀の近世のことである。本稿では、当時の魔女信仰の分析から「呪術的実践 = 知の歴史的諸相」について考察する。ただし、本稿で行われるのは「呪術的実践 = 知の歴史的諸相」の本格的な解明に必要な準備作業であり、「実践 = 知」のうち「実践」に焦点を絞って検討をすすめる。拙稿「呪術と現実・真実・想像--西欧近世の魔女言説から」(白川・川田編『呪術の人類学』人文書院、2012 年所収)で論じた「呪術のリアリティ」に関する問題、『魔女狩り--西欧の三つの近代化』(講談社選書メチエ、2014 年)で扱った「視覚の特権化」「自然認識の変容」「他者排除」に関わる三つの西欧の近代化の問題をもとにしてアプローチを試みる。そしてカルロ・ギンズブルグのベナンダンティに関する研究にもとづいて、「呪術的実践」に関わる四つの知覚作用に関わる動詞「信じる・知る・行う・感じる」の問題について若干考察する。
著者
黒川 正剛
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.15-30, 2007-03-31

The imp or the familiar is the characteristic English witch-belief, and frequently referred to in the witch-hunt documents in early modern England. The imp is a kind of demon, which is given to the witch by the Devil when they make a contact with. It was believed to cause harm such as disease or death to the human being and livestock. It was also believed to suck the blood from the witch, and to be transferred to one witch by the other witch or to the child-witch by the mother-witch. Did people consider the imp as the truth in those days? If they took the fiction as the truth, what dynamics worked there? In this paper, we investigate the problem of truth on the imp-belief in the pamphlet, W.W., A true and just Recorde (1582). In conclusion, the imp-belief is based on some truth, and the powers of the pamphlet writer and the examiner play important roles in this belief.
著者
黒川 正剛
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
雑誌
コンタクト・ゾーン = Contact zone (ISSN:21885974)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.211-231, 2015-03-31

呪術/魔術が西欧社会で問題化したのは魔女裁判が猖獗を極めた16・17 世紀の近世のことである。本稿では、当時の魔女信仰の分析から「呪術的実践 = 知の歴史的諸相」について考察する。ただし、本稿で行われるのは「呪術的実践 = 知の歴史的諸相」の本格的な解明に必要な準備作業であり、「実践 = 知」のうち「実践」に焦点を絞って検討をすすめる。拙稿「呪術と現実・真実・想像--西欧近世の魔女言説から」(白川・川田編『呪術の人類学』人文書院、2012 年所収)で論じた「呪術のリアリティ」に関する問題、『魔女狩り--西欧の三つの近代化』(講談社選書メチエ、2014 年)で扱った「視覚の特権化」「自然認識の変容」「他者排除」に関わる三つの西欧の近代化の問題をもとにしてアプローチを試みる。そしてカルロ・ギンズブルグのベナンダンティに関する研究にもとづいて、「呪術的実践」に関わる四つの知覚作用に関わる動詞「信じる・知る・行う・感じる」の問題について若干考察する。
著者
黒川 正剛
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-77, 2008 (Released:2017-05-10)

The studies that regard the witch-hunt as sacrifice are many. R Girard's theory which regards the witch as scapegoat is the most famous among them. But it is difficult to say that the problems of sacrifice and scapegoat in the witch-hunt have been researched in detail. The purpose of this paper is to examine the problems of the witch-hunt as sacrifice again, and to show, if the witch-hunt is sacrifice, what the characteristic of this sacrifice is. After morphological analysis on the Pappenheimer's witch-hunt in Bavaria (1600), we examine the use of the word "sacrifice" in Jean Bodin's De la demonomanie des sorciers (1580). We arrive at the conclusion that the witch-hunt is the sacrifice certainly, that is "the inner sacrifice", and this sacrifice has the element of "eros".
著者
黒川 正剛
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-77, 2008-03

The studies that regard the witch-hunt as sacrifice are many. R Girard's theory which regards the witch as scapegoat is the most famous among them. But it is difficult to say that the problems of sacrifice and scapegoat in the witch-hunt have been researched in detail. The purpose of this paper is to examine the problems of the witch-hunt as sacrifice again, and to show, if the witch-hunt is sacrifice, what the characteristic of this sacrifice is. After morphological analysis on the Pappenheimer's witch-hunt in Bavaria (1600), we examine the use of the word "sacrifice" in Jean Bodiris De la demonomanie des sorciers (1580). We arrive at the conclusion that the witch-hunt is the sacrifice certainly, that is "the inner sacrifice", and this sacrifice has the element of "eros".
著者
黒川 正剛
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.15-30, 2007-03-31 (Released:2017-05-10)

The imp or the familiar is the characteristic English witch-belief, and frequently referred to in the witch-hunt documents in early modern England. The imp is a kind of demon, which is given to the witch by the Devil when they make a contact with. It was believed to cause harm such as disease or death to the human being and livestock. It was also believed to suck the blood from the witch, and to be transferred to one witch by the other witch or to the child-witch by the mother-witch. Did people consider the imp as the truth in those days? If they took the fiction as the truth, what dynamics worked there? In this paper, we investigate the problem of truth on the imp-belief in the pamphlet, W.W., A true and just Recorde (1582). In conclusion, the imp-belief is based on some truth, and the powers of the pamphlet writer and the examiner play important roles in this belief.
著者
黒川 正剛 小林 繁子 楠 義彦
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要
巻号頁・発行日
vol.20, pp.225-235, 2018

本稿は,科研費の助成を受けた公開シンポジウム「魔女とマス・メディア―ヨーロッパ近世の他者のイメージをさぐる」(2017年11月19日・太成学院大学)の報告である。シンポジウムでは,ヨーロッパ近世社会における他者として魔女と犯罪者を取り上げ,それらと当時のマス・メディア(ビラ,パンフレット,木版画等の図像)の関係について報告した。全体は,黒川正剛「魔女はなぜ信じられるようになったのか?」と小林繁子「犯罪者と悪魔―近世ドイツの印刷メディアから―」の二つの研究報告と楠のコメント「魔女とマス・メディア」から構成される。
著者
大沼 由布 山中 由里子 黒川 正剛
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、博物誌・百科事典の本文を比較・分析することにより、動物・植物・鉱物等についての博物学的記述が、古代ギリシア・ローマから、イングランドを初め、フランスやドイツ等のヨーロッパ中世に、どのように受け継がれていったかを分析する。さらに、ヨーロッパ中世の博物学的知識が、どのように中世イスラーム世界からの影響を受けたか、また、どのように近世ヨーロッパへとつながっていったかをあわせて考察する。そして、それらを通し、時代や地域を限定した局地的な知のあり方ではなく、古代から中近世ヨーロッパという時代的な広がりや、ヨーロッパと中東という地域的広がりをカバーし、当時の知識のあり方を総合的に浮かび上がらせることを目的とする。本年度は、西洋の古代中世近世、イスラーム中世の百科事典や博物誌の分類と枠組みとを確認し、今後の具体例検討の共通基盤とした。西洋古代及び中世を大沼、西洋近世を黒川、イスラーム中世を山中が担当し、それぞれの担当する地域と時代における代表的な資料を数例取り上げて分析した。編纂意図としては、大きく分けて、自然界を知ることと、神への理解を深めることの二つが見られ、時代や地域によってそれらの比重の変化が見られた。また、典拠の扱いや記述の方法についても同様である。分類と枠組みに関しては、個々の作品による差が予想より大きかった一方、時代を超えた意外な共通点もあり、年度末に行った打ち合わせの結果、分類に関する新たな発見数点を、年度をまたいで、さらなる分析の対象とすることにした。
著者
黒川 正剛 小林 繁子 楠 義彦
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.225-235, 2018 (Released:2018-04-02)

本稿は,科研費の助成を受けた公開シンポジウム「魔女とマス・メディア―ヨーロッパ近世の他者のイメージをさぐる」(2017年11月19日・太成学院大学)の報告である。シンポジウムでは,ヨーロッパ近世社会における他者として魔女と犯罪者を取り上げ,それらと当時のマス・メディア(ビラ,パンフレット,木版画等の図像)の関係について報告した。全体は,黒川正剛「魔女はなぜ信じられるようになったのか?」と小林繁子「犯罪者と悪魔―近世ドイツの印刷メディアから―」の二つの研究報告と楠のコメント「魔女とマス・メディア」から構成される。
著者
山中 由里子 池上 俊一 大沼 由布 杉田 英明 見市 雅俊 守川 知子 橋本 隆夫 金沢 百枝 亀谷 学 黒川 正剛 小宮 正安 菅瀬 晶子 鈴木 英明 武田 雅哉 二宮 文子 林 則仁 松田 隆美 宮下 遼 小倉 智史 小林 一枝 辻 明日香 家島 彦一
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中世ヨーロッパでは、辺境・異界・太古の怪異な事物、生き物、あるいは現象はラテン語でミラビリアと呼ばれた。一方、中世イスラーム世界においては、未知の世界の摩訶不思議は、アラビア語・ペルシア語でアジャーイブと呼ばれ、旅行記や博物誌などに記録された。いずれも「驚異、驚異的なもの」を意味するミラビリアとアジャーイブは、似た語源を持つだけでなく、内容にも類似する点が多い。本研究では、古代世界から継承された自然科学・地理学・博物学の知識、ユーラシアに広く流布した物語群、一神教的世界観といった、双方が共有する基盤を明らかにし、複雑に絡み合うヨーロッパと中東の精神史を相対的かつ大局的に捉えた。