著者
田畑 麻里子 福田 祥子 大杉 匡弘 佐藤 美次 山川 友宏 波多野 健二 野池 利彰 松井 徳光
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.159-163, 2008-12-31
被引用文献数
1

担子菌で豆乳を発酵させることによって,うまみ成分に富み,高い生理活性を示す新規な機能性発酵豆乳の開発を試みた.担子菌はスエヒロタケ(Schizophyllum commune)を用いた.豆乳タンパク質の分解についてSDS-PAGEで観察したところ,培養1週間目には豆乳のタンパク質バンドは消失し,新たなバンドが現れた.遊離アミノ酸濃度を測定したところ,最も高いアミノ酸濃度を示したのは培養3週間目であったが,全遊離アミノ酸に対するうまみ系アミノ酸の割合が最も高いのは培養4週間目であった.シュウ酸,リンゴ酸,コハク酸,ピログルタミン酸などの有機酸の濃度は低く,発酵中に変化し,一定ではなかった.抗酸化活性,抗トロンビン活性はスエヒロタケで発酵させることで増加し,また発酵時間の経過とともに強くなった.
著者
中家 陽子
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本応用きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13453424)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.27-30, 2000-04-25

きのこは古来から重要な食材や薬材として日本人に好まれ,その需要を満たすためきのこの人工栽培法が開発されてきた.また,近年の輸送技術や交通網の発達,グルメブーム等により多種多様のきのこが世界中から大量に輸入されるようになった.とくに輸入マツタケは,原産国の多様化、輸入量の増大ともに瞠目させられる.これは,日本人に最も好まれていること,需要が大きいにも関わらず国内での供給が不足していることを示している.輸入きのこの種類と量は季節により変動し,日本の四季を反映している.また,グルメブームにのって日本に登場した珍しいきのこが日本の食卓に取り入れられ,定着している様子が窺える.日本初の24時間空港である関西空港には将来第2滑走路が完成する予定であり,これに伴う便数や路線の変化がきのこの輸入量や原産国に与える影響は興味深い.その一方で多様化・大量化する輸入きのこの衛生確保も重要な問題である.
著者
前田 和彦 小池 歩 越智 友也 向山 博之 寺下 隆夫 北本 豊 会見 忠則
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.105-108, 2008
参考文献数
19
被引用文献数
2

ホンシメジと称されるきのこの二核株12菌株とハタケシメジの2菌株のmt SSU rDNAのV4領域の塩基配列を用いた分子系統解析を行ったところ,ホンシメジと称される菌株が,2つのクラスターに分別された.これらの,異なるクラスターに属する菌株のmt SSU rDNAのV4領域の塩基配列の違いが生物種の違いによるものなのかどうかを調べるため,二核菌糸体をプロトプラスト化し,それを再生することにより,一核株の取得を試みた.その結果,Cluster 1に属する菌株から5種類,Cluster 2に属する菌株から2種類の交配型の異なる菌株を分別した.それらを相互に交配させたところ,Cluster 1に属する菌株とCluster 2に属する菌株は,いずれの組み合わせにおいても不和合であった.以上の結果から,mt SSU rDNAのV4領域の塩基配列の違いは,生物種を反映しており,ホンシメジと称されるきのこの中に形態が非常に似通った2つの生物種が存在する可能性が示唆された.
著者
鄧 志強 鈴木 彰
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.73-79, 2008
参考文献数
23
被引用文献数
2

外菌根性アンモニア菌,アカヒダワカフサタケの交配系は4極性であった.4種類の異なる交配型をもっ単核菌糸株は複核菌糸株と同様,子実体形成能を有していた.複核菌糸と単核菌糸由来の子実体形成はタイプI,タイプII,タイプIIIに大別された.タイプIは複核菌糸由来の通常の子実体形成である.タイプIIとタイプIIIは柄や傘の発達が不規則な子実体形成であり,後者は矯性の子実体を形成するものである.タイプIIはA^xB^xあるいはA^xB^yの交配型を有する単核菌糸株から,タイプIIIはA^yB^xあるいはA^yB^yの交配型を有する単核菌糸株から形成された.複核菌糸由来の子実体では,傘あたり1×10^7個の担子胞子が生産された.単核菌糸由来の子実体では,複核菌糸由来の子実体の1/40量以下の担子胞子しか生産されず,発芽率も複核菌糸由来の子実体由来の担子胞子に較べて低かった.以上のことに基づき,同菌の増殖戦略を考察した.
著者
坂本 裕一 小倉 健夫
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本応用きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13453424)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.85-91, 2003-07-25

アミガサタケの栽培方法を確立するために,菌核の形成方法を検討した.アミガサタケは腐生菌の培養に用いられているバーク堆肥よりも,穀物を用いた培地の方が良好な菌核発生を示した.また,穀物培地を用いた場合,培地中に空隙があることが重要であることが明らかとなった.さらに,上段に貧栄養の土壌培地,下段に富栄養の穀物培地を重ねた二段培地上に菌核を移したところ,菌核がより大きく生長することが確認できた.菌核の生長は上段の培地がpH7.5の時が最も良かった.菌核は土などを巻き込みながら近くの菌核と融合して直径3〜4cm程度の大きさに生長し,子実体の発生には充分であると期待される大きさに達した.
著者
小城 明子 鈴木 亜夕帆 鈴木 彰 鄭 鍾千 西澤 光輝 渡邊 智子
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.119-124, 2004-10-30
被引用文献数
4

ブナシメジの収穫後子実体を5℃の暗所で14日間に渡って保存し,貯蔵期間(7日および14日)における生重量,形態,物性,および色などの変化を調査した.貯蔵期間が長くなると,子実体は傘が大きく柄が細くなった.傘の物性は貯蔵により,しなやかさおよびかみごたえを増し,柔らかさおよび脆さを失った.傘の色は,貯蔵7日目では明度と彩度が増して鮮やかな明るい黄色を呈し,貯蔵14日目では明度と彩度が低下し暗いくすんだ黄色になった.傘の水分含有率は,貯蔵14日目で増加した.以上から,ブナシメジの食品としての品質は,5℃での貯蔵では,貯蔵7日目までとそれ以降で異なることが客観的評価法を用いることによって判明した.
著者
スワンノ スピット 中村 和夫 天野 義文 志田 万里子 堀内 勲
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.83-93, 2005-07-25

霊芝菌糸体のβ-1,3-グルカンの定量を目的として効率的な破砕法を,乳鉢,コーヒーミルおよびマルチビーズ・ショッカー(MBS)を用いて検討した.メタルコーンとMBSを用いて90秒間菌糸体を破砕すると,最も小さい粒子サイズ分布となり,最も高いβ-1,3-グルカン抽出効率となった.MBSにより90秒間破砕した菌糸体粉末を用いて,ガラスビーズを伴ったMBSの連続使用による,迅速な抽出方法(MBS法)を開発した.2mlの抽出容器に抽出混合液を容量比率35%で満たしたとき,最も大きな抽出効率が得られた.グルカン抽出のための最適条件は,5から15mgの粉末化した菌糸体を入れ,0.5mmの直径のガラスビーズを添加することであった.この抽出条件を実行すると,熱水抽出物と冷アルカリ抽出物とを調製するのに要する全体の時間は4時間だけに短縮された.さらに新規な抽出方法によって抽出される全β-1,3-グルカン含有量は既存の抽出方法による含有量よりも43%高かった.
著者
吉田 博
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.157-163, 2004-12-25
被引用文献数
5

菌床栽培ハナビラタケ子実体の発育過程(子実体原基,幼子実体,成熟子実体)における化学成分(一般成分,無機成分,低分子炭水化物,有機酸,遊離アミノ酸)の変化について検討し,以下の結果を得た.発育過程における水分含量は86.1〜87.8%であり,顕著な含量変動はなかった.乾燥重量当たり,粗タンパク質は13.4〜33.2%,粗脂肪は1.4〜1.7%,粗灰分は2.8〜3.2%,炭水化物は61.9〜82.4%であり,発育にともない炭水化物は増加し,粗タンパク質,粗脂肪,粗灰分は減少した.無機成分含量は,1.45〜1.69%であり,子実体原基から幼子実体にかけて減少し,成熟子実体で増加した.主成分はカリウムで,ついでリン,マグネシウム,カルシウム,ナトリウムであった.低分子炭水化物含量は,6.2〜15.4%であり,トレハロース,マンニトール,グルコース,フルクトース,アラビトールが同定された.主成分はトレハロースとマンニトールであり,発育にともないトレハロースとマンニトール含量は増加した.有機酸含量は,2.6〜3.7%であり,発育にともない減少した.リンゴ酸,クエン酸,フマル酸,ピログルタミン酸,コハク酸,シュウ酸,乳酸,α-ケトグルタル酸,酢酸およびギ酸が検出され,主成分はリンゴ酸,クエン酸,フマル酸,ピログルタミン酸およびコハク酸であった.遊離アミノ酸含量は,0.49〜1.07%であり,発育にともない減少した.主成分はグルタミン酸,アスパラギン,アスパラギン酸,チロシン,アルギニン,アラニンおよびセリンであった.
著者
寺下 隆夫
出版者
日本きのこ学会
雑誌
きのこの科学 (ISSN:13407767)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.61-77, 1994
被引用文献数
3
著者
川出 光生 原田 栄津子 西岡 宏樹 目黒 貞利
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.75-79, 2009-07-31
被引用文献数
1

本研究では,杏仁様の香気を有するチリ産の食用きのこG.gargalの人工栽培を目標に,チリ国内で採取した13菌株の中からブナおが粉・フスマ培地での子実体形成にもっとも適した菌株を得ようとした.まず,寒天培地を用いた菌糸伸長の比較により,13菌株から菌糸伸長とコロニーの形態が良好であったIWADE-GG007,GG006,GG008,GG010およびGG000の5菌株を選び,この中からブナおが粉・フスマ培地でも菌糸伸長が良好であったIWADE-GG010,GG006,GG000の3菌株を選んで子実体形成試験を行った.これら3菌株はすべてブナおが粉・フスマ培地で子実体を形成し,傘の形態,および傘の色に各菌株の特徴がみられたが,子実体収量が多い菌株はGG010とGG006の2菌株であった.本研究により,国産のブナおが粉を用いた菌床栽培によるG.gargalの人工栽培が可能であることが明らかとなり,商業生産への可能性が示された.