著者
脇本 竜太郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.117-128, 2010-01-31 (Released:2010-02-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

本研究では自己充実と競争という2種の達成動機と自尊心の高低・不安定性の2側面との関連を検討した。達成行動は自我脅威への脆弱性に阻害される。また,自尊心の高低と自我脅威への脆弱性の関係は,自尊心の不安定性に調節される。一般には高自尊心が達成行動に結びつくと考えられがちであるが,上記のことから自尊心の高低と達成動機の関係も,自尊心の不安定性に調節されると考えられる。大学生・大学院生57名を対象とした1週間の日誌法の調査により,この予測を検証した。その結果,自尊心が安定している場合は自尊心が高いほど自己充実的達成動機が強いことが示された。対照的に,自尊心が不安定な場合,自尊心が高いほど自己充実的達成動機が弱いという結果が得られた。一方,競争的達成動機については自尊心の高低・不安定性との関係が見られなかった。これら結果の理論的・実践的示唆について論じた。
著者
谷(仙谷) 真弓 山崎 勝之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-10, 2004-09-30

Locus of Control(統制の位置;以下LOC)は,これまでに児童の健康や行動上の問題との関連が数多く見出されている.子どもにおけるその測度では,標準化された質問紙がいくつか見受けられるが,それらの質問紙は,この領域の研究結果を混乱させるいくつかの欠点を持っている.そこで本研究では,新しい児童用外的統制性質問紙(GEQC)の開発を試みた.調査Iでは,4〜6年生466名の児童を対象に,因子構造の検討を行った.その結果,一因子構造が明らかとなり,計16項目が採用された.調査IIでは,4〜6年生1,349名の児童を対象にこの質問紙を実施し,加えて,担任教師による,外的統制性を強くもつ児童の指名(ノミネート)調査と児童自身による同特性の仲間評定調査を実施した.さらに,4〜6年生の児童205名に,約5週間の間隔で質問紙を2回実施し,再検査法による質問紙結果の信頼性についても検討した.こうして,調査IIでは,信頼性と構成概念的妥当性が検討された.その結果,本質問紙が構成概念的妥当性と安定性,内的整合性を兼ね備えていることが明らかになった.
著者
西村 佐彩子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.183-194, 2007-01-31
被引用文献数
5

曖昧さに対する態度は,これまで曖昧性耐性の低さという,否定的態度を中心とした一次元的な観点から論じられてきた。本研究は,曖昧さへの態度を多側面から測定する尺度の作成を行い,適応との関連を検討した。研究1では,曖昧さへの態度尺度の因子分析を行った結果,曖昧さへの態度は,肯定的態度と否定的態度を含んだ,複数の側面(曖昧さの"享受","不安","受容","統制","排除")から構成されることが示唆された。研究2では,曖昧さへの態度と適応の関連を検討するため,適応の指標として,強迫傾向,抑うつ傾向,愛着スタイルを取り上げた。その結果,強迫傾向,抑うつ傾向,愛着スタイルの不安定型はそれぞれ曖昧さへの否定的態度との関連がみられたが,愛着スタイルの安定型は曖昧さへの肯定的態度との関連がみられた。曖昧さへの態度の各側面によって,適応との関連の仕方が異なることが示された。
著者
勝間 理沙 山崎 勝之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.47-55, 2007-09-20
被引用文献数
1

本研究では,攻撃性について,反応的表出性攻撃,反応的不表出性攻撃および道具的関係性攻撃の3分類を用い,児童における3タイプの攻撃性から正負感情への影響を検証した。小学校4年生〜6年生718名を対象に,日本語版児童用正負感情尺度とP-R攻撃性質問紙を行った。その結果,不表出性攻撃の高い児童は低攻撃児よりも高いネガティブ感情を示したが,表出性攻撃児および関係性攻撃児においてはネガティブ感情との関係は見られなかった。この結果は,先行研究を支持するものであり,不表出性攻撃児の問題性をさらに強調し,将来の抑うつ対するネガティブ感情によるスクリーニングの可能性が論議された。
著者
田中 麻未
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.149-160, 2006 (Released:2006-03-31)
参考文献数
36
被引用文献数
5 3 6

本研究は,個人内要因である身体的発達および,パーソナリティ特性と心理社会的要因であるネガティブ・ライフイベンツが,思春期の抑うつに及ぼす影響について検討した.中学生518名を対象にして身体的発達,パーソナリティ特性,そしてネガティブ・ライフイベンツからなる質問紙に回答してもらった.階層的重回帰分析の結果,Cloningerのパーソナリティ理論の気質因子である損害回避と友人問題に関するネガティブ・ライフイベンツの嫌悪感が,抑うつを高めることが明らかとなった.さらに,損害回避とネガティブ・ライフイベンツの嫌悪感との間に交互作用が見られた.この結果から,ネガティブ・ライフイベンツの嫌悪感が増加すると,損害回避の高い中学生は,損害回避の低い中学生よりも抑うつが高まることが示唆された.また,女子では,身体的発達と抑うつとの間に正の相関関係が示された.
著者
菊池 章夫 有光 興記
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.137-148, 2006 (Released:2006-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

628名の大学生の回答をもとに確認的因子分析を繰り返すことで,6つの自己意識的感情(対人的負債感・個人的苦痛・恥・罪責感・役割取得・共感的配慮)を測定する12シナリオ(場面)・72項目からなる尺度 (KA-JiKoKan-12) が構成された.この尺度の信頼性は,α係数・再テスト信頼性係数とも十分なものであった.その妥当性は,これらの感情に対応あるいは関連する他の特性的尺度(罪悪感喚起状況尺度・状況別羞恥感情質問紙・対人的反応性指標・心理的負債感尺度)および行動指標(攻撃性質問紙・向社会的行動尺度)との関係を分析することで検討された.得られた結果はいずれもおおむね満足すべきもので,この尺度が十分な妥当性を持つことを示していた.「全体的考察」では,こうした結果を背景にして,シナリオ方式の利点や問題点,この尺度が測定している感情の性質,弁別的妥当性の問題などが論じられた.