著者
坂元 章 三浦 志野 坂元 桂 森 津太子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.87-101, 1995
被引用文献数
1

本研究の目的は, 通俗的心理テストの結果のフィードバックが, 人々の, 自己イメージ, 更には, 行動に影響するかどうか, また, その影響の強さが, 学術的な心理テストのそれと異なるかどうかを検討することであった。筆者たちは, 1つの実験を行い, 64名の女子の被験者を2つの群に分け, 1つの群には通俗的心理テストに回答させ, もう1つの群には学術的心理テストに回答させた。そして, それぞれの群の半分には, 外向性の偽のフィードバックを与え, もう半分には, 内向性の偽のフィードバックを与えた。実験の結果は, 外向性のフィードバックを受けた被験者が, 内向性のフィードバックを受けた被験者に比べて, 自分は外向的であると考え, 初対面の人物 (サクラ) に対して外向的に行動するようになることを示した。そして, この行動に対する影響の程度は, 通俗的心理テストと学術的な心理テストの間で同じであった。これは, 通俗的心理テストの結果のフィードバックが, 学術的心理テストのそれと同じ程度に, 人々の行動に影響し, 自己成就現象を引き起こしうることを示唆している。実験の結果は, また, 通俗的心理テストと学術的心理テストは, 行動への影響では違いがないが, 心理的安寧への影響では違いがあることを示した。通俗的心理テストのほうが, 学術的心理テストよりも, 心理的安寧を与えていた。また, 筆者たちは, 補足的調査を行って, それぞれのフィードバック文の特徴を調べた。
著者
坂元 章 三浦 志野 坂元 桂 森 津太子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.87-101, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
20

本研究の目的は, 通俗的心理テストの結果のフィードバックが, 人々の, 自己イメージ, 更には, 行動に影響するかどうか, また, その影響の強さが, 学術的な心理テストのそれと異なるかどうかを検討することであった。筆者たちは, 1つの実験を行い, 64名の女子の被験者を2つの群に分け, 1つの群には通俗的心理テストに回答させ, もう1つの群には学術的心理テストに回答させた。そして, それぞれの群の半分には, 外向性の偽のフィードバックを与え, もう半分には, 内向性の偽のフィードバックを与えた。実験の結果は, 外向性のフィードバックを受けた被験者が, 内向性のフィードバックを受けた被験者に比べて, 自分は外向的であると考え, 初対面の人物 (サクラ) に対して外向的に行動するようになることを示した。そして, この行動に対する影響の程度は, 通俗的心理テストと学術的な心理テストの間で同じであった。これは, 通俗的心理テストの結果のフィードバックが, 学術的心理テストのそれと同じ程度に, 人々の行動に影響し, 自己成就現象を引き起こしうることを示唆している。実験の結果は, また, 通俗的心理テストと学術的心理テストは, 行動への影響では違いがないが, 心理的安寧への影響では違いがあることを示した。通俗的心理テストのほうが, 学術的心理テストよりも, 心理的安寧を与えていた。また, 筆者たちは, 補足的調査を行って, それぞれのフィードバック文の特徴を調べた。
著者
森 津太子
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 人間科学編 (ISSN:13471228)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.19-25, 2003-03-18

Most people have difficulty remembering events that occurred in their first years of life. Such a phenomenon has been studied for about 100 years since Freud termed it "childhood/infantile amnesia" . This article reviews the literature on the earliest memory, the emergence of which indicates the end of the childhood amnesia period, and examines current theories of childhood amnesia. A variety of theories of childhood amnesia were divided into three categories for discussion (the retrieval failure theory, the encoding/retention failure theory, and the social interactive theory) from the perspective of whether the theory assumes that memory is a permanent storage system or not (i.e., the retrieval failure theory vs. the encoding retention failure theory) and whether the theory assumes that memory is an intrapersonal process or an interpersonal proc- ess (i.e., the retrieval failure theory and the encoding/retention failure theory vs. the social interaction theory) . Finally, the implications of childhood amnesia for recovered memory and future directions are discussed.
著者
森 津太子 Tsutako Mori
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of the Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.47-54, 2009-03-19

社会的判断や認知的判断を予測するモデルの多くは、判断時に想起する情報の内容のみに注目している。そのため、情報想起に伴って経験される主観的な経験がそれ自体で重要な情報源となっていることが見過ごされている。ここでいう主観的経験には、「検索容易性」「舌端現象」「親近感」「既知感」「知覚的流暢性」などが含まれる。このうち、情報再生時の容易さや困難さを表す「検索容易性/困難性」は、ここ20年程の間、特に社会的認知の領域で中もされてきた。本論文は、この検索容易性に焦点をあて、社会的判断や認知的判断においてこの経験がどのような役割を果たすかをレビューした。さらに、最後のセクションでは、他の認知的な主観的経験や感情的経験との統合の可能性について議論した。
著者
森 津太子
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.31-39, 2012

近年、自由意思に関する関心が心理学者、とりわけ社会心理学者において高まっている。しかし研究者間の見解の相違は大きく、何が争点であるのかも明確ではないのが現状である。そこで本稿では、2009年に開催されたSocietyfor Personality and Social Psychologyの年次大会の中で行われた二人の著名な社会心理学者(John A. BarghとRoy F.Baumeister)による自由意思の存在をめぐる討論と、それに関連する論考に着目し、社会心理学における自由意思の問題について考察を行った。自由意思の存在を肯定するBaumeisterと、その存在を懐疑的に見ているBarghは、興味深いことに、いずれも進化心理学的な観点からこの問題を捉えようとしていた。しかし、Baumeisterは自由意思を進化的適応の産物と見なし、自由意思こそが人間が文化を営む上で必須のものだと考えているのに対し、Barghは自由意思の存在を否定し、そのような"何ものによっても引き起こされない行為の原因"を仮定することは非科学的だと主張している。彼は、無意識的過程こそが進化的適応の産物であり、意思すらも自動化されたものだと主張する。彼によれば、意思とは「遺伝的に継承されたものと、幼少期に吸収した文化的規範や価値観と、個人の人生経験の合流点」なのである。二人はまた、自由意思を信じることの心理学的意味においても意見を違えており、Baumeisterが自由意思を信じることには心理学的な効用があると考えているのに対し、Barghはそのような効用は限定的で、時には有害にすらなると反論する。このように、彼らの見解は平行線を辿り、最後まで一致を見ることはなかったが、彼らの討論の内容を吟味することにより、社会心理学における自由意思をめぐる問題の重要なポイントが何なのかが明確になった。