著者
金子 一史
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.12-22, 1999
被引用文献数
1

本研究では,一般青年に見られる被害妄想的心性を検討するため,被害妄想的心性を測定する尺度を新たに作成した.被験者は85名の大学生と176名の専門学校生(男子70名,女子190名,不明1名)であった.被害妄想的心性,他者意識,および自己意識からなる質問紙に回答を求めた.被害妄想的心性尺度の因子分析を行った結果,自己関連づけと猜疑心の2因子が抽出された.重回帰分析の結果では,猜疑心は私的自己意識との関連が示されたのに対し,自己関連づけは他者意識および公的自己意識との関連が示された.これらの結果から,被害妄想的心性は自己関連づけと猜疑心の質的に異なる2側面からとらえられることが示された.また,自己関連づけについては,他者に対する関心のあらわれであることが示唆された.
著者
岡田 有司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.388-395, 2008
被引用文献数
2

本研究では学校生活への順応と学校生活の享受の2側面を区別して学校への心理的適応を捉え,学校生活の下位領域に対する意識との関係を明らかにすることで,両概念の違いについて検討することが目的であった。質問紙調査により得られた中学生407名分のデータから,以下の知見が得られた。まず,因子分析からは学校生活への順応と学校生活の享受を区別して捉えることの妥当性が確認された。重回帰分析の結果,学校生活への順応・学校生活の享受ともにクラスへの意識が影響していた一方で,順応には友人への意識が,享受には教師・校則への意識が影響するという違いのあることが示された。学校生活に順応することと学校生活を享受することの違いについて検討され,順応に影響していた友人関係は生徒が不安を感じやすい領域であり,享受に影響していた教師や校則といった領域は生徒が反感を抱きやすい領域であることが示唆された。
著者
古村 健太郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.240-243, 2016-03-01 (Released:2017-01-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1

The purpose of this study was to examine the relationship between approach–avoidance commitment and investment model. Participants were 122 undergraduate students involved in romantic relationships. The results indicated that approach commitment was positively associated with satisfaction and investment. On the other hand, avoidance commitment was associated with the interaction term between a) satisfaction and investment and b) satisfaction and quality of alternative. Results of simple slope analysis showed that if satisfaction was low, avoidance commitment was positively associated with investment, and if satisfaction was high, avoidance commitment was positively associated with quality of alternative.
著者
解良 優基 石井 僚 玉井 颯一
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.226-239, 2016-03-01 (Released:2017-01-07)
参考文献数
38
被引用文献数
4

本研究は,Conley (2012) の枠組みを参考に学習接近動機 (i.e., 利用価値) と学習回避動機 (i.e., 学習上の悩み) の2変数による組み合わせのパターンと,学業達成や精神的健康との関連を検討した。中学2年生1,723名を対象とし,ベネッセ教育総合研究所により実施された「第4回学習基本調査・学力実態調査」のデータを用いて二次分析を行った。クラスター分析の結果,利用価値を高く認知し,学習上の悩みを低く認知する高動機づけ群,逆に前者を低く認知し,後者を高く認知する低動機づけ群,そして,両方を高く認知する葛藤認知群の3群に分類されることが示された。また,各クラスターの特徴をみるため,学習への興味や学習行動,テスト成績,および健康指標を従属変数として分散分析を行った。その結果,高動機づけ群が最も得点が高く,その他の2群間には差がみられないというパターンが多くみられた。以上より,学習接近動機のみでなく,学習回避動機についても着目する必要性が示された。
著者
内藤 まゆみ 鈴木 佳苗 坂元 章
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.67-78, 2004 (Released:2004-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
5 18

本研究は,合理的処理および直観的処理における個人差(Pacini & Epstein, 1999)を測定する情報処理スタイル尺度(IPSI)の作成を目的とした.調査1(回答者290名)ではIPSI38項目の内容的妥当性を検討するため,確認的因子分析を行った.分析の結果,IPSIが合理性と直観性の2因子から構成されることが確認された.また,IPSIは十分な内的一貫性および再テスト信頼性を持つことが示された.他の尺度(曖昧さへの耐性と理論志向性,自尊心,社会的望ましさ)との相関はIPSIの収束的・弁別的妥当性を示すものであった.調査2(回答者237名)では,構成概念妥当性の検討のため,確率推論課題の回答とIPSIの関連を調べた.その結果,直観性および合理性が推論エラーの頻度と関連することが示された.加えて,調査2ではIPSI短縮版24項目を作成し,その信頼性と妥当性が確認された.
著者
金子 一史 本城 秀次 高村 咲子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.2-13, 2003 (Released:2004-02-27)
参考文献数
38
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 一般青年に見られる被害妄想的観念を自己関係づけとしてとらえて, 対人恐怖心性, 抑うつ, 登校拒否傾向との関連を検討することであった. 被調査者は高校生487名(男子257名, 女子225名, 不明5名)であった. 自己関係づけ尺度, 対人恐怖心性尺度, 抑うつ尺度 (Children’s Depression Inventory: CDI), 登校回避感情尺度, 登校拒否関連性格尺度からなる質問紙に回答を求めた. その結果, 一般高校生において妄想的観念は高頻度で体験されていることが明らかになった. 自己関係づけは, 対人恐怖心性および抑うつ感情と正の相関があった. 考察では, 自己関係づけと対人恐怖心性との概念の異同について検討した.
著者
村上 宣寛 福光 隆
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.170-182, 2005-03-31
被引用文献数
1 3

研究Iでは, 担任教師が指名した攻撃性の著しい児童23名を基準群, 攻撃性の認められない児童567名を対照群とした.参加者は8つの小学校の3-6年生1701名と担任教師59名であった.問題攻撃性尺度は二群を弁別する13の質問項目から構成された.研究IIでは, 児童の攻撃性についてクラスの担任教師が5段階評定を行った.参加者は小学校3-6年生224名と担任教師8名であった.担任教師の評定の信頼性は.93であった, 問題攻撃性尺度と評定との相関は.46, 再検査信頼性は.85であった.814名のデータをIRTで分析すると, 尺度の高得点側で測定精度が高かった.研究IIIでは, 実験群でアサーション・トレーニングによる攻撃性の適正化教育を行った.参加者は, 実験群が3年生38名, 統制群が3年生35名であった.事前・事後の尺度得点の3要因分散分析の結果, アサーション・トレーニングは攻撃性の低い児童で弱い介入効果があった.
著者
岡田 有司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.388-395, 2008-04-01 (Released:2008-07-15)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

本研究では学校生活への順応と学校生活の享受の2側面を区別して学校への心理的適応を捉え,学校生活の下位領域に対する意識との関係を明らかにすることで,両概念の違いについて検討することが目的であった。質問紙調査により得られた中学生407名分のデータから,以下の知見が得られた。まず,因子分析からは学校生活への順応と学校生活の享受を区別して捉えることの妥当性が確認された。重回帰分析の結果,学校生活への順応・学校生活の享受ともにクラスへの意識が影響していた一方で,順応には友人への意識が,享受には教師・校則への意識が影響するという違いのあることが示された。学校生活に順応することと学校生活を享受することの違いについて検討され,順応に影響していた友人関係は生徒が不安を感じやすい領域であり,享受に影響していた教師や校則といった領域は生徒が反感を抱きやすい領域であることが示唆された。
著者
尾見 康博 川野 健治
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.56-67, 1994
被引用文献数
1

Most psychologists are highly familiar with various statistical methods. Some researchers, however, have pointed out various problems associated with the use of statistical methodology. Study 1 examined the data analytical techniques employed in the articles that appeared in nine Japanese psychological journals between February 1992 and July 1993. It was found that the most frequently used were analysis of variance and t-test, which together accounted for about half of the articles. Among multivariate analytical methods, factor analysis was the most frequently used. Study 2 examined the responses of thirty-seven psychologists and nine psychology-major seniors to the questions regarding; (1) the kinds of data analytical techniques they have ever used in their everyday work; (2) their merits and demerits; and (3) their misgivings and troubles concerning data analysis. The results revealed that most psychologists use a great variety of statistical methods in their everyday work, and they are also frequently troubled with statistical methodology in psychological research.
著者
天谷 祐子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.46-56, 2009-06-01 (Released:2009-07-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究は,「私はなぜ私なのか」という問い―自我体験―を経る人と経ない人の間,また自我体験を経て,それを深刻に捉えるか否かの間でパーソナリティ特性が異なるという仮説の検証を第1の目的とした(研究1)。そして自身が自我体験を経た意味を積極的に見出すか否かにより,孤独感と心理的well-beingに対する関連が異なるという仮説の検証を第2の目的とした(研究2)。その結果研究1からは,自我体験を経てそれを深刻に捉えている人が未体験者よりも神経症傾向が高いことが示された。また未体験者の方が自我体験を経て深刻に捉えていない人よりも誠実性が高かった。研究2からは,自身の自我体験に積極的な意味を見出している人は未体験者よりも「人は本来1人である」と考える傾向が強いことが示された。これにより,自我体験を経る人と経ない人のパーソナリティ特性,また自我体験の孤独感への関連が明らかにされた。