著者
星野 貴俊 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.226-228, 2009-03-01 (Released:2009-04-08)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

Self-leakage is defined as a subjective sense that one's inner state is leaking out for others to know without verbal expression, causing anticipation of negative outcomes. A similar phenomenon is egorrhea symptoms of “taijin kyofusho” (social phobia). The mechanism of self-leakage has not yet been hypothesized, and we aimed at proposing a causal model in the present study. Path analysis suggested that self-leakage was partly caused by the tendency to have delusional ideations and trait anxiety, i.e., interpretation bias. But, contrary to our prediction, social anxiety, fear of negative evaluation, and public self-consciousness did not have enough influence on self-leakage.
著者
光浪 睦美
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.124-137, 2012-11-30 (Released:2013-02-11)
参考文献数
37
被引用文献数
6 3

本研究の目的は,大学生401名を対象に,対人関係における動機や目標志向性および対人行動が,過去の認知と将来への期待の組み合わせによって設定された認知的方略のタイプ(方略的楽観主義(SO),防衛的悲観主義(DP),非現実的楽観主義(UO),真の悲観主義(RP))で異なるか検討することと,対人関係における動機,目標および行動の因果プロセスについて検討することであった。その結果,SO群とUO群は親和願望が高く,DP群とRP群は拒否不安が高いことが示された。また,SO群とUO群は経験・成長目標をもち,積極的・援助的な対人行動をとっていた。因果プロセスの検討から,4つの群すべてにおいて親和願望が経験・成長目標を介して積極的な対人行動に影響を及ぼすことが明らかになったが,UO群とRP群においては,自分の性格に対する良い評価を得るために一見ネガティブにもみえる行動をとる可能性が示唆された。
著者
小西 瑞穂 山田 尚登 佐藤 豪
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.29-38, 2008-09-30
被引用文献数
2 7

自己愛人格傾向がストレスに脆弱な素因であるかを検討するために,大学生174名(男性72名,女性102名)を対象として縦断的調査を行った。自己愛人格傾向の高い者は最近1ヶ月以内のストレッサー経験量が多いと精神的健康が低下するという仮説を立て,精神的健康のネガティブな側面をストレス反応,ポジティブな側面をハッピネスとして測定した。階層的重回帰分析の結果,自己愛人格傾向の高い者がストレスイベントを多く経験した場合,男性では抑うつ反応および自律神経系活動性亢進反応,女性では身体的疲労感が増加し,一方ストレスの少ない状況ではこれらのストレス反応が自己愛人格傾向の低い者や平均的な者に比べて最も少なかった。つまり,自己愛人格傾向には個人の精神的健康を部分的に支える働きがあるが,それはストレスの少ない状況に限定されたものであり,ストレスの多い状況ではストレス反応を生起しやすい,ストレスに脆弱な素因と考えられる。
著者
緒方 康介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.118-126, 2011-11-30 (Released:2012-05-22)
参考文献数
15

本研究の目的は因子分析と多母集団同時分析を用いて,S-M社会生活能力検査における因子構造の不変性の確認と知的障がい児への適用に関して因子不変性を検証することである。児童相談所のケース記録から2歳から18歳までの知的障がいの有る/無い児童のデータ1,002名分(女児292名,男児710名)を抽出した。K式発達検査のDQを基に対象児童は,1)障がい無群,2)軽度群,3)中度群,4)重度群の4群に分類された。知的障がい児の場合,理論的な1因子モデルの因子構造の不変性は低くなった。一方,1因子モデルに替わるものとして2因子モデルの方が知的障がい児に対しての適合度が高かった。本研究知見により,S-M社会生活能力検査を知的障がい児に適用する場合には理論モデルとは異なったモデルを用いて社会生活能力を測定する必要があることが明らかとなった。
著者
外山 美樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-12, 2006 (Released:2006-10-07)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1 2

本研究の目的は,小学4年生,6年生ならびに中学2年生を対象とし,社会的比較を行った後,その個人に生じる感情や行動について発達的に検討すること,ならびにそれが個人のパーソナリティ特性とどう関連しているのかを検討することであった。領域別コンピテンス,競争心,情緒性のどのパーソナリティ特性が社会的比較によって生じる感情や行動に強く影響を及ぼすのかを検討するために,3つのパーソナリティ特性を説明変数に,社会的比較の結果下位尺度を各々基準変数とする重回帰分析を学年別に行った。本研究の結果より,社会的比較を行った後に,その個人に生じる感情や行動は,パーソナリティ特性や発達段階に応じて異なることがわかった。小学生(4年生ならびに6年生)においては,領域別コンピテンスが特に,社会的比較によって生じる感情や行動と強く関連していた。一方,中学2年生においては,競争心が社会的比較によって生じる感情や行動に影響を及ぼしていた。
著者
齊藤 千鶴
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.79-90, 2004
被引用文献数
7

本研究は,摂食障害傾向に及ぼす個人内要因と社会文化的要因を包括的に検討することを目的とした.321名の青年期と成人期の女性に,社会的変数としてやせ志向文化への態度と性役割観に関する尺度を,個人内変数として自尊感情と相互依存的自己概念に関する尺度を提示し,回答してもらった.その結果,"社会文化的な規範に過剰に適応しようとする自己理解が,自らの自尊感情を低下させて,摂食障害傾向を形成するであろう"という仮説モデルが支持された.これらの結果により,摂食障害がやせ志向文化と性別役割という社会文化的影響を受けることが明らかにされ,またその影響を受けやすくする個人の特性の一部を示すことができたといえよう.
著者
小平 英志 小塩 真司 速水 敏彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.217-227, 2007-01-31
被引用文献数
7

本研究の目的は,対人関係で経験される抑鬱感情と敵意感情に焦点を当て,仮想的有能感と日常の感情経験との関連を検討することであった。調査1では,仮想的有能感尺度および自尊感情尺度が実施された。続く調査2では,大学生445名(男性238名,女性207名)を対象に,1日のうち印象に残っている対人関係上の出来事とそれに対する抑鬱感情・敵意感情を7日間に渡って記入するように求めた。その結果,他者軽視傾向が強く自尊感情の低い『仮想型』が,抑鬱感情,敵意感情の両方を強く感じていること示された。また,7日間の評定値の変動に関しても,他者軽視傾向が弱く自尊感情の高い『自尊型』と比較して大きいことが示された。本研究の結果から『仮想型』に分類される個人は,特に対人関係に関わる出来事に関して,日常から不安定で強い抑鬱感情,敵意感情を経験していることが示された。