著者
平井 晶子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.7-16, 2003-07-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
25
被引用文献数
2

「家」とは, 世代を超えて永続し, 直系親族により単独相続され, 家業や家産が維持され, 構造的には直系家族世帯を形成するものと定義される。しかし, 庶民層で「家」が一般化した時期については未だ定説が確立していない。本稿では「家」に不可欠な要素である永続性に着目し, 実態としての世帯に永続性が備わっているのかどうかを, 歴史人口学的方法を用いて検討した。その結果, 永続性は不変的に存在したのではなく19世紀以降に一般化したこと, さらに永続性が一般化する前は永続性規範も希薄であったとの仮説を得た。これらの知見は, 17世紀初頭から「家」が存在したとする従来の家族社会学的家変動論や近代になりようやく「家」が成立したとする法制史的家変動論に再考を迫るものであり, 近世から近代への連続性において家の変動を捉える枠組みを提示するものである。
著者
藤崎 宏子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.135-140, 2010-10-30 (Released:2011-10-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本テーマセッションは,日本家族社会学会創立20周年を記念して,編集委員会と研究活動委員会の共同企画により,日本の家族社会学の過去20年における研究動向を理論的展開に注目して総括するとともに,今後の課題を展望しようとするものである。はじめに池岡義孝氏から,「戦後家族社会学の展開とその現代的位相」という題目のもと,戦後における家族社会学の研究史のなかに過去20年を位置づけるという総論的な報告があった。続く4人の報告者には,この期の家族社会学研究において生産性が高く,かつ,家族と他の制度領域,もしくは家族社会学と他の学問領域とのインターフェイス部分でなされた研究の動向について報告をお願いした。具体的には,「教育学と家族研究」(小玉亮子氏),「ケアの社会学と家族研究」(井口高志氏),「階層研究と家族社会学」(岩間暁子氏),「フェミニズム論と家族研究」(千田有紀氏)である。なお,司会は,藤崎宏子と宮本みち子が務めた。
著者
石黒 史郎
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.30-41, 2007-04-30 (Released:2009-08-04)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本稿の目的は, 家族社会学の形成過程を探るという問題関心の下, 戸田貞三の初期著作において, 家族が, どのように問題にすべきものとして構成されているのかを検討することである。彼の初期著作において看過できないのは, 明らかな社会改良への志向である。制度や集団, その成員, あるいは生活形式などの一般的なタームも, その志向をめぐって組織化されており, それによって社会的な弊害が析出される。そこで重要になるのは人々が正確な事実を知り, それに基づいて行為することであり, そのための契機として家族は位置づけられている。統計法はそうした人々が基づくべき事実を知らしめるための方法であり, それによって, 彼の論理において重要な位置を占めている家族についての事実も知らされるのである。
著者
田渕 六郎
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.117-122, 2000-07-31 (Released:2009-09-03)
参考文献数
44
被引用文献数
2

本稿は、近年の家族研究において注目されている構築主義的研究の動向を紹介することを目的とする。ここで構築主義的研究とは、以下で述べる意味で「構築主義的」な理論枠組みを採用していると考えられる研究を指す。関連する研究動向の紹介としては、拙稿 (田渕, 1996, 1998) のほかに、構築主義的家族研究を代表する研究であるGubrium and Holstein (1990) の訳書「あとがき」に訳者等による紹介があり、宮坂 (1999) や土屋 (1999) も関連する実証研究の動向を整理している。本稿は研究動向の紹介を網羅的に行う紙幅を欠くため、紹介はこれら先行研究に挙げられている文献と重複しないものを優先していることをお断りしておきたい。
著者
布施 晶子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.48-56,118, 1990-07-20 (Released:2009-08-04)
参考文献数
10

Firstly, this work examines of the '80s and the present problems of the Japanese family. How has the family been affected by the tremendous economic and social changes brought by rapid economic growth, and the structural recession that followed it? We will find the affluence is barely skin-deep. We pay attention to the working hours, housing, and so on. Creative plans are needed. There is no place for the elderly in Japan. The birty rate is decreasing and the strain on children is inc reasing. We also must consider changes in the configuration of the family. We notice diversity in the configuration. At the same time, We find icreasing self-reliance of members in the family, especially in the wife.Secondly, this work examines how family sociology copes with the Japanese family in transition. We have to confront the problem of the Japanese family acccurately. We have to verify the quality of life. We have to propose a scheme for new policies of qovernment. We have to appreciate the signs of diversity and self-reliance in the family.
著者
末盛 慶
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.103-112, 2002-03-31 (Released:2010-11-18)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究では, 母親の就業が子どもに与える影響に関する諸理論と先行研究を概観した上で, 母親の就業が子どもの独立心にどのような影響を持つのかを実証的に明らかにする。本研究では, 母親の就業状態だけでなく母親の職業経歴の効果も検証し, また社会階層や母子関係を統制した上で母親の就業の効果を検証する。分析対象は, 東京都郊外地区から多段無作為抽出法でとられた長子の中学生とその母親451組である。分析の結果, 母親の就業状態によって子どもの独立心に違いはみられなかった。しかし, 母親の職業経歴によって子どもの独立心に有意な差異が生じていた。結果は, 就業継続する母親の子どもの独立心が他の群に比べ有意に高いことが示された。ここから, 母親の就業状態だけでなく母親の職業経歴を捉えることの重要性, および母親の就業継続が必ずしも子どもに対して否定的な影響を及ぼさない-むしろポジティブな影響さえ及ぼしうる-ことが明らかになった。