著者
門野 里栄子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.57-67,135, 1995-07-25 (Released:2009-08-04)
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

This study investigated the relationship between conjugal agreement patterns and marital satisfaction for a sample of 432 married women. Of the four patterns induced from the “time of discussion” variable and the “agreement” variable, namely explicit agreement, implicit agreement, disagreement, not yet ascertained, the former two correlated with high satisfaction and the later two with low satisfaction. The finding shows that agreement with husbands is of primary importance for marital satisfaction as perceived by wives. Between the former two patterns, the explicit agreement correlated more highly with satisfaction than implicit agreement. Before marriage, many couples agree tacitly about their marital life plan. In the case of tacit, implicit agreement, the task of “role fit” may not be completely accomplished during the period of marital choice. However, after marriage, they can achieve mutual agreement though discussion. That is, the “role fit” task is attained not only before marriage but after marriage as well.
著者
末盛 慶
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.11, pp.71-82, 1999-07-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
28
被引用文献数
3 4

本研究の目的は、夫の家事遂行および情緒的サポートが妻の夫婦関係満足感にどのような影響を与えるのか、またその影響の仕方は他の要因によって異なるのかを検討することである。従来、従属変数として扱われてきた家事分担を独立変数として設定し、妻の夫婦関係満足感への影響をみること、またこれまであまり扱われてこなかった夫の情緒的サポートを取り上げていることが本研究の特色である。データは、NFR予備調査「家族と夫婦関係に関する調査」を用いた。分析対象は、夫と同居する有配偶女性122人である。分析の結果、夫の家事遂行より情緒的サポートの方が、妻の夫婦関係満足感と関連すること、またその関連は伝統的な性別役割意識をもつ妻において強いことが発見された。この結果は、職業などによる評価を得ることが難しい専業主婦にとって、自ら行う家族役割に対する夫からの評価やねぎらいがとりわけ重要になってくるという観点から解釈された。
著者
石井クンツ 昌子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.186-195, 2011-10-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
50
被引用文献数
1

本論文では米国の家族に注目して,その変容と現状および多様性について述べる.米国の家族の多様性を生み出してきたのは,人種間の文化や慣習の違い,社会階層および地域格差である.よって,これらの社会的な背景を最初に述べ,次に主な家族の変化(離婚率の増加,晩婚化,法律婚世帯の減少,シングルペアレントの増加)と現状を U.S. Census などのデータを基に明らかにする.また,これらの多様性と変化に対応した家族の定義を提唱する.米国の家族社会学研究からは特に父親と家族,ゲイ・レズビアンの家族に焦点をあてて,主な結果をレビューする.最後に,家族社会学研究と密接に関係しているジェンダー視点について述べる.
著者
瀬地山 角
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.31-36,138, 1993-07-25 (Released:2009-08-04)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

This paper reviews the genesis and change of housewives in East Asian societies : Japan, South Korea, Taiwan, North Korea and China. To recognize the housewife as a historical product is to admit the possibility of its disappearance. Although East Asian societies have often been treated together as a Confucian cultural sphere, the present and future status of women in these societies are remarkbly different. In socialist societies virtually all women are supposed to work in the name of "women's liberation" but the status of women is not all the same. In North Korea patriarchal traditions are so well preserved that household chores are done solely by women, whereas in China men's participation in housework is quite prevalent. Patriarchy in Taiwan does not particularly emphasize motherhood as the most inportant female role and working outside the home is often considered one of women's responsibilities. Housewives in Taiwan, therefore, are most likely to follow the American type of the vanishing housewife. By contrast Korean housewives are still largely confined to their homes and transition to the next stage is quite unlikely because of strong Confucian influence just like in their Northern counterpart. In Japan, mothering still remains an essential role for married women and therefore prevent housewives from proceeding to the next stage although Japan is for more advanced than Taiwan in the economic sense.
著者
斧出 節子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.46-46, 2001-08-20 (Released:2009-09-03)

本書は, 社会保障改革においては少子・高齢化が進行するなかで家族と世帯の変容はますます重要な視点になりつつあるとの認識から, 家族・世帯の変容と社会保障政策の関係を事実に基づいて把握しようとしたものである。そのために, 平成元年から平成7年までにわたる「国民生活基礎調査」の個票から, 個有名詞などの情報を削除したミクロデータを再集計し, 解析を試みている。本書は15章と付録から構成されており, 第1章は本書の目的と研究経緯・概要について述べられている。第2章では社会保障を考えるうえでの基礎となる家計の国際比較がなされ, 第3章~第6章においては, 全世帯を対象に家族と世帯の変容を, 世帯構造・家族のライフサイクル・所得・健康状態を視点に分析が行われている。そして, 第7章~第14章においては, ライフサイクルのなかでも所得保障や医療・介護政策の影響が最も現れやすい高齢者個人と高齢者世帯を対象に, その実態と社会保障の機能に関する分析が行われている。第15章では各章の成果から社会保障政策へのインプリケーションが示され, 付録には「国民生活基礎調査」の平成元年から平成7年までの調査票を再集計して構成した疑似パネルデータの内容が紹介されている。一般に公表されている国レベルの調査結果は, 日本全体の概況を捉えるには有益であるが, 一方で, データにはどのような生活のリアリティが潜んでいるのだろうかという歯がゆい思いを抱かせる。その意味で本書は, 経済学的・統計学的な深い専門知識を読者に要求するものの, 大量データから緻密な生活状況を描写してくれる稀有な著書である。高齢者世帯に関連した知見をいくつか紹介してみると, 高齢者が子夫婦と, また, 子夫婦が親との同居を高める要因については, 低所得や要介護という要因が認められている。「子との同居は低所得, 要介護といったリスクに対して高齢者の生活を保障するための家族の役割は依然機能して」おり, 近年の同居率の低下から生活保障政策の重要性が今後ますます高まると指摘されている (第8章) 。また, 高齢者の経済的地位について言及したものでは, 疑似最低生活基準 (PA基準) を用いることで, 高齢者のなかでもとくに65歳以上の女性単独世帯で経済的地位の低いことが明らかにされている (第10章) 。さらに高齢在宅要介護者の発生が家計に与える影響を分析したものでは, 「要介護度の上昇は直接の介護支出を増加させるのではなく, 介護者の機会費用の上昇という形で家計を圧迫する」とし, 介護保険の現金給付問題に関する重要な論点を投じている (第13章) 。「『家族』はそもそも家族成員・個人の『生活保障』をどの程度担えるのか」という問いが, 家族社会学においても大きなテーマとして扱われてきた。生活保障は「お金」と「家事・サービス」という2本柱から成るが, 「お金」の問題とともに誰がどの程度「家事・サービス」を担うのかというもう一方の問題も含めて, 本書が提供している知見を検討し, どのような社会保障政策が望まれるかをさらに議論していくことが必要であろう。
著者
岡村 清子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.24-35,117, 1990-07-20 (Released:2009-08-04)
参考文献数
28

This paper aims at discussing possible future changes in role differentiation in the family caused by an increase of wives'labor market participation. For this purpose, a qualitative approach was taken rather than a simulational analysis based on macro data.The first condition in the future which can be predicted at this moment would be an advancement of class stratification by occupation that females belong to, as a result of the Equal Employment Opportunity Law. Then, males' participation in house keeping and social activities would incease with an improvement of general working conditions such as a flex-time system and reduction of total working hours. Total working hours for household chores also will decrease as a result of more availability in purchasing home-aid services. Even if they are unemployed, more wives tend to participate in social activities.Predictable statements expected in this case are as follows : 1) Equality at workplace would proceed gender equality in family.2) Ideology and an actual practice would not develop in parallel regarding role differentiation and equality by sex. For instance, the husband may share household chores but does not neccessarily retain an egalitarian ideology.3) Type of role sharing would differ depending on household type and their marital relationships and it also would be diversified by their resource such as the possibility of using household-aid services and help from their kin.
著者
山田 昌弘
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.11, pp.49-57, 1999-07-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
14

今、家族社会学者は、「なぜ親は子どもを育てるか」という問いにとりくまなくてはならない。ヘーゲルは、近代社会における子育ての原型を論じた。彼は、親子関係が子の成人後に消滅するということを強調し、近代的子育ての二つの性格を導いた。一つは、親はもう子育てに、経済的効用を見出すことができないため、意味を見出すことが求められ、子育ての主要な動機付けは、愛情になるということである。もう一点は、親子の愛が未完成であるということで、その結果、親は、愛情の存在を信じることができた。近年の長寿化と「学校化」によって、親にとって子育ての意味付与の危機がもたらされる。親子関係に愛情があると確信するためには、成人後の子や学校システムなど公共からの評価が必要になるからである。その結果、親は、子育てにプレッシャーを感じることが多くなる。それゆえに、親は、なぜ子どもを育てるのかという問いに悩まされるようになる。
著者
麦山 亮太
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.122-135, 2016-10-31 (Released:2018-04-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本稿では,結婚が職業キャリア形成,とりわけ無業への移動と管理職への移動に与える影響について,男女を比較しながら明らかにする.本稿の特徴は,ライフコース論の視座から,結婚の効果が時間により変わると想定し,セレクションと効果の変化に着目して分析する点にある.2005年SSM調査を用いたイベントヒストリー分析により,以下の点を明らかにした.無業への移動に関して,結婚の効果は結婚の直後から現れ,男性の移動を起こりにくく,女性の移動を起こりやすくする.ただし男性における効果の多くは結婚へのセレクションによるものである.管理職への移動に関して,結婚の効果は結婚から数年間を経てから顕在化し,男性の移動を起こりやすく,女性の移動を起こりにくくする.以上見られた男女で非対称な結婚の効果は,結婚による夫婦間の性別役割分業と,その蓄積の結果として生じる人的資本の格差によって生じているものと見られる.
著者
三谷 はるよ
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.7-19, 2020-04-30 (Released:2021-05-11)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

本稿は,育児期の孤独感を軽減するサポート・ネットワークを検討する.育児期のサポート・ネットワークとwell-beingの関係を捉える先行研究の多くは,クロスセクションデータに依拠し,女性のみを研究対象とし,公的サポートよりも私的サポートに注目するものだった.そこで本稿ではパネルデータを用いて,私的・公的サポートの両方を含むどのようなサポート・ネットワークが育児期の男女の孤独感を軽減するのかを検討した.その結果,精神的・手段的に頼りになる夫や精神的に支えてくれる友人から成るサポート・ネットワークが,母親の孤独感を軽減する傾向が示された.また,精神的に支えてくれる妻やつどいの広場・育児サークルから成るサポート・ネットワークが,父親の孤独感を軽減する傾向も示された.本稿は,父親が父親同士の関係や父子関係を深められる場が父親のwell-beingを良好にすることを示唆する.
著者
多賀 太 石井 クンツ昌子 伊藤 公雄 植田 晃博
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.7-19, 2023-04-30 (Released:2023-05-31)
参考文献数
24

近年の国際的ジェンダー平等政策では,男性のケア関与に焦点を当て,理想的な男性のあり方としてのケアリング・マスキュリニティ(CM)をキーワードとして用いている.しかし,男性のケア行為参加がジェンダー平等を促進する効果は限定的との先行研究もあり,そもそもCMを構成する諸要素間の関係性に関する十分なエビデンスは得られていない.そこで本研究は,7歳未満の子どもを持つ父親を対象とした調査データを用い,CMの構成要素に関する諸変数で階層別クラスター分析を実施した.その結果,男性たちが,単にCMの程度が高いか低いかの二極モデルでは捉えきれない形で多様化していることが明らかにされた.すなわち,「ケア行為」の頻度が高い男性たちの間でさらに,「ジェンダー観」が非伝統的で「生活の質」も高い「非伝統的男性性」と,「ケアの態度」の程度は高いが「ジェンダー観」は伝統的で「生活の質」が低い「葛藤的男性性」への分化が確認された.