著者
田渕 六郎
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.111-120, 2018
被引用文献数
1

<p>本稿は主として全国家族調査(NFRJ)データの分析にもとづき,世代間の居住関係の変化に焦点を当てて2000年代における現代日本家族の動態を明らかにした.有配偶子の親との同居は,夫親との同居率がやや低下したものの大きな変化は生じておらず,親との同居に関連する要因には,持続的なパターンと変化の両方がみられた.未婚子の親との同居については,親同居率が顕著に上昇しており,同居の関連要因について,未婚子の低い経済的地位と同居との関連が継続的に観察された.2000年代の世代間居住関係は,未婚子の親との同居が拡大するなかで,親と有配偶子との間の「直系家族制」的な同居が減少し,その構造も変化の兆しをみせている.こうした今日の世代間居住関係の変化を的確に解釈するためには,従来のような有配偶子とその親との関係に限定されないような研究枠組みからの接近が求められる.</p>
著者
余田 翔平
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.98-106, 2018

<p>本稿の目的は,パネルデータを用いて,有配偶女性の就業とメンタルヘルスとの関係をめぐる2つの相反する仮説を検証することである.第1の仮説は役割過重仮説と呼ばれ,多重役割がメンタルヘルスの悪化をもたらすと予想する.第2の仮説は役割展開仮説と呼ばれ,職業役割の獲得は社会的アイデンティティにつながるためメンタルヘルスにも良好な影響を持つと予想する.クロスセクションデータを用いた先行研究によると,日本ではこれらのいずれの仮説も支持されていない.「全国家族調査パネルスタディ(NFRJ08-Panel)」を用いた分析の結果,時間不変の個人特性を統制すると,有職時は無職時よりもメンタルヘルスが良好なことが確認された.この結果は役割展開仮説と整合的であり,有配偶女性が職業役割から心理的メリットを得ている可能性を示唆するものである.ただし,本稿には方法論上残された課題やデータの制約も多く,それらについて最後に整理する.</p>
著者
湯沢 雍彦
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.29-36,134, 1994-07-25 (Released:2009-08-04)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

The rerationship between husband and wife in Japan in the 20th century can be categorized into two types; the “Pre-World-War” marital relationship, common among Japanese before the 1950s, and the “Contemporary” common after 1975.In the “Pre-World-War” relationship, people did not marry for romantic love, but rather thought of marriage as a means for realizing stability in their lives.The marital structure of the relationship in general was characterized by the husband's dominance, the clear existence of traditional gender roles among wage earning families, and a lack of emotional function.On the other hand, in the “Contemporary” marital relationship, both men and women place the most emphasis on the free choice of a mate, with the woman's will being more important than the man's when decaiding to marry.For both parties, equal partnership and motional satisfaction are considered to be the most important factors in the relationship.When these goals cannot be realized, the wife generally takes the initiative for a no-fault divorce.There are still many doubts, however, so to whether this type of relationship will become more common in Japanese society.
著者
小谷 眞男
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.201-207, 2009-10-30 (Released:2010-10-30)
参考文献数
15
著者
善積 京子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.59-65,140, 1993-07-25 (Released:2009-08-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1

In recent years, an increasing number of people in Europe and the United States are choosing to live together, i.e. to cohabit, rather than legally get married, and are discoveing the advantages of this arrangement. Traditionally, cohabitaion was not a choice but a forced lifestyle for those who were not allowed a legal union.This paper first cited some statistics, such as the increase in the number of divorces, the decrease in the number of marriages, the increase in the number of cohabitations, and the increase in the number of births out of wedlock, as a way to depict the current so-called “crisis in the marital system” in Western Societies.Secondly, after analyzing the social background which has led to this increase in cohabitation, people living together are categorized into three groups : young people, women seeking independece, and people seeking an alternative to remarriage. Their process of choosing cohabitation as their lifestyle, from the point of view of strategy, is also explained.Thirdly, the paper examines Swedish society where cohabitation is not only accepted as a socical institution but also legal. Through examining the Swedish example, social conditions which enable “neutrality” of lifestyle and a new paradigm for the family is investigated.Finally, the possibilty of cohabitation being chosen as a lifestyle in Japan in examined.
著者
三谷 はるよ
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.109-120, 2013-10-31 (Released:2015-09-05)
参考文献数
28
被引用文献数
2

昨今,里親養育に期待が高まる一方で,里親がストレスフルな状況に置かれていることが問題化している.先行研究は危機への対処としての里親本人の意味づけに注目してきたが,社会関係が対処に与える影響は十分に捉えていない.そこで本稿ではインタビュー調査を実施し,里親の危機対処過程を,とくに社会関係の影響に注目して検討した.その結果,里親は家族成員の理解・協力によって困難性を共有し,里親仲間の類似経験や専門家の知識によって困難性を相対化することで,危機に対処していることが明らかになった.また,里親は危機対処の過程を経て,里子や児童相談所職員から肯定的評価を得ることで,役割アイデンティティを強化していることもわかった.以上から,家族内外の社会関係からの道具的,情緒的,情報的サポートがストレッサーの悪影響を緩和し,ケアの受け手や公的な第三者からの評価的サポートが心理状態をつねに安定させることが示唆された.
著者
廣嶋 清志
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.56-62, 2016
被引用文献数
1

1 0 0 0 OA 家族戦略?

著者
武川 正吾
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.43-51, 2013-04-30 (Released:2014-11-07)
参考文献数
26
被引用文献数
2 1

この報告は,家族戦略論のなかに公共政策を新しい変数として導入することを提案する.家族戦略の「構造的諸条件」の多くが公共政策の決定の結果として生み出されているからである.他方で,個々の家族戦略の集積の結果として,これらの「構造的諸条件」は単純再生産されたり,拡大再生産されたり,構造自体が変化する場合もある.日本も他の先進諸国と同様,グローバル化と個人化の影響を受けている.しかしその影響が他国と同様に純粋的な形で現れないのは,日本では「家族」が緩衝地帯としての役割を果たしているからである.このようなことが可能となった背景には,日本の福祉レジームの存在がある.しかし,その家族そのものの数が現在減少しつつある.家族変動に対する公共政策の影響は,これまで十分に評価されてきたとはいえない.しかし,公共政策の最初の一撃は,家族変動を含む社会変動にとって重要である.家族戦略と公共政策との間の正のスパイラルを確立するために,現在の日本では「公共政策による最初の一撃」が求められている.
著者
舩橋 惠子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.209-218, 2011-10-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
28

本稿の目的は,フランスの家族政策が家族変動にどのように対応しているかを示すことである.はじめに,増加する同棲,別居パートナー,婚姻に代わろうとしているパックス,離婚とひとり親,ステップファミリーといった,今日的パートナーシップ現象を概観する.これらは,家庭や職場における女性の権利と,生殖に関する権利を尊重することと並行していた.次に,働く親を支えるために1980年代から革新してきたフランスの家族政策の概要(子どもの教育・保育システム,労働時間の短縮,十分な余暇,膨大な家族手当など)について描き出す.フランスの経験は,家族変動の時代にあっては家族の絆(きずな)を社会的に支えることが,われわれの社会を持続可能な状態に保つということを教えている.
著者
後藤 憲子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.21-29, 2009-04-30 (Released:2010-04-30)
被引用文献数
1

1995年から2005年の10年間で,就学前の幼児を育てている家庭の世帯年収は全体的に減少傾向が見られたが,1ヵ月あたりの平均教育費は増加していた。全体的に年収が減少しているのに対し,教育費は増加しているので,この10年間で世帯年収に占める教育費の比率は上がっていることになる。学力低下を危惧する世論が就学前の子どもを持つ保護者にも影響を与え,習い事などに使う金額が増えていることがわかった。母親の学歴別に子ども一人あたりの平均教育費をみると,高等教育(短大も含む,以下同)を受けた母親と高卒の母親の間で,95年から05年の10年間で,教育にかける金額の差が大きくなっていることがわかった。また,習い事などの実施状況をみると,高等教育を受けた母親で英語の実施率が高くなっていることがわかった。将来のために幼児期から行う習い事として,高収入・高学歴層で英語の実施率が高くなっていた。
著者
池岡 義孝
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.55-66, 2000-07-31 (Released:2009-09-03)
参考文献数
33
被引用文献数
2 1 2

本稿の目的は、戦後日本の家族社会学における社会調査の方法の定式化を、その成立期にまで遡及して考察することである。社会調査の方法については、それを量的方法と質的方法に区分し、前者を主とし後者を従とするウエイトをつけた補完関係にあるものとして位置づけることが一般的であるが、家族社会学においてもこれと同様の二分法的理解が、現在に至るまで広く普及している。本稿においては、家族社会学におけるこうした量的方法と質的方法という二分法的理解が、戦後日本の家族社会学が通常科学化した1960年代ごろに成立したものであることを、それを提起した小山隆を中心とする家族社会学に固有の要因と、より一般的な社会学および社会調査法をめぐる状況の両面から論証する。そのうえで、さらにそれがその後の家族社会学の展開においてどのような道筋をたどったのか、その方向性の概略的な見取り図を提起することにしたい。
著者
立山 徳子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.77-88, 2010-04-30 (Released:2011-05-10)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

本稿では都市度(都心・郊外・村落)が「家族・コミュニティ問題」にどのような関連をもつのかを,子育てにおける世帯内ネットワークのサポート動員から検討した。主な知見は次の三つである。1)都市度は夫の子育てサポートと関連せず,都市度と強く関連する夫の就労スタイルが夫の子育てサポートの多少を説明する効果をもつ。2)親同居世帯に限った分析から,世帯内サポート(夫サポートと同居親サポートの総和)は都市度ではなく夫の就労スタイルと関連をもち,また世帯内サポートの差は同居親サポートではなく夫サポートの差によるものであった。3)都市度と育児孤立との間に関連は確認されず,夫サポートならびに世帯内サポート量と育児孤立の間に有意な負の相関関係が確認された。だがこれを都市度別に確認すると,郊外のみにこの負の相関関係が確認された。以上から,都市度は間接的ながら,都市空間における世帯内ネットワークの差異を説明するといえる。
著者
大和 礼子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.40-40, 2002-03-31 (Released:2010-11-18)

スウェーデン政府は1995年から「女性の権力調査」というプロジェクトを行った。本書は, その一環として1996年に行われた, 質問紙とインタビューからなる調査報告書の翻訳である。この調査研究の理論的枠組みは次のようなものである。 (1) 家族生活の組織方法についての伝統的規範が弱まった現代のスウェーデンにおいては, 家事・賃金労働, 家庭内のお金の組織化は, 夫妻 (サムボとよばれる同棲関係を含む) 間の「交渉」によって決められる部分が大きい。 (2) なにが交渉に影響を及ぼすかについて, 3つの仮説 ((1) 経済的合理性, (2) ジェンダーに関する文化的既成観念, (3) 権力資源) がある。 (3) この研究では, 交渉において夫妻間には利益の不一致があることを前提にする, つまり (3) の権力資源仮説にとくに注意を払う。 (4) 交渉の結果は, 短期的・長期的に夫妻関係に影響を及ぼす。このような枠組みのもとで調査研究が行われた結果, 明らかになったのは, 第1に, 男女平等規範の浸透にもかかわらず, 実際の家事・賃金労働, お金の組織化には多様性があるということである。一方の極には家父長的な分担を行っている家族, もう一方の極には男女平等な分担を行っている家族があり, そして残りはこの2極の間に位置している。2極の間に位置する家族には, 共通したジェンダー関係のパターンがみられ, それは「男女ともに賃金労働につき家計に貢献することが基本とされるが, 子どもが幼い間は母親が育児の責任をおもに取るべきであり, また家事は男性も一部しなければならないが, おもに責任をもつのは女性である」というものである (ただしこの共通性を強調しすぎるのは危険だと著者らは述べている) 。第2に, なにが交渉に影響を与えているのかについては, 経済的合理性, ジェンダー観念, そして権力資源のどれもが, ある程度影響を与えている。ただし育児休業の取得については, 「育児は母親の責任」というジェンダー観念の影響が強い。第3に, 交渉の結果, とくに家事の分担に関して, 妻の側に不満が高く, これは家事分担に権力がかかわっていることを示す。また交渉についての不満・対立によって関係の解消 (離婚) にいたる場合もあるが, 過去の交渉の結果は, 離婚後の生活についての交渉や, 生活そのものにも影響を及ぼす。以上のような骨格だけの紹介では十分示すことができないが, この調査研究は「交渉」という概念を採用し, インタビュー調査を合わせて行ったことによって, 家事の分担, 育児休業の取得, お金の管理方法や配分などが夫妻間で決められていく過程を生き生きと描き出しており, 夫婦関係についてのさまざまな洞察や新たな仮説を考えるためのヒントに満ちている。また第1章で, この問題を考察するための3つの主要な仮説が, その学説史をも含めて整理されていて有用である。夫婦関係に関心をもつ人, 現代のスウェーデン家族に関心をもつ人には, ぜひ一読を勧めたい。
著者
清水 新二
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.47-60, 2005-02-28 (Released:2009-08-04)
参考文献数
31

家族の多面的リアリティに即して, 「ストレス発生の場」としての “おそろしい家族”の側面と, 「ストレス緩和の場」としての家族保健機能の両面から, さらに自分物語を構築するという上での関係性の観点から, 現代家族の意義と意味を検討した。具体的データを参照しつつこの検討を通じて, なぜ夫婦/パートナー, 家族関係が人々の間で「一番大切なもの」と意識されるのかを実利的ならびに意味的観点から論じた。私事化, 高齢社会という社会的背景を考慮すると, 夫婦/パートナー, 家族がコンボイとしてなおしばらくは中核を占めることが考察された。
著者
石原 邦雄
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.43-47, 2010-04-30 (Released:2011-05-10)
参考文献数
5

シンポジウムの際のコメンテーターの立場から,当日の報告により得られた示唆と家族研究において考えるべきポイントとして,以下の2点を指摘した。第1に,統計的にも増加しつつある独身男性高齢者に典型的に見られるコミュニケーション能力の不足と,そこから生じる社会的孤立などの問題に注意を向ける必要があること,そのためにも,従来日本の家族研究では根付いていなかった,コミュニケーション論や相互作用論による研究が求められる。第2には,葬送の「個人化」に関連して,それが市場化・商品化と連動することによるネガティブな側面に着目することの重要性を再確認するとともに,より基礎的には,家族について何らかの制度論的,文化論的なアプローチによる研究が改めて求められているのではないか。
著者
ジェームズ レイモ
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_60-2_70, 2008-10-31 (Released:2009-11-20)
参考文献数
107
被引用文献数
1
著者
尹 〓喜
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.7-17, 2007-04-30 (Released:2009-08-04)
参考文献数
23

近年の社会では, 子世代の高学歴化, 就職時期の遅れ, 結婚年齢の上昇などによって親が成人子の世話をする時期が長くなり, 若者に対する自立が話題になっている。そこで, 本稿では, 成人未婚者の自立に影響を与える要因を探り, 経済的・情緒的・生活的自立間の関連性について男女別に分けて分析することを目的とする。韓国ソウルと京畿道に居住する20~39歳の未婚男女を対象に質問紙調査をした結果, 以下の知見が導かれた。第1に, 経済的自立にもっとも影響を与える変数は, 男女ともに親との別居であった。情緒的自立の場合, 男性では父親との親密度, 女性では経済面に対する父親の態度であった。生活的自立度の場合, 男女ともに親との別居であった。第2に, 各自立間の関連性において, 男性では, 経済的自立と情緒的自立, 経済的自立と生活的自立には正の相関が, 女性では, 経済的自立, 情緒的自立, 生活的自立すべての間に正の相関が見られた。