著者
太田 健吾 島 康洋 渡辺 研一
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.225-231, 2010

小型種苗に有効な外部標識を開発することを目的に,アンカー部分とチューブの長さを短く改良したスパゲティーアンカータグ標識を作製した。平均全長50~80 mm サイズのオニオコゼに装着して,生残率,成長および標識の残存状況から有効性と識別可能期間を検討した。その結果,平均全長50 mm サイズの小型の種苗でも標識の脱落は認められず,標識残存率は100%を示した。また,同サイズでは装着作業のみに起因する死亡も認められなかった。平均全長60 mm サイズで装着した標識は少なくとも装着後2年間は脱落せず,外部からの識別が可能であることが判った。しかし,20%の個体では装着500日以降,標識の一部が魚体中に埋没し,改善が必要と考えられた。
著者
橘川 宗彦 大場 基夫 廣瀬 一美 廣瀬 慶二
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.401-405, 2003-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

1) 芦ノ湖産ワカサギ親魚の水槽内自然産卵法による採卵の量産化試験をおこなった。2) 2001年流水式1.5t FRP水槽3面で, 小型定置網4力統により採捕された親魚を一昼夜収容し, 翌日水槽内に自然産卵され吸水を完了した状態の受精卵を効率的に採取した。3) 2002年3月5日から4月11日にかけて37日間操業した中で採捕親魚3, 427kgより, 水槽内自然産卵法で受精卵71, 018万粒が得られた。4) この方法により得られた受精卵の発眼率は86.7%から96.1%と, 事業規模の採卵としては極めて高い値を示した。5) 今まで行われてきた人工搾出法と比較し, 採卵数量の増加と発眼率の上昇が認められた他, 労働力の大幅な省力化が図られた。6) 自然採卵後の生残親魚を再放流することにより再資源化も可能となる。
著者
平本 義春
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.14-20, 1976

キスを用いて種苗生産の基礎である親魚養成の可否を検討し, さらに進んで種苗生産技術の方式を確立することを目的として1974年10月17日から1975年8月22日まで地元 (鳥取県大谷) で採捕したキスを室内水槽で飼育し, 水槽内での自然産卵, 産卵数およびふ化率等について若干の知見を得た。<br>1) 地曳網で採捕したキスをマアジ, ホウボウ, イシダイ等と混養して飼育することにより漁獲後10日前後で餌付けすることができた。餌料としては, マアジ, カタクチイワシ, ホウボウ, ハタハタ, シイラ, ヒラメ, ヒレグロ, アカガレイ, エビ類およびアサリを使用した。<br>2) 産卵盛期以外で水温が8.0-29.0℃の範囲内では外的刺激等がなければ日間摂餌量は水温が高い程多くなった。また水温が8.0℃以下では摂餌を全く行なわなかった。親魚の体重に対する日間摂餌率は, 2月下旬 (水温9.0-10.9℃) で1.53%, 4月上旬 (水温13.0-13.9℃) で4.58%, 8月下旬 (水温27.5-28.0℃) は6.50%であった。<br>3) 産卵期は6月中旬 (水温21.6℃)-9月上旬であり, その盛期は6月下旬-7月中旬であって, この30日間に総産卵数の2/3以上の卵が産出された。<br>4) 雌親魚8尾 (全長18.1-21.8cm; 雄7尾) による総産卵数は1,582,450粒であった。またこの8尾の1日の最多産卵数は80,000粒であった。<br>5) 産卵数の日変化から推すとキスは明らかに多回産卵魚であって, 産卵は1日1回, 2時間以内で終る。産卵時刻は日没前後であるが, 産卵期が進むにつれてその時刻は若干遅れる傾向が認められた。<br>6) ふ化率は22.5-90.9%の範囲にあり, 産卵期の前半において比較的高い値を示した。またふ化率は1日の産卵数が多い時に高い傾向を示した。<br>7) キスの親魚養成は室内の水槽で可能であり, 自然産卵によって採卵した卵はふ化率も高く種苗生産に充分使用できると考えられた。
著者
淀 太我 井口 恵一朗
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.31-34, 2003-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
9
被引用文献数
1 6

長野県大町市を流れる農具川で外来魚コクチバスの仔稚魚9群が確認され, この中の1群で保護親魚が同時に観察された。これは本邦の流水域における繁殖の初記録である。各群れの平均体長は9.8~22.8mm (屈曲期仔魚~稚魚) で, 各仔稚魚群の出現箇所内において, 仔稚魚の出現した観測点の流速は最大3.2~61.1cm/sを示した。仔稚魚は成長にともなってより速い流心部に進出すると考えられ, 一方産卵には緩流部が必要と考えられた。また, 農具川への侵入源と考えられる木崎湖と比較して農具川ではオオクチバスよりもコクチバスの比率が有意に高く, 本種の流水域への適応性の高さが明らかとなった。これらは, オオクチバスが定着しなかった本邦の河川中・上流域においてもコクチバスが定着して生物群集に悪影響を与える危険性を改めて強く示唆するものである。
著者
桑田 知宣 徳原 哲也
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.483-487, 2011-09-20 (Released:2012-10-08)
参考文献数
23

長良川の1支流において22床のサツキマスの産卵床を調査し,その特性(形成位置,大きさ,水深,流速,使用されていた基質の粒径サイズ)を調査した。産卵床の多くは淵尻に形成されていた。産卵床の長径は129.5±44.9 cm(平均±標準偏差,以下同様),短径は85.0±28.9 cmであった。形成された産卵床の平均水深は61.5±16.1 cm。表層の平均流速は42.0±15.5 cm/sec,底層の平均流速は25.9±10.7 cm/sec であった。産卵床の基質は16-63 mm の礫の割合が高かった。観察された産卵床の特性は過去の研究で報告されている河川残留型も含むサクラマス類の産卵床の特性と類似していることが明らかとなった。長良川におけるサツキマスの自然個体群維持のためにはこのような環境を産卵場所として保全維持していくことが重要であると考えられる。
著者
堀 俊明
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.88-97, 1981-09-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10

福井県高浜町内浦湾奥にある関西電力高浜原子力発電所からの温排水が, 養殖ワカメの生長と成熟にどのように影響するかについて, 試験・調査を行った。その結果は次のように要約できる。1) 稼動時における同一水深のSt.1およびSt.2とSt.3との平均水温との差は, 水深0.5m層では, St.1とSt.3では3~4℃, St.2とSt.3では1.5~3℃, 2.0, 3.0m層ではSt.1およびSt.2とSt.3とでは1~2℃であった。2) 稼動時における水温の日較差は, St.1, 2で3~4℃, St.3で2~3℃に達する日がみられた。3) 着生密度は, 水深1.0m以浅ではSt.1, 2, 3の順で, 1.0~3.5m層ではSt.2, 1, 3の順で低かった。4) 葉体の生長は, 水深2.0m以浅ではSt.1, 2, 3の順で悪く, それを越えるとSt.1とSt.2とに差がなくSt.3に比べてともに悪かった。5) 葉体の成熟は, 水深2.0m以浅ではSt.1, 2, 3の順で良く, それ以深ではSt.1とSt.2とに差がなくSt.3に比べてともに良かった。6) 佐渡, 五島, および有明海でのワカメ養殖場と今回の温排水試験域との水温の比較から, 調査水域の平均水温は養殖適水温とみなされる。7) 温排水によってワカメの着生密度, 生長, および成熟が受ける影響は, 平均水温の上昇だけではなく, 温度ショックによるものも考えられる。8) 養殖ワカメは, 温排水の生物に与える影響を調べる良い指標生物といえる。終りに, 今回の調査期間中終始御指導いただいた福井県水産試験場主任研究員安田徹博士に深謝の意を表します。また, 調査に協力していただいた同場前技師宮内幾雄氏と同場技師小松久雄氏に感謝します。
著者
田中 彌太郎
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.165-170, 1980-12-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10

ホッキガイ稚貝の耐高温性に関する実験観察の結果から, 本州中部暖海砂浜域に放流されたホッキガイ稚貝生存の可能性が示唆された。福島県産母貝から採卵し, 水温20℃下で人工飼育して得た平均殻長1~3mmのホッキガイ稚貝は水温25℃の10l水槽内で正常に生活し, 生長する。生長度は22.5℃において最も大であった。また, 夏季屋外流水タンクに収容された3mmサイズ稚貝の3週後における生残率は88%であった。一定条件下で得られた材料およびその温度条件の範囲内で, ホッキガイ種苗の現地試験が望まれる。

1 0 0 0 OA 6.ミネラル

著者
能勢 健嗣
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4-5, pp.289-300, 1972-12-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14

高等動物では通常湿重量中約3.5%, 固形物中では約10%の無機成分が含まれている。Ca, K, Na, Mg, P, S, Clの7種は主要無機元素として要求され, これらは体中総無機元素の60~80%を占めるといわれる。このほか多数の元素が微量ではあるが体中に存在しており, FeあるいはMn以下の量の少ない元素は微量元素と呼ばれている。人間および家畜, 家禽類については無機質の体内における分布, 吸取および排泄, 生理作用あるいは所要量についてかなりよく調べられているが, 魚類については従来から主として透滲圧調整の観点から研究されており, 栄養要求の側からの研究はきわめて少い。魚は水中に生育するため, 環境水と体液の滲透圧の差により, 淡水魚では常に水の浸入と塩類の喪失に, 海水魚では逆に水の喪失と塩類の浸入に曝され, つねに滲透圧の調整を行なわなければならず, その結果, 魚の無機塩の代謝は一般の陸上動物には見らない側面をもっており, 魚の無機塩に対する栄養要求の研究を困難なものにしている。今後, 魚の無機代謝の研究を発展させるためには, 滲透圧および栄養代謝の両面からの研究を並行して行なわなければならない。ここでは魚類の無機塩の経口的要求を中心に述べてみたい。
著者
高木 基裕 木村 真 坂口 秀雄
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.131-140, 2022 (Released:2023-06-20)
参考文献数
17

マダコを陸上水槽で交接・産卵・孵化させ,親子鑑定により父性を推定し,繁殖生態を明らかにした。各試験において同一の水槽に雌雄を投入してから交接開始までは14~930秒,雌個体の産卵までは8~140日間,産卵開始から仔ダコのふ化が始まるまでは23~68日間,ふ化期間は6~24日間とそれぞれ期間の長さに差がみられた。雌雄の交接時間は283~6,277秒,雄のアーチ・ポンプの回数は5~25回と個体によって差がみられた。親子鑑定により,マダコにおける複数父性の存在が確認される一方,ふ化仔ダコに占める各父性の割合には差異が確認された。また,今回用いた雌の多くは自然海域ですでに複数の雄と交接し,精子を蓄えていた。各ふ化日ごとの仔ダコの父性の構成割合には大きな差異が見られなかったことから,雌と交接した各雄の精子は交接から産卵までに雌の体内でよく混ざっている可能性が考えられた。
著者
柴田 玲奈 宇都 康行 石橋 賢一
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.313-318, 2019-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
33

マコガレイの稚魚,未成魚,成魚の分光視感度特性を調べるために,暗順応した供試魚の眼球から網膜電図(ERG)を記録した。得られた ERG のデータを Stavenga et al.(1993)のテンプレートに当てはめ分光応答曲線を求めた。稚魚,未成魚,成魚における最大応答波長はそれぞれ531 nm,524 nm,515 nm であり,すべてのステージで緑に感度が高いことが示された。マコガレイ稚魚は浅瀬に生息し,成長とともに生息水深が深くなる。分光感度ピーク波長が成長とともに短波長側にシフトすることは,生息水深の光環境への適応と推測された。
著者
仲野 大地 児玉 晃治 村田 裕子
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.227-230, 2021 (Released:2022-09-20)
参考文献数
13

Bitter tasting gonads in the sea urchin Hemicentrotus pulcherrimus occurred in Fukui Prefecture during the fishing season in 2019. Bitterness was found only in female gonads, and pulcherrimine, a bitter tasting amino acid specific to female gonads, was detected in specimens. Relict ova was also observed in the ovary by tissue observation. We concluded presence of pulcherrimine in ovaries is the cause of bitterness in this study. A delayed spawning is likely to be associated with the occurrence of pulcherrimine.
著者
中村 一雄
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.16-26, 1958

1) オイカワ卵の発育と水温との関係について実験をおこなつた。<br>2) オイカワ卵のふ化は15.3℃と18.9℃の間から28.7℃と31.7℃の間が適温で, その範囲は相当広く, なかんずく18.9-27.4℃が最適温度である。<br>3) オイカワ卵のふ化可能の低温の限界は11.0-15.3℃の間であり, 高温の限界は33.5℃前後である。<br>4) オイカワ卵のふ化適温範囲内において水温 (θ) とふ化日数 (T) との関係はTe<sup><i>a</i>θ</sup>=Kの公式に適合し, これより<i>a</i>loge=0.5103, <i>a</i>=0.1175, K=1,705, Q<sub>10</sub>=3.24の値を得た。<br>5) オイカワ卵のふ化日数と水温との関係は次のごとくである。 平均水温 (℃) 11.0 15.3 18.9 21.4 23.1 25.8 27.4 28.7 31.7 33.3平均ふ化日数 - 8.56 5.52 4.10 3.40 2.19 2.16 1.89 1.73 1.57<br>6) オイカワ卵のふ化日数と水温の相乗積はふ化適温範囲内においては水温の上昇するにしたがい減少する傾向がある。<br>7) 千曲川におけるオイカワの産卵期の水温とオイカワのふ化適温とは一致する。<br>8) オイカワのふ化稚魚の浮上水温は31.8-20.1℃までは適温範囲内にあつたが, 20℃以下は明らかになし得なかつた。 また33.6℃は適温外であつた。<br>9) オイカワのふ化稚魚の浮上日数と水温との関係は適温範囲内においてはTe<sup><i>a</i>θ</sup>=Kなる公式が適用できて<i>a</i>loge=0.032, <i>a</i>=0.0742, K=1.472, Q<sub>10</sub>=2.12の値を得た。<br>10) オイカワのふ化稚魚の浮上日数と水温との関係は概略次のごとし。 平均水温 (℃) 20.1 22.0 25.9 27.5 28.8 31.8 33.6 平均浮上日数 6.8 6.3 4.6 4.1 3.4 2.8 2.4<br>11) オイカワのふ化稚魚の浮上日数と水温の相乗積は水温の上昇するにしたがい減少する。<br>12) オイカワのふ化適温範囲はコイ, フナ, ワカサギと同じく広く, しかもメダカとともに最も高水温に適する種類である。<br>13) オイカワは自然水域において16.7℃の低温まで繁殖する可能性があると考えられる。
著者
石井 俊雄 石田 修
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.221-226, 1970

1) カーメックスDのアオミドロに対する駆除濃度は1 ppm以下である。<br>2) 藻類<i>Dicyosphaerium</i>に対しても1 ppm以下で駆除効果がある。<br>3) コイ, ヒメダカ, ドジョウ, ウナギの稚魚に対する48時間TLmは13.2 ppm以上にあり, 養魚池の藻類駆除に適していると考えられる。
著者
山形 陽一 丹羽 誠
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.5-11, 1979-05-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
13

1) 水温25℃におけるウナギに対する亜硝酸の急性毒性と低濃度の亜硝酸溶液中でウナギを長期間飼育した場合の成長および生理状態におよぼす影響について検討した。2) A.japonicaおよびA.anguillaに対する亜硝酸態窒素の24時間TLmは, 460mg/lおよび351mg/lとなり, 0いずれの魚種も亜硝酸に対して強い抵抗性を示した。また, これら致死濃度の亜硝酸溶液中においたウナギは, 鰓および肝臓組織に変性がみられた。3) 9週間の飼育結果から, A.japonicaの成長を阻害する亜硝酸の濃度は30mg/lNO2-Nであることが判った。この濃度ではヘマトクリット値・血色素量・赤血球数が著しく低下し, 鰓組織にも変性がみられた。4) A.japonicaに対する亜硝酸の安全濃度は, 本実験条件では10mg/l NO2-Nと考えられる。
著者
塩出 雄亮 中田 和義
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.203-208, 2017-09-20 (Released:2018-09-20)
参考文献数
17

観賞魚の“楊貴妃メダカ”は,朱赤色のミナミメダカの変異体である。楊貴妃メダカの発色メカニズムを解明するため,鱗の色素胞,体内のカロテノイドの定量,カロテノイドを含む飼料による体色変化について,楊貴妃メダカとヒメダカを比較し検討した。体表の色素胞は,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに黄色素胞が主体で,黒色素胞はほとんど存在しなかった。一方,黄色素胞内の色素顆粒は楊貴妃メダカが橙赤色で,ヒメダカは淡黄色であった。アスタキサンチン,ゼアキサンチン,ルテインの濃度は楊貴妃メダカがヒメダカよりも高く,とりわけアスタキサンチンは楊貴妃メダカがヒメダカの10倍以上高かった。アスタキサンチンを添加した飼料を給餌したところ,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに頭頂部の色相値が有意に低下した。これらの結果は,楊貴妃メダカの朱赤色はカロテノイドと関連があること,カロテノイドの摂取により赤みが強くなることを示している。