著者
中村 智幸
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.265-269, 2019-09-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
15

全国の15歳から79歳の1,000人(男女各500人)を対象にしたインターネットアンケート調査により,内水面の漁業協同組合に対する国民の認知率(組合の存在が国民の何%に知られているか)と認識(組合の存在が国民にどのように思われているか)を調査した。 62.2%の人々が内水面の組合の存在を知っていた。認知率は男女ともに高齢者ほど高く,男性の方が高かった。多くの人々が組合に対して好印象を持っており,今後も組合はあったほうが良いと思っていた。組合があった方が良いおもな理由は,組合が「水産資源を管理しているから」,「川や湖の環境を保全しているから」であった。しかし,高齢の男性ほど組合はない方が良いと思っていた。組合がない方が良いおもな理由は,組合が「既得権を主張するから」,「川や湖を独占しているから」,「自分たちだけ良ければ良いと考えているから」であった。
著者
鈴木 亮 山口 元吉
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3-4, pp.135-139, 1975-03-25 (Released:2010-09-07)
参考文献数
13

1) ドジョウの雌親に, ゴナトロピンを種々の量注射して後, 種々の水温に保ち, 放卵魚率, 放卵が起こるまでに要する時間, 卵の受精率やふ化率を調査した。2) 注射後親魚を収容する際の水温が高い程, 放卵魚率の高い傾向がみられ, 25℃以上では, 体重1g当り5.0I.U.付近が適性注射量であるものと思われる。3) 注射後親魚を収容する際の水温と, 放卵が起こるまでに要する時間との間には相関がみられ, しかも20℃以下では, 個体による時間のバラツキがきわめて大きく, 25℃以上では, そのバラツキが小さかった。4) 20℃と25℃に保った親魚から得た卵は, 15℃と30℃に保った親魚からの卵よりも高い受精率やふ化率を示した。5) 以上の結果から, ドジョウの人工採卵に際して, ホルモン注射後水温を25℃前後に保つことが, もっとも得策であるように思われる。
著者
山本 剛史 松成 宏之 奥 宏海 村下 幸司 吉永 葉月 古板 博文
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.367-375, 2019

<p>ヒスチジン(His)含量の低いイワシ魚粉と His 含量の高いアジ魚粉を50%配合した飼料(FM1,FM2),FM2 の含量に合わせて FM1 に His を添加した飼料(FM1H),イワシ魚粉の配合を15%に削減して大豆タンパク質とコーングルテンに置き換えた低魚粉飼料(LFM)および FM1 と FM2 の含量に合わせて LFM に His を添加した飼料(LFMH1,LFMH2)を平均体重4.7 g のブリに45日間給餌した。最も成長の良かった FM2 区に比べ,FM1 区では若干劣り,低魚粉飼料の3 区の成長はいずれも FM1 より劣った。一方,His を FM2 のレベルに添加した FM1 と LFMH2 を与えたブリでは摂餌が増加し,成長が改善する傾向がみられた。肝臓の遊離アミノ酸組成には飼料の影響はほとんどなかったものの,普通筋では飼料中の含量を反映して His が蓄積する一方で,タウリンやほかのアミノ酸が減少した。以上の結果から,ブリ稚魚において飼料への His の添加効果は限定的であり,特に低魚粉飼料の栄養価を根本的に改善するものではないことが示された。</p>
著者
鷹﨑 和義 和田 敏裕 森下 大悟 佐藤 利幸 佐久間 徹 鈴木 俊二 川田 暁
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.41-51, 2018 (Released:2019-03-20)
参考文献数
30

2015年5月~2016年11月に,福島県内の阿武隈川水系の13定点においてさし網や延縄などを用いた調査を行い,716個体(体長9.9~65.0 cm)のチャネルキャットフィッシュが採集された。本種は阿武隈川の本流で採集され,特に発電用ダム(信夫ダム,蓬莱ダム)の貯水域やその下流域で多く採集された。信夫ダムでは,2008年に比べて CPUE が著しく増加していることや,GSI の高い成熟個体や未成熟の小型個体が多く採集されたことから,近年,ダム周辺の水域を中心に,再生産により本種の個体数が急激に増大している可能性が考えられた。雌の GSI の季節変化より,本水系における産卵期は5~6月ごろと推定された。信夫ダムにおいて,さし網および延縄により採集された魚類のうち,本種が占める割合は非常に高く(各64.2%および100%),本水系における適切な駆除手法の確立が急務であると考えられた。
著者
古川 元希 澤田 英樹 三田村 啓理 益田 玲爾 荒井 修亮 山下 洋
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.179-182, 2019-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
25

Japanese common sea cucumber Apostichopus japonicus is one of the most important fisheries species of the world, while the natural resources are declining recently. We examined the retention rate of single spaghetti tags applied to A. japonicus to use future mark-recapture studies for estimating their stocks and/or their ethology. Eight of 10 individuals retained the tags for 76 days under 12°C. The retention rate is high compared to the other studies using spaghetti tags on Aspidochirotida, and that is practical levels to utilize for ecological and/or conservation studies in the active and reproductive season of A. japonicus.
著者
吉田 俊一
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.27-35, 1972-04-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
11

以上の諸実験から飼育上の条件を要約すると1.飼育水はできるだけ高塩分のものを用いるのがよい。2.飼料はウナギ用のようににおいの強い, 粉末もしくは粒状の魚粉を主体としたものがよい。3.投餌は少量づつ, 回数多く与え, 投餌後しばらくは止水, そのほかは極少量の流水とする。4.全期間を通じて干出による支障はないが, 酸素補給面から通気は不可欠である。
著者
中辻 伸嘉 秋田 もなみ 林 芳弘 野村 晋平 足立 亨介 森岡 克司
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.309-315, 2018 (Released:2019-12-20)
参考文献数
26

本研究は加太産天然マダイ(RK)及び養殖マダイ(RC)の物性(破断強度)を比較し,生化学及び組織学的アプローチから物性の決定要因を検討した。RK 及び RC の肉の破断強度はそれぞれ55.6及び34.9 gw であり,RK で有意に高い値を示した。従来から知られている破断強度と関係性がある筋肉中のコラーゲン含量は RK で高い傾向があったが,有意差はなかった。一方,組織学的観察から RK 及び RC の筋繊維面積はそれぞれ6299.5及び9524.5 µm2 であり,RK の筋繊維面積は RC より有意に小さく,筋繊維の結合組織である筋内膜の網目構造が密であることが観察された。以上のことより,RK の物性は RC より硬く,これには筋肉中の結合組織の構造が主に関与することが示唆された。
著者
甲本 亮太 工藤 裕紀 髙津 哲也
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.615-630, 2011-12-20

秋田県沿岸におけるハタハタ仔稚魚の水深別分布と摂餌生態を調べるため、2009年2-5月に仔稚魚の分布密度と食物組成および餌サイズ組成を調査した。仔稚魚は水温7.3-12.2℃の底層に分布し、水深0.5-5mの産卵場から個体発生的に水深60m以深に移動した。また稚魚は、水温13.2℃以上の底層には分布しなかった。ハタハタの孵化仔魚は脊索長が約12mmあり、他の海産魚類の仔魚に比べて口器および形態が発達した段階で孵化していた。体長12-30mmの仔魚の餌は浮遊性あるいは底生性のカイアシ類コペポダイトが高い割合を占め、40mm以上ではアミ類が優占した。コブヒゲハマアミはハタハタ稚魚の成育場に同期的に出現し、他の浮遊性あるいは底生性の甲殻類に比べて大型であることから、稚魚の重要な餌生物の一つであると考えられた。
著者
小川 泰樹 角田 俊平
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.151-156, 1988-09-10 (Released:2010-03-09)
参考文献数
43

1986年5月6日から6月29日までの間, 研究室内でスジエビ (Palaemon paucidens) の雌雄の交尾前の行動と交尾行動, および雌の放卵行動を観察した。1) 本種の交尾行動は夕刻4時頃から夜9時頃までの間に行われることが多く, 交尾の約2時間前頃から雌雄の動きが活発になり, 雄が雌を追尾する。しかし雌雄が特定のペアを形成することはない。2) 雌が一時的に水槽底面に静止した際には, 雄が近付き, 腹部と尾部を底面からやや上方に持ち上げて全腹肢を激しく前後に振動させたり, 腹肢を“く”の字状に曲げたりする。3) 交尾が行われる直前に雌は脱皮をするが, 脱皮は1, 2秒間で終わる。この脱皮の間や, 脱皮中から脱皮直後までの間に雄が雌の腹部背面に乗るマウンティングが観察される。しかしこのマウンティングをしない雄もいるので, 交尾にとって雄のマウンティングは必ずしも必要条件ではない。4) 交尾行動には, 雌の体に対して水平 (十字状) に雄が巻きつく姿勢と, 雌雄が平行に並ぶようにして腹面を相接する姿勢の2通りがあり, 両者とも一瞬のうちに終わる。5) 放卵行動は夜7時または8時頃から始まり, 9時から11時頃まで断続的に行われる。この行動は雌が腹部を水槽底面に対して40~60°の角度で上方に持ち上げ, 全腹肢を数秒間激しく前後に振動させるもので, 数分から約10分間隔で数十回繰り返される。
著者
大貫 貴清 田中 彰 鈴木 伸洋 秋山 信彦
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.57-66, 2008-03-20 (Released:2012-09-04)
参考文献数
30

静岡県におけるスジエビの生殖活動を調べるために2002年12月から2004年10月にかけて,静岡県静岡市三保半島の水路におけるスジエビの雌の生殖周期を調べた。また,この結果を基に本種の成熟と水温および日長時間との関係を飼育実験により検討した。生殖腺の組織学的観察により,卵巣卵の発達過程を6期に分類した。さらに卵巣卵の発達過程や卵巣の内部構造,生鮮時の色調やGSIから,増殖相,卵黄蓄積相,成熟相,排卵相の4相の成熟段階に分類した。静岡県三保半島におけるスジエビの生殖周期は,産卵開始1~2カ月前である11~1月に雌の卵巣卵に卵黄蓄積がおこり,1~6月のおよそ4カ月間に産卵を数回行うことが明らかとなった。さらに小型個体の出現や大型個体の減少から,本種は産卵期の終了後に多くの個体が死亡するが一部は生残することが示唆された。また,本種の雌の生殖腺の成熟には秋分点以降の降温,短日化が関与しており,水温17~20℃,日長時間9~12時間の範囲内に雌の成熟を開始する要因があると考えられた。また,短日条件においても高水温では成熟に至らないことや,長日条件でも低水温で卵黄蓄積が確認されたことから,本種の雌の成熟は日長時間よりも水温に強く依存していることが示唆された。
著者
網田 健次郎 岡田 稔
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.62-64, 1973-09-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
2

サケ稚魚の河川内減耗要因である食害魚ウキゴリについて生態的知見を得た。1) ウキゴリは水生昆虫・シロウオ・サケ稚魚などの動物性のものを多く捕食している。2) ウキゴリは夜間に多く捕獲され, 昼間は殆んど捕獲されない。また夜間にサケ稚魚を捕食している。3) ウキゴリは川の川岸部よりは中心部でその大部分が捕獲された。
著者
佐々木 剛 猿渡 敏郎 渡邊 精一
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.141-150, 2003

遡河回遊型ワカサギの産卵生態を調べるために, 1995年から1998年の産卵期に閉伊川において調査を実施し, 河川の水温, 水量等の環境要因, 体サイズ, 性比に関して考察した。調査の結果, 水温が約10度を越えると遡上が開始し, 遡上のピークは常に雪融けによる濁り水が治まってから始まった。その後, 半月周期的にピークが確認された。4年間にわたり, 性比は雄に偏っているが, 雌が多くなるのは新月の前後であった。体サイズは年変動し奇数年は大きく, 偶数年は小さい。これに対し, 遡上期間は奇数年が短く, 偶数年は長い。また, 体サイズが大きい年は雌の体サイズは雄より大きいが, 体サイズが小さい年は雄雌の差は認められなかった。
著者
塩出 雄亮 中田 和義
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.203-208, 2017

観賞魚の"楊貴妃メダカ"は,朱赤色のミナミメダカの変異体である。楊貴妃メダカの発色メカニズムを解明するため,鱗の色素胞,体内のカロテノイドの定量,カロテノイドを含む飼料による体色変化について,楊貴妃メダカとヒメダカを比較し検討した。体表の色素胞は,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに黄色素胞が主体で,黒色素胞はほとんど存在しなかった。一方,黄色素胞内の色素顆粒は楊貴妃メダカが橙赤色で,ヒメダカは淡黄色であった。アスタキサンチン,ゼアキサンチン,ルテインの濃度は楊貴妃メダカがヒメダカよりも高く,とりわけアスタキサンチンは楊貴妃メダカがヒメダカの10倍以上高かった。アスタキサンチンを添加した飼料を給餌したところ,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに頭頂部の色相値が有意に低下した。これらの結果は,楊貴妃メダカの朱赤色はカロテノイドと関連があること,カロテノイドの摂取により赤みが強くなることを示している。
著者
山本 喜一郎 大森 正明 石井 清士 森岡 孝朗
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.7-10, 1972-04-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
6

青森県三戸町泉山地先の馬淵川で採集した下りウナギにサケまたはカラフトマス下垂体を投与し十分成熟させた10個体についてその孕卵数を数えた。その結果, 体長71.8cm卵巣採集時の体重860g, 成熟度指数54.6%のもので1, 166, 070粒, 体長85.5cm体重2, 020g, 成熟度指数66.3%のもので3, 023, 040粒と算定され, 自余の個体の孕卵数はこの両者の間の数値を示した。
著者
秋山 真一 滝井 健二 眞岡 孝至 中川 雅雄 北野 尚男 熊井 英水
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.47-52, 2001

18種の酵母乾燥粉末に対するマダイ稚魚(平均体重:6.4-10g)の嗜好性を魚粉のそれと比較した。<I>E.lindneri, R.yubya</I>および<I>G.ressii</I>にそれぞれ魚粉の1.31, 1.20および1.14倍の高い摂餌活性が認められたが,他の酵母には同等か低い活性しか得られなかった。嗜好性では<I>E.lindneyi</I>が優れていたが,嗜好性と粗タンパク質含量がともに高い<I>R.rubra</I>が酵母タンパク(YP)には最適であると判断した。そこで,飼料魚粉の0,25および50%をYPに代替した飼料をマダイ稚魚(5g)に給与したところ,YPの配合率が増加するに伴って,日間摂餌率は上昇した,逆に増重率,飼料効率およびタンパク効率は低下したが,劣悪ではなかった。以上の結果から,YPはマダイの嗜好性に優れ,マダイ用実用飼料のタンパク源の一部として利用できることが示唆された。
著者
村野 正昭
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.159-165, 1963-10-10 (Released:2010-03-09)
参考文献数
2

霞ガ浦より採集したイサザアミの胃内容物調査, 稚イサザによる飼育実験ならびにその観察から食性について検討を加えた。イサザアミは泥土上より餌料を得, プランクトンの捕食はまれである。泥土上において利用するものは大量のプランクトンの遺骸ならびにその分解の進行した有機残渣, およびそこに繁殖する輪虫類, 貧毛類, 繊毛虫類, 緑藻類, 珪藻類などである。