著者
橋口 昌治
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.164-178, 2014

企業社会が揺らぐなか, 若年層はさまざまな困難を抱えつつも, それを社会的・構造的な問題として捉え, 集合的に異議申し立てを行うことが難しくなっている. なぜなら, 個人化が進んだ社会において人々が「集まる」ことすら難しいからである. また先行研究では, 共同性が政治的目的性を「あきらめ」させるという主張がある. その一方で, 「若者の労働運動」に参加している若者もいる. 本稿では, 「若者の労働運動」における抵抗のあり様を明らかにした. その際, エージェンシー性の高いと思われる組合員にインタビューを行った. エージェンシー性の高い人物ほど, 現在の地位が構造的要因に規定されたものなのか, 個人の選択や努力の結果なのかが判別しがたいという, 揺らぐ労働社会における矛盾が現れやすいと考えられるからである.<br>その結果, まず, ユニオンが労働相談にのることで, インタビュー対象者が個人的な問題として捉えていたものを社会的・集団的に解決すべき問題へと転換させていたことがわかった. 次に, 「あきらめ」, つまり上昇アスピレーションの冷却や「私」を受け入れていくことを通じて, 「政治的目的性」は加熱されていたことがわかった. 先行研究においては, 政治的目的性や自分探し, 上昇アスピレーションが加熱か冷却かの二項対立で捉えられていたが, 2人の事例からは, 「あきらめ」の相互関係は二項対立では捉えきれず, また抵抗につながりうることが明らかになった.
著者
山田 信行
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.179-193, 2014

主として1990年代後半以降, とりわけ先進社会においては, グローバル化のもとで労働運動の再活性化が指摘されるようになり, その1つのタイプとして社会運動ユニオニズムが注目を集めている. 本稿においては, 社会運動ユニオニズムの特徴を確認したうえで, 「コーポレート・キャンペーン」にみられるように, このタイプの労働運動が私的な労使関係に「公共性」をもたせることをその戦術として採用していることに注目する. この労働運動が志向する社会制度の形成・改変にあたって, あらゆる社会勢力に利害関心をインプットする回路を開いている資本主義国家の構造的特質を利用して, 「フォーラム型」労働運動のかたちをとって, 広範かつ継続的な組織連携を戦略として採用していることを強調したい. そのうえで, 資本主義社会における国家との関連において, 「公共圏」概念を再検討し, 社会運動ユニオニズムが, 労働運動としてふたたび「公共圏」 (「労働者的公共圏」) を形成する性格を回復していることを明らかにする.
著者
小井土 彰宏
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.194-209, 2014

合衆国に現在約1,150万人滞在するといわれる非正規移民の社会運動は, 2006年以来急激に台頭し, その後も持続的な潮流となってきた. 一斉検挙や強制送還に反対し, 正規化を求める運動は, 一見すると国民国家の枠内での権利獲得の運動とも思える. だが, この運動は移民と安全保障に関するアメリカ国家の枠組みの根本的再編成というかたちをとって, 新たなグローバリズムが社会に浸透したことへの対抗運動という性格をもっている. 他方, この運動は, 市場原理志向の再編成の結果生み出される経済・社会的な排除の論理に対抗して, さまざまな水準のローカルな規制やトランスナショナルな交渉によるグローバル化の諸影響への抵抗の戦略という性格も合わせもってきた. 本稿では, 移民管理レジームとその作動様式をまず概観し, この新たな統治性の様式の出現の衝撃がどのような運動の行動論理と戦略を生み出すかを分析していく. その一方, グローバルな市場原理の地域社会への浸透に対抗する移民の運動の組織や戦略の特質について, 類型的に整理・分析することで検討していく. 最後に, 2009~10年の現地調査に基づくロサンゼルス郡での2つの対照的な一斉検挙を分析することで, このグローバルな移民統治様式と市場の論理が相互作用しながら移民コミュニティにどのような影響を与えるかを例証していく.
著者
加藤 博 岩崎 えり奈
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.255-269, 2014

エジプトでは, 2011年の「1月25日革命」 (エジプト革命) 以来, 政局は混迷を深め, 逆転に次ぐ逆転, 逆説的展開が繰り返されている. その中で浮き上がってきたのは, 政治の正当性をめぐる街頭での抗議行動 (街頭政治) と選挙での投票行動 (選挙政治) との対立である. 本稿は, この対立に注目し, それぞれの政治行動の担い手を分析することによって, エジプト革命の行方に見通しをつけるために執筆された.<br>依拠するデータは, 2008年から12年までの革命前後において著者たちが独自に実施した4回の意識調査, とりわけ12年における第4回目の意識調査のデータである. このデータを使って, 街頭政治と選挙政治の担い手を分析した結果, 革命後の「民主化」過程で実施された一連の選挙の中で都市住民を中心に「新たな選挙参加者」が形成されたこと, そして, 彼らの投票行動における流動的な性格がイスラム政党の躍進と革命の変質をもたらしたことが明らかとなった.<br>また, この「新たな選挙参加者」の流動的な性格は, 一時的貧困を特徴とするエジプトにおける貧困の構造的な脆弱性に根差していた. つまり, エジプトでは慢性的な貧困層と一時的な貧困層が併存するが, 前者は農村部, とりわけ上エジプト地方に滞留し, 後者は都市部にみられる. そこから, 同じく経済のグローバル化に直面しながらも, 地方住民が投票行動においてブレなかったのに対して, 都市住民はその時々の情勢でブレやすい政治行動パターンを取ることになった.
著者
内田 隆三
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.2-19, 1982-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
43

D・ベル、A・トゥレーヌ、J・ハバーマスらの世代は、テクノロジズムとの相関における社会統合の危機や疎外、コンフリクトの視角から「産業化」の問題を論じた。人間の主体性やシステムの合理性という基準からテクノロジーの発展が批判的に評価されたのである。だが、産業発展が帰結する高度大衆消費社会は、脱工業化社会論や正統化の危機論が依拠する基準や言説の場そのものを変容させつつある。W・W・ロストウは、産業の高度化が一層前進し、実質所得自体の相対的限界効用の逓減が大衆的基盤で起こりはじめたらどうなるのであろうか、と語っていた。「産業化」が提起する逆説的で本質的な問題は、「産業化」がそれ自身同一的な実体ではなくて、それを押し進めた生産=効用の論理やそれに連接した諸エートスとは、異質の論理に陥入していくトポロジカルな変容にある。相対的に溶解していく効用の空間とは異質のトポロジーを「産業化」が分節するのだとすれば、効用という曖昧な概念を軸にした「産業化」の理解や批判はもはや妥当的ではない。既に、J・ボードリヤールは効用の論理の外部に、「産業化」の帰結としての高度大衆消費社会の記号論的解読を試みている。本稿は、ボードリヤールの分析を踏まえつつ、その限界を超えるべく、高度大衆消費社会の経験と産業システムの新たな相関項(レファレント) (ホモ・コンスマンス) の再発見を行ない、「産業化」の現在を消費的世界において検討するものである。
著者
渡辺 勉 佐藤 嘉倫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.197-215, 1999-09-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
24
被引用文献数
3

戦後日本経済の飛躍的な発展は, 人々の生活全般に変化をもたらしてきた。その中でも職歴や労働市場に対しては大きな影響を与えてきており, 時代の変化を捉えずして, 職歴は捉えることができない。本稿では, 戦後の日本経済と照らしあわせながら, 職歴の変化によって戦後の労働市場がどのように変化してきたのかを捉えていく。分析から, 職業の移動パターンは年齢によって最も大きく規定されているが, 時代の変化の影響としても内部労働市場としての終身雇用制と, 外部労働市場としての二重構造や産業構造によって規定されていることがわかる。特に二重労働市場が戦後強化されている傾向が見て取れる。
著者
安川 一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.57-72, 2009-06-30
被引用文献数
1

これは,視的経験を社会学するための視座設計の試作品である.わたしたちの見る営みは互いにどう違うのだろう.現代社会・文化の様々な領域で視覚の優位が言われてきた.社会学的思考も,見ることはすなわち行為であり制度である,そう述べてきた.けれども,具体的な視的経験の豊かなありかたが直視されることはあまりなかった.視的経験の実際を探ろうと思う.つまり,生理的機能としての視覚でも社会・文化・歴史的抽象としての視覚性でもない,雑多に繰り返される日々の諸経験の視覚的位相の探求である.この観点から私は,社会心理学的自己概念研究法である自叙的写真法に準じて自叙的イメージ研究を試みた.被験者に「わたしが見るわたし」をテーマにした写真撮影を求め,撮影行為と自叙的イメージとで視的経験を自己言及的に活性化して,その様子を観察しようというフィールド実験である.総じて,生成された自叙的イメージの多くは生活世界の"モノ語り"像(=モノによる自己表象)だった.ただし,イメージの自叙性のいかんは主題ではない.イメージ自体の分析が視的経験の解析に至るとも思えない.課題は分析よりむしろ,イメージ群をもって視的経験をいかに構成してみせるかにあると思う.私は,イメージ群の配列-再配列を繰り返しながら,イメージ陳列の仕方自体を視的経験の相同/相違の表象として試みつつ,この作業を通じて考察に筋道をつけていきたい,そう考えている.
著者
渡會 知子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.600-614, 2006-12-31

本稿では, 相互作用過程における「排除」の問題が, しばしば問題の存否そのものを争点とせざるをえない点に注目し, そのような排除問題の特質を生み出す論理的構造を, ルーマンの「包摂/排除」論を応用することによって解明する.<BR>相互作用過程における排除を分析することの困難は, 対面的な排除が, 必ずしも露骨な加害行為や言語的暴力を伴うわけではないということにある.すなわち, 実証主義的に観察可能な行為の事実性にのみ基づくならば, 排除という経験のリアリティに迫りがたく, 他方, その経験を個人的な認識の問題に還元するなら, 排除の社会的側面を捉えにくい.<BR>本稿では, N.ルーマンによる「包摂/排除」の定義を, 「パーソン」, 「理解」, 「ダブル・コンティンジェンシー」の諸概念とともに検討していく.それによって, コミュニケーションの成立を基底で支える「意味をめぐる包摂/排除」という関係に焦点を当てる.相互作用システムをこの次元で捉えることにより, 包摂と排除が単純な二項対立図式では捉えられないこと, また, 包摂は必ずしも排除の解決を意味せず, むしろ問題は包摂の在り方を主題化することで解決が図られるべきであることを指摘したい.<BR>
著者
松本 康
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.445-447, 1989-03-31 (Released:2009-11-11)
著者
濱田 国佑
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.216-231, 2008-06-30 (Released:2010-04-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

本稿では,外国人住民が集住する地方工業都市において,日本人住民が外国人住民に対して抱いている否定的意識のあり方とその規定要因を,1999年と2005年の2回にわたって実施した地域住民調査を通じて明らかにする.まず,外国人に対する「排他的意識」の規定要因を分析したところ,1999年の段階では,回答者の居住地域における「外国人比率」が影響を与えていたのに対し,2005年段階では,「外国人比率」の効果はなくなり,それにかわって「ブルーダミー」,あるいは「個人収入」といった変数の影響がみられるようになった.これは,“Group threat theory”と呼ばれる理論を支持するものである.次に,日本人住民によって認識された「生活悪化意識」の規定要因を分析してみたところ,「教育年数」を除いて,有意な効果をもつ変数は確認できなかった.これは,幅広い住民の間で「生活悪化意識」が共有されているということを示唆している.本論文の意義としては,まず第1に,日本の地方工業都市においても“Group threat theory”を支持する知見が得られたこと,そして第2に,「生活悪化意識」と「排他的意識」とではその規定要因が異なっており,「生活悪化」という問題の「認識」と「排他的意識」の「表明」には異なるメカニズムが働いていることが示唆されたという2点を挙げることができる.
著者
阪口 祐介
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.602-609, 2013-03-31 (Released:2014-03-31)
参考文献数
20
著者
山本 泰
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.117-120, 1998-06-30 (Released:2009-10-19)
著者
上子 武次
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.113-116, 1976-02-29 (Released:2009-11-11)
被引用文献数
1 1
著者
大道 安次郎
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.116-119, 1982-09-30 (Released:2009-10-19)