著者
西阪 仰
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.58-73,122, 1992-06-30 (Released:2009-09-16)
参考文献数
18

およそ社会的場面は身体の集合としてある。ある一定の形式のもとに配列された身体の集合は、どうじにその各身体にとって有意味ななにものかとして経験される。ここにある種の捻れがあるのは、みやすい。つまり、身体たちが自分たちの集合を有意味なものとして経験できるのは、身体が一定の形式のもとに集められているからであり、身体の集合が一定の形式のもとにあるのは、身体たち自身が、自分たちの集合を有意味なものとして経験しているからである。本稿は、身体 (=その社会的場面への参与者) たちが、この捻れを承知し利用しつつその場面を組織していく様子にたいして、ビデオ分析により積極的な記述をあたえていこうとするものである。ゴッフマンやケンドンなどの議論を参照し、その不十分な点を指摘しながら、エスノメソドロジカルに方向づけられた「会話分析」の手法に拠って、身体の配置の構造をあきらかにする。
著者
江原 由美子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.51-66,111, 1979-06-30 (Released:2009-11-11)
被引用文献数
1

多元的リアリティ論は、A. Schutz以来社会学における重要な一課題となっている。だが、これまでの多元的リアリティ論においては、各リアリティ間の構造的連関や動態が論じられることは比較的少なかったように思われる。本稿では、リアリティの多元性を生むと思われる要因を三つ挙げ、その内の一つの意識状態の多様性に基く多元的リアリティの動態論を導く事を課題とする。三要因を分節したのは、これまでの多くの議論ではリアリティの多元性に関する異なった観点を同時に取り挙げてモデル構成していたので、各リアリティを系統的に抽出し得なかったのではないかと考えるからである。そして、この各リアリティを構成する為に、人間の精神発達過程 (特にピアジェとエリクソンの発達心理学) に着眼し、その発達段階から各リアリティを導く事を試みる。このようにして構成された各リアリティ間には、二つの軸による構造的連関が指摘できる。この連関に基き、動態的な多元的リアリティの一モデルを提出したい。
著者
数土 直紀
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.436-453, 2006-09-30 (Released:2010-04-23)
参考文献数
102
被引用文献数
1 1

本稿ではまず, 日本における数理社会学研究の最近の動向を, 進化ゲーム理論やシミュレーションなどの台頭, および世代継承の観点から議論するさらに, 国際化と啓蒙活動の盾発化を中心に, この時期の数理社会学会の活動を概観し, そうした動向・活動の中から出てきた新しい流れを, テーマおよび方法の違いに気をつけながら, 可能な限り紹介する
著者
丹辺 宣彦
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.33-48, 2003-06-30

M.Olsonの集合行為論は, 共通の利害を有することが集団形成を促すという階級論の想定に対して, 有効な批判の論拠を提供してきた.他方で, その問題構成には, 集団間の階層的分化への顧慮と, 集団への関与がその成員の意識と行動に大きな影響を与えることを考慮する観点が相対的に欠けていた.この点に着目し, 本稿では, 階級的・階層的集団の成員の意識にあらわれるカテゴリー形成を手がかりとし, それが集団形成と集合行為をいかに水路づけるかという問題を論じる.<BR>まず, Olsonの集合行為論の問題点を整理し, その議論が集団間での階級的, 階層的な利害の分化を捨象しており, また他方で集団カテゴリーの成立を前提としていたことを示す (1節).つぎに, 集合財の階層性を確認するとともに, C.OffeによるOlson批判も, 労働組合成員による「集合アイデンティティ」カテゴリーの創出という, 個人的合理性に対置される集団的連帯性に依拠していたことを示す (2節).さらに, 集団問での利害対立の分化が新たな集合財空間の分化をもたらすことを明らかにする.その上で, 属性を物象化=象徴化することにより階層的な集団カテゴリーが形成される機制と, 集団と個人の利害の同一視によって, フロントランナーの集合行為が引き起こされる可能性を検討する (3節).このような検討から, 集合行為論の展開に対して, 社会学的観点からの貢献が可能であることを示したい.
著者
太郎丸 博
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.41-57, 2006-06-30

1970年ごろに米国で発達した理論構築の考え方は, 理論に対する1つのアプローチを確立した.しかしそれは, 学説研究の価値を不当に低く評価することになっている. Laudanの議論に従えば, 研究伝統の抱える概念的問題を解決したり, 社会学全体を見渡して複数の研究伝統の発展の歴史を概観したり, その長短を判断することを通して, 学説研究は理論を発展させることができる.さらに研究伝統を深く学ぶことで, 解くべき問題をしばしば発見することができるし, 概念的問題の解決の手がかりも, しばしば学説の中にある, しかし, 学説だけを研究しても理論の発展は難しい.概念的問題は経験的問題と密接に連動しており, 経験的問題の解決は, データの収集・分析と不可分に結びついている.概念的問題と経験的問題を同時に追求しなければ, 理論の発展は困難である.理論を発展させるためには, 既存の研究伝統を深く学ぶと同時に, 何らかの経験的問題を追求することが必要である.そのためのコツをあえていうならば, デリベーションと「よい」集団に属して研究することが考えられる.
著者
佐藤 嘉倫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.632-647, 2009-03-31
被引用文献数
5

現代日本の階層構造について語るとき,「流動化」と「固定化」という2つのキーワードが浮かび上がる.非正規労働者の増加などの流動化と特定階層における世代間移動の固定化がその典型例である.本稿では,相矛盾するように見える2つのキーワードを階層論の視点から統一的に理解・説明できることを示す.すなわち,階層構造の流動化といっても,すべての階層でそれが生じているわけではなく,特定の階層は依然として保護的な制度に守られているが,別の階層は高まる流動性に巻き込まれている.教育,若年層,転職,世代間移動,収入という5つの領域における,2005年社会階層と社会移動研究プロジェクトの研究成果を検討しながら,この仮説が全体として妥当することを示す.最後に,階層構造の安定性と流動化の共存が社会階層論に与える含意について考察する.

1 0 0 0 OA 經營と志氣

著者
米山 桂三
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.18-27, 1952-01-10 (Released:2009-11-11)
著者
高坂 健次
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.25-40, 2006-06-30

オリジナリティのある社会学の理論形成のためには閃きやセンスが必要であるが, それ以前に言わば「定石」を踏まえておかなくてはならないことを指摘する.本論は社会学の理論には一般理論, 歴史理論, 規範理論の3つのタイプがあるとの議論をもとに, それらに共通の定石として, 真・善・美・整合性・実践性・明確性を守る必要があることを述べる.その上で, 任意に歴史理論の中から舩橋の主張する「T字型の研究戦略」を対象に「明確性」という定石からみてどのように評価できるかを論じる.次に, 問題の背後には「中範囲理論」の3つの誤謬があると見なして, 中範囲理論の問題点を論じる.3つの誤謬とは, 理論と調査の「統合」の置き違えの誤謬, 抽象化作用の置き違えの誤謬, 研究対象システムの置き違えの誤謬, である.最後に, 先の定石以外に, 異なる理論的枠組みの「統一化」を図ろうとする定石と, 一般理論・歴史理論・規範理論の3つの理論タイプを意識的に相互浸透させるという定石とがあることを示唆する.
著者
宇津 栄祐
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.32-47,95, 1965-01-30 (Released:2009-11-11)
著者
北田 暁大
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.281-297, 2004-12-31

「過去 (歴史) は記述者が内在する〈現在〉の観点から構築されている」という歴史的構築主義のテーゼは, 公文書の検討を通じて歴史命題の真偽を探究し続けてきた実証史学に, 少なからぬインパクトを与えた.「オーラル・ヒストリーをどう位置づけるか」「過去の記憶をめぐる言説はことごとく政治的なものなのではないか」「記述者の位置取り (positioning) が記述内容に及ぼす影響はどのようなものか」といった, 近年のカルチュラル・スタディーズやポストコロニアリズム, フェミニズム等で焦点化されている問題系は, 構築主義的な歴史観と密接なかかわりを持っている.もはや構築主義的パースペクティヴなくして歴史を描き出すことは不可能といえるだろう.<BR>しかしだからといって, 私たちは「理論的に素朴な実証史学が, より洗練された言語哲学・認識論を持つ構築主義的歴史学にとってかわられた」と考えてはならない.社会学/社会哲学の領域において, 構築主義が登場するはるか以前に, きわめて高度な歴史方法論が提示されていたことを想起すべきである.以下では, WeberとPopperという2人の知の巨人の議論 (プレ構築主義) に照準しつつ, 「因果性」「合理性」といった構築主義的な歴史論のなかであまり取り上げられることのない-しかしきわめて重要な-概念のアクチュアリティを再確認し, 「構築主義以降」の歴史社会学の課題を指し示していくこととしたい.
著者
寺田 良一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.319-320, 2012-09-30 (Released:2013-11-22)
著者
橋本 茂
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.69-82,118, 1968-07-01 (Released:2009-10-20)
参考文献数
13

We must know “what is a theory” and “what is a strategy of reaching a theory” before we construct a sociological theory. But there are few sociologists who have met this condition. G.C. Homans is one of those who have constructed sociological theories after making these questions clear. The purpose of this paper is to examine Homans' sociological theory from the following aspects, (I) what is a theory? (II) what is the difference between his theory and the functional theory ? (III) what are the general propositions of his theory? (IV) where is his position in history of sociology? (I) A theory, according to Homans, must meet the following conditions. It consists, (i), of a set of concepts or conceptual scheme, and (ii), of a set of propositions and the propositions form a deductive system. (iii), some of the propositions of a scientific theory must be contingent, in the sense that experience is relevent to their truth or falsity or to that of propositions derived from them. (II) The functional theory consists of the general propositions about the conditions of social equilibrium. Has it met the requirements of theory? No. Because the general propositions are noncontingent and no definite conclusions can be drawn from them. A alternative theory is Homans' theory. It consists of the general propositions about the behavior of men. (III) The general propositions of his theory or exchange theory, which envisages social behavior as an exchange of rewarding or costly activity between men, are five. They are “stimulus generalization proposition”, “success proposition”, “value proposition”, “diminishing value proposition” and “justice proposition”. Homans explains social phenomena, showing how they follow as conclusions from these propositions in deductive systems. (IV) This Homans' approach is not Durkhaim's but Simmel's approach.
著者
中野 正大
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.93-101, 1970-12-30 (Released:2010-02-19)
参考文献数
7

In this paper, we shall begin with distinguishing the three major types within a great variety of functionalism and, then, reconsider the problems of “sociological functionalism”, which is one of the three types of functionalism, from the viewpoint of “scientific explanation”. Sociological functionalism explains the existence or occurrence of a item that is the object of “functional analysis”, by showing how it contributes toward survival or integration of a society (social system) as a whole by fulfilling functional prerequisites of it. Its characteristics are, therfore, to use the theory of functional prerequisites and the model of social system and, in a analytical point of view, “holistic” and “system centered” as many people have often pointed out. My concern is to clarify whether the explanation that is provided by this sociological functionalism can be scientific one. As Hempel points out, the scientific explanation, which is synonymous with “theory”, must satisfy both the requirement of explanatory relevance and that of testability. However, when we examine sociological functional explanation with such criteria, we can see the fact that it fails to meet the minimum requirement for scientific explanation. For its major problems consist in the key concepts in it : functional prerequisites, survival, integration (or stability, equilibrium, harmony, and structural continuity), adaptation or adjustment, and functional equivalents. But yet, it seems these problems are due to the model of social system (or society) because the model functionalists have in mind is usually biological organic analogy. Accordingly, if we try to improve sociological functional explanation toward scientific one, to it is essential to make the concept of social system, we use, clear. That is, to describe the components of it in detail and specify the internal and external (environment) condition in a system. And next, to clear the key concepts above in sociological functionalism, we must set up the “permissible state” of the system which is possible to survive or integrate (stabilize or equilibrate) as Hempel and Nagel suggest. It would be indicated by specifing the “range” of possible state of it. However when we think of these difficult problems above in formulating sociological functionalism, we had better abondon it at this stage. It might be rather advisable to attempt at constructing a small hypothesis (theory) by dealing with the fields of lower (micro) level in a society, for example a subsystem, and, then, go toward the study of higher level in it.
著者
菅野 正
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.98-102, 1954-10-20 (Released:2009-11-11)
著者
森 好夫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.98-104, 1968 (Released:2009-10-20)