- 著者
-
竹野 幸夫
平川 勝洋
- 出版者
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
- 雑誌
- 耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.3, pp.225-229, 2013 (Released:2013-09-27)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
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呼気中の一酸化窒素 (NO) の測定は,測定方法の標準化ガイドラインが近年確立され,呼吸器領域の新しい診断マーカーの可能性と治療への応用の道が開かれてきている。一方で,ヒト鼻副鼻腔は生理的に重要なNO産生の場であると同時に,1) その複雑な解剖学的構造,2) NOが有する生理的恒常性の維持と炎症性メディエーターという二面性,3) 生体組織中へのNOの再吸収現象,など測定の標準化には解決すべき問題が残っている。鼻アレルギーでは過剰産生されたNOが,炎症細胞を介した非特異的免疫応答の増強や,活性酸素種との反応を介した細胞障害作用を引き起こし,アレルギー性炎症の病態増悪の一因になっていると考えられている。我々の検討でも,通年性HD鼻アレルギー症例における鼻呼気FeNO値の測定は病態把握に有用な指標となることが示された (cut off値 70 ppb,敏感度 59.3%)。一方で,慢性副鼻腔炎では罹患した副鼻腔洞においてNO濃度の低下が認められており,粘液線毛輸送機能の低下による排泄機能障害と密接に関連している。副鼻腔炎加療による粘膜再生過程では,線毛細胞に局在するiNOS由来のNO産生により鼻腔NO濃度が上昇する。また好酸球性副鼻腔炎 (ECRS) では,局所好酸球浸潤に一致したNO酸化代謝産物の沈着が顕著であることより,炎症細胞も加えたiNOS誘導を背景とするNO産生代謝機構は非好酸球性のそれと異なっており,これらの面からもFeNOモニタリングは有用な指標となると思われる。