著者
上村 清
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.305-306, 1967
被引用文献数
1

A mature larva of a psychodid fly was recovered from the left eye of a 37 year old patient who was suffering from an irritative feeling of the eye. The larva was collected from water used to wash the eye of the patient, and was brought to the author for identification. The specimen was already at the mature stage and its digestive canal was clean. It was actively moving in water when first exmined by the author. It was transferred into a small glass vial on wet filter paper in order to recover the adult, but it died 2 days later without the pupation. The specimen was mounted in balsam medium for the detailed microscopical examination of the structure. The larva is 7mm long, body greyish white in general, and the head and siphon are dark brown. There are 3 plates on each of the abdominal terga VI and VII, 5 pairs of siphonal tufts and 4 valves on the siphon, which is slender and tapering. The specimen was identified as Psychoda alternata Say, 1824 from its morphological characters. This case is considered to be the first report on human ocular myiasis due to the psychodid larvae.
著者
緒方 一喜 原田 節子 中村 光子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衞生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.100-110, 1954-12-30
被引用文献数
3

1. S. aokiiは本州, 九州に広く分布し, 平地から山脚地帯にかけての小流に発生する極く普通の種類である.屡々山間の溪流にもみられる.又, S. venustumと共に本邦に於て激しく人を襲う代表的な種類である.2.著者の観察によれば, 産卵は夕刻に多く, 水中の植物, 岸の上から垂れた草の葉或はコンクリート壁を問わず産卵場所は水表上の常に水沫で濡れる状態の場所であつた. 1〜数10匹で集団的に或限られた小面積の好適な場所に短時間に行われた.そして1〜数10個の卵塊は集合的にうみつけられた.1匹の雌による1回の産卵数は150〜300と考えられた.3月の室温で約10日で孵化を始めた.3.幼虫は川幅約1〜0.3m, 流速10〜30m/分, 水質は水底が見える程度の清流に最も多数みられた.4.幼虫が水中で吸着している基物は, 基物自体に対する選択よりも, 寧ろ基物のおかれている環境条件によつて選択される.自然界では水面下約10cm以内の植物に大部分吸着している.特に細長い葉面の裏面先端部に多い.5.幼虫は水中で, 好条件下では数日間同一場所に固着しているが, 又或程度尺取虫状匐匍運動或は分泌した糸に懸垂して移動を行つている.6.蛹の発生水域から1, 000mの距離迄100mおきに実験者が位置し, 刺咬する成虫を採集して活動範囲調査を行つた.発生水域附近が最も刺咬数は多く, 1, 000mの地点でも若干採集された.7.成虫の刺咬活動は周年みられるが, 特に3月から7月にかけて最盛活動を示した.8.雌成虫は最も人を好んで吸血するものと考えられた.牛, 馬及び山羊を用いて襲来成虫を採集したが, 馬で9匹, 牛で1匹採集されたに過ぎなかつた.
著者
北岡 茂男 伊藤 憲作
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.208-209, 1964
被引用文献数
3

To know the comparative attractiveness of black light and white or blue ones to biting midges and mosquitoes, a light trapping was carried out during July to September, 1963, at a poultry house in the Shizuoka Prefectural Chicken Breeding Station. Black light always attracted more numbers of biting midges and mosquitoes, especially Culicoides arakawae, Culex tritaeniorhynchus, and Anopheles hyrcanus comparing with white or blue light, but the ratios of the attractiveness considerably varied with species and sex of the insects or days collected.
著者
菊池 三穂子 佐々 学
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.291-329, 1990
被引用文献数
1 12

スマトラのトバ湖岸で1987年1月より1989年1月の間に3回, ユスリカの成虫の採集を行った。それには, 捕虫網, ないし吸虫管による昼間の捕集と, 夜間に池で作動する螢光灯に誘引される成虫の吸虫管による捕集とを併用した。それの標本はスライドガラスにガムクロラール液で封入標本とし, 主として雄成虫で種の鑑別を行った結果, 101匹の雄が31種に分類され, そのうち26種はChironominae亜科, 5種はOrthocladiinae亜科に属するものであった。これらのうち, 20種は新種, そのうち3種は新属の新種として新たに学名を与えた。インドネシアを含む東南アジアに産するユスリカ科についてはこれまできわめて記録が少なかったが, 今回の調査でも多くの未記録のユスリカが分布することが示され, それらには分類学的にもきわめて斬新な種類が含まれていた。
著者
矢部 辰男 茂木 幹義 Selomo Makmur NOOR Noer Bahry
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.43-47, 2001
被引用文献数
1 2

インドネシアの西チモールと中央スラウェシにおける水田開発がクマネズミ個体群に与える影響を調べた。西チモール(1998・99年8月の乾期と2000年2月の雨期)ではクマネズミは家屋のみで捕獲され, 水田(いずれも田植期)に生息する形跡はなかった。8月の捕獲個体の約半数が収穫期(5∿6月, 雨期または雨期直後)生まれと推定された。中央スラウェシ(1998年8月の雨期)ではクマネズミは水田(成熟期・収穫期)に生息しており, ここで捕獲されたうちの約半数が7∿8月生まれと推定された。これらの結果から, クマネズミは雨期または雨期直後の収穫期に活発に繁殖し, 収穫後に家屋に移動することが示唆された。水田開発はクマネズミの繁殖を促し, また屋外と家屋との間の移動を促すと推測される。
著者
福井 正信
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.59-63, 1958
被引用文献数
1 1

1)ササラダニの採集に際しBerlese変法, 渡辺等の採集法, 直接採集法を試みた.2)採集したササラダニ成虫を恙虫飼育容器であるプラスチック製シヤーレ内に獣炭末及び石膏との混合培地を床とし, その床に2万倍マーゾニン液を適時滴下補給して湿度を保ち併せてカビの発生を防ぎ, この環境下で飼育し数カ月乃至1年以上の生存をみた.3)渡辺氏等の採集法を検討し, プレート法によるササラダニの日週活動を調べる目的で実験を行つた.即ち1957年9月12日午前9時より翌13日午前10時迄の26時間, 杉板及び松板を用いて毎時この板の両面に集るダニの数を観察し, 同時に気温・地温・湿度を測定・記録した.4)この結果, 板よりの採集ダニの殆んどがホクリクササラダニOribatula sp. (Or. -1)であることが判明した.又杉板より松板に多く集る傾向のあるのを見た.5)杉・松共に表面より裏面に多く観察され, その数は裏面が昼夜共全体の70%前後を示し夜間と昼間の両面出現比率は有意差を示さなかつた.6)杉板の裏面に観察されたダニ数の時刻的推移をみると午前に活動の山がみられ午後3時以降急速に観察数は減少し夜間は殆んど認められなかつた.又松板採集区ではこの出現状態と気温・地温との間には何れも正の有意の相関がみられた.7)このプレート採集法は或地域のササラダニ相を調査する為の最適の方法ではないにしてもMoniezia expansaの中間宿主となるホクリクササラダニの採集法としては好適な方法の1つであると思われる.
著者
田原 雄一郎 Monroy Carlota Rodas Antonieta MEJIA Mildred PICHILLA Reginaldo MAURICIO Heberto PEREZ Miguel
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.331-336, 1998
被引用文献数
1 1

1995年緒方及びSamayoaはグアテマラのカリブ海に面した港町, Puerto Barrios及びSanto Tomas de Castillaでヒトスジシマカの生息を確認した。2年間経過後の1997年, 雨季と乾季に再び同じ地域で本種の分布拡大を調査した。今回, 同市内で調査地域を拡大したにもかかわらず, 生息は1995年と同じ地域からのみ確認できた。グアテマラ市へ至る国道沿線, グアテマラとメキシコ, ホンジュラス, エルサルバドルの国境地域, 太平洋岸の港町などでも調査したが新規な発見はなかった。本種は同一地域にあっては都市部の比較的小さな水域, 例えば, 古タイヤ, 空き缶に発生した。雨季には古タイヤと捨てられた空き缶, プラスチックに溜まった水たまりに多く見られた。ヒトスジシマカとネッタイシマカの採集比率を比較したところ, 乾季は後者が, 雨季は前者が多かった。
著者
Omar Baharudin Jeffery John Sulaiman Sallehudin
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.215-217, 1991

マレー半島のカメロン・ハイランドの野菜畑に発生しているイエバエMusca domestica L.の囲蛹に寄生していた3種のコガネコバチのうち2種は世界共通種Spalangia nigroaenea Curtisと南米産S. chontalensis Cameronであったが, 1種は新種であったのでS. bouceki n. sp.として記載した。本新種はpronotal collarの前縁が盛り上っている3番目の種になる。
著者
Omar Baharudin Sulaiman Sallehudin Jeffery John
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.147-149, 1991
被引用文献数
2

マレー半島のカメロン・ハイランドの野菜畑に多量発生しているイエバエMusca domestica L.の天敵調査の結果, 寄生蜂Spalangia spp.に混じってチビクロセスジハネカクシAnotylus latiusculus (Kraatz)がイエバエの囲蛹より羽化してきた。天敵としての重要性については未知であるが, 本種のイエバエ囲蛹寄生例としては初めてと思われるので報告する。
著者
林 利彦
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.31-54, 1994
被引用文献数
1

文部省海外学術調査で, パキスタン(1988年)とネパール(1992年)におけるハヤトビバエ相を調査する機会を得た.人糞との係わりの強いParalimosina属について調べた結果, 14種を見いだした.その内, 6種が新種であった.また, P. japonica Hayashiがネパールより初めて見いだされ, P. altimontana (Rohacek)及びP. marshalli Rohacek et Pappの雌が初めて発見された.新種は以下の通りである : P. albipes Hayashi, sp. nov. (ネパール);P. biloba Hayashi, sp. nov. (ネパール);P. cavata Hayashi, sp. nov. (パキスタン, ネパール);P. confusa Hayashi, sp. nov. (ネパール);P. megaloba Hayashi, sp. nov. (パキスタン, ネパール);P. similis Hayashi, sp. nov. (ネパール).なお, P. eximia種群は本属中特異なグループであり, 非常に複雑であるため, 充分時間をかけて再検討する必要があり本論文中には含めなかった.
著者
林 利彦
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.61-64, 1989
被引用文献数
1 1

著者は1988年7〜9月にかけてパキスタンのハヤトビバエ類の調査を行った.今回Opalimosina属を調べた結果, パキスタンから1新種, 2新記録種を発見したので報告する.本属は従来この地域からは知られていなかった.
著者
小久保 醇
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.250-252, 1961
被引用文献数
1

1. The parasites recovered from the pupal collections of pine-moth in Kashima district, Ibaraki Prefecture during June 12 to July 5, 1961 are shown in Table 2. The most abundant species was Sarcophaga harpax Pandelle and it was recovered from 10 per cent of the field-collected pupae. 2. The number of Sarcophaga harpax found in each host was 1 to 21, and mostly 3 to 8.(Fig. 1) 3. Brachymeria minuta Linne was recovered from the Sarcophaga pupa as the secondary parasite.
著者
小久保 醇 加納 六郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.226-227, 1961

Sarcophaga harpax Pandelle, Carcelia bombylans R.-D., Euterus matsuyadorii Matsumura and Brachymeria minuta Linne were recovered from the pine-moth pupae collected in June of 1960 in Kashima district, Ibaraki Prefecture. In these species Sarcophaga was most abundant and Brachymeria appeared as secondary parasite from pupae of Sarcophaga.
著者
鈴木 猛 緒方 一喜 平社 俊之助 長田 泰博
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.258-267, 1959

1.1959年5月8日より6月9日に至る間, 長崎県西彼杵郡高島町の端島において, ゴキブリの棲息状況の調査, 及び殺虫剤による駆除実験を試みた.2.採集数1232匹中, 3匹のクロゴキブリPeriplaneta fuliginosa Servilleを除いて, 他はすべてワモンゴキブリPeriplaneta americana L.であり, 1958年の予備調査の結果とあわせ, 端島のゴキブリの優占種はワモンゴキブリであり, しかもきわめて高い比率を占めることを認めた.3.実験地のアパートからトラツプによつて採集されたワモンゴキブリは, ♀より♂の方がはるかに多い.一方, ほぼ同時間に採炭坑内から採集されたワモンゴキブリは, ♀の方が♂より多いことを知つた.4.ワモンゴキブリは実験地のアパートに確率的に分布するのではなく, ある特定の家に集中する.そして, 各戸面接調査によつて得た環境条件と, トラップで捕獲したゴキブリ数の相関をしらべた結果, カマドの使用頻度が高く, カマドの下にたきぎや紙などがつまつており, また屋内全体の湿気が高い家ほどゴキブリの棲息密度が高いことを知つた.5. diazinon 5%乳剤(塗布及び撒布, 各原液及び5倍), lindane 10%乳剤(各2倍及び10倍), dieldrin 4% lindane 6%乳剤(各2倍及び10倍), BHC50%水和剤(各10倍及び50倍)をカツコ内の濃度に稀釈し, 塗布実験区では, 1戸150ccの割でカマドや流しの周辺, 台所のすみ, 押入の入口などに刷毛を用いて巾5〜7cmに塗布した.撒布実験区では, 台所や押入入口附近のゴキブリの潜伏場所やその周辺に対し, 1戸あたり約800ccを全自動式噴霧器によつて撒布した.6.薬剤の効果を正しく把握するため, トラップあるいは視察によつて得たデータに対し, 次の補正によつて相対棲息密度指数RPIを算出した.RPI=T_<ai>/E_i×100=C_b/C_<ai>×T_<ai>/T_b×100ここで, T_<ai>, T_bはそれぞれ薬剤処理区の処理以前の1日平均捕集数, C_b, C_<ai>は同じく対照区の平均捕集数であり, またE_iは, 薬剤処理を全く行わないと仮定した場合の処理区のi日後の期待捕集数で, 次によつて得られる.E_i=T_b×C_<ai>/C_b 7.同種の薬剤で, 塗布の効果は一般に撒布の効果に劣る.トラップの捕集数から判定すると, lindane撒布, lindane・dieldrin混合剤撒布がもつとも有効であるが, 1ヵ月後にはほぼもとの相対密度まで回復する.diazinon撒布及び塗布, 混合剤塗布がこれにつゞき, lindane塗布は効果がそれほど大きくない.BHCの撒布と塗布は, 効果がほとんど認められなかつた.8.視察及び死亡虫数から効果を判定すると, おゝむねトラップによる方法と結果が一致するが, ただBHC撒布の効果が著しく高くあらわれた.9.薬剤処理後のワモンゴキブリの性比及び幼虫比を, 処理前及び対照区のそれと比較検討した結果, 処理区では, 全成虫中に占める♂の比率及び全ゴキブリ中の幼虫の比率がともに減少する傾向にあることを知り, これを♀に対する♂の, また成虫に対する幼虫の, 薬剤に対する高い感受性によるものと推定した.結果において, 薬剤処理区では, ♀の比率が高まることを知つた.10.アパートの各戸内に床面積1m^2あたり9.2cc(約300cc/33m^2)のDDVP0.3%油剤を煙霧機によつてふきこんだが, ワモンゴキブリに対して, ほとんど効果が認められなかつた.11.端島で1959年6月以降行われたゴキブリ全島駆除の概況を附記した.