著者
仲田 弘明 長谷川 秀樹 櫻井 博章 田村 雅彦
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.85-90, 2010-02-15
被引用文献数
1 3

当社は北海道十勝管内に所在する芽室製糖所の製糖工程から,産業利用目的に有用な微生物の取得を行っている.製糖工程の温水浸出汁から取得された乳酸菌を使用し,独自の乳酸菌を用いてサワーブレッドの作製を試みた.<BR>取得された乳酸菌菌株NT株は,16SリボソームDNA配列に基づく相同性検索の結果,ストレプトコッカス・サーモフィルス(<I>Streptococcus thermophilus</I>)と同定された.本菌種は古来よりチーズやヨーグルトの製造等に用いられており,食経験のある菌種である.<BR>NT株を乳酸菌培地で培養し,得られた乳酸菌菌体液を使用して市販スターター(TKスターター)と同じ工程によりサワー種を作製した.製パンは,ストレート法食パンにサワー種を添加しサワーブレッドを焼成し,官能試験,有機酸抽出,香気成分分析,防カビ性能の試験を行い市販スターターサワーブレッドおよびサワー種無添加ブレッド(一般的な食パンに該当)と比較した.<BR>官能試験の結果,NT(NT株を使用したサワーブレッド)は強いチーズ臭のするサワーブレッドであった.NTについてGC-MSにより香気成分を分析したところ,チーズ臭はアセトイン,酪酸に由来するものと考えられた.<BR>また,防カビ試験の結果より,NTは市販スターターよりも高い防カビ性能を保持していた.高い防カビ性能を有する理由として,NT株の生産する有機酸等の抗真菌活性物質が推測されたが,今回の試験では明らかとならなかった.
著者
高山 侑樹 稲益 和子 横山 あゆ美 西田 淑男 古市 幸生
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.483-488, 2010-11-15
被引用文献数
2

本研究では,ニガイチゴ果実の成分組成および機能性について検討した.ニガイチゴはラズベリー,イチゴ(トチオトメ)と比較し,ビタミンC含量が少ない果実であった.総ポリフェノール含有量は,ニガイチゴ,ラズベリー,イチゴ(トチオトメ,サガホノカ,アキヒメ)がそれぞれ179.8, 108.7, 108.5, 94.8, 65.6mg/100gであり,イチゴの品種間で差が見られたが,ニガイチゴが最も高い値を示した.また,DPPHラジカル消去活性のIC<SUB>50</SUB>は,ニガイチゴが1.50,ラズベリーが2.31,トチオトメ,サガホノカ,アキヒメがそれぞれ2.32, 3.00, 4.25mg/mlであった.マルターゼ阻害では,予め吸着させたHP-20樹脂より40%エタノールで溶出した画分(40% EtEx)で最も強い作用を示した.正常ラットでのマルトース負荷試験でも,40% EtExを与えた群で血糖上昇が抑制された.これらのことから,ニガイチゴは抗酸化能が強く,血糖上昇抑制に有効な素材であることが示唆された.
著者
加藤 みゆき 大森 正司 加藤 芳伸
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.421-427, 2011-09-15
被引用文献数
2

緑茶を対象としてretroposon-like sequence DNA (RLS-DNA)塩基配列の比較解析により品種の判別を試みた.実験には,やぶきた品種のチャ葉より製造した緑茶と,市販されている中国,ベトナム,ミャンマー,台湾の緑茶,そして日本の緑茶用40品種の生茶葉を用いて実験した.RLS-DNAの塩基配列を比較解析することにより,おくみどり,べにふうき等の品種の判別が生茶葉と緑茶葉を用いた場合,共に可能であることが認められた.また,中国,ベトナム,ミャンマー,台湾の緑茶についてもRLS-DNAの多型解析により我が国の緑茶と識別可能であることが認められた.今回の実験から,RLS-DNAを指標とした塩基配列の多型解析は,おくみどり,べにふうき品種等の品種を判別するための手法に適用できるものと考える.
著者
高橋 誠 本間 紀之 諸橋 敬子 中村 幸一 鈴木 保宏
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.394-402, 2009-07-15
被引用文献数
17 24

16品種・系統24点の米を用いて米粉試料を調製し,粗蛋白質含量,アミロース含量,損傷澱粉量および粒度構成を測定した.米粉の粒度は全ての供試材料で200メッシュ通過割合が90%以上だったが,粒度構成は米粉試料により異なった.特徴的な品種は300メッシュ通過割合が他種類に比べ高かった北陸166号であり,損傷澱粉量も少ない傾向が認められた.<BR>グルテンを添加混合した米粉の物性を測定したところ,ファリノグラフ吸水率は品種間差が存在し,米粉のアミロース含量との相関が認められた.一方,米粉パンの比容積や形状は米粉試料により異なり,グルテンを添加混合した米粉中のアミロース含量やビスコグラフ特性と相関がある事が示唆された.なお,米粉パンの最大比容積は米粉のアミロース含量が25%前後で得られると推定された.米粉パンの硬度は米粉のアミロース含量と相関が認められた.焼成後の時間の経過とともにパンの硬度は増加したが,品種により硬度の増加速度に違いが認められた.アミロースや蛋白質含量が同程度の品種に比べ,粉質米や低グルテリン米ではパンの硬度や硬化速度が低いものも存在し,米の蛋白質組成等がパン物性に影響を与えていることが示唆された.以上の結果から,中アミロース米(アミロース含量15~25%程度)が米粉パン製造適性に優れると思われた.
著者
深井 洋一 田中 廣彦 内藤 成弘
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.597-603, 2011-12-15
参考文献数
25
被引用文献数
1

市田柿の水分分布が関係するカビ発生について新たな知見を得る目的で,予め試験品として選別した健全品とカビ発生品の水分分布を磁気共鳴画像(MRI)法を用いて検討した.1個のカビ発生品を1個または3個の健全品と一緒にスピンエコー法を用いて,0.2テスラの永久磁石と1辺12 cmの開口部をもつソレノイド型検出器を備えた小型MRIで測定した.水分および水分活性に有意差が認められない(<I>p</I> > 0.05)健全品とカビ発生品のMR画像では,NMR信号の強さをMR画像の明るさで表現した場合,両者の明るさに明瞭な違いが認められた.カビ発生品は健全品よりも中果皮,内果皮ともに明るくなるが,内果皮が特に明るくなった.T<SUB>1</SUB>およびT<SUB>2</SUB>緩和時間測定の結果,MR画像の明るい部分では運動性の高い水が増えていた.この明るさの違いは,市田柿のへた側から尻側までのどの横断面でも見られたので,2次元MRIで任意の一断面を測定すれば健全品とカビ発生品の水分分布の違いをとらえることができた.MRIは水分や水分活性ではとらえられなかった市田柿の健全品とカビ発生品の水分分布の違いを,水の運動性の違いからとらえることができたため,品質管理の手段として実用化の進展が期待される.
著者
沢村 信一 原口 康弘 安田 正俊 松坂 修二
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.103-107, 2009-02
被引用文献数
4

抹茶の流動性試験の結果をまとめると以下のようになる.(1) 石臼抹茶,ボールミル抹茶,微粉抹茶の流動開始振動加速度はほぼ同じであった.粗粉抹茶は,流動を開始するのに強い外力を要した.(2) ボールミル抹茶は,流動開始振動加速度と終了加速度が近接しており,非常に流動性が良かった.(3) 石臼抹茶は,帯電しやすく流動性は低かった.帯電は湿度と関連しており,抹茶を取り扱うときはある程度の湿度を保つ方ことで流動性が良くなる.(4) 抹茶は帯電制御によって流動性が向上するので,抹茶を扱うプロセスには除電設備を備えるのが望ましい.(5) Carr流動性指数では,粉砕方法の異なる抹茶の差は小さかったが,本粉粒体流動性試験装置を用いることによって,抹茶の流動性の違いを明確に評価できた.; Matcha, powdered green tea, is difficult to handle in the factory or manufacturing facilities due to its small particle size and low density. In the present study, the powder flowability properties of various matcha samples were investigated using a dynamic powder flow tester with high detection sensitivity to facilitate machine handling during matcha manufacturing. The sample powders were prepared from tea leaves picked during different seasons (i.e. the first, second, third, and fourth crops) using a stone mill or ball mill. Matcha ground with the electrostatically charged stone mill showed poor flowability, whereas that ground with the ball mill showed fairly good flowability. The fine and coarse powders classified after ball-milling had different characteristics. Furthermore, it was found that the electrostatic discharge of matcha can improve flowability, depending on humidity.
著者
長田 裕子 上村 佑也 坂 智秀 吉田 睦子 西塔 正孝 工藤 秀機 國崎 直道 五明 紀春
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.625-631, 2008-12-15
被引用文献数
8 7

<I>Lactobacillus plantarum</I> No. 14株を被験者28人に二重盲検法により摂取させ,そのスギ花粉症に対する効果を調べた.実施期間は2005年1~3月とし,No. 14株の凍結乾燥菌体を1日2.0×10<SUP>10</SUP>CFU, 3週間連続摂取させた.その結果,血液成分において群間に有意な差はなかったが,No. 14株摂取により総IgEの有意な減少が見られた.また摂取を終了した後でも総IgE, 好酸球数の上昇を抑制した.アレルギー症状に関しては鼻回数が摂取3週間目と後観察1週目で試験群がプラセボ群に対して有意に少なくなった.また,体脂肪率が摂取前後でプラセボ群は有意に上昇したのに対し,試験群は有意に減少した.このことからNo. 14株の摂取により花粉症が抑制され,体脂肪率が低減する可能性が示唆された.
著者
田中 直義 木村 小百合 木内 幹 鈴木 あゆ野 村松 芳多子 三星 沙織
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.167-174, 2012-04-15
被引用文献数
1

糸引き納豆は醗酵後の冷蔵中ににおいが変化してゆくことが知られており,品質の変化が早く生鮮飲食品並みの消費期限が設けられている.冷蔵中における主要なにおい物質の変化を以下の方法で検討した.<BR>(1) 購入直後の市販納豆および1週間冷蔵庫中で保存した市販納豆から臭い物質を連続水蒸気蒸留抽出によりエーテルに抽出し,濃縮した.得られたエーテル濃縮液をガスクロマトグラフ-におい嗅ぎ法で分析したが,試料間の差異が大きかったのでエーテル濃縮液を10の指数関数的に希釈することにより,主要な臭い物質を検索した.その結果,主要なにおい物質として2-メチルプロパン酸エチル,2-メチル酪酸エチル,3-メチル酪酸エチルなどの低分子脂肪酸エステル,2,5-ジメチルピラジン,トリメチルピラジンなどのピラジン類,酢酸,2-メチルプロパン酸,2- or/and 3-メチル酪酸などの低分子脂肪酸,およびエタノールが検出できた.1週間冷蔵中で保存するとそれらの物質の中で,低分子脂肪酸エステルのにおいは弱く,ピラジン類と低分子脂肪酸は強くなる傾向にあった.<BR>(2) 醗酵終了直後および冷蔵日数の異なる納豆からにおい物質をSPME法で抽出・濃縮し,ガスクロマトグラフで分析し,主要なにおい物質の変化を測定した.冷蔵日数が長くなるにつれて主要なにおい物質の中で,低分子脂肪酸エステルは減少,ピラジン類と酢酸以外の低分子脂肪酸は増加する傾向にあった.以上の結果から,冷蔵中のにおいの変化は,脂肪酸エステル類が減少し,ピラジン類および酢酸以外の低分子脂肪酸類が増加することによるものと推定した.
著者
菅原 悦子 伊東 哲雄 米倉 裕一 櫻井 米吉 小田切 敏 SUGAWARA Etsuko ITO Tetsuo YONEKURA Yuichi SAKURAI Yonekichi ODAGIRI Satoshi
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.p520-523, 1990-07
被引用文献数
1

Bacillus natto was cultured in the chemically defined liquid medium which contain various amino acids as nitrogen source, and effects of amino acids on the formation of pyrazines were examined. The amino acids which are related to glutamic acid on metabolism, L-glutamic acid, L-aspartic acid, L-arginine and L-proline, promoted the best growth. Yields of pyrazines produced in the culture broth were not always parallel to cell growth. In the case of L-serine, L-aspartic acid, L-alanine and ammonium citrate, whole pyrazines were yielded about 10mg/l and above, and mostly consisted of tetramethylpyrazine. Pyrazines which have a characteristic side chain corresponding to the amino acid present in the medium were not detected.各種アミノ酸を添加した合成培地で納豆菌を培養し,ピラジン化合物の生成量を比較検討し,ピラジン化合物生成に対する納豆菌の役割について考察した.(1) 各種アミノ酸を添加した合成培地での納豆菌の増殖は代謝上, L-グルタミン酸と関連の深いアミノ酸(L-グルタミン酸, L-アスパラギン酸, L-アルギニン, L-プロリン)で良好であった.(2) 培養液からのピラジン化合物の抽出方法として,加熱条件の有無を考慮して, LIKENS-NICKERSON型連続蒸留抽出装置を用いる方法とPorapak Q吸着剤を用いる方法を比較したが,連続蒸留抽出法でピラジン化合物が二次的に生成している可能性は薄かった.(3) 納豆菌の増殖の良否とピラジン化合物の生成量には相関はみられず, L-セリン, L-アスパラギン酸, L-アラニン,クエン酸ニアンモニウムで, 10mg/l前後,あるいはそれ以上のピラジン化合物を検出し,その大半はテトラメチルピラジンであった,(4) 各種アミノ酸の特徴的な側鎖をもつピラジン化合物は確認できなかったので,この化合物はアミノ酸から直接生合成されず,より簡単な中間体をへて生成される可能性が高い.(5) 納豆菌が関与するピラジン化合物生成はその前駆体を多量に生成することによる可能性は高いが,最終段階まで酵素的に進むことも考えられ,さらに検討が必要である.
著者
奥西 智哉
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.424-428, 2009-07-15
被引用文献数
6 12

小麦粉の一部を炊飯米で置換したごはんパンは置換率30%までのごはんパンは小麦粉パンと同等あるいはそれ以上の製パン性を有した.一方,部分置換タイプの米粉パンでは置換率の上昇とともに製パン性が低下した.<BR>置換率10-40%のごはんパンは,官能試験の総合評価で小麦粉パンより有意に評価が高く,最適置換率は30%であった.すだち・色相・香りは,20%ごはんパンの色相評価が有意に高い点を除き,いずれも有意差はなかった.内相の触感および硬さは10-30%ごはんパンで有意に評価が高く,20%が最適であった.味ともちもち感は,30%が最も高く,しっとり感と甘味は,40%までなら炊飯米置換率が高まるほど向上した.一方,米粉パンはすべての官能評価項目において小麦粉パンと有意差は見られず,特に総合評価では置換率にかかわらず評価が低かった.
著者
原 征彦 石上 正
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.p996-999, 1989-12
被引用文献数
17