著者
春日 敦子 青柳 康夫
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.229-235, 2011-06-15

大豆の浸漬水温の違いによる吸水時間と吸水量の関係を明らかにし,浸漬水温,浸漬時間,加熱時の昇温速度がイソフラボン含量に及ぼす影響を検討した.<BR>(1)平衡吸水量に到達するまでの時間は水温が60℃ではおよそ2時間,40℃では6時間,20℃では17時間であり,5℃では24時間の浸漬でも吸水量が平衡に到達しなかった.<BR>(2)浸漬水温がイソフラボン組成に与える影響は,浸漬時間が12時間では,5, 20, 30℃では浸漬によるイソフラボン組成の変化は浸漬前と比較してほとんど認められなかったが,40℃ではマロニル化配糖体が13%減少しアグリコンが僅かに増加,60℃ではマロニル化配糖体が54%減少し,アグリコンのダイゼインは10倍,ゲニステインは12倍に増加した.さらに60℃ではアグリコンの生成以外に,グリコシド配糖体であるダイジンとゲニスチンが浸漬前と比較してそれぞれ2.5倍に増加した.浸漬時間が24時間と長くなると,さらに前述の増減が著しくなった.<BR>(3)60℃ 1時間加熱と昇温2℃/minのイソフラボン組成は,加熱前と比較してマロニル化配糖体が僅かに減少し,その分アグリコンが増加していた.一方昇温速度が9℃/minと30℃/minは,マロニル化配糖体が加熱前と比較して昇温9℃/minでは38%減少,昇温30℃/minでは40%減少し,グルコシド配糖体はいずれも加熱前の2倍に増加した.<BR>以上のことより,「低温で充分吸水後に,60℃程度の低温加熱を保持」することでアグリコンを多く生成させることが可能となる.さらに「昇温速度を速くする」加熱がマロニル化配糖体を少なくする方法と思われる.
著者
宮本 敬久 川口 穣 下津 智志 河岸 丈太郎 本城 賢一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.200-208, 2009-04-15
被引用文献数
2 4

<I>S.</I> Enteritidisのマイクロプレートへの付着を阻害する物質の検索を39種の安全性の高い食品添加物および天然色素について行った.一次スクリーニングの結果,コントロールに比べて<I>S.</I> Enteritidisの付着を阻害したのは,アナトー色素,ガーディニアイエロー,モナスカス色素などの天然色素,アナトーAN,サンブラウンAC,サンイエローNo. 2 AU,サンレッドYM,サンレッドRCFU,サンビートL等の天然色素製剤,プロタミン,唐辛子抽出物,ショ糖ステアリン酸エステル,モノグリセリン脂肪酸エステルなどの食品添加物,ケンフェロールのようなフラボノイドであった.このうちで付着阻害効果の高かったのは,アナトーAN,ガーディニアイエロー,モナスカス色素,プロタミン,モノグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルであった.糖脂肪酸エステルではパルミチン酸およびステアリン酸エステルなど脂肪酸鎖長の長いものの方が付着阻害効果も高かった.特にモナスカス色素とショ糖ステアリン酸エステルは0.01%と低濃度でも<I>S.</I> Enteritidisの付着をほぼ完全に阻害したが,この阻害効果は抗菌力に起因するものではなかった.
著者
寺澤 洋子 古賀 貴子 齋藤 昌義
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.599-604, 2014 (Released:2015-03-26)

牛挽肉の直火焼き(素焼きおよび照り焼き,焼き時間はともに12分間および24分間)における有効性リジン量の変化を知る目的で,小形のミンチボール状のものを試料とした。これら試料について,主に加熱,しょう油-みりんの混合液によるアミノカルボニル反応(褐変)の影響を検討した。(1) 水分量は,素焼きおよび照り焼きともに有意に減少したが,その減少率は素焼きの方で高かった。(2) 照り焼きに関し,窒素量の変化は認められなかった。(3) 色調L*は,素焼きおよび照り焼きともに加熱により低下し,色差ΔE*は照り焼きの方でより顕著であった。(4) 有効性リジンの減少率は,素焼きにおける12分間および24分間加熱した試料に比較し,照り焼きで加熱した試料ではそれぞれ2倍の高値であった。水分量および色調L*は有効性リジン量の減少率に高い正の相関を示した。直火焼きにおける水分減少(加熱)に伴いアミノカルボニル反応が進み,L*は低下し,有効性リジン量は減少するものと考えられた。(5) 酸化度 TBA値は,照り焼きよりも素焼きの方で高かった。また,COVは,素焼きにおいて焼き時間に伴って有意に減少した。
著者
田中 直義 木村 小百合 木内 幹 鈴木 あゆ野 村松 芳多子 三星 沙織
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.167-174, 2012 (Released:2013-10-08)

糸引き納豆は醗酵後の冷蔵中ににおいが変化してゆくことが知られており,品質の変化が早く生鮮飲食品並みの消費期限が設けられている。冷蔵中における主要なにおい物質の変化を以下の方法で検討した。(1)購入直後の市販納豆および1週間冷蔵庫中で保存した市販納豆から臭い物質を連続水蒸気蒸留抽出によりエーテルに抽出し,濃縮した。得られたエーテル濃縮液をガスクロマトグラフ-におい嗅ぎ法で分析したが,試料間の差異が大きかったのでエーテル濃縮液を10の指数関数的に希釈することにより,主要な臭い物質を検索した。その結果,主要なにおい物質として2-メチルプロパン酸エチル,2-メチル酪酸エチル,3-メチル酪酸エチルなどの低分子脂肪酸エステル,2,5-ジメチルピラジン,トリメチルピラジンなどのピラジン類,酢酸,2-メチルプロパン酸,2-or/and3-メチル酪酸などの低分子脂肪酸およびエタノールが検出できた。1週間冷蔵中で保存するとそれらの物質の中で,低分子脂肪酸エステルのにおいは弱く,ピラジン類と低分子脂肪酸は強くなる傾向にあった。(2)醗酵終了直後および冷蔵日数の異なる納豆からにおい物質をSPME法で抽出・濃縮し,ガスクロマトグラフで分析し,主要なにおい物質の変化を測定した。冷蔵日数が長くなるにつれて主要なにおい物質の中で,低分子脂肪酸エステルは減少,ピラジン類と酢酸以外の低分子脂肪酸は増加する傾向にあった。以上の結果から,冷蔵中のにおいの変化は,脂肪酸エステル類が減少し,ピラジン類および酢酸以外の低分子脂肪酸類が増加することによるものと推定した。
著者
大澤 克己 松井 淳一 丸田 正治 森田 祐子 斉藤 信博
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.585-590, 2015
被引用文献数
1

長野県木曽地域の伝統食品である無塩乳酸発酵漬物すんきから植物由来乳酸菌を分離し,ヨーグルト製造に適した乳酸菌を選抜を行い,その乳酸菌を用いたヨーグルトが開発できた.初発菌数1.0×10<sup>8</sup>cfu/ml,発酵時間24時間以内で良好なカードが形成でき,牛乳以外に他の乳酸菌増殖用添加物を使用しないで商業ベースでヨーグルトを製造することを可能にした.
著者
田幸 正邦 武田 真治 照屋 武志 玉城 志博
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.495-502, 2010-12-15
被引用文献数
1 2

著者らは沖縄県で約300年間食されている褐藻類の1種のナガコンブから複数のフコイダンを分離し,それらの化学特性を調べた.ナガコンブから0.1mol/L塩酸で多糖を抽出し,塩化セチルピリジニウムで部分精製を行った.得られた部分精製多糖を陰イオン交換クロマトグラフィーで分画し,4つの画分(LA-1, LA-2, LA-3およびLA-4)を得た.LA-1, LA-2, LA-3およびLA-4の化学組成比には差異が認められたが,いずれの画分もL-フコースおよび硫酸を有していた.LA-1, LA-2, LA-3およびLA-4の分子量はそれぞれ27.7×10<SUP>4</SUP>, 1.0×10<SUP>4</SUP>, 0.8×10<SUP>4</SUP>および1.9×10<SUP>4</SUP>であった.主要な画分であるLA-2とその脱硫酸化物の<SUP>1</SUP>H-NMRスペクトルを解析した結果,(1→3)-結合α-L-フコピラノシル残基を主鎖とし,主鎖の一部のα-L-フコピラノシル残基のC2位に(1→2)-α-L-フコピラノシル残基が結合し,さらにこれらのα-L-フコピラノシル基のC4位が硫酸化されている構造が示唆された.画分LA-3とLA-4はフコイダンとガラクタン硫酸が混在したものであることが分かった.
著者
樋渡 一之 成澤 昭芳 保苅 美佳 戸枝 一喜
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.40-43, 2010-01-15
被引用文献数
1 9

γ-アミノ酪酸(GABA)含有米糠発酵エキスを配合した飲料の血圧上昇抑制作用を検証することを目的として,高血圧自然発症ラットを用いた実験を行った.ラットの体重1kg当たり10.1mgのGABAを含む飲料を1日1回強制経口投与し,8週間飼育した.GABAを含む飲料を摂取した群は対照飲料を摂取した群に対して3週目から低値を示した.試験7週目の血圧は,対照群の234mmHgに対して GABA摂取群は218mmHgであり,有意な低値であった.以上の結果より,GABA含有米糠発酵エキスを配合した飲料は,血圧上昇抑制作用を示すことが明らかとなった.
著者
坂本 彬 井上 博之 中川 致之
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.326-330, 2012 (Released:2013-10-08)

(1)日本国内で市販されている世界各地で生産された紅茶12銘柄を購入し,その化学成分などを分析,測定した。12銘柄はスリランカ4,インド3,中国2,日本1である。(2)タンニン,カテキン類8項目,没食子酸,テアフラビン類4項目,L-グルタミン酸,L-テアニン,γ-アミノ酪酸,遊離糖類3項目の含有量は変動が極めて大きかった。グルタミン酸,テアニン,また総アミノ酸については並級煎茶に匹敵する量を含む銘柄もあった。またγ-アミノ酪酸を60mg%以上含む銘柄もあったが発酵過程で増加したものであるかは判別できなかった。(3)4種のテアフラビンを個別に定量した結果,テアフラビン-3,3'-di-0-ガレートが最も多く,ついでテアフラビン-3-0-ガレート,次ぎに遊離のテアフラビンでテアフラビン-3'-0-ガレートが最も少なかった。また,テアフラビン合計値と赤色彩度を示す表色値aの間に相関が認められた。(4)遊離の糖類のうち,蔗糖,ブドウ糖,果糖,麦芽糖を分析したが麦芽糖は含まれず,検出された3種のうち蔗糖,ブドウ糖が多く,糖類合計として平均1.6%であった。(5)紅茶に含まれる有機酸のうち,シュウ酸を分析した。12銘柄平均含有量は0.54%であったが,シュウ酸特有のエグ味として影響する量ではないように思われた。(6)pHは緑茶同様にほぼ一定範囲に収まり,ほぼ5.00~5.4の範囲であった。
著者
大島 誠 杉浦 実 上田 佳代
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.114-120, 2010-03-15
参考文献数
22
被引用文献数
6

軽度脂質代謝異常を有する肥満男性26名に対し,β-クリプトキサンチンを強化させたウンシュウミカン果汁(強化果汁介入群)と通常量のβ-クリプトキサンチンを含有するウンシュウミカン果汁(対照果汁介入群)を1日160g,8週間連続摂取させ,介入前と介入4週間および8週間後の血清β-クリプトキサンチン濃度,脂質代謝および肝機能指標値の変化について検討した.<BR>果汁投与後の血清β-クリプトキサンチン濃度はいずれの群においても介入前に比べて有意に上昇し,この上昇は強化果汁投与群においてより顕著であった.強化果汁介入群における8週後の血中ALT値およびγ-GTP値は4週後に対して有意に低下していた.血清β-クリプトキサンチンと肝機能指標値との関連について横断的な解析を行ったところ,いずれの肝機能指標値も介入前には血清β-クリプトキサンチン濃度と有意な相関は認められなかったが,介入4週および8週後ではそれぞれ有意な負の相関が認められ,これらの負の相関は8週後においてより顕著であった.一方,強化果汁介入群では,投与8週後のHDLコレステロール値およびLDLコレステロール値の低下がみられたが,対照果汁介入群とは有意な差は認められなかった.<BR>これらの結果から,β-クリプトキサンチンを豊富に含むウンシュウミカン果汁の摂取は肝機能障害の改善に有効である可能性が示唆された.
著者
早田 邦康
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.607-624, 2014 (Released:2015-03-26)
著者
上田 京子 山田 耕路 塚谷 忠之 村山 加奈子 倉田 有希江 竹田 絵理 大塚 崇文 高井 美佳 宮崎 義之 立花 宏文
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.242-249, 2015
被引用文献数
2

本研究ではブロッコリー全草を6つの部位に分け,各部位の栄養成分および細胞機能への影響を明らかにすることを目的として,ビタミンC,<i>S</i>-メチルメチオニン,総ポリフェノール,乳がん細胞増殖抑制および免疫調節機能について,ブロッコリーの各部位の比較検討を行った.<BR>花蕾 : ビタミンC並びに<i>S</i>-メチルメチオニンを多く含有し,ヒスタミン放出抑制能が高かった.<BR>茎,主軸下部 : 可食部以外である茎,主軸下部は,ビタミンC,<i>S</i>-メチルメチオニン,ポリフェノールはほぼ同等量含まれていた.また,花蕾と比較すると抗体産生増強能を有していた.<BR>葉軸 : 茎,主軸下部と同等のビタミンC,<i>S</i>-メチルメチオニン,ポリフェノールを含んでいた.ヒスタミン放出抑制,IgA産生の増強,IgE産生低下の傾向を示した.<BR>葉 : ビタミンCは花蕾の18%,<i>S</i>-メチルメチオニンは花蕾の29%であったが,ポリフェノール量は花蕾の3.1倍含んでおり,ヒスタミン放出抑制,ロイコトリエン放出抑制,IgE産生抑制の傾向が見られ,花蕾と比較すると抗アレルギー素材としての特徴を有していた.<BR>根 : ビタミンCは花蕾の12%,<i>S</i>-メチルメチオニンは花蕾の25%,ポリフェノールは花蕾の83%含まれており,特にMCF-7のがん細胞増殖抑制能を有していた.<BR>以上のように,ブロッコリーの部位別に栄養,機能が分布していることを明らかにした.その他の部位は可食部である花蕾と栄養·機能の特徴が異なっており,これまでに利用されてきた部位には存在しない生理活性物質が未利用部位に存在する可能性がある.
著者
室田 一貴 馬場 貴司 島田 昌彦 佐藤 信行
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.163-170, 2010-04-15
参考文献数
25
被引用文献数
3

骨粗鬆症予防に寄与しうる食品研究の一環として,メタアナリシスにより骨粗鬆症予防効果が示された,一日摂取目安量あたり400mgのカルシウムを配合したフィッシュソーセージの過剰摂取時の安全性を評価した.<BR>試験はオープン試験形式のヒト臨床試験で行い,20名の健常者が推奨の3倍量を,食事とは別に,4週間連続して摂取した場合の影響を検証した.評価は有害事象の確認,理学検査,臨床検査および栄養調査を行った.<BR>4週間の摂取期間,および摂取期間終了後に設定した2週間の後観察期間において臨床上問題となる変動は認められなかった.<BR>以上の結果から,本フィッシュソーセージを日々の食事とは別に日常的に摂取しても,常識的な範囲で摂取を行う限り安全性に問題はないと考えられた.
著者
紙谷 雄志 岩井 和也 福永 泰司 木村 良太郎 中桐 理
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.336-342, 2009-06-15
参考文献数
25
被引用文献数
2 12

本研究は,超臨界抽出により脱カフェイン処理したコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素阻害と,その主成分であるクロロゲン酸異性体の寄与,さらにラットによる糖質負荷後の血糖値上昇抑制作用について検討した.<BR>(1) コーヒー豆抽出物のクロロゲン酸類含有量は38.8%であり,8種のクロロゲン酸異性体はコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素の阻害活性に63.1-85.8%寄与することが確認された.<BR>(2) クロロゲン酸異性体の阻害活性はジカフェオイルキナ酸が最も強く,順にカフェオイルキナ酸,フェルロイルキナ酸であった.その阻害活性にはカフェオイル基がフェルロイル基より強く作用し,カフェオイル基数と共にキナ酸への結合部位も重要であることが推察された.<BR>(3) コーヒー豆抽出物は&alpha;-GI剤(アカルボース,ボグリボース)と類似した作用機序を示し,効果量より低い&alpha;-GI剤量に対して,相加的な併用効果があることが推測された.また,&alpha;-グルコシダーゼ阻害を介した血糖値の上昇抑制作用を示し,糖尿病予防効果のある健康食品素材としての可能性が示唆された.
著者
紙谷 雄志 岩井 和也 福永 泰司 木村 良太郎 中桐 理
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.336-342, 2009 (Released:2011-04-05)

本研究は、超臨界抽出により脱カフェイン処理したコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素阻害と、その主成分であるクロロゲン酸異性体の寄与、さらにラットによる糖質負荷後の血糖値上昇抑制作用について検討した。(1)コーヒー豆抽出物のクロロゲン酸類含有量は38.8%であり、8種のクロロゲン酸異性体はコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素の阻害活性に63.1-85.8%寄与することが確認された。(2)クロロゲン酸異性体の阻害活性はジカフェオイルキナ酸が最も強く、順にカフェオイルキナ酸、フェルロイルキナ酸であった。その阻害活性にはカフェオイル基がフェルロイル基より強く作用し、カフェオイル基数と共にキナ酸への結合部位も重要であることが推察された。(3)コーヒー豆抽出物はα-GI剤(アカルボース、ボグリボース)と類似した作用機序を示し、効果量より低いα-GI剤量に対して、相加的な併用効果があることが推測された。また、α-グルコシダーゼ阻害を介した血糖値の上昇抑制作用を示し、糖尿病予防効果のある健康食品素材としての可能性が示唆された。
著者
成田 正直 阪本 正博 秋野 雅樹 武田 忠明 今村 琢磨 飯田 訓之
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.277-283, 2011-07-15
参考文献数
11
被引用文献数
2

2009年度における北海道のホタテガイの生産量は44万9千トン、生産金額は476億円で、これは北海道の魚種別生産量の約3割、生産額の約2割を占める.ホタテガイは1970年代に天然採苗技術や中間育成技術が確立され、その後、オホーツク海での地まき放流の拡大などにより、生産を増大させてきた.しかし、生産量の増大とともに価格は低下し、1990年代前半から低迷している(図1). ホタテガイの主な加工品目は冷凍貝柱、生鮮貝柱、ボイル冷凍、乾貝柱で(図2)、生産量の割に加工品の種類が少ないことが、魚価低迷の一因とされる.特に冷凍貝柱と生鮮貝柱への仕向け割合が高く(66%)、これらのアメリカ向けを中心とした輸出がホタテガイ価格の底支えを行っている. 北海道立総合研究機構水産研究本部(旧北海道立水産試験場)では、ホタテガイの付加価値向上と需要拡大を図るため、これまで多くの技術開発を行ってきた.この中では、生鮮貝柱の高鮮度流通技術の開発や乾貝柱の品質向上技術など既存製品の高品質化、生産の効率化とともに、新たな製品の企画、開発を行ってきた.その中で、最近製品化されたものとして、ホタテガイ貝柱フレーク(以下、貝柱フレーク)とホタテガイ貝柱の飯寿し(以下、ホタテ飯寿し)がある.本稿では、これら新規製品の基本的製法の確立、技術的改良から、企業移転を図るまでの経過を紹介する.
著者
太田 尚子 遠藤 茉里 澤木 心美 岸川 めぐみ
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.183-191, 2014 (Released:2014-09-25)

α-カゼイン(α-CN)は非常に熱に対する安定性の高いタンパク質として知られているが,オボアルブミン(OVA)との共存下で特徴ある物性を有するゲル状凝集体をつくり得ることが判った。また,この混合タンパク質の試料溶液を調製するにあたり,脂肪酸塩の添加がより均質なサスペンジョンを調製する上で効果的であった。カプリン酸ナトリウム添加のα-CN/OVA混合システムは,OVAに比べ加熱処理の過程でより緩やかな相転移現象を経てゲル化に至り,結果的にこれまでのOVAゲルとは異なる新規なテクスチャーをもつことが示唆された。
著者
石丸 幹二 古賀 咲江 高田 真菜美
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.45-48, 2012-01-15
参考文献数
7
被引用文献数
1 4

微生物制御発酵茶は,近年特に日本において開発,商品化されている新しいタイプの発酵茶である.単一の微生物を用いて発酵処理を行うのが特徴であるが,特に<I>Aspergillus</I>で発酵処理した茶から,新しいカテキン代謝物であるteadenol類が発見され,その化学構造の新規性と抗メタボリックシンドローム活性が注目されている.今回,現在日本で市販されている<I>Aspergillus</I>で発酵処理した5種の微生物制御発酵茶についてHPLC分析をおこなった.分析したすべての茶においてteadenol類が含まれていたが,発酵条件等の違いによる成分含量の差異も認められた.また,茶葉からのteadenol類の調製に関する実験では,比較的安全&middot;安価な試薬類を用いたカラムクロマトグラフィーによりteadenol類を効率的に単離することができた.今後も,茶由来の新規機能性成分の生産とカテキン代謝機構の解明に利用される新しい微生物制御発酵茶の開発が期待される.
著者
青柳 寛司 後藤 晶子 藤野 竜也 伊永 隆史
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.138-141, 2013 (Released:2013-12-26)

国内に流通する国産ブランド牛肉の産地判別を念頭に,2つのブランド牛(松阪牛と飛騨牛)の炭素,窒素,酸素の安定同位体比を調査した。その結果,炭素安定同位体比において両者の間で明確な差が認められ,その差の大きさは両者の飼料の炭素同位体比の差とほぼ一致した。このように,松坂牛や飛騨牛に限らずブランド牛では,それぞれの生育環境に加え,ブランドごとで管理されている飼料の同位体比を強く反映することが予想される。