- 著者
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西 基
- 出版者
- 札幌医科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1997
平成9年5月,科研費支給の決定を受け,同年の秋までに食事等の生活習慣を主たる項目とする自記式質問票を完成し,主として札幌医大第一外科およびその関連病院の協力のもとに,胆嚢癌の病因に関する症例対照研究を開始した.平成12年末までに,症例51例およびこれらと性・年齢(±3歳)を同じくする対照102例から,質問票を回収した.なお,胆嚢癌の症例の集まりが悪く,途中から胆管癌の患者も対象とした.症例の内訳は,男28例,女23例平均年齢は72.6歳,胆嚢癌18例,胆管癌33例であった.発生を促進・抑制する因子のオッズ比を男女の通算で計算した.発生を有意に(P<0.05)促進するものは,1.満腹になるまで食べる,2.魚肉ソーセージ(月1回以上),3.生卵(月1回以上),4.漬物(毎日),5.ドリンク剤(毎日),6.乳酸飲料(週1回以上)であった.危険率10%では,7.油っこい食品を好む(5段階で4以上),8.ハム・ソーセージ(週1回以上)も促進因子となった.発生を有意に(P<0.05)抑制するものは,1.昼食を抜く(5段階で3以上),2.夜食を食べない(5段階で3以上),3.芋(週3回以上),4.パン(週3回以上),5.納豆(週3回以上),6.干魚(週1回以上),7.ヨーグルト(週3回以上),8.チーズ(週1回以上),9.緑黄色野菜(週3回以上),10.林檎(週1回以上),11.バナナ(月1回以上),12.ウーロン茶(週1回以上),13.牛乳(毎日),14.飲酒(毎日)であった.危険率10%では,15.牛肉(月1回以上),16.蜜柑(週1回以上)であった.以上から,食事量が多いことが発生を促進し,野菜・果物・乳製品などが抑制すると考えられた.魚肉ソーセージ・ハム・ソーセージ・乳酸飲料・漬物などは加工品であって,加工により加わった何らかの因子が発癌を促進するのかもしれない.毎日の飲酒が抑制的に働くのは意外であった.油脂を多く含む食品や生卵は,胆嚢の運動に影響を与えるが,これが何らかの影響を及ぼすのかもしれない.なお,生活の不規則性・喫煙・農薬使用・園芸の経験は結局有意とはならなかった.