著者
宮本 和子 米倉 雪子 KOMA Yang Saing
出版者
獨協医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

体重測定調査結果で、乳幼児が徐々に慢性的な低体重になることに村ボランティア・養育者共に気づいた。乳幼児の低栄養‐低体重‐感染症の関連を考える機会にもなった。離乳食の試食で乳幼児が「食べる姿」を目にし、村にある食材で簡易・安価に離乳食が作れると理解したが、農村部ではその習慣が乏しく各家庭で継続的に行うことは容易ではない。生計記録の一例を見ると、農業生産で自給でき、現金収入も得ている家庭では栄養バランスがよく、低体重児・疾病も少ないと推測された。結果報告会に参加した村人の関心も高かった。農村部の乳幼児の低栄養・健康改善には農業生産向上による食糧自給と収入向上が有効かつ実現可能な手段だと考える。
著者
藤田 亮介 澤辺 正人 小田 文仁 河野 進
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

一般の有限群から構成されるキリン複体のホモトピーに関する諸性質をトポロジー的観点から調べ、詳しい情報を得ることができた。その過程で、5次以上の対称群とその部分群の場合には、互いに同変ホモトピー同値になるとの知見を得た。さらに有限位相空間論と関連付けることにより、新たな同変理論の創出に貢献することができた。
著者
坂爪 悟 永井 敏郎
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

派生X染色体における常染色体領域の部分不活化を証明した.染色体の核型と臨床症状から部分的な常染色体の不活化が考えられ,分子生物学的に証明した貴重な題材である.メチル化が及ぶ領域は特定できたがそれが,単にXISTの影響なのか,それとも受精時に何らかの染色体構造異常が生じたかを区別することができていない.染色体構造異常が受精後に生じたことが示唆される.患者細胞にモザイクやキメラが証明できれば癒合染色体の存在を示唆できる物であり,染色体分析を再検討して本研究の総括としたい.
著者
秋谷 かおり
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.149-158, 2004-07-25

左室駆出動態が末梢動脈血流に及ぼす影響を明らかにする目的で,弁膜症例について頸動脈血流と左室駆出血流速度波形との関係を検討した.対象は弁膜症患者104例(平均年齢62±13歳),内訳は,大動脈弁閉鎖不全症37例,大動脈弁狭窄症17例,僧帽弁閉鎖不全症31例,僧帽弁狭窄症19例である.対照は,拡張型心筋症32例,肥大型非閉塞性心筋症12例とした.計測は,心エコー図検査と頸動脈エコー図検査を行い,左室駆出分画,心係数,1回抽出係数,平均左室円周方向心筋線維短縮速度,総頸動脈径,左室流出路ピーク駆出血流速度(LV Flow),総頸動脈ピーク収縮期血流速度(Car Flow)を計測した.大動脈弁狭窄症を除く全ての患者はLV Flowが速くなるほどCar Flowも速く,両者に正相関がみられた.大動脈弁狭窄症はLV Flowは速いほどCar Flowは遅く,両者は負の相関関係がみられた.また,大動脈弁狭窄症では弁狭窄が重症例ほどCar Flowは低下していた. Car Flowに弁膜症における左室駆出血行動態を反映した.
著者
佐野 和史 大関 覚 木村 和正 橋本 智久 増田 陽子
出版者
獨協医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

生体組織を凍結・解凍すると通常では細胞破壊を起こすが、既に食品鮮度を保つために利用されている凍結・解凍時の細胞破壊を極力抑える特殊な冷凍技術(Cell sAlive system, 略称CAS)を用いて切断後凍結保存した動物肢を解凍し顕微鏡下に血管吻合再接着して生着生存させうる技術開発を行った。結果現時点ではCAS凍結により細胞破壊をある程度抑える事ができたが、生着生存させるには至らなかった。今後に繋がる本研究成果として瞬時に組織内をむら無く均一に凍結し得る実験用CAS冷凍装置の冷凍能力を向上と、より組織障害性の少ない細胞凍結保存液の調整調合が鍵である事がわかった。
著者
木村 真三 三浦 善憲 高辻 俊宏 三宅 晋司 佐藤 斉 遠藤 暁 中野 正博
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

チェルノブイリ原発事故発生から30年後の被災地域において、一年間にわたってホールボディカウンタによる住民の内部被ばく調査、陰膳法による食事調査を行い、関連を分析。内部被ばく調査では、予備調査で最大23,788Bq/body, 本調査で最大7,437Bq/bodyの放射能が確認され、冬季は高く、夏季は低い傾向がみられた。食事調査では、年間合計で1,446サンプルを分析。森林由来のキノコ、ベリー類や牛乳で高い放射能が確認され、最大は乾燥キノコで24,257Bq/kgであった。30年経過時点でも食事から放射性物質を取り込んでいる実態が明らかになり、食生活の観点から被ばく予防を行う必要性が確認された。
著者
江幡 敦子 竹川 英宏 大門 康寿 小林 祥泰
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.105-110, 2006-03-25

脳梗塞の早期治療は重要だが,超急性期のtissue plasminogen activator (t-PA)の他に,早期治療の有効性は証明されていない.われわれは,t-PA適応のないアテローム血栓性梗塞の早期治療の有効性について検討した.対象はJSSRS脳卒中急性期患者データベースに登録された127例のアテローム血栓性梗塞で,発症から当院到着までを発症一来院時間とし,発症3〜6時間の早期来院,6時間以降の非早期来院に分類し,退院時のmodified Rankin Scale (mRS)およびNIHSS改善度を求めた.退院時mRSに差はなかったが,NIHSS改善度はそれぞれ1.9±3.5,1.6±6.4であり,早期来院で有意に改善した.近年,"Brain Attack"の重要性が唱えられているが,t-PA適応に外れた場合でも早期に来院,治療をすることの重要性の一部を裏付けたものと考えられた.
著者
岩波 佳江子
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.39-46, 2005-03-25
被引用文献数
2

腱への副腎皮質ステロイド注射が腱細胞のアポトーシスを誘導するかどうかを明らかにする目的で,3週齢のSprague-Dwaleyラットのアキレス腱にbetamethasone溶液50μLを計5回注入し,腱を摘出して免疫組織化学的検索を行った.アポトーシス陽性の腱細胞は,TUNEL染色で全細胞の5.2±3.9(平均±標準偏差)%,ssDNA染色で平均7.7±1.3%であった.これらは同量のPBSを注射した群,ならびに無処置群に比べて有意に高率であり,ステロイドの局所注射によって腱細胞にアポトーシスが生じることが強く示唆された.臨床的にステロイド注射の合併症として腱断裂が生じることが知られているが,その理由はまだ十分に分かっていない.本研究の結果からみて,アポトーシスによる細胞数の減少のためコラーゲン産生能が低下し,腱が脆弱となる機序が考えられる.この研究は,生体内にある腱へのステロイド注射によってアポトーシスが誘導されることを示した最初の報告である.
著者
米澤 弘恵 石津 みゑ子 石津 みゑ子
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

感染予防隔離患者の看護ケアの質を保証するために、隔離状況に伴う臨床看護師の倫理的意思決定プロセスの明確化、隔離状況における看護師の倫理的行動意図と実践力との関連性の解明と、隔離に伴う看護倫理的実践力育成への教育プログラムを構築した。
著者
一杉 正仁
出版者
獨協医科大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度に行った動物実験結果および平成18年度に行った妊婦衝突試験用ダミーを用いたスレッド試験結果を総合的に解析した。その結果、妊婦が時速30km/h以下の追突事故に遭遇した際、腰部にかかる外力のみでは、胎児の予後に悪影響をおよぼすというエビデンスは得られなかった。さらに、追突事故に遭遇した前席乗員は、反動で腹部を車室内部に強打することがわかった。したがって、妊婦乗員のシートベルト着用効果を考えるうえでは、この腹部にかかる外力を低減させることが重要であると結論づけた。シートベルト着用で、追突時における腹部とステアリングとの二次衝突をある程度予防し、子宮内圧の変化を低減できることがわかった。しかし、負荷された加速度が大きいか、あるいは乗車位置がハンドルと近い場合に、シートベルトを着用してもある程度の外力が腹部へ作用することが明らかになった。そこで、さらなる積極的予防策として、緊急ベルト引き締め装置を追突事故時に作動させるシステムを考案した。その結果、比較的高速度の追突事故遭遇時には、子宮内圧をさらに低減させ、胎児保護に効果的であることが示唆された。また、低速度(約13km/h)の正面衝突事故をモデルしたスレッド試験を行ったところ、シートベルト着用時には、子宮内圧の上昇を35〜45%に軽減できることがわかった。したがって、シートベルトの着用は、追突および正面衝突時の妊婦子宮内圧上昇を抑制するうえで有効であった。妊婦のシートベルト着用について社会的議論がされているなか、われわれはシートベルト着用が胎児保護に有効である科学的根拠を明らかにした。本研究成果の一部は新聞、テレビ等でも紹介されたが、これら成果を積極的に公表し、一般の方に正しい知識を啓蒙している。