著者
有田 博之 山本 真由美 遠藤 和子
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.246, pp.939-945, 2006-12-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
8

将来, 食糧事情の逼迫が生じる場合を想定した農地資源管理方式として, 耕作放棄田等の不耕作水田を必要に応じて復田できる形で維持管理するのが適切であることが明らかにされている.不耕作水田を廉価に維持管理するには, 毎年の除草・維持管理が必要だが, その方法の具体的内容については十分な検討はない.そこで, 本研究では, 不耕作水田の効果的な維持管理方式の提案を目的として休耕田の管理実態調査を行った.結果, 休耕田の管理に於いては夏期休閑耕が行われておらず除草が除草剤に依存している実態を明らかにした, また, 復田を前提とする場合には湛水管理が省力的で除草剤節減的であること, 除草剤使用を減少させるには夏期休閑耕の普及が1つの解決になることを指摘し, 普及の条件について提案した.
著者
木村 眞人
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.553-557,a1, 1991-05-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5

土壌は固相, 液相, 気相よりなり, 固相は岩石, 一次鉱物, 粘土, 植物遺体, 腐植等より構成されている。これらの成分がさらに団粒を形成し, 微生物環境として土壌は極めて多様な世界をもたらす。ここでは土壌の環境を微生物の生育の場としてとらえ, その特徴を考察する。すなわち, 固相を構成する土壌成分, 団粒と微生物の分布の関係, さらには土壌空気や土壌pHとそこに生育する微生物の関係を述べる。
著者
早瀬 吉雄
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.943-948,a1, 1994-10-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

水田域は, 自然の水循環を通じて洪水調節などの国土保全機能を果たしている。ここでは, 水田域の洪水防止機能の評価は, 耕作放棄など農業によって, 治水計画上の保留量が変化して計画洪水流量に及ぼす影響の検討と考え, 分布型流出モデルを用いて棚田域や中山間地水田域で耕作放棄した場合の試算を行い, 洪水防止・軽減機能の評価を検討した。機械排水している低平地水田域では,“自然に溜まる” 氾濫湛水量で評価され, ダムの洪水調節容量に相当する流域のある例を示した。さらに, 中山間地・農村域での洪水防止機能向上事業を土地改良事業と連携して推進することによって流域の水害発生の危険度の低下が図れることを提案した。
著者
山崎 不二夫 風間 輝雄
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.85-90,a1, 1979-02-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3

多目的ダムの異常出水時のダム操作については, 降雨予測の面から多少研究されているが, まだ実用段階にほど遠く, 現実にはダム操作規則にただし書をつけ, ダム管理者に一任している。この安易な対応がしばしばダム災害の原因になっているので, 筆者は出水時に貯水位の測定値に基づいて適応操作を行う方法を案出した。これによれば水位の測定からゲート開閉までを自動化することも容易で, ダム管理者の主観的判断を排除しうる。
著者
矢野 武彦
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.188-191,a2, 1978-03-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3

有明海は, 干拓の造成に適しているため昔から多くの干拓事業が実施されてきている。この報文では, 有明海の特性および干拓の実施状況, 国営有明干拓建設事業, ならびに有明海における海岸保全事業の実施状況, 昨年7月1日新規に発足した国営有明海岸保全事業について, それらの概要を記したものである。
著者
志村 博康
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.25-29,a1, 1982-01-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7
被引用文献数
11

水田・畑・森林等がどの程度の貯水容量をもっているかを, 概算ではあるが, 国土的スケールで求め, 既設ダムの洪水調節容量と比較した. 次いで国土保全上どれだけの貯水容量が必要であるかを概算し, その必要貯水容量を水田・畑・森林・ダム等で, 将来, どのように分担する必要があるかを明らかにした. 得られた分担割合には, 森林68%, ダム17%, 農地 (水田と畑) 15%で, 農地の貯水機能が無視できないことが明らかになった.
著者
中川 雅允 本林 隆 新井 裕 西村 拓
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.229, pp.71-77, 2004-02-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4

カトリヤンマは水田を主な生息場所とするトンボで, 水田の土壌中において卵態で越冬する. 以前は普通にみられたが, 近年著しい減少傾向にあることが報告されている. 本研究では, カトリヤンマの卵の生態について休眠性と孵化条件を調べた. その結果, 春期の休眠覚醒後の卵は一時的であっても乾燥による影響を受けやすいこと, 孵化は湛水状態にあったとき光を刺激として促進されることがわかった. また, 近年の圃場整備による乾田化や休耕田の増加はカトリヤンマの減少をもたらすことが示唆された.
著者
池森 龍一
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.523-524,a3, 2006

現在コンクリートは, さまざまな工事で多種多様に使用されている。そのコンクリートを使用・施工する上で必ず直面するものが「ひび割れ」である。<BR>本報では, 県営広域農道整備事業大村東彼杵地区で施工したモジュラーチエ (コンクリート構造物) のアウトフーチング (マスコンクリート) に発生した「温度ひび割れ」について, 発生状況から調査・原因を究明し, その対策について紹介する。
著者
月岡 存 米本 剛理
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.127-130,a2, 2006

低処理再生骨材を用いてコンクリートの配合や厚さの異なる植生型ポーラスコンクリート (連続空隙率21-25%程度) を作製し, 2年間余に渡り, 2種類の芝草の屋外生育試験を実施した。<BR>植生ブロック上に播種した西洋芝は, すべての植生基盤 (厚さ5-15cm) を貫通し, 自然状態で継続して生育した。植生に当たっては, 芝草が発芽し, 根が植生基盤下の自然土壌に達するまでの問, 水やり等の初期の養生管理が重要である。また, 傾斜地における植生においても, 平地の場合に比べ多少生長は劣るが, 継続した生育が確認された。<BR>ポーラスコンクリートを用いた植生基盤では, 高麗芝など根の浅い植物は生育に適さないため, 植物の選択が重要である。
著者
神尾 彪 小林 孝生
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.799-802,a2, 2004

水稲田1耕区 (無暗渠水田, 30a) 内において, 用水路側, 中央部および排水路側の3地点でメタンフラックスの測定を行った。その結果, 次のことが明らかになった。<BR>(1) メタンの発生量は場所によって異なり, 用水路側でのメタンの発生量は排水路側でのそれの約1.8倍であった。<BR>(2) 同一水田の同一場所におけるメタンの発生量は毎年異なり, 3力年間で約1.8倍の相違があった。<BR>(3) 梅雨寒時のメタンフラックスは地温の低下によって若干減少した。<BR>(4) 中干し後にメタンフラックスが激減する要因として, 中干し後の土壌中メタン濃度の著しい減少が考えられた。<BR>(5) 田植え前と落水後の水田からのメタンの発生量は微少であった。
著者
緒方 英彦
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.193-196,a1, 2003-03-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
2

農村には, 農業に関わる歴史的事件などを発端とする祭りが数多くある。この祭りは, 地域住民が祭りの発端となった歴史的事件を通して, 地域の風土に関心を抱き, 地域の歴史を振り返るための機能を有している。農村の祭りがその機能を十分に発揮し, かつ伝統行事として継続されるためには, 当事者である地域住民の祭りに対する意向を調査しておく必要があるるそこで, 歴史的農業水利事業を発端とする祭りの一つである鳥取県八頭郡郡家町郡家地区の安藤祭りの現状を調査し, あわせて参加者意識を調査することで, 農村の祭りが有する機能が十分に発揮されるための要因を検討した。
著者
長田 実也
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.331-335,a1, 1993-04-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10
被引用文献数
6

全国の畑地帯において地下水の硝酸性窒素濃度の上昇が指摘され, 生活用水源への懸念が社会問題化している。宮古島では, 水道水源である湧水の硝酸性窒素濃度が1970年代から1980年代後半にかけて上昇し, その後低下している。この濃度変化は農地への施肥総量を反映したものであると考えられる。この施肥量は時の農業情勢を映して増減しているようである。地下水の水質保全は, 汚濁源対策に尽きるが, 住民の理解と協力が不可欠であり, 地域社会の将来構想も踏まえた上で検討されるべきものである。とくに施肥の制御については, 必要な農業生産を維持しながら水質に過剰な負荷を与えないような, 均衡点を見いだす必要がある。
著者
八鍬 利助
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木研究
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.281-285, 1955

1. 図1に示したような浸透計に泥炭土, 火山性砂土砂土および埴壌土を填充してこれに潅水し, 浸透量を自記せしめた。<BR>2. 風乾状態の土壤に水を潅水したところ, 保留量の最も多いのは埴壤土で, 火山性砂土これに次ぎ砂土は最も少ない (表5)<BR>3. 火山性砂土および砂土においては流出開始直後に多量の浸透がありその後急に減少するので, 浸透量累積曲線は最初の上昇は極めて急であるが, 時間の経過と共に傾斜は次第に緩かになり, 30時間後はほとんど水平となる。埴壤土においてはこの傾向は一層甚だしく, 20時間以後にはほとんど水平に近づく。泥炭土においては最初の浸透量が少いから曲線は緩かに上昇するが, 時間の経過による浸透量の減少が小さいので4時間経過後の毎時の浸透量は他土壤よりかえつて多く, しかも長い間浸透が続くので長期にわたり緩かに上昇する。(図2および表9)<BR>4. 浸透量累積曲線から毎時の浸透量を読み取り, 時間と浸透量との関係を実験式で表わし, 時間による浸透量の減少する割合を見るに, 泥炭土の浸透量減少は甚だ小さい。すなわち泥炭土においては最初の浸透量は最も少いが, 浸透量の減少が小さいので浸透は長い間続く。本実験の一部は文部省総合科学研究費の援助を得て行つたものである。同省の御厚意に対し深く感謝の意を表する。なお資料の整理には当教室員工藤勇夫氏および大泉英子孃の手を煩わしたことが多い。ここに記して深謝する次第である。
著者
清野 修 難波 俊章 大森 康弘 栗木 実
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1307-1313_1,a1, 1999-12-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11

岡山海岸保全事業では, 児島湾締切堤防にある2カ所の旧樋門部の閉塞盛立工事を行った。旧樋門は, 厚さ15-20mに達する軟弱な海成粘土層の上に築造されており, 高圧電力ケーブル, 管理橋などといった許容変位量の小さい重要施設が添架されていた。こうしたことから本工事では, 旧樋門と堤体の変位計測を行い, その情報を工事に反映する情報化施工を行った。旧樋門の変位計測結果は, 水平変位が約9mm, 沈下が約26mmで管理基準値以内であった。また, 堤体についても, すべり破壊するような変位過程の兆候も見られず, 安定を保持した状態で工事を終えた。本稿は, 重要施設に近接して軟弱地盤上で盛土した, 旧樋門閉塞盛立工事の情報化施工について報告するものである。
著者
村山 忠一
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.119-125,a1, 1986-02-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
1

改良山成工の土量計算方法の一つ, メッシュ法は, 測定メッシュを大きくするに従って計算土量が小さくなる傾向がある。今日これは誤差の問題とされているが, 実はメッシュの四隅のデータの平均計算で, プラスデータとマイナスデータが相殺しあうことに原因する量の見落しがある。現場でいう (メッシュ内土量) がこれであって, この解明をしながら, メッシュ法におけるデータ処理の基本問題を考察する。