著者
中島 善人 宇津澤 慎
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.795-799,a1, 2008-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

我々は, 核磁気共鳴スキャナーとよばれる装置を開発中である。この装置は, 核磁気共鳴分光の原理を用いて, 原位置またはオンサイトで試料中の水を定量かつリアルタイムで計測できるポテンシャルがある。片側開放型という特殊な構造を採用しているので, 計測対象がどんなに大きくとも, その表面を非破壊でスキャンできるという特長がある。この装置が農業農村工学に使える可能性があることを, 2つの室内実験, すなわち土壌サンプルの体積含水率計測, セメントペーストの硬化過程のモニタリング, の成功によって例証した。
著者
高木 東 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.313-318,a2, 1989-04-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
24

農地斜面上の水の移動, すなわち降雨によって生じる表面流および雨裂内の流れについて述べ, さらにそれらの流れによって生じる土壌の流亡すなわち面状侵食および雨裂侵食について, それらの現象を記述する基礎方程式を中心に水理・水文学的な解説を行った。次に, それらを踏まえて, 耕うん, 等高線栽培, 有機物の施用そしてマルチングなど農地における土壌の管理が土壌の流亡の制御に果たす役割について解説した。
著者
中野 政詩 宮崎 毅 田渕 俊雄
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.525-530,a1, 1989-06-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
14

フィールドで土中の物質移動をみると, 特異的に,(1) 長く続く大間隙を通る移動,(2) 斜面における土中の移動,(3) 深い土層中の移動,(4) 表面に亀裂が発達した土中の移動, こうしたものをよく知ることが必要である。その特徴として, 大間隙中の移動は極めて早い速度をもち,深い所の土塊中の水分を素早く補給する。斜面では水流の方向が独特な向きをとり,成層土では各土層でその方向がまちまちになる。深い土層中では,通年鉛直下向の移動を起こし地下水を涵養する。また,亀裂が形成された土地では,亀裂に囲まれた土塊中で個々に移動が異なる。こうした点を解説して,講座のまとめとした。
著者
粕渕 辰昭 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.237-241,a2, 1989-03-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

土中の物質移動が,太陽放射を源とするエネルギの移動と深く結びついていることに焦点を当てて解説した。まず,地表におけるエネルギの流れとそれに連携した土中の熱伝達の特徴を述べ,重力とは逆の方向である下から上に向う流れが重要であることを指摘した。次に,土中におけるエネルギ移動と物質移動との相互関係について,水分不飽和領域における温度勾配下の水移動の特徴を述べた。さらに,視野を拡大し地球レベルでの土中のエネルギと物質移動を生物圏の中で位置づけ,今後の農地管理にもこの視点が必要であることを述べた。
著者
石田 朋靖 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.421-428,a1, 1989-05-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
27

従来, 植物に対する土中水の有効度は, pFに代表される土中水の状態によって静的に判断されることが多かった。しかし, 植物の生長は植物体自身の水分状態によって決まるものであり, その水分状態は根に向かう水移動と大気の蒸散能との相互関係の中で動的に決定されている。本章では土壌, 植物, 大気を連続的にとらえた系 (SPAC) における水移動について解説し, 系内の各部位での水分変化の特徴を述べ, こうした水移動の中で決まってくる植物の水分状態と植物生長, あるいは生産物の品質との関係についても若干の説明を加えた。
著者
宮崎 毅 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1225-1230,a2, 1988-12-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7

土壌中の微生物の生態について, ごく初歩的な知識をまとめた。土壌による水の浄化機能など, 水循環や物質循環の中での土壌微生物の役割の重要性は, 従来から指摘されては来たが, そこにはどのようなメカニズムが働いているかについてわかりやすい説明はなかなか見出し難い。本講では, 土壌微生物の基礎知識をでき得る限り簡略に記述し, 後半において微生物の生存と増殖が間隙サイズのレベルでどのように生じているかを示す代表的なモデルとして, モルツのモデルとマクラーレンのモデルを解説した。微生物の消長と物質移動の現象も質量保存則に基づいて記述できることを示した点に, 本講の特徴がある。
著者
大井 節男 岩田 進午
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1115-1121,a2, 1988-11-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
8

化学物質は, 土中の複雑な間隙の中を, 移流と拡散との結合した運動により移動する。そのため, ミクロに見ると, きわめて複雑な移動現象に見える。しかし, マクロ的には, 平均流速と分散係数のみで表される非常に単純な現象となり, この分散現象の理解こそが, 物質移動を解くカギとなる。分散現象に関連した概念は, 現在かなり混乱しており, 本講では, 分散の理論的背景と概念の整理が行われている。まず, 拡散現象について, 拡散とは何か, 拡散のスケール効果, 拡散速度を明らかにした上で, 次に, 移流と結合した分散現象を, 毛管中の分散, 粒子層中の分散, 土中の分散に分けて述べている。
著者
遅沢 省子 久保田 徹 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.135-142,a2, 1989-02-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
14
被引用文献数
1

土壌のガス組成は, 植物根や微生物の呼吸や物理・化学反応により, 分子状酸素が消費される一方で二酸化炭素, および条件により硫化水素, メタンなどのガス状物質が生成するため大気とは異なり, また場所により不均一である。そして, ガス成分の濃度勾配を小さくする向きに生じるガス拡散, および風や雨水の浸透, 気圧の変動などによって生じるガスの対流型移動 (マス・フロー) のために, 土壌ガスはたえず動き, その組成は変動している。この2つの型の移動が土壌間隙の幾何に依存する機作は異なり, マス・フローは間隙径分布に, 拡散は拡散に有効な連続間隙の総体積と屈曲度に強く依存する。土壌-大気間のガス交換への寄与は後者が大きいと考えられる。また, 液相中のガス移動や土壌におけるガスの測定法についても述べた。
著者
中野 政詩 宮崎 毅
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.47-52,a1, 1989-01-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
19

土壌中の移動物質すなわち土中ガス, 化学種等の発生源として, また化学種や水の貯留や放出を司る物体として, 土中の有機物質を位置づけ, 特に粗大有機物の分解のプロセスについて解説した。まず, 定性的なその分解の様子を概説し, 各種有機物質がその存在量に比例して分解速度を決定し, 新規投入量とのバランスの中で蓄積と消失が定量的に決められる。そして, 有機物質の蓄積が連続投与によって, やがて平衡に至り, 適切な投与量の決定が可能となることを示した。最後に有機物質の蓄積が, 団粒の形成をもたらし, 土壌化の促進を促すが, その様子について若干の事例を挙げて説明した。
著者
中野 政詩 宮崎 毅
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.693-697,a2, 1988-07-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3

土中の物質移動を最適に制御することにより, 基盤整備, 農地開発, 土壌防災, 環境保全, 汚水処理, 水資源管理等の農業土木事業の効用が向上することを述べ, 必要な知識として土の実艨の理解に加えて, 移動則および保存則の適用にもとつく水の移動, 化学物質やガスの移動, さらに熱の移動と体積変化との相関を知ることの重要性を述べ, 有機物の分解や微生物活動の影響を指摘する。また, 物質移動の理解は, 土の内部での物質の分布形態を知ることと共に, 土の境界での物質の出入りを知ることが土の物質移動論と現実的な技術問題との接点として重要であると述べ, 境界の形や性質に関心と理解を向けることを強調した。
著者
溝口 勝 藤井 克己 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.903-909,a2, 1988-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
19

降雨あるいは潅漑などによる水の貯留後に, 重力に逆らって生じる土中水の上方移動の現象について蒸発を中心に解説した。圃場を含めた不飽和土中でみられる水の上方移動には, 土壌表面からの蒸発, 植物を通しての蒸散および土の凍結がある。これらの現象は一見全く関係がなさそうに見えるが, 前回の講座で解説された水分移動式の右辺に吸込み項を付け加えることで整理できる。本講座ではこれらの土中水の上方移動現象をこの観点から見直し, 不飽和土中で生じる水の移動を統一的に理解できるよう, やさしく解説した。
著者
塩沢 昌 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.791-797,a2, 1988-08-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4

水が土中を地下水面に向って降下浸透するときのメカニズムについて, 水移動の基礎式の物理的性格を考察した。すなわち, 土の上層部における水移動は, サクション勾配の影響が大きい流れであり, 水分分布をなだらかに直線化するように降下するものである。一方, 土の深層部では, むしろ重力による水の流れが支配的になり, 重力項だけを用いて水分分布の解析の容易にできるものとなる。そして, 地下水面への水の到達は, 水移動における排水過程として解析することができ, それは土中水分を均一化する水の流れになる。こうして地下水涵養の物理的意義づけが明らかとなり, 砂丘地における実測と比較して検証された。
著者
南 勲 徐 榮済
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.1157-1164,a1, 1991-10-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
16

韓国西海岸には, 多数の淡水化湖があり, 今後もその数は増加する傾向にある。従来の淡水化湖は, オランダの第一期アイセル湖のように外海から海水が逆流しないことのみを考慮し, 湖内の水質改善の対策がなかったため, 多くのトラブルを生じてきた。底層排水施設による湖内塩分濃度改善対策を考案し, 具体的に韓国の南陽淡水化湖と大湖淡水化湖の改善工事を実施した。とくに韓国西海岸では, 潮汐差が大きい引潮時に内外水位差を利用して, 下層部の除塩施設が容易に操作され, 淡水湖化を促進しやすい環境にあると考えられる。
著者
松村 史基
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1009-1012,a1, 1993-11-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
1

県営かんがい排水事業和口地区は, 静岡県磐田市の準用河川古川を農業用排水路と位置付け, コンクリート3面張り工法により改修を進めてきた。しかし, 平成3年12月, 環境庁編集の「日本の絶滅のおそれのある野生生物 (レッドデータブック)」に掲載されているカワバタモロコの生息が判明し, 排水路改修とカワバタモロコ保護の両立を図りながら事業を進める必要が生じた。保護対策として, 古川に隣接した用地0.39haを買収し, 保護池3カ所と人工の疑似小川200mを施工し, カワバタモロコの生息場所とした。これらの静岡県農政部の試みの詳細を報告する。
著者
河上 親 片岡 正法
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.844-848, 1985-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7
著者
久保田 治夫 須藤 清次
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.513-517,a1, 1987-06-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
2

茨城県内を流れる小貝川は, 低平地域を流れるため蛇行が著しく水が滞留しやすいこと, 利根川から逆流してくることなどから, 水害を起こしやすい条件をもっており, 昭和になってからの水害は, 大小合せて今回で12回目を数える。今回の特集を機会に, 10号台風に係る水害を振返り, 小貝川低平地域の河況と洪水の特徴, 農業用施設等の被害状況を報告し, 今後の課題を探ることにした。
著者
福与 徳文 田中 秀明 合崎 英男 遠藤 和子 小泉 健
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.115-120,a2, 2007-02-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

デルファイ法を用いて農村資源管理の将来を予測するとともに, その影響の大きさと対策の有効性を評価した。20年後には農地面積は現在の474万haから413万haに減少し, 農業水路は現在の40万kmの3割に当たる12万kmが管理困難に陥るという結果を得た。また, 耕作放棄増加による影響としては, 畦畔・法面の崩壊による土砂崩壊や洪水被害の発生が最も危ぶまれ, 管理困難水路増加の影響としては, 土砂小枝の堆積による湛水被害の増加や灌漑排水への支障が最も危ぶまれる。また, 対策としてはハード整備にあわせた保全管理体制の構築や保全管理に対する公的助成の拡大などの有効性が高いと評価された。