著者
牛野 正
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.279-284,a2, 1995

神戸市北区長尾地区では, 行政主導による住民主体の地区総合計画 (土地利用計画) づくりを行い, ニュータウン開発に伴う幹線道路の整備や河川改修等と調整をしながら, 県営ほ場整備事業を実施し, 優良農用地の保全や, 農村環境の整備を行っている。<BR>この過程で, 土地利用秩序の形成とも関わる非農用地換地を13.9haと多数実施しており, このことで有名な所である。さらに, 旧村規模で土地利用秩序の形成を図りながらほ場整備事業を実施できるように工夫されてきた神出方式をほぼ完全に適用して, 大きな成果も挙げており, 神出方式の有効性を検証した事例としても特色がある。
著者
元杉 昭男
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.227, pp.651-656, 2003-10-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
12

渇水年において河川取水をめぐって, 新たに開発された上流の農業利水団体と古くから河川水を利用してきた下流団体との間に発生した水利紛争および古田優位から上流優位へという水利慣行の成立に非協カゲームのモデルの適用を試みた.その結果, 合理的な選択として, 紛争に伴う人的物理的コストを考慮すれば, 政治権力が介入しない限り, 上流団体が上流優位行動をとり, 下流団体 (古田側) がそれを容認する帰結となり, 古田優位は成立しない. この場合に古田側が監視等の予防措置を取れば, 紛争コストと予防措置コストの和が渇水時の総被害を上回らない限り, 古田優位も成立し得ることが明らかになった. ゲーム理論の適用が水利紛争の構造解明に有益である.
著者
中澤 和彦
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.1187-1192,a1, 1997

戸ノロ用水は阿賀野川水系日橋川 (猪苗代湖), 湯川および澗川を水源とし会津若松市周辺の水田2,000ha余りを潅漑している。<BR>元和9年 (1623年) 八田内蔵之助が会津藩主蒲生忠公に願い出て, 開削工事に取りかかってから14年の歳月をかけ八田野村までの4kmの水路を築造したことが本用水の始まりである。<BR>藩政時代から地域との結びつきが強く, 市内全域を網の目のように走る用水路は, 農業用水のみならず, 生活用水, 工業用水, 軍事用水, 環境用水等いろいろな機能を兼ね備えていた。その機能は, 現在に至るまで連綿と受継がれている。<BR>報告文の中では, 戸ノロ用水歴史的経緯と現状における問題点を中心に報告するものである
著者
橋本 俊哉
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.101-104,a1, 2002

農業関連施設におけるゴミ問題において, どのような対策が有効と考えられるか, その考え方を示した。その出発点は「ゴミが捨てられているのは, そこにゴミを捨てた人がいるからである」という視点である。それによって地域住民や観光目的の利用者に禁止や強制を強いる性格の対策ではない, 人びとの自発性に基づいたゴミ対策を講じることが可能となろう。<BR>そこでまず, 人びとのゴミ捨て行動の規則性とゴミを捨てる際の心理について述べ, ゴミを投棄させないためには, また回収容器にきちんと捨てさせるためにはどうすればよいか, 6つの誘導原則に整理して述べた。

1 0 0 0 OA 白根郷の歩み

著者
金内 與一郎
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.581-583,a1, 1982-07-01 (Released:2011-08-11)

白根郷は新潟平野南部, 信濃川・中之口川に囲まれた輪中地帯で総面積559haに及ぶ。本文では, 約400年前からの開拓, 治水開発から, 明治時代の排水改良, 大正に入り大河津分水後の用排水改良, 昭和では戦後の農地改良, 戦後の地盤沈下対策事業などの農地改良の変遷を示した。とくに文末では昭和50年以降の用排水改良経過に及び, 昭和56年3月に白根郷が全国初の農林水産大臣賞の栄を得た経過を示した。
著者
朱 敦堯 中野 政詩 宮崎 毅
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.194, pp.269-276,a2, 1998

土壌物理性が違うの二つ試料, 砂とYolo粘土を用いて, 斜面における水移動の数値シミュレーションを行った。第一, 湛水開始時間の数値解と準解析解を比較した。湛水開始時間は, 降雨強度の増加とともに指数関数的減少する。土の浸潤能は, 傾斜角に大きく依存し, 特に傾斜角30°になると, 斜面と平面の浸潤能が著しい相違である。<BR>第二は, 土壌物理性と斜面水流の関係を調べた。砂の場合には, 斜面と平行のフラックス成分は斜面水流に大きい影響を与る。湛水開始の際, 砂の場合は, 浸潤前線の後方で飽和層と不飽和層を明確に区別できた, しかし, この砂の特徴は, Yolo粘土で見つけなかった。第三には, 傾斜角と降雨強度はフラックスの大きさ及び屈折を決定する最も重要な二つ要因であることが分かった。土の表面での最大屈折角は, 傾斜角によって直線に増加し, ただし, 降雨強度が大きいと, 最大屈折角は小さくなる。
著者
鷲尾 貞一
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.577-580,a1, 1982-07-01 (Released:2011-08-11)

西蒲原平野は, 信濃川が魚沼台地末端の標高40mから33kmで12m地点へ流下する水衝部を頂点とするので, 洪水ごとに破堤災害を繰返した。その水衝部から海岸山地を切り開き, 日本海へ過水を切落すことは, 蒲原平野全体, なかんずく西蒲原平野の長い間の願望であった。1922年この完成通水をみてから60年, この信濃川改修を軸に用水河川に変革されてゆく西蒲原諸川の変化と, 低平かつ微高差の多いこの地域の水利構成の過程を報告する。
著者
大槻 恭一 岡田 周平 神近 牧男 玉井 重信
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1315-1320_1,a1, 1999-12-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7

鳥取県の一大観光資源である鳥取砂丘は, 戦後まで人間を寄せ付けない不毛地であった.戦後, 鳥取砂丘の約半分は鳥取大学に移管され, 現在は乾燥地研究センターとして研究・教育の場として活用されている。残り半分は鳥取市に払い下げられ, 当初は全面砂防林となる予定であった。しかし, 観光業者, 文化財関係者等の圧力で, 鳥取砂丘の一部は天然記念物として保護されることになった。ところが, 近年, 周辺の砂防林が微気象に変化を与え, 砂丘の草地化が進行し始めた。このような状況に対して, 現在では人為的に砂丘の除草が行われている。本報では, わずか50年程度で大きく変貌を遂げた鳥取砂丘の開発と保全の関わりにっいて検討した。
著者
甲本 達也
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
Rural and Environment Engineering (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.146, pp.95-100,a2, 1990
被引用文献数
2

粘土の液性・塑性両限界決定のためのフォールコーンテストの適用性について検討した。テストは種々の粘土について, 60°, 0.6Nコーンおよび直径100mm, 深さ50mmの容器を用いて行った。テストによれば, いずれの粘土の場合も貫入量~含水比関係は幅広い含水比の範囲においては両対数紙上で直線で表されることがわかった。この貫入量~含水比直線関係を用い, 貫入量が12.0mmおよび1.3mmに対する含水比を読取ると, それらはカサグランデ法による液性限界および塑性限界に相当することが明らかとなった。

1 0 0 0 OA 畜産土木

出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.437, 1982-05-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5
著者
小林 裕志
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.439-441,a1, 2000-05-01 (Released:2011-08-11)

農業工学系分野のグローバル化に呼応し, 全国の大学で再編整備がすすんでいる。「生命科学の府」を標榜する北里大学において農業工学系分野の教育研究組織の設置はどのような意義があるのか。この命題をグローバル化の潮流とあわせながら検討して1999年に発足した「生物生産環境学科」の建学方針などについて論述する
著者
佐々木 清一
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.27-30,a1, 1978-01-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1

北海道はわが国でも火山の多い地域の一つで, 今日知られているものだけで10ヵ所以上の噴出源からのテフラ (火山噴出物) が地表を広く覆っている。そのため複雑な土壌を構成していて, 土地利用上多くの困難がある。ここにはそれらのテフラの特性をそれぞれ略述した。また, 北海道でのおおよその土壌分類に従って類別した土壌群ごとの分布面積とそれらを農地として利用する場合の特徴と現況を示した。
著者
大橋 欣治
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.383-389,a2, 2005-05-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7

人・物・情報の国際的な流れが加速化している。その中で, 国際的な整合性を持った技術者の高等教育, 資格制度, 継続教育の確立が求められている。農業土木技術者に関しては, 比較的早期から, これらの課題に取組んできている。技術者教育については, 特にJABEEによる認定制度が開始され, 農業土木関係プログラムも認定されつつある。技術者資格については, その柱である技術士制度の根拠法が改正され, 倫理や継続教育 (CPD) の重視, 試験制度の見直しが行われた。また, APECエンジニアの相互承認制度も開始された。継続教育については, 農業土木技術者CPD機構が設立され, 制度が運用され始めている。このような技術者の高等教育, 資格制度, 継続教育の現状と課題を整理しつつ, 技術者として, これらを一貫したものとして捉えることが重要である。