著者
藤井 秀人
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.599-603,a2, 2004-07-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

メコン河委員会の水文プロジェクト「トンレサップ湖および周辺地域の持つ多面的水文機能の評価と水文データの強化」の概要を報告する。メコン川カンボジア氾濫域はトンレサップ湖周辺域とコンポンチャムからベトナム国境までの広大な地域である。プロジェクトでは氾濫原に20カ所の水位観測点の設置, 氾濫原を通過する洪水量のADP (Acoustic Doppler Profiler) を利用した観測, RADARSAT衛星による氾濫原の氾濫面積の拡大・縮小過程のモニタリング, 水文水理モデルMike11を利用した氾濫域の水文水理モデルの開発などを行い, 洪水期に氾濫原に流入する量や貯水量を算定し, 洪水緩和量や渇水緩和機能の評価を行った。
著者
劉 廷璽 天谷 孝夫 朝倫 巴根 劉 小燕
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.233, pp.449-460, 2004-10-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
31

乾燥地における, 降雨の浸透過程や不圧地下水の蒸発過程中での, 不飽和帯断面の水分動態特性と貯水量変化の特徴とを検討した. 結果は次の通りである.(1) 不圧地下水の蒸発は, 不飽和帯の土性と地表植生とに大きく影響される.(2) 降雨浸透過程中で, 含水率が最も大きく変化する領域は地表から深さ1m以内にあり, 断面含水率は四つの領域に分かれる.(3) 降雨浸透涵養量は, 地表植生, 地下水深不飽和帯貯水量により大きく影響される.(4) 降雨浸透涵養係数は, 不飽和帯貯水量と降雨量とが増すにつれて大きくなる. 降雨浸透遅滞日数と降雨浸透涵養継続日数は, 地下水深と共に増加する.(5) 不圧地下水の蒸発係数は, 地表植生と地形類型に影響される. さらに不飽和帯貯水量と地下水深の増加に伴い減少する.(6) 不圧地下水蒸発比率は地下水深の増加につれて減少し, 植生がある場合は不圧地下水蒸発量と共に増加する.(7) 降雨浸透と不圧地下水蒸発との連続過程における不飽和帯水分の動態は, 四段階を経た.
著者
矢野 武彦 谷本 和明
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.895-903,a1, 1980-12-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3

新潟平野において昭和34~35年には実に540mm/年という地盤沈下が観測され異常な状態が続いていた。 その後天然ガス採取は規制され地盤沈下はだんだんと収束の方向にはあるが, いまだに変動を続けている。ここでは, 主に最近に至るまでの地盤変動の状況, 解析結果および将来予測 (地下水流動解析による予測, トレンド法による予測) について述べ, 合せて地域の特性, 調査の経緯, ガス水採取の規制等についても略記する。
著者
鈴木 文雄 小林 英夫
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.927-932,a1, 1992-10-01 (Released:2011-08-11)

県営かんがい排水事業夜間瀬地区で建設した剣沢ダムは, 上信越高原国立公園や水源酒養保安林に指定されている貴重な自然環境の中に位置する均一型アースフィルダムである。こうした環境下における工事 (とくにダム周辺整備) の内容を報告するとともに, 表土・岩石などの天然材料を有効に使用することで, 自然環境を可能なかぎり保全する手法を提案する。
著者
佐々木 四郎
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.197-201,a1, 1982-03-01 (Released:2011-08-11)

日本のコンサルタンツの特質を論じ, その生い立ちと現状を解説する。この分野で歴史の古い先進的な欧米諸国, とくに米国にならって作られた日本のコンサルタンツはその歴史も浅く, しかも日本独特の技術風土の中で育ち, 欧米のそれとは異なった体質をもつに至った。これは技術に対する社会的関心と評価が日本では欧米より劣っており, また技術者自身の社会的責任に対する認識の度合もより低いからであると論ずる。
著者
松田 豊
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.485-489,a1, 1980-07-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

北海道において特殊土壌とよばれている, 火山灰土, 泥炭土, 重粘土およびろ土について, その分布状況と性質の概要を示し, これらの改良対策のうちから客土を取上げ, 現在北海道において施工されている客土の種類や考え方, 施工法等について示した。
著者
関 勝寿 神谷 準一 宮崎 毅
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.237, pp.213-219, 2005-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
27

湛水浸透条件下においては, 微生物が増殖することによる土壌間隙の目詰まり, すなわちバイオクロッギング現象により, 透水係数が低下することが知られている. この現象がどのように温度依存性を持つのかを実験的に調べた. 豊浦砂を充填したカラムにグルコース溶液を連続的に飽和浸透させたときの飽和透水係数の変化を測定し, さらに好気性細菌数, 糸状菌数, 有機物量 (強熱減量) の変化を調べた.温度条件は, 15, 20, 25, 30℃の4種類を設定し, 実験期間は4, 7, 10日とした. 15℃において飽和透水係数はほとんど変化しなかったが, 20℃, 25℃, 30℃においては, 実験開始後1日以降透水係数が指数関数的に低下した.その低下速度を比較したところ, 25℃で最も透水係数低下速度が大きかった.有機物量, 糸状菌数ともに, 同様に25℃で最大の増加速度を示し, 細菌数の増加速度は30℃ で最大となった. このことから, カラム上層に蓄積した, 多糖類と思われるゲル状の有機物質, そして糸状菌の菌糸が透水係数低下の要因となっていると推測された.
著者
正木 裕美
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.1157-1163,a1, 1997

クリークは, これまで佐賀平野の生命線であっただけに人々は, クリークによって不便さには目をつむらざるを得なかった。水資源開発問題を機に, 不自由さに我慢しきれなくなった人たちから何とかクリーク征伐をという声が大きくなった〇そこで早速平野全域の水利慣行調査, クリークの功罪調査を実施。功を損なわず罪を矯めることで筑後川下流土地改良事業とクリーク統廃合計画を中心に圃場整備計画を策定, 地元の同意を得て今や佐賀平野は大変貌を遂げつつある。クリークそのものが歴史的土地改良資産ではあるが, そのうち代表的なものをできるだけ在来の持味を損わぬように保全し活用したいとした。横武地区, 兵庫西部地区の2地区を紹介するものである。
著者
川嶋 久義 高橋 徹
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.43-48,a2, 1995-01-01 (Released:2011-08-11)

平成6年は, 春からはほぼ全国的に降水量が少なく, 梅雨の短かかったことに加え, 西日本を中心にそれ以降も降水量の少ない状態が続いた。そのため, 全国各地で厳しい取水制限等が実施され, 国民生活や産業に大きな影響をもたらした。本報では, 全国的な小雨の状況, 渇水による被害の状況および政府の取組み, 各地域で実際に行われた対応策等について報告する。
著者
山下 裕作 八木 洋憲 大呂 興平 植山 秀紀
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.893-898,a1, 2003-10-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

農村集落には「村がら」というべき個性が存在する。特に住民組織の個性としての「村がら」は地域振興に先立つ合意形成や, 住民組織化の面で地域に適合する方向性を規定している。この「村がら」は農村の伝承文化の一つであり, これまでの地域振興に関する諸研究では考察の対象となっていなかった。本報では, 民俗学の成果を基礎におき, 農村の質的個性である「村がら」が, 合意形成や地域振興の方向性に強い影響を与えていることを実証し, 地域住民による「村がら」の自己認知を進めることを手だてとする地域振興手法の可能性について検討する。
著者
中野 拓治 北尾 高嶺 糸井 徳彰 堀込 英司
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.215, pp.573-581,a1, 2001-10-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

嫌気ろ床接触曝気方式の農業集落排水施設から得られたデータを用いて, 嫌気ろ床槽の窒素除去と影響要因を検討したところ, 窒素除去性能には, 流入水のNOx-N存在率 (NOx-N濃度×100/流入水T-N濃度), 流入水のBOD/T-N濃度比, 水量負荷, 流入水のT-N濃度, SS除去, 及び水温が関係しており, これらを説明変数とする重回帰式を用いて嫌気ろ床槽のT-N除去率を推定できることが確認された.嫌気ろ床槽においては, 酸化態窒素の還元反応による脱窒作用以外に, 汚水中の浮遊物質の沈殿・捕捉による浄化作用と槽内に蓄積された物質等の溶出作用が生じており, 複雑な浄化機構が存在しているものと考えられる。嫌気ろ床槽の窒素除去性能の安定を図るためには, 流入水中の酸化態窒素濃度を高めることと併せて, 水素供与体, 水温, 水理学的滞留時間等の確保を通じて酸化態窒素の円滑な還元作用を進めるとともに, 汚水中のSS除去によりSS由来の窒素を適切に除去することが重要であるといえる.
著者
井上 君夫
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.755-760,a1, 1994-08-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7

平成5年の暖候期は稀にみる異常な天候となった。大規模かつ長期間にわたる寒気の流入と日照不足は特に水稲に昭和55年冷害を大幅に上回る被害を与えた。寒気の流入は大気の蛇行に伴って極付近から南下したものであり, 大気一海洋間で起こっている異常現象がそれらを容易にした。やませも例年以上に吹走したが, 8月上旬の寒気は下層のやませと上層の一般風が一体となる稀な様相を見せた。このような異常天候, 特に低温と日照不足が水稲に被害を与えたが, 壊滅的被害を与えた原因は水稲側にもあった。それは北日本の水稲の生育が次第に遅れ, 最も低温に弱いとされる減数分裂期が8月上旬の低温に遭遇してしまったからである。深水管理で冷害をある程度回避できた事例はあるが, 異常な天候下でも成立する技術の構築の必要性も指摘されている。
著者
端 憲二 石川 雅也 鈴木 光剛
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.339-344,a1, 1996-04-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
12

農村で総合的に水質を保全するためのひとつの方法として湿地利用がある。本報では, 湿地が有する窒素除去機能および利用方法やその基本的な考え方について述べるとともに, 湿地模型を利用した窒素除去試験の結果を紹介しつつ, 浄化作用に影響する主な要因について解説した。湿地模型を用いた試験では, 滞留時間の増加に伴い, アンモニア態窒素除去率が上昇すること, 除去速度は濃度に依存することなどを明らかにした。一方で, 水温と日射量が水生植物の窒素吸収に影響を与えていることが示唆された。そこで, 日射および水温を加えた簡単な数理モデルを作成し, シミュレーションを行った結果, 現象を比較的精度良く再現できることがわかった。
著者
北原 哲雄
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.787-793,a1, 1984-09-01 (Released:2011-08-11)

農業におけるエネルギ消費量は機械化等の進展に伴い顕著に増大してきており,今やエネルギは農業にとって不可欠なものである。しかも,農業は石油依存度が高く,経営が零細である等石油需給ひっ迫に対して基本的にぜい弱である。このため,中長期的に不安定化が予想される石油・エネルギ情勢に対処するため,エネルギ対策(石油の安定供給の確保,省エネル幸,石油代替エネルギの開発利用)を着実に推進する必要がある。
著者
鈴木 尚登 花岡 茂樹 森瀧 亮介 柳浦 良行
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.97-100,a1, 2007-02-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

可知氏が国営第1号の巨椋池干拓の初代所長に就任してから4年間, 毎日, 書き綴った「作業日誌」をベースにして, 氏が著した「農業水利学」および地元新聞に掲載した「平易解説」等も参考に, 巨椋池干拓とはどの様な事業で作業日誌は何のために書かれたのか等を考察する。