著者
森 英樹
出版者
福井県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、意味変化を分析する際に語彙的視点と構文的視点という2つの視点を想定することによって、同一構文の意味変化であっても、視点の違いによって文法化と見なせたり語彙化と見なせたりすることを示した。日本語と英語等の他言語における命令形表現を中心に、共時的・通時的データを収集・分析し、ケーススタディとして国内外での学会発表や論文を通して本分析の妥当性を検証した。本研究の成果は、今後、構文の概念を重視する認知言語学、構文化を扱う最新の意味変化理論といった関連分野における研究として発展させることができる。
著者
田原 大輔 杉本 亮 富永 修 谷口 真人
出版者
福井県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

小浜湾への地下水湧出量を222Rn・塩分の収支モデルから推定したところ、地下水は、全淡水流入量の4~44%を占めており、河川流量の低下する夏季にその割合が高くなる傾向にあった。また、地下水から供給される溶存無機態の窒素、リン、ケイ素は、全陸水由来の栄養塩輸送量の平均で39%、58%、37%を占めていた。特に小浜湾の一次生産はリン制限下にあるため、地下水によるリン供給は小浜湾の生物生産において重要な役割を果たしていると考えられた。
著者
有田 広美 藤本 悦子 小林 宏光 大島 千佳
出版者
福井県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

手術を受けた高齢患者の集中治療室の睡眠・覚醒パターンはどのように変化し、どのような経過で元のサーカディアンリズムに戻るのかを明らかにすることを目的に、全身麻酔で手術を受ける患者を対象に手術3日前から術後5日まで客観的指標および主観的指標を用いて睡眠状態を測定した。その結果、術後は睡眠時間の奪取と分断が明らかになり、その障害は術後4日を経過しても元の睡眠リズムには戻らなかった。主観的指標の結果はアクチグラフの結果と一致するものであり、術後4日間は睡眠の質が低下することが示唆された。
著者
河邉 真也
出版者
福井県立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

マガキは、他の多くの水棲生物と比べて様々な環境ストレスに強い耐性を示し、特に低酸素状態に陥る空気曝露に強い耐性を示す。これは、マガキが空気に晒される潮間帯の岩礁などに生息する固着性二枚貝類であることから、遺伝的に獲得してきた能力であろう。しかし、空気曝露ストレスに応答して発現するストレス応答遺伝子群の転写レベルでの調節機構の詳細は殆どわかっていない。プロモーター領域をクローニングしたところ、空気曝露により転写誘導される分子シャペロンCRTおよびGRP94には低酸素応答エレメントHREが認められた。このことから、これら遺伝子は空気曝露の間、低酸素応答性転写因子HIF-1によってその転写レベルが調節されていることが示唆された。また、熱ショック転写因子HSF1のプロモーター領域にもHREが認められた。real-time PCR法による発現解析の結果、マガキのHSF1は転写レベルで空気曝露誘導性を備えており、8種のHSF1変異体の応答様式は各種異なることが明らかとなった。各々のHSF1変異体は、機能モチーフの構造が異なることから、遺伝子発現制御において異なる役割を担うと考えられた。また、哺乳類でHSF1によりその転写が誘導されるHSP70は、空気曝露の間、マガキにおいてはHSF1の発現以後に転写レベルで顕著に誘導されていた。また、構成型であるHSC71は、空気曝露の間、転写レベルでの誘導は認められなかった。これらの結果から、マガキの空気曝露応答機構において、HIF-HSF経路およびHSF1の新規アイソフォームを介した全く新規の空気曝露応答機構の存在が示唆された。
著者
吉村 臨兵 北 明美
出版者
福井県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

米国の最低賃金規制についてリビング・ウェイジ(生活賃金)条例を中心に数カ所で聞き取り調査を行った。そうした制度を実現して実効性を維持するための取り組みがどんな社会集団によってどのように行われているか、具体的な情報が得られた。また、連邦最低賃金が毎年上昇する時期に重なったこともあり、リビング・ウェイジが直接の賃金上昇よりも、むしろ労働基準の広範な改善のきっかけとしての機能を強めつつあることがわかった。
著者
横山 芳博
出版者
福井県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

これまで魚類コラーゲンの架橋に関する研究は少なく、その架橋形成機構は不明である。リジルオキシダーゼ(LOX)およびその関連タンパク質[リジルオキシターゼ様タンパク質:LOX-like(LOXL)、LOXL2、LOXL3およびLOXL4]は、コラーゲンのリジンおよびヒドロキシリジン残基の酸化的脱アミノ反応を触媒することにより、コラーゲン分子間架橋形成の初発反応を担うと考えられている。本研究では、トラフグを用いて、9つのLOXファミリー分子が存在することおよびそれらの一次構造を明らかにするとともに、それらの発現・機能特性を解明した。
著者
中森 茂 高木 博史 高橋 正和 辻本 和久
出版者
福井県立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

絹タンパク質、セリシンにはSer、Thrなどの親水性アミノ酸残基に富む38残基の特徴的なアミノ酸配列が含まれている。本研究ではこれまでにセリシンの加水分解物や、上記38残基が2回連続したペプチドが昆虫細胞Sf9の血清中での細胞死に対して抑制活性があることを示してきたが、本年度の研究で以下のような新しい発見があった。1)38残基ペプチドの細胞死抑制効果の活性中心が10残基のペプチドSP3にあることを示した。この配列はSGGSSTYGYSである。2)SP3のC末端-YGYSをWGWSに変えても活性に差はないが、-AGASに変えると活性がなくなった。この事実からTyr, Trpなどの芳香族アミノ酸が活性に重要な役割を果たしていることが示された。3)NおよびC末端のSを削除したペプチドでは活性が大幅に低下した。このことからSerも重要な役割を持つことが示された。4)昆虫細胞Sf9の16時間培養後のDNAの電気泳動の解析によって明瞭なヌクレオソーム単位毎の特異的な切断が観察され、この細胞の死がアポトーシスによること、セリシンの加水分解物の添加がアポトーシスを抑制することが示された。