著者
関根 正
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.29-41, 2010-03

目的:精神障害者にとっての長期入院経験の意味づけを明らかにし,当事者とっての「スティグマ」とその「スティグマ」付与の過程を検討する.方法:長期入院経験を持つ当事者にインタビュー調査を行い,質的帰納的に分析した.結果:対象者は7名.年齢は40代前半から60代後半,最長入院期間は2年から22年であった.地域生活期間は4年から17年であった.精神科病院への入院経験について,『入院したことで10年以上の時間を無駄にしたと思っています.余計におかしな病気になったって思っています.』等と語られた.結論:当事者にとっての入院経験は,長期入院生活を送る上で自己の安定性・肯定性を確保するために必要な【精神科の患者】へと自己アイデンティティを再編成した経験と意味づけされていた.「スティグマ」は自分自身を【精神科の患者】と存在規定したことであり,精神科病院での入院生活が「スティグマ」付与の過程であると示唆された.
著者
龍野 浩寿 鈴木 英子 鈴木 英子 Suzuki Eiko
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-15, 2017-03

目的:本研究は日本の統合失調症をもつ人の生活機能の評価に関する研究を概観し,その動向および課題を明らかにする.方法:医学中央雑誌Web版Ver.5を用いて1986年から2015年の論文を検索し,その中で2001年にWHOがICFモデルを発表した前後の尺度を用いた研究に注目し,その動向と課題を明らかにした.文献検索のキーワードは「統合失調症」「生活機能」「尺度」「ICF」とした.結果:統合失調症をもつ人の生活機能を評価する尺度は,12件認められた.これらのうちICFモデルの発表後,尺度の開発や日本語版の作成および尺度活用の文献は6件であった.これらの尺度は,医学モデルの障害や疾病の評価のみならず広く生活の機能を評価していた.統合失調症患者の生活機能の評価の視点が,「出来ないこと」の評価から「できることへの評価」に移行し,社会モデルとして患者を前向きにとらえることができるようになった.しかし,医学モデルの尺度研究と比較して社会モデルで開発された尺度は数が少なく,その活用は乏しい現状であった.結論:今後は統合失調症をもつ人の生活機能を評価するために「社会モデル」の尺度開発および活用が求められる.Aim : This study was a literature review to elucidate research trends and issues related to the assessment of functioning in individuals with schizophrenia in Japan. Methods : We searched the Ichushi Web Database (ver.5) for literature published between 1986 and 2015 using the keywords "schizophrenia", "functioning", "scale", and "ICF". We focused on studies that evaluated scales developed based on the ICF model published by the World Health Organization and investigated the research trends and issues related to developing rating scales. Results : Twelve research papers focusing on rating scales for functioning in individuals with schizophrenia were identified, and of these, six papers assessed scales systematically developed after the ICF model was published. These scales assessed a wide range of deficiencies in functioning in the medical models and assessments of illnesses. The focus of the issues assessing functioning in individuals with schizophrenia has undergone a change from emphasizing "what cannot be done" to "what can be done". This has enabled positive assessments of patients based on social models. However, compared to scales based on medical models, scales based on social models are still rare and not widely used. Conclusion : The findings suggest the need for further development and use of systematic rating scales based on "social models" to assess functioning in individuals with schizophrenia.総説
著者
関根 正
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-53, 2011-03

目的:出身地域以外で生活を送る精神障害者の地域生活過程を明らかにし,生活のしづらさの要因と地域生活支援の方向性についての示唆を得る.方法:インタビュー調査を行い,質的帰納的に分析した.結果:対象者は7名.年齢は30代後半から70代前半,地域生活期間は6年から17年.地域生活過程は,社会的孤立期,社会的自立期,社会的実存期に区分でき,【自己喪失感の実感】【不自由さへの馴化】【仲間との出会い】【社会環境への慣れ】【生活の確立】【人への慣れ】【自分自身の実感】【生きがいの発見】という地域生活のあり方が抽出できた.結論:地域生活過程は,地域生活に必要な自己アイデンティティを再構成する過程であった.生活のしづらさの要因は地域生活で直面した自己の危機的状況であり,地域生活を送る上で必要な社会的・対人的な体験の支援,地域生活モデルの提示,失敗できる安心感の提供,自己表現・他者評価の場の提供が地域生活支援の方向性として示唆された.
著者
中野 あずさ 益子 育代 田村 文子
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.51-62, 2006-03

目的:本研究の目的は,精神看護学実習におけるプロセスレコードを使った指導の有効性について検討するものである.方法:対象は,精神看護学実習での困惑場面について再構成されたプロセスレコード44例である.プロセスレコードを使った指導は,1)ロールプレイ,2)かかわりの評価,3)縦読み,4)横読み,の手順に従って実施された.本稿は,学生の困惑状況とその問題要因について分析を行った.結果:学生の困惑状況は8つのカテゴリーに分類できる.さらに,その問題要田は,1)コミュニケーションスキルの未熟さによる状況把握の不足,2)察しの悪さによる共感性の欠如,3)わかったつもりになって患者へ不快感を喚起してしまうこと,4)精神症状に対する不安,の4つのパターンに整理された.学生はロールプレイを通して患者に対する共感性が高まり,縦読み・横読みから自分のかかわりの問題点と改善策を見出だすことができた.
著者
澤田 聡 渡邉 直行 五十嵐 均
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.73-76, 2011-03

目的:2004年にLANCETに掲載された論文"Risk of Cancer from Diagnostic X-rays : estimates for the UK and 14 other countries"(英国を含む14か国における診断用X線検査による発がんリスクを推定したもの)を教育的にレビューし,診療放射線技師による放射線防護の視点より,Computed Tomography(CT)検査の妥当性について考察する.方法:論文を読み,そのデータや結論をレビューし,関連文献検索を加えた.結果:示されたがん発生リスクのデータには疑問の余地がある.しかしながら,医療被ばくにおいて本邦のCT検査が大きな比重を占めているということは事実である.結論:医療被ばくの低減には,CTによるX線検査の頻度を下げること,装置間,施設間による線量のバラツキを最小化することがかかせない.
著者
佐々木 かほる
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-11, 2009-03

目的:明治期に生きた津久井磯の個人史から「産婆並びに病人看護婦養成」,「群馬産婆会」の創立に至った所以を明らかにする.方法:津久井磯が群馬県知事宛に申請した「私立産婆学校設立御伺書」,「津久井磯遺徳碑」,当時の新聞,群馬県史,前橋市史,議会文書等からの史料収集,整理,精読し,津久井磯の背景と「産婆並びに病人看護婦養成」および「群馬産婆会設立」との関連を分析する.結果:(1)津久井磯は,自ら校長となり私立産婆学校を開校し,人々に最良の看護が受けられるよう質の向上を目指して産婆自身による教育を行った.このことによって無資格者を少なくした.(2)群馬産婆会を組織し,行政や社会へ産婆の質向上を目指して組織的に働きかけると共に,明治期の職業婦人として先駆的役割を果たした.(3)群馬産婆会を組織し,職業的倫理を広め産婆の社会的地位を高めた.(4)津久井磯は,明治の近代化の真っ直中を生きた人であり,常に社会に目を向け,産婆の身分の確立を目指して挑戦し続けたと言える.寄稿
著者
作本 悦子 渡邉 直行 小倉 敏裕
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.67-72, 2011-03

目的:The Lancetに掲載されたBerrington氏らによる論文をレビューし,CT検査の在り方について考察する.方法:Risk of Cancer from Diagnostic X-rays : estimates for the UK and 14 other countriesという論文をレビューし,CT検査の利益および不利益という見地から,CT検査の在り方について考察する.結果:本論文において,診断X線検査の放射線による発がんの寄与リスクは,他国に比べ日本が最も高く,日本で年間に発症するがんのうち,3.2%(年間7,587例の発がんに相当)が,診断に使われている放射線によるものであると推定された.結論:放射線を人体に照射する業務を行う我々は,患者に放射線による有害な影響の可能性を上回る利益を提供できるようにするべきであり,防護の最適化について,より工夫する必要がある.
著者
新井 良彦 柏倉 健一
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.45-53, 2012-03

目的:バック・グラウンド・ミュージック(BGM)が単純作業の作業効率に与える影響を,クラシックとポップスを用いて脳科学的に評価する.方法:被験者は成人大学生8名(男女各4名,平均年齢22±0.7歳).単純作業の評価スケールとして内田クレペリン検査を用いた.同一被験者において無音時及びBGM聴取時に内田クレペリン検査を行った.BGMとして,クラシック及びポップス各1曲を用いた.各試行時に,近赤外計測装置を用いて前頭前皮質の機能測定を行った.結果:内田クレペリン検査の作業量は,クラシック音楽聴取時に有意に上昇した.また,脳機能計測において単純作業時及び音楽聴取時に賦活を示す部位を特定した.結論:単純作業に対するBGMの効果は,左外側前頭前皮質に観察された.実験に用いた音楽では,ポップスよりもクラシックの方が賦活は大きかった.
著者
福島 昌子 清水 千代子
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立医療短期大学紀要 (ISSN:13403893)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.47-55, 2004-03
被引用文献数
1

目的 : 本研究は,一人暮らし高齢者の生活状況から地域で自立した生活を送るための要素と支援体制について明らかにすることである.方法 : 通所介護を利用し,地域で生活をしている一人暮らし高齢者19名から面接法にて得られた内容の分析を行った.結果 : 一人暮らし高齢者が自立した生活を送るための要素として,(1)健康意識に伴う日常生活行動(2)経済の安定(3)配偶者・友人の死に対する受容(4)他者との良好な交流関係(5)社会参加(6)社会サービスの有効利用が導き出された.結論 : 一人暮らし高齢者が地域で自立した生活を送るための要素は,ハビガーストの老年期の発達課題を達成していくことであると考えられた.そして,緊急時対応へのサポート体制が必要であることが示唆された.
著者
中村 郁美 Nakamura Ikumi 田村 文子 Tamura Fumiko 大澤 真奈美 Osawa Manami
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.45-56, 2017-03

目的:統合失調症患者が地域生活において対処できない問題とその対処に向けた訪問看護師の支援を明らかにする.方法:A県内の精神科病院および訪問看護ステーションにおいて統合失調症患者を支援している訪問看護師を対象として面接調査を行い,Berelson,B.の内容分析を参考にして分析した.結果:訪問看護師が語った統合失調症患者が地域生活において対処できない問題は,【服薬自己管理ができないため薬を正しく飲めない】【入浴・洗髪・行為をできないため清潔が保てない】など11コアカテゴリが抽出された.統合失調症患者が地域生活において対処できない問題の対処に向けた訪問看護師の支援は,《服薬自己管理ができるように服薬確認や声かけを行う》など17コアカテゴリであった.結論:訪問看護師は,患者が地域生活において対処できない服薬,清潔,金銭管理,熱中症予防などの問題に対して,患者の状態に合わせて段階的に継続的な支援を行っていた.
著者
小倉 敏裕 佐藤 正規 柳井 和也 佐々木 勇 福田 和也 長島 宏幸 中村 保子 川島 康弘 高橋 稔 下村 洋之助
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立医療短期大学紀要 (ISSN:13403893)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.83-90, 2005-03
被引用文献数
3

目的 : 腹腔内脂肪の評価を行うために, 多列検出器型CT (MDCT) によって撮影されたCT横断画像データを用い腹部脂肪の可視化を行う. 方法 : 横断画像はスライス幅2.5mm, 再構成間隔1.25mmで撮影し, 脂肪データは-140HUから-40HUのCT値を有するボクセルとし, 腹部横断画像から抽出した. 連続面カッティングセミオート抽出法を用い皮下脂肪と腹腔内脂肪の分離を行い, 皮下脂肪と腹腔内脂肪の3D-CT画像の構築を行った. 結果 : 皮下脂肪や腹腔内脂肪の三次元構築画像が様々な方向から観察でき, 脂肪体積も容易に計測することができた. 結論 : 腹部脂肪の可視化により腹部の脂肪分布が視覚的に評価することが可能となった.
著者
飯田 晴美
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-34, 2006-03

目的:在宅酸素療法中の慢性呼吸不全患者が体験するスピリチュアルペインを明らかにし,その特徴を考察する.方法:在宅酸素療法中の慢性呼吸不全患者9名を対象に半構成的面接を施行した.次に,回答内容を文字化して逐語記録に書き起こし,その要約をデータとして内容分析を行い,カテゴリ化した.結果:在宅酸素療法中の慢性呼吸不全患者が体験するスピリチュアルペインが,【闘病経過の見通しのなさと不測の事態が起こり得る不安による自己信頼感の喪失】【消極的な未来予測による希望や生きがいの喪失】【疾病や治療に伴う社会的役割喪失・他者依存・自尊心低下による自己の存在価値と生きる意味の虚無】【酸素療法による自由喪失感と生活行動遂行上の自立性の低下に伴う身体コントロール感の欠如】【自己に生じた疾病・治療に伴う苦難の意味や理由の追求】【生に対する主体性の実感困難】【死の実感と死に対する不安・恐怖】【苦しみの生からの逃避念慮と生き続けなければならない苦悶】の8カテゴリで表わされることを明らかにした.また,【消極的な未来予測による希望や生きがいの喪失】【酸素療法による自由喪失感と生活行動遂行上の自立性の低下に伴う身体コントロール感の欠如】【生に対する主体性の実感困難】【苦しみの生からの逃避念慮と生き続けなければならない苦悶】が,在宅酸素療法中の慢性呼吸不全患者において特徴的なスピリチュアルペインであることを示唆した.結論:本研究結果は,在宅酸素療法中の慢性呼吸不全患者が体験するスピリチュアルペインの詳細を示し,これに対するスピリチュアルケアの必要性を示唆した.
著者
小曽根 秀実 久住 武 近藤 昊
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-12, 2011-03

母乳育児の身体的な利点について栄養学的及び免疫学的視点から研究は数多いもののその母親のリラクセーションや精神的ストレスに関するランダム化比較試験(RCT)や準ランダム化比較試験(CCT)などEvidence levelの高い論文は数少ない.筆者は,直接授乳(母乳育児)行動は精神的ストレスをやわらげるのではないかと予測し,母乳分泌の生理及び精神的ストレスと授乳の研究がどの程度エビデンスとして報告されているかを文献調査した.その結果,母乳分泌や母乳分泌に関連したオキシトシンホルモンは神経伝達物質としての役割を担い,授乳中の母親のストレスを緩和している可能性があること,また,唾液中クロモグラニンAについては,授乳中の母親に焦点化した報告例は少ないが,精神的ストレスマーカーとしての指標として安全かつ安楽に活用できるものであることが示唆された.
著者
狩野 太郎
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、味覚変化を抱える化学療法患者に対するICTを活用した支援システムの開発と、対処法に関するナレッジデータベースの構築である。筆者らが開発した味覚変化症状評価スケールCiTASを、タブレットPCで回答できるWebアプリケーションシステムを開発し、回答結果に基づき過去に同様の症状を体験した患者が行っていた工夫や対処法をデータベースから表示する支援システムを構築した。本支援システムは、UMINサーバ上に開設しているが、タイムリーな情報提供や双方向コミュニケーションを目的にFacebookページも開設した。現在250名程度の閲覧者を維持し、運用を継続している。
著者
長友 美穂子 松田 安弘 山下 暢子 吉富 美佐江
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.55-75, 2014-03

目的:カンファレンスを運営するチームリーダーの行動を表す概念を創出することにより,その総体を明らかにし,カンファレンスを運営するチームリーダーの行動の特徴を考察する.方法:研究方法論には看護概念創出法を適用し,2病院4病棟におけるカンファレンス時のチームリーダー,チームメンバー,看護師長の相互行為場面を参加観察法(非参加型)によりデータを収集し,持続比較分析を行った.結果:カンファレンスを運営する9名のチームリーダー行動の21現象274相互行為場面を持続比較分析した結果,【業務と討議内容考慮によるカンファレンスの開始と進行】【看護問題の早期解決に向けた他職種への相談】など,12の概念を創出した.結論:カンファレンスを運営するチームリーダーの行動を表す12の概念を明らかにした.また,考察の結果,カンファレンスを運営するチームリーダーの行動を表す12概念は,5つの特徴をもつことを示唆した.
著者
樋口 友紀 小川 妙子 狩野 太郎 清水 千代子 廣瀬 規代美
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.55-65, 2011-03

目的:地域で生活する健康高齢者および要支援・要介護1の認定を受けている高齢者の足トラブルとフットケアニーズの実態を明らかにし,支援策を検討する際の基礎資料を得る.方法:関東地方の1カ所の老人福祉センターおよび2カ所の通所介護施設を利用する高齢者154名を対象に,自作の調査票を用いた足部の観察および面接調査を行った.結果:角質肥厚や巻き爪,胼胝など専門家によるケアが必要な足トラブルが2~4割の高齢者に認められた.足トラブルの深爪,肥厚爪,胼胝,鶏眼と『フットケア習慣』,【意識的なフットケア実践】,【フットケア指導への関心】に有意な関連が見られた.結論:セルフケアによる改善が期待できる足トラブルを持つ高齢者が多く,対象の問題に合わせ医療機関の受診も含めた具体的な指導を行う必要性が示唆された.また,足爪に問題を持つ高齢者は,フットケア指導への関心が高いため,正しい爪の切り方を含めた実用的なフットケア指導の必要性が示唆された.原著
著者
山下 暢子 三浦 弘恵 松田 安弘
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.77-89, 2009-03

目的:「メタ統合」を用いた研究の分析方法を概観してその現状を解明し,分析方法の特徴や今後の課題を考察する.方法:CINAHLを用い,「metasynthesis」「meta-synthesis」をキーワードとし,海外文献を検索した.また,医学中央雑誌を用い,「メタ統合」をキーワードとし,わが国の文献を検索した.次に,「メタ統合」を用いた研究を対象論文として抽出した.最後に,「メタ統合」を用いた研究の分析方法を概観し,その現状を解明した.結果:対象論文として40件を抽出した.「メタ統合」を用いた研究の6種類の分析方法が存在した.それは,【1.現象を表す包括的な概念をうみ出す方法】【2.現象を表す包括的な概念をうみ出すとともに,うみ出した概念間の関連を表す方法】などであった.結論:6種類の分析方法の特徴が明らかになった.本研究の結果は,それぞれの研究目的に適した分析方法を選択するための資料となる.また,各分析方法の発展に向けては,研究者が,各自の具体的方法を十分に検討し,論述していく必要がある.
著者
原 美弥子 林 陸郎 鈴木 牧彦 飯田 苗恵 小林 万里子
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究は1)在宅心臓病患者を対象に気功(採気体操)・太極拳による運動プログラム介入の安全性および有効性を検証する、2)地域支援型心臓リハビリテーション展開の基盤として運動継続の場を地域に設定することを目的とした。目的1)では調査研究機関の前橋赤十字病院研究倫理委員会において研究許可を得て、調査を開始したところである。研究対象者は急性心筋梗塞で、入院期間に不整脈等の合併症がなく200m歩行負荷を終了した患者を選定基準とした。退院後12週間の介入前後に心循環応答、ホルター24時間心電図による自律神経活動、包括的健康度(健康関連QOL尺度:SF-36)等を評価する。平成21年5月現在、研究協力者1名(68歳、男性)を調査介入中である。今後の研究継続により研究参加数を増やし、非監視型心臓リハビリテーションとして本研究運動プロブラムの有用性を明らかにしていく。目的2)では群馬県立県民健康大学および前橋市商工会議所との共同企画事業の一環として平成19年より地域住民を対象に「気功・太極拳教室」を開始した。平成20年は12回開催し、その教室卒業者を母体に地域住民が主体的に気功・太極拳を行う場を地域の自治会館内に設定し、グループ活動(1回90分/週)を開始した(平成20年7月発足)。その中で研究協力者16名に採気体操ビデオ(DVD)を配布し自宅での12週間継続状況を調査した。研究協力者は平均年齢64.9歳、男2名、女14名、服薬加療中は8名(高血圧・心臓病・糖尿病・高脂血症・メニエール病)、運動習慣ある5名、運動習慣ない11名であった。グループ活動中断者2名(腰痛悪化、仕事の都合)を除く参加者14名の体操実施は84日に対して平均36.4日実施率43%で、100%、98%実施者が各1名だった。今後は実施率の低い者に対する認知行動科学的介入方法を検討する必要がある。