著者
古賀 崇
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.72-85, 2017 (Released:2017-12-20)

「デジタル・フォレンジック」とは、データ修復などの手段を通じ、デジタル媒体(ハードディスク、サーバなど)上の証拠保全を行うことを意味する。英語圏(北米、豪州など)では、デジタル・フォレンジックは記録管理・アーカイブズ活動の一端として位置づけられているが、日本では単に「訴訟・捜査や情報セキュリティのための活動」として理解・実践されているのが現状である。本稿では、文献調査や米国アーキビスト協会(SAA)大会への参加経験などに基づき国際比較を行い、「ボーンデジタル世界における証拠保全」として記録管理・アーカイブズ活動を原点から見直すために、デジタル・フォレンジックを論じる。
著者
橋本 陽
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.24-38, 2016 (Released:2017-01-30)

アーカイブズにおける電子記録の具体的な整理方法については意外にも研究が少ない。本稿の目的は、その方法論を明らかにすることである。最初に、英語圏の先行研究に依拠し、電子記録の整理方法を確認し、そこには長期保存の対策が伴う事実を指摘する。次に、インターパレスが電子記録の信用価値について提示する要件も考慮に入れながら、アトムとアーカイブマティカというアプリケーションを使って、整理の過程はどのような手順を経るかについて具体的に検討する。続いて、電子記録の長期保存においてはアーカイブズに移管される前の作成の段階からの記録管理が重要な役割を果たすため、そのあり方について、イタリアのアーカイズ学の知見と比較しながら論じる。最後に、作成段階からの管理が、保存機関であるアーカイブズでの編成と記述にどのように作用するのかその影響について考察する。
著者
新原 俊樹
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.60-71, 2017 (Released:2017-12-20)

組織内で利用する共有フォルダ内にレコードスケジュールが定められないまま保存された電子ファイルが蓄積することで、現用の電子ファイルの検索の妨げとなり、共有フォルダの書庫としての利便性が低下している。この問題を解決するため、(1)レコードスケジュールを付与することなく文書のライフサイクルに基づくレコードマネジメントを実現するための電子ファイル保存ルール、(2)共有フォルダ内に残置された非現用ファイルの除去を促すための俯瞰機能、(3)現用ファイル同士が検索の妨げにならないように文書の共有範囲に応じた適切なフォルダ構成の3つの支援機能を提案した。いずれの機能も実際に組織が利用している共有フォルダに適用可能であることを確認するとともに、俯瞰機能が電子ファイルの廃棄・選別の進捗状況の把握にも活用できることが分かった。
著者
岸田 和明
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.22-34, 1997-07-31 (Released:2017-03-24)

近年、記録/文書をその主題や内容から検索する手法の必要性が認識され始めている。主題や内容からの検索については、情報検索あるいは文献検索の問題として、長年にわたって図書館情報学の分野において研究が進められてきたが、本稿の目的は、その記録/文書への適用可能性を検討することである。具体的にはまず、記録/文書における主題の概念について、特に文献検索におけるアバウトネスの概念との対比の中で議論する。次に、記録/文書の主題検索における現状を文献レビューする。特に、MARC AMCや索引語による検索の問題について論じる。最後に、文献検索理論において発達してきた自動索引法の適用可能性を検討する。すなわち、記録/文書は基本的には個々の機関・組織に特有のものであり、それらに対して人が個別的に索引語を付与することは労力的に困難との立場から、索引作成の自動化の可能性を議論する。
著者
永村 美奈
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.87-103, 2015

熊本県は公文書館を建設しておらず、既存のリソースを活用して行政文書管理を実施している。熊本県は、透明性・公開性、第三者の視点を盛り込みながら、熊本県行政文書等の管理に関する条例と行政文書の作成、分類、保存及び保存期間満了時の措置の基準に則って、県政情報文書課が行政文書管理の主管部署となり、外部有識者らが特定歴史公文書の評価選別を実施している。本槁では、熊本県の行政文書管理事例を今後の地方自治体の行政文書管理の検討材料に資するべく、熊本県における行政文書管理の概要および特定歴史公文書の評価選別の課題について考察を行う。特に、実際の評価選別作業において、どのように評価選別基準と合致しないか、評価選別者が文書作成部局などとどのような意識の違いがあるかについて明らかにする。このような実状を踏まえ、今後の熊本県における行政文書管理の展望について考察を行う。
著者
永村 美奈
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.87-103, 2015-12-15 (Released:2017-03-24)

熊本県は公文書館を建設しておらず、既存のリソースを活用して行政文書管理を実施している。熊本県は、透明性・公開性、第三者の視点を盛り込みながら、熊本県行政文書等の管理に関する条例と行政文書の作成、分類、保存及び保存期間満了時の措置の基準に則って、県政情報文書課が行政文書管理の主管部署となり、外部有識者らが特定歴史公文書の評価選別を実施している。本槁では、熊本県の行政文書管理事例を今後の地方自治体の行政文書管理の検討材料に資するべく、熊本県における行政文書管理の概要および特定歴史公文書の評価選別の課題について考察を行う。特に、実際の評価選別作業において、どのように評価選別基準と合致しないか、評価選別者が文書作成部局などとどのような意識の違いがあるかについて明らかにする。このような実状を踏まえ、今後の熊本県における行政文書管理の展望について考察を行う。
著者
渡邊 健
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.69-83, 2018 (Released:2018-03-29)

2017年6月、「東京都公文書の管理に関する条例」が制定され、翌7月に施行された。同条例は何をきっかけとして、どのような過程を経て制定されたのか。先行して公文書管理条例を制定している地方公共団体の事例に照らして考察した。東京都の場合、豊洲問題という不祥事を契機として、小池百合子都知事のリーダーシップの下、条例化が進展した。その制定過程について、都に対する情報開示請求の結果得られた文書を中心に、「条例案の概要」に対して募集されたパブリックコメントへの意見表明結果や東京都総務局総務部文書課との面談等を通じて、多面的に検討した。東京都の情報公開や公文書管理に対するスタンスは条例制定を経てなお、課題が多いが、今後2019年の新公文書館開館に併せてもう一段の制度見直しが期待される。特に歴史公文書の扱いについて、継続的に動向を注視していくことが必要である。
著者
小川 千代子 秋山 淳子 石井 幸雄 石橋 映里 菅 真城 北村 麻紀 君塚 仁彦 西川 康男 廣川 佐千男 船越 幸夫 益田 宏明 山﨑 久道
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.44-59, 2017

<p> 本研究は3か年計画で記録管理学という学問分野の体系化を目的とする第1年目の成果である。ここでいう記録管理学体系化とは、実務者が、自身が経験した個別事例を一般化された記録管理体系の中に位置づける手がかりを求め、そこから文書管理実務の観察、検討、改善への道筋を探れるようになることを意図している。たとえば記録連続体論は、記録の存在を研究観察対象として論じる。だが、現実的実務につながるという面で見ると、記録管理学は長くその体系化の必要が叫ばれながら、事例紹介の蓄積にとどまり、体系の大枠すら明確ではない。そこで、初年度は文書管理の実務者が業務遂行上依拠する現状の文書制度に基づき、記録管理学の体系化の糸口を探ることとした。研究では、諸文書管理例規を収集し、用語と定義の比較分析を行った。</p>
著者
高山 正也
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.4-11, 2014-03-15 (Released:2017-03-24)

著者は2006年4月から理事として、2009年7月から館長として勤めていた(独)国立公文書館を2013年5月で、退職した。国立公文書館在職中に課せられた主な使命は、主要諸外国に比較し、異常に小規模で低水準の国立公文書館の水準を向上させるべく、関連法令の制定、施行に始まり、末端行政組織と化した国立公文書館の活性化とそれを公文書館本来のアーカイブズ専門業務担当組織に変質させることにあった。しかし、長い伝統の下で硬直化した公文書館のような公的な組織の変革は著者のごとき理屈だけを、公文書館同様日陰の存在になっている図書館を対象とした経験しかない者の手には余るものであった。その様子が法律の制定、公文書館業務の実態等を経営の要素としての、ヒト、カネ、資料等の扱いといった具体例に触れて記述される。結局、日本における国際標準から外れた公文書類の扱いは公的組織の奥深くまで浸透しており、今後息の長い取り組みが必要との結論が述べられる。
著者
大村 英正
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.11-28, 2004

企業経営はしばしば困難に直面するが、そのような時にこそ、そして普段から歴史を学び歴史に学ぶことが大切であり、その方法論が適正でなければならない。本稿では、企業で経営史料の管理、活用並びに会社史の編纂を担当した若干の経験をふまえて、非現用の企業史料を中心に、その定義、収集、評価、保存・管理、活用さらにビジネスアーキビストの育成について、問題提起を含めて私見を述べる。収集では着眼点と収集対象を、評価では評価の主体と史料価値の多面性について、保存・管理では原秩序の維持と出所の原則の重要性について、活用では史料の広範な利用の実例と可能性を中心に論考する。ビジネスアーキビストの育成については資質面と育成の制度に触れる。総じて、公共財としての性格をも持つ個々の企業の私的財産である企業史料の取り扱いについて全体像を整理してみた。これらは概論であり基本の考え方であって企業史料管理マニュアルではない。
著者
坂口 貴弘
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.15-34, 2015-03-23 (Released:2017-03-24)

戦後日本の文書管理においては、なぜ不用文書の廃棄のみが重視され、アーカイブズの保存が重視されなかったのかについて、米国のレコード・マネジメント概念の受容との関連から考察した。第二次大戦前及び終戦直後に紹介されたファイリング・システムは、もともと文書廃棄を必ずしも重視していなかったが、米国の文書管理事情の翻訳が進むにつれて、徐々にその側面が強調されるようになる。行政管理庁もこのような動向を採り入れた文書管理改善運動を推進するが、ほぼ同時期に総理府が進めていた国立公文書館設置準備との連携は密接ではなかった。両府庁は文書管理とアーカイブズの連携を前提とした米国の方法論を各々に参照していたが、その原理への部分的・一面的理解と省庁セクショナリズムとが、公文書の国立公文書館への移管停滞と大量廃棄をもたらすことになった。