著者
石山 一樹 合原 一幸 鈴木 秀幸
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.251-255, 2016-05-01 (Released:2016-05-30)
参考文献数
5

今後,再生可能エネルギーによる発電の割合が増加した場合,電力会社は不安定な発電量に応じて電力価格を調整することで,需要量を制御することが考えられる.一方で,このような価格の調整により,過度な需要の集中が一定の確率で発生することを示す数理モデルが最近提案されている.本研究では,このモデルに少し変更を加えることで,こうした現象がどれだけロバストに現れるものなのかを調べ,価格が正規分布やランジュバン方程式に従う場合には,ある程度の変更を与えても普遍的に見られる性質であることを示した.また,需要の分布の理論的解析を行い,その結果が数値実験とよく一致することを確認した.
著者
横井 喜充 ソコロフ ディミトリ
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.11-13, 2018-01-01 (Released:2018-01-30)
参考文献数
11

経路積分法を用いて平均場ダイナモ方程式が考察される.磁場の発展は三次元Wiener ランダム過程として取り扱われ,流体粒子の軌跡の全てにわたってのWiener 積分を実行することで平均磁場の方程式が導かれる.方程式の形式は従来の平均場方程式と同じである.しかし,この方程式は磁場による力を受けた速度場について導かれたものである.その意味で,非線型ダイナモの平均場方程式と言える.
著者
桑野 玲子 スワル ラクシュミプラサド ベルトラン ガルビスアドリアナルシア
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.395-398, 2011

盛土や斜面などの土構造物は, 長年にわたる供用中に, 降雨や地下水の変動などにより繰返し水の浸透作用に晒される.一般に, 不飽和土は浸水によってコラプスと呼ばれる体積収縮が起こることが知られており, 特に細粒土の浸水コラプスについてはこれまで研究例が多い.しかし, 砂質土のコラプス挙動やコラプスした土の力学特性の変化についてはあまり解明されていない.<br> 本研究では, 河川堤防盛土のように, 通常不飽和状態で安定を保っている土構造物が, 降雨や堤内水位の上昇により浸水した場合, および浸水を繰り返した場合の, 変形及び力学特性の変化について, 三軸試験装置を用いた微小ひずみ剛性測定で検討した.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
岡島 弘明 合原 一幸
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.265-269, 2016-05-01 (Released:2016-05-30)
参考文献数
10

様々な数式によって自然現象は表される.中でも偏微分方程式は,複雑な現象を記述することで知られている.未知な現象を解明するためには,このような数学を用いた数理モデルによる解析が重要である.前立腺がんは未知な部分が多く,様々な治療が提案されているが,万人に有効な療法はまだ確立されていない.本稿では,前立腺がんについての数理的な手法を用いた研究のうち,特に偏微分方程式を用いた数理モデルについて紹介する.
著者
松森 唯益
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.169-172, 2019-03-01 (Released:2019-03-30)
参考文献数
21

力学系の急激な変化の予兆を捉える指標はearly-warning signals(EWS)と呼ばれる.EWS は力学系の分岐理論に基づいて理論的に導かれる.本解説では,EWS と力学系の分岐の関係を通じてEWS の概念を紹介する.また,多変量の力学系で利用される共分散に基づくEWS の理論的背景について説明する.最後に,EWS 研究の展望について述べる.
著者
郭 鐘聲 タン ジェフリ トゥチュアン 荒川 大輝 須田 義大 平沢 隆之 荒木 敬造 水野 晃 堀口 宗久
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.63-67, 2019-03-01 (Released:2019-03-30)
参考文献数
4

本研究では,ナロービークルの操舵安定性の向上を目指し,車体の傾きに従って機械的に追従するパッシブ前輪を有する3 輪ナロービークルを提案し,シミュレーションおよび実車実験により操舵安定性について評価した.実車実験の結果との比較により,提案した車両モデルがパッシブ前輪車両の車両ダイナミックスを正確にシミュレーションできることが確認でき,その車両モデルに基づく実車両の改良により,操舵安定性を改善することができた.
著者
本間 千尋 本間 裕大
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.293-296, 2016-07-01 (Released:2016-07-29)
参考文献数
4

明治期に日本に移入された西欧モダンのピアノ文化は,戦後はライフスタイルの都市化に伴い全国的に浸透した.日本では子どもに楽器の演奏技術を学ばせる際にはピアノを選ぶ場合が多く,我々は自国の伝統楽器よりも西欧の楽器であるピアノの方に親しみを感じる.また現在の日本では,ピアノの経験者や国際コンクールの参加者は本場西欧を凌ぐ程になり,日本におけるピアノ文化は成熟期を迎えていると言えるだろう.このように戦後日本の都市化と不可分の関係にあり,多くの人々が趣味やレッスンで経験するようになったピアノ文化であるが,日本においてピアノ文化に関する研究は多くはない.そこで,本研究では,高度経済成長期が終焉した1980 年代以降のピアノ文化の受容を,質的調査を用いて検討し,それを踏まえた上でコンペティションデータを用い数理的解析から明らかにする.こうした視点からピアノ文化を検討することは,ピアノ文化の分析に新たな知見をもたらしてくれることが期待でき,また高度経済成長期終焉以降の日本社会の特質を垣間見ることにもなるだろう.
著者
大原 美保 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.517-520, 2011

東京大学生産技術研究所では, 平成22年2月24日から緊急地震速報の高度利用を開始している.高度利用者向けの緊急地震速報(予報)を受信し, キャンパスに震度3以上の揺れが到達すると予想された場合に, An, As, B-F棟の放送設備より館内放送が行われる.2011年3月11日午後14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震の際には, 14時47分2秒に発表された緊急地震速報第九報で予想震度が2.7となり, 主要動到達の約1分前に緊急地震速報放送により警戒を呼びかけることができた.地震後の構成員へのアンケートからは, 放送が役に立ったという意見とともに, 予測震度が低かったことへの戸惑いも見られた.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
加藤 孝明 宮川 勇二
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.495-499, 2011
被引用文献数
1

本研究では, 荒川下流域における大規模水害を想定し, 避難指示発令時の鉄道による全員避難を想定し, 遠距離避難シミュレーションを行い, 広域避難の可能性について分析を行った.居住地から駅までの歩行シミュレーションでは道路上での歩行速度の低下がみられるが, このことは, 鉄道の輸送能力がネックとなり, 待ち行列となるため, 最終的な問題とはならない.一方, 鉄道による避難については, 現在の行政対応の枠組みで想定される運転では避難に長時間を要する.ただし, 都心側での乗車制限や列車の臨時増発を行えば, 避難指示から決壊までの間での避難の可能性は残されることが明らかとなった.その場合, 鉄道会社, 周辺自治体と統一された指揮命令系統下での対応が必要とされる.一方, 乗車待ちの駅構内及び周辺の滞留者はいずれのケースでも数万人規模と膨大であり, 群衆の管理が非常に大きな課題となることが明らかとなった.バスによる避難, 自家用車避難, 徒歩避難, 建物内退避, それぞれのキャパシティを分析し, 多様な交通手段を組み合わせて最適な避難方法を探求していく必要がある.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
平沢 隆之 小笠原 誠 石川 ひとみ 山口 憶人 丸山 貴平 梶田 佳孝
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.205-210, 2015

国内各地で世界文化遺産登録の報告が相次ぐ一方で大都市圏環状道路の整備が進み,訪日インバウンド観光促進にはますます追い風の状況と言える.本研究では,交通・物流・観光の要衝である静岡県御殿場市を対象に実施した,大規模集客施設訪問帰りの近隣観光施設への追加立ち寄り観光誘引の一連の実験と,大型イベント開催日の交通実態簡易調査の結果に基づき,豊かな地域観光資源の魅力をアピールし,データに基づいた周辺観光誘引の推進に有効な簡易ICT の要求機能を提案する.
著者
城 真範 合原 一幸
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.233-234, 2016-05-01 (Released:2016-05-30)
参考文献数
3

本報告では実数値a のβ進数展開についての数値計算を行った.その結果,a によらず,βの変化に応じて各整数の出現割合が自己相似的に変化することを示した.2<β<3 の場合,数値1 と2 が同数出現するβはβ-2=0,(β-2)β-2=0,((β-2)β-2)β-2=0,…の解で与えられる.
著者
山出 吉伸 加藤 千幸 山田 和豊 大西 順也 今野 彰
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.43-48, 2018-01-01 (Released:2018-01-30)
参考文献数
18

乱流の高精度予測および自動メッシュ作成を特長とする格子ボルツマン法(Lattice Boltzmann Method,LBM)ベースの流体解析システムFrontFlowX(FFX)を開発している.FFX のプロトタイプに対し,計算精度,計算性能およびメッシュ作成機能に関するベンチマークテストを実施した.計算精度に関しては,Cavity 流れおよび一様等方性乱流に関するベンチマークテストを実施した.計算性能に関しては京のほぼフルノードを用いた2.2 兆グリッド規模のメッシュを用いたweak-scale ベンチマークテストを実施した.最後に,複雑形状に対するメッシュ作成ソフトの性能を評価するためイルカモデルまわり流れを500 億グリッド規模のメッシュデータで解析した.
著者
田村 浩人 河野 崇 合原 一幸
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.183-185, 2018-05-01 (Released:2018-05-30)
参考文献数
11

近年,深層ニューラルネットワーク(deep neural network, DNN) が機械学習分野で関心の中心にあり,一方でカオスニューロンモデル及びカオスニューラルネットワーク(chaotic neural network, ChNN) が計算論的神経科学や非線形科学において注目を集めている.しかし,深層のChNN に関する研究は未だない.このギャップを埋めるべく,本稿ではReLU(rectifier linear unit) カオスニューロンモデルを提案する.これはReLU を活性化関数として用いるDNN を,ChNN に拡張する際に必要となる.さらに,ReLU の単純さにも関わらず,単一のReLU カオスニューロンでも動的に変化する出力を生成できることを示す.
著者
川崎 昭如 ヘンリー マイケル 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.387-394, 2013

東日本大震災後の海外諸国の対応と各国民の行動にはどのような関係があったか.また,自国から退避が勧告されたにもかかわらず退避しなかった外国人や,その逆の行動をとった外国人の意思決定の理由や信頼をおいた情報は何であったか.本稿では,震災直後の各国政府の対応を整理し,東日本大震災時に関東地方に居住していた外国人を対象としたアンケート調査より,震災後の退避行動とその意思決定の理由,信頼をおいた情報源を,諸外国の勧告レベルごとに分析し,関係性を分析した.
著者
佐々木 奈央 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.305-310, 2015

本研究では,福祉施設の立地状況が地域の要援護者支援に与える影響を調査する.調査を通じて,危険地への立地を防ぐ施策や,福祉施設の立地状況を考慮した在宅の災害時要援護者支援対策に関する知見を抽出する.本研究では立地状況を「土砂災害警戒区域か否か」というハザード的な視点からだけでなく,人口や土地利用等のコミュニティ的な視点からも着目した.その結果,立地状況は「職員の参集率」と「地域住民から得られる支援の可能性」を通じて,地域の要援護者支援に影響を及ぼす可能性があることがわかった.また,コミュニティ的な特徴に応じて施設立地が規定され,その結果として危険区域に立地している側面も見いだされた.以上より,危険地への立地を防ぐ施策として,警戒区域内施設の分類フローに基づく段階的な立地誘導・規制の枠組みを提案した.また,地域住民との連携や施設の相互応援協定等,施設の立地状況を考慮した要援護者支援策の方向性の検討フローを提案し,多様な共助の方法の可能性を示した.
著者
片桐 俊彦 小長井 一男
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.717-722, 2011

東京メトロ株式会社の委託を受け,1976年以降東陽町並びに新木場において地震観測を実施している.これらの観測点は2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって液状化の被害が起きた東京湾岸地区の近くに位置する.また,新木場では洪積層内で地震記録が得られている.ここに東陽町並びに新木場の観測概要および地震記録について報告する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
沼田 宗純 野村 浩司 大原 美保 目黒 公郎 鷹野 澄
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1042-1046, 2009

2009年8月11日に静岡県の駿河湾を震源とする深さ約23km,マグニチュード6.5の地震による生研で観測された加速度記録を紹介する。観測の結果、建物の振動特性は、F棟建物の東西方向,南北方向の固有周期はそれぞれ0.505秒,0.569秒であった。建物の変位特性は、生研建物は南北に長手方向があり ,壁の量は東西方向のほうが多いことから南北方向に卓越した変位が現れた.地盤の増幅特性は,0.3秒付近の短周期成分が優勢であることがわかり,建物の固有周期が0.5秒であることから,地盤と建物は卓越周期が異なるため共振することはないと考えられる.[本要旨はPDFには含まれない]