著者
山元 憲一
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.313-316, 1992-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8
被引用文献数
2

マナマコの1型であるクロナマコの酸素消費量は酸素飽和度が低下しても18.1℃では38.1%まで, 14.0℃では38.4%まで, 9.9℃では27.5%まで, ほぼ正常状態での値を維持し, さらに低下すると著しく減少した。酸素消費量は水温を徐々に低下させるとそれに伴って減少したが, 徐々に上昇させた場合および各水温に順応させた場合には, 水温の上昇に伴って増加し, それぞれ水温22.0あるいは23.0℃のところで最大となった。しかし, さらに水温が上昇すると減少した。
著者
伊藤 史郎 川原 逸朗 平山 和次
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.287-297, 1994-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14
被引用文献数
1

アオナマコおよびアカナマコ浮遊幼生のAuricularia後期幼生とDoliolaria幼生について, 稚ナマコへの変態に及ぼす水温と塩分の影響について検討した。さらに, 規模を拡大した実験として, 同一飼育群の浮遊幼生についてAuricularia後期幼生の割合が高まったときと, 発育がさらに進みDoliolaria幼生の割合が高まったときの2回採苗実験を行った。その結果, アオナマコおよびアカナマコともにDoliolaria幼生のほうがAuricularia後期幼生に比べ稚ナマコへの変態過程で, 低水温や低塩分の影響が受けにくく, さらに, 採苗時の水温や塩分の条件が同じ場合, Doliolaria幼生のほうがAuricularia後期幼生に比べて, 稚ナマコへすみやかに変態することが明らかとなった。これらのことから, 採苗はDoliolaria幼生の割合が高まった時点 (平均体長約500μm) で行うのが効果的であるといえる。
著者
山元 憲一 半田 岳志 藤本 健治
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.67-74, 2005-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
17
被引用文献数
1

呼吸樹での換水運動から, マナマコのアカ, アオ, クロの高水温に対する抵抗性の違いを12, 22, 28℃から水温を上昇させて調べた。各水温から水温を上昇させてもアカ, アオ, クロはいずれも同様に, 水温28℃では, 換水量, 呼出1回の水量, 吸入1回の水量, 呼吸数および呼吸1回の吸入回数はほぼ同じ値を示した。22℃および12℃でも, 呼吸1回の吸入回数はほぼ同じ値を示したが, 換水量, 呼出1回の水量, 吸入1回の水量および呼吸数は水温の上昇に伴って増加した。これらのことから, 水温上昇に伴う換水運動の変化はアカ, アオ, クロに差違がないことが明らかとなった。しかし, 高水温に対する抵抗性はアオとクロがほぼ同じで, アカがそれらよりも弱いことが明らかとなった。
著者
浜野 龍夫 近藤 正和 大橋 裕 立石 健 藤村 治夫 末吉 隆
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.249-254, 1996-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10
被引用文献数
1

マナマコ種苗が放流地点から急速に見られなくなる原因を究明するため, 水槽とタイドプールを使って実験を行った。その結果, 主因は, 食害による減耗ではなく, 「観察者による見落とし」と「種苗の移動」と推察された。
著者
西内 康浩 吉田 孝二 橋本 康
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5-6, pp.227-235, 1971-03-30 (Released:2010-06-30)
参考文献数
38
被引用文献数
1

1. ドジョウおよびコイ稚魚にたいする農薬の影響をしらべ, 農薬にたいするこれら供試生物問の感受性の差異について比較検討した。2. 結果は供試した53種類の農薬にたいしてコイおよびドジョウは以下のような多少の相違は認められたが概して近似した感受性を示した。ドジョウの方がコイよりも高い感受性を示す薬剤しとてはアルドリン, テロドリン, ヘプタクロル, ベンゾエピン, DEP (デイプテレックス), ダイアジノン, PMP (PMP. アッパ), CBA (ミノコール) およびEDDP (ヒノザン) 等があげられ, ダイアジノンがやや著るしい傾向が認められ, これとは逆に, コイの方がドジョウより多少高い傾向にあるものとしてはEPNおよびTPN (ダコニール) が上げられ, コイの方が高いものとしてはMCPCA (マピカ) が上げられる。
著者
村野 正昭
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.19-30, 1964-06-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1

1) イサザアミ, Neomysis intermedia CZERNIAWSKYの生活史のうち主に生殖に関し報告した。2) 雌雄の判別は成熟した個体においては雌では哺育嚢, 雄ではペニス, 第1触角基節の葉状片および伸長した第4腹肢外肢をそれぞれ保有することにより可能である。3) 雄に比し雌は大きい。4) 雌雄比はおおむね1: 1であるが, 時に一方に偏することがある。5) 主な産卵期は3月中旬より10月までであるが, 夏季7, 8月は産卵に好適な季節とは認め難い。6) 産卵群は越年型と当年型とに分けられ, 前者は前年の秋に生まれたもので3~6月に, 後者は越年型より生まれたもので4~10月に産卵を行なう。7) 産卵数は1~46粒が観察されたが, 春秋季に多く夏季に少ない。8) 哺育日数は30℃で6日, 25℃で7日, 21℃で8~9日であるが低温期には最高20日が記録された。9) 生存期間および産卵回数は越年型で5~7ケ月生存して3~6回, 当年型では2~2.5ケ月生存して2~4回が推定される。10) 1年に7~9回の世代の交替があるものと推定される。
著者
佐々木 剛 猿渡 敏郎 渡邊 精一
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.117-118, 2002-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The Strontium: Calcium (Sr: Ca) ratio from an otolith section of three-spined stickleback, Gasterosteus aculeatus (L.) was examined in samples taken from the Hei River mouth, and the Gensui district of Otsuchi in the coast of Iwate, Japan. The samples were analyzed using an electron probe X-ray micro analyzer (JEOLJXA 8600) . While the otolith from the Hei River showed a high Sr : Ca ratio, those from the Gensui district showed a low value and little fluctuation. We can conclude from these findings that G. aculeatus (L.) collected from the Hei River is an anadromous type, whilst G. aculeatus (L.) collected from the Gensui district is a fresh water type.
著者
斎藤 大樹 荒井 克俊 山羽 悦郎
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.177-184, 2004-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
20

20℃におけるシマウキゴリの胚発生過程を詳細に観察した。さらに, 卵割期における単一割球の標識実験により, 胚盤における分化の方向性が決定される時期を明らかにした。その結果, 未受精卵の段階から細胞質が卵黄から分離していること, 体節形成期に至るまで胚細胞中には卵黄顆粒が分布しているが体節形成期以降消失し胚体が透明化すること, 第3卵割以降, 卵割の様式が不規則になることが明らかとなった。また, 16細胞期から32細胞期に標識された細胞追跡の結果, 胞胚期から初期嚢胚期まで, 標識細胞は未標識の細胞と胚盤内で大規模な混合を起こすことが明らかとなった。この結果は, 初期嚢胚期まで胚盤の細胞は分化多能性を有していることを示唆している。
著者
桐山 隆哉 藤井 明彦 藤田 雄二
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.419-423, 2005-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
16
被引用文献数
2

ヒジキの生育不良現象が魚類の摂食によると推察されている長崎県下の12箇所で2004年11月に調査を行い, 内ヒジキが採集できた11カ所で藻体に残された痕跡から原因魚種の推定を試みた。採集したほとんどの個体は葉や主枝が上部から切断されて短く, 生長阻害がみられた。切断された個体の49~83%に魚の摂食痕が認められ, これらの切断は魚の摂食によるものと考えられた。摂食により切断されたヒジキの割合を魚種別にみると, アイゴが89%, ノトイスズミが9%, 両種が2%であった。長崎県下の生育不良現象は主にアイゴによって引き起こされ, 次いでノトイスズミの影響が大きいと考えられた。潮間帯から漸深帯上部でも多くの海藻に魚類の摂食による生長阻害と低密度化が観察された。
著者
伏屋 玲子 横田 賢史 渡邊 精一
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.265-269, 2007-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

ノコギリガザミ属3種を判別するために, デジタルカメラで撮影した画像により鉗脚の色彩変異について調べた。42個体のカニの鉗脚上の4つのラインからサンプリングしたsRGBデジタル色彩情報をL*a*b*色空間に変換した結果, L*, a*, b*の各値に種間で差異がみられた。特に, アカテノコギリガザミのライン1と2上のa*値は他の2種よりも高い値となり, アミメノコギリガザミのライン1と2のb*値は他の2種より低い値となった。主成分分析により3種の鉗脚の色彩の違いが明らかになり, 高い判別成功率を得られたことから判別分析による種判別の可能性も示唆された。
著者
木村 知博
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.119-127, 1999-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
25

1) 広島湾の溶存酸素量の変動は, 植物プランクトンの同化量, 呼吸量 (分解量) によって最も影響を受ける。中・下層の光合成には上層の植物プランクトンの増殖が関与する補償深度が介在している。2) 広島湾の主要点で成層期の水深別溶存酸素量の経年変化をみると, 補償深度を挟みその上下の層でその変動に差が生じている。また, この経年変動は, カキ養殖場の底質の自己汚染と関係なく, 海水交流のない広い範囲で高い相関がみられた。3) 底層水温が低めの年には, 中・底層の溶存酸素量は少なくなる傾向が窺えた。これは表層塩分の低下がもたらす成層発達により海水混合が起こりにくくなることと, 植物プランクトン増殖による透明度の低下で補償深度が浅くなり中・下層の溶存酸素量の低下を促進すること, さらには増殖したプランクトンの下層水中での分解などが考えられた。4) 広島湾のカキの成育の低下の主原因は, 沿岸域では都市・工場廃水の流入と海水交換の不良による水質悪化, 加えて年々の河川水, 気象条件による水質汚染域の拡大であり, 島嶼部では1985年頃からその兆候がみられた貧栄養の沖合系海水の卓越によると考えられた。また, 出荷カキの大きさの年変化は秋から冬のクロロフィルa量との関係がみられた。5) 広島湾周辺のカキ養殖場の海水の溶存酸素量の変動は, 底泥よりも植物プランクトンを主とした懸濁物の酸素消費の影響が強い。特にカキ排泄物の酸素消費の寄与率は低いと推算された。したがって, 養殖場の自己汚染による底泥悪化→低酸素水塊の発生→カキの成育低下という過程のいわゆる「漁場老化現象」は特異的な局地での現象と思われる。
著者
Koji YOKOGAWA Masanori IGUCHI
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
Aquaculture Science (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.131-137, 1992-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
21
被引用文献数
1

生態学的な知見の乏しいカサゴについて, 播磨灘南部沿岸海域を調査地区に選定して, その食性および成熟に関する研究を行なった。カサゴは非常に幅の広い食性を示し, 甲殻類, 軟体類, 多毛類, 魚類, 藻類などを摂餌していた。特に, エビ, カニ類および魚類に比較的強い嗜好性が認められるようであった。また, 幼稚魚の段階ではヨコエビ, ワレカラを中心とした小型付着生物を主に捕食しているが, 全長100mmを越えるようになると大型のエビ, カニ類や, 魚類を主とした食性へと移行することがわかった。生殖腺指数 (GSI) の時期的な変動をみると, 雄では11月から12月にかけてGSI値が最大となり, 雌では3月から4月にかけてGSI値が最大となった。GSIの変動より, 10月から3月にかけて交尾が行なわれ, 2月から6月にかけて産仔が行なわれているものと推定された。成熟時期は九州産のカサゴとは大きく相違していた。性比は, 産仔期には雌が著しく多く, その他の時期では雄の方が多かった。また, 雌の全長と卵巣内卵数または胎仔数との関係は一次式で近似された。