著者
平山 和次 松江 吉行 小牧 勇蔵
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.95-102, 1960-10-31 (Released:2010-03-10)
参考文献数
2

1) 恒温動物に対する麻痺毒として知られていたイソメ毒は, 魚貝類に経口的に与えた場合は無害であるが, 飼育水中に加えると飼育動物に強い麻痺作用が起こる。2) 飼育水中に加えたイソメ毒の毒性は, pHの値に大きく支配され, アルカリ域では毒性を示すが, 酸性域では殆んど無毒となる。3) イソメ毒はイソメの体表部組織中のみに含まれ, 他の部分には存在しない。4) イソメ毒はイソメの死後速かに体表にしみ出るが, 生時に分泌されるようなことはない。5) ゴカイ, イトメ, クロイトメなど他の多毛類中にはイソメ毒のような毒は検出されない。6) イソメ毒とフグ毒とを比較すると, 前者は恒温動物に対しても, 飼育水に加えた場合は魚貝類などの変温動物に対しても, 麻痺作用を示すが, 後者は相当量を飼育水中に加えても魚貝類に対しては麻痺作用を示さない。
著者
李 〓 森 勝義
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.115-119, 2006-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
17

中国沿岸では, およそ20種類のカキが生息し, 養殖対象としては主に近江ガキ (Crassostrea ariakensis) , 皺ガキ (C. plicatula) , マガキ (C. gigas) , 大連湾ガキ (C. talienwhanensis) と僧帽ガキ (Saccostrea cucullata) の5種類である。中国におけるカキ養殖は約2000年の歴史があるが, 1990年代以後, 人工種苗生産技術の発達とともに生産量と養殖面積は毎年上昇し続けた。2002年におけるカキ養殖の総生産量は殻付で362.55万tで, 貝類総生産量の37.6%を占め, 第1位である。しかし, ここ数年赤潮多発などの養殖海域の環境悪化, 大量斃死, 養殖ガキの質の低下などの問題が現れてきた。これらの問題点を克服し, 持続性のあるカキ養殖を行うためには, 合理的な養殖管理・漁場開発の実施, 病気予防対策の強化, 優良品種の開発などの対策が考えられる。
著者
亀甲 武志 根本 守仁 伴 修平 三枝 仁 澤田 宣雄 石崎 大介 中橋 富久 寺本 憲之 藤岡 康弘
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.303-309, 2013-09-20 (Released:2015-04-02)
参考文献数
43
被引用文献数
2

水田を利用したホンモロコ Gnathopogon caerulescens の初期育成の可能性を検討するため,2009年と2011年にホンモロコ孵化仔魚を滋賀県内の水田(合計6筆)に 1 m2 あたり20個体から80個体の密度で放流し,中干し時までの成長と生残を調査した。水田へ放流後19~25日間で,15.2~21.9 mm まで成長し,天然下や飼育下での成長よりも早く,生残率は23.1~43.9%であった。以上の結果から,水田はホンモロコの初期育成の場として有効であると考えられた。
著者
間田 康史 宮川 真紀子 林 大雅 海野 徹也 荒井 克俊
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.103-112, 2001-03-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
29

雌性発生により繁殖している三倍体ギンブナの卵をキンギョ精子で受精後,様々な条件で低温あるいは高温処理を施すことにより,四倍体あるいは四倍体-三倍体モザイクが作出できた。40℃,60秒間の高温処理では受精後5分に処理を開始した群で四倍体の出現率が高かった(67~100%)。DNAフィンガープリント分析とRAPD-PCR分析から,四倍体は父親キンギョ由来のDNA断片を示すことから,精子核ゲノムが取り込まれて作出されることが判明した。高温処理(40℃,60秒間,受精後5分)を施した受精卵の細胞学的観察から,三倍体では本来膨潤しないはずの精子核が雄性前核となり,三倍体雌性前核あるいは二細胞期の割球の核と融合することにより四倍体核が形成されることが判った。同一水槽で三倍体と四倍体を飼育した場合,12月齢魚では成長に差は見られなかった。これらの三倍体は全雌であったが,四倍体では17個体中10個体が雌で,残りの7個体は性的に未分化であった。
著者
秋山 信彦 小笠原 義光
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.577-584, 1994-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
29
被引用文献数
3

シロウオLeucopsarion petersiの繁殖行動を水槽内で観察した。その結果, 本種の雄は巣を作った後, 雌を巣内へ誘引する行動を行うが, 巣に入ると求愛行動をとらずに, ほとんどの時間を巣の入口付近で行う水送り行動に費やすことが明らかになった。雌が巣に入ってから産卵するまでの日数は14から22日で, 雌は産卵後ただちに巣外に出るが, 雄は巣内に留まり, 水送り行動や卵清掃を行う。卵が孵化する1~2日前に雄は巣の入口を開き, 仔魚は孵化後ただちに巣外に出る。孵化後, ほとんどの雄は巣外に出て死亡するが, 稀に再び雌を誘引する行動をとる個体がいた。24回の観察中6例で2から3回雌に産卵させ, 孵化まで卵の保護行動をとった。また, 本種の巣にポリエステル樹脂を流し込み巣の大きさを測定した結果, 入口から最奥部までが50.4~111.6mm, 横幅が12.1~128.5mmの範囲であり, 高さは6.7~7.7mmであった。
著者
桐山 隆哉 藤井 明彦 吉村 拓 清本 節夫 四井 敏雄
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.319-323, 1999-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
6
被引用文献数
13

野母崎町地先で1998年9月に, クロメの葉状部が欠損し, 著しい場合は茎だけとなる現象が観察された。その後, この現象は野母崎町地先のみならず, 県下全域に及んでいることが分かった。発生状況や症状等から生理障害とは考えられなかった。一方, 本症状を起こした葉体には高い割合で縁辺に特徴ある弧状の痕跡が認められ, その形状は魚類による摂食痕に酷似していた。また, 葉体が欠損する症状は, 口之津等でオオバモクにみられた他は同一場所に生育しているホンダワラ類やツルアラメには認められなかった。
著者
新谷 一大 渡邊 精一
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.245-252, 1990-09-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
20
被引用文献数
1

1988年7月から1989年6月までの1年間に, 茨城県牛久沼において採集したオオクチバス523尾の食性を調査した。同沼においては, テナガエビ, アメリカザリガニが本種の主要な餌生物であり, モツゴ, ヨシノボリがこれらに次いでいた。本種の体長が増すにつれて, アメリカザリガニの出現率が増加し, ヨシノボリの出現率が低下した。体長が増すにつれて, 餌の大きさの最大値が上昇する傾向がみられたが, 大型の個体は, 小型の餌もよく利用していた。本種は甲殻類を年間を通して (特に夏と冬) , 魚類を夏から秋にかけて, 水生昆虫を春にそれぞれ良く捕食していた。小, 中型個体は年間を通して魚類および甲殻類を主要な餌として利用していたのに対し, 大型個体では甲殻類を主要な餌生物としていた。
著者
土井 敏男 野田 亜矢子 濱 夏樹
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.601-602, 2008-12-20 (Released:2012-09-15)
参考文献数
7

Histological specimens of the tissue of a red-spotted grouper Epinephelus akaara infected by Lernaeenicus ramosus were observed. The muscle of the host was inflammated around the intruding head horn of the parasite, resulting in granuloma. Another host,parasitized by three copepods on the dorsal trunk, recovered spontaneously in captivity over a period of six months without any treatment.
著者
楠木 豊
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.13-21, 1971-05-30 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6

1. '69年1月から5月まで広島県下の五日市, 音戸, 三高, 安芸津のカキ養殖場で, 毎月1回海水中色素量と, そこに養殖されているカキの消化盲のうの加熱による緑変を調べた。又培養藻類でカキを飼育し, 消化盲のう中の色素との関係をみた。2. 消化盲のう部の色は1月が最も濃く, 月とともにうすくなる傾向にある。又場所別にはカキの成長の良いところが色が濃い。3. この緑変の程度は, カキの体内に取り入れられる海水中色素量と密接な関連が認められた。4. 消化盲のう部の色の変化は速かで, 5日程で, その前の影響は殆んどなくなる。5. 人工飼育したカキの消化盲のう部の色素は, 給餌したプランクトンの色素と同じ吸収曲線を描いている。6. これらのことから, 緑変の色素は海水中の植物プランクトンに由来することが認められた。
著者
森川 晃 川上 弘 田北 徹
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.271-277, 2002-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14

1998年4月から2000年4月に島原半島沖の有明海で漁獲されたマゴチ603尾とヨシノゴチ263尾について, 耳石薄片標本により年齢と成長の解明を試みた。耳石輪紋形成時期は両種とも年1回, マゴチでは6~7月, ヨシノゴチでは4~5月であり, いずれも産卵期にほぼ一致し, 輪紋数は年齢を示すと考えられた。満年齢時における両種の雌雄別逆算全長をもとに, 非線形最小二乗法を用いて, von Bertalanffyの成長式をあてた結果, t歳における全長Ltは次式で表された。マゴチ雄: Lt=458.26 (1-exp (-0.417 (t+0.439) ) )雌: Lt=728.44 (1-exp (-0.192 (t+0.978) ) )ヨシノゴチ雄: Lt=469.72 (1-exp (-0.215 (t+3.008) ) )雌: Lt=657.45 (1-exp (-0.267 (t+1.076) ) )両種とも, いずれの年齢においても雌の方が雄より大きい体サイズを示した。
著者
久下 敏宏 信澤 邦宏 舞田 正志
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.73-80, 2004-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
16
被引用文献数
2

榛名湖において, ワカサギ不漁年である1997年の5~6月での, 全長25cm以上のオオクチバス生息尾数は約2500尾と推定されるとともに, 全長25cm未満の卓越した年級群の存在が推察された。ワカサギ不漁年と豊漁年に, 1歳魚以上のオオクチバスの胃内容物を調査したところ, 両年ともに魚類と甲殻類を主な餌料としており, 魚類については, 不漁年はヨシノボリ属魚類, 豊漁年はワカサギの出現率が高かった。捕食されていたワカサギの成長段階は, 産卵期が親魚で, 夏以降が未成魚以上であった。また, 不漁年は豊漁年に比べ, オオクチバスの肥満度と胃内容物重量指数が低かった。さらに, 釣り大会秤量魚の平均体重が不漁期に減少することから, 榛名湖のオオクチバスにとってワカサギは重要な餌料であり, オオクチバス生息尾数の増減がワカサギ資源へ影響を及ぼしていると考えられる。
著者
村田 修 宮下 盛 那須 敏朗 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.145-151, 1995-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

マダイの卵にクロダイ精子を媒精して作出した交雑魚 (マクロダイと呼ぶことにする) の養殖品種としての特性を明らかにする目的で, その成長, 生残率, 外部形態, 環境ストレス耐性などについてマダイおよびクロダイ両種と比較した。(1) 媒精した浮上卵の受精率はクロダイ>マダイ>マクロダイの川頁, 孵化率はマダイ>クロダイ・マクロダイの順であった。(2) 孵化後30日目までの生残率はマダイ>マクロダイ>クロダイの順であったが, その後71日目から140日目までのそれはマクロダイおよびクロダイの方がマダイよりも著しく高くなった。(3) 成長は孵化後約8ヶ月目まではマクロダイ>マダイ>クロダイの順であったが, 満1年目からはマダイの方がマクロダイよりも徐々に大きくなり, 満3年目におけるマクロダイの成長はマダイよりは遅いがクロダイよりは早く両親の中間となった。(4) 環境ストレス耐性では, 水温上昇および低下, 比重低下, 並びに溶存酸素低下に対してマクロダイはいずれもクロダイよりも弱かったが, マダイよりも著しく強かった。(5) 外部形態や体色などからマクロダイはクロダイに近く父系遺伝が強いことが示唆された。
著者
中坪 俊之 廣瀬 一美
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.403-407, 2007-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
9

飼育下において, マンボウ8個体の全長を計測し, 追跡法により成長を調べた。140~1556日の飼育期間では供試魚はすべて直線的な成長を示した。同様の成長傾向を示した7個体の供試魚の成長データを基に, 推定年齢を算定し, 集団的にvon Bertalanffyの成長曲線の当てはめを行った結果, 次式が得られた。TLt=318.4× {1-exp [-0.149× (t-0.031) ] }マンボウが全長3mに達するためには約20年を要し, 今回用いた供試魚は, すべて成長期であることが推測された。
著者
山元 憲一 半田 岳志
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.11-18, 2012-03-20 (Released:2015-03-23)
参考文献数
9

トラフグの口腔内圧,鰓腔内圧,口腔と鰓腔の圧差,胃内圧,口からの吸入水量,口からの排出水量および胃の膨張度合いを連続測定した。色素を鰓腔へ注入し,胃から採水して,水の移動を観察した。これらの結果から,鰓換水および胃の膨張機構を解析し,モデル化した。トラフグは,口腔内圧,鰓蓋内圧およ口腔と鰓腔の圧差を利用し,口腔弁,鰓蓋弁および食道括約筋を能動的に開閉することによって,胃の膨張および膨張からの収縮を行っていることが明らかとなった。