著者
川口 陽子 大原 里子 矢沢 正人 武井 啓一 鶴本 明久 米満 正美
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.132-138, 1982 (Released:2010-10-27)
参考文献数
19
被引用文献数
12

昭和54年4月から7月の間に, 東京都中央区管内7保育園, 岩手県平泉町, 沖縄県南大東村の1~5歳の幼児1,132名の歯科検診を行った。う蝕罹患者率, 1人平均う歯数, 重度う歯所有者率, 1人平均重度う歯歯数, う歯処置率, 乳歯う蝕罹患型の割合によってこの三地域を比較検肘したところ, いずれの指標でも南大東村の幼児のう蝕擢患状況が最も悪く, 平泉町はほぼ全国平均値に近く, 中央区が一番よいという結果であった。この結果は, 最近都市部より郡部の方がう蝕は多いという報告と一致している。また, 乳歯のう蝕罹患状況が悪い地域では第1大臼歯は早期に出醸し, う蝕に罹患する率も高いことが明らかになった。乳歯う蝕蔓延の著しい地域では, 第1大臼歯の早期出銀, 早期う蝕罹患, さらに永久歯のう蝕蔓延につながることが憂慮されると考えられた。
著者
遠藤 浩正
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.665-674, 1994-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
21
被引用文献数
5

咀嚼機能の問題は, 摂食機能の基礎となるものとして, 幼児期から老年期の各ライフステージにわたって考慮されなければならない。そこで今回, 著者は発達期の児童および生徒の咀嚼能力の評価法の確立のために, 小学生と中学生を対象に口腔内診査, 咀嚼値の測定ならびに咬合の発達と咀嚼能力の関連についての解析を実施した。調査対象は埼玉県下の小学生1年生から6年生までの児童513名 (男子249名, 女子264名) と, 中学校1年生から3年生までの生徒387名 (男子193名, 女子194名) であった。口腔内診査では現在歯数とう蝕の状態について診査を行った。咀嚼能力の測定は乾燥したピーナッツを用いた篩分法によって行った。さらに咬合の発達状態を総咬合力, 平均咬合力および咬合接触面積を用いて測定・解析を行った。今回の研究の結果より, 以下の結果を得た。1. 咀嚼値は小学校5年生あるいは6年生で低下し, 中学生ではほぼ一定となる傾向がみられた。2. 総咬合力, 咬合接触面積は増齢とともに増加する傾向がみられたが, 小学校5年生あるいは6年生で一時的に低下する傾向が認められた。3. 咀嚼能力に影響を与える因子として, 永久歯現在歯数, 総咬合力および咬合接触面積との関連性が示唆された。4. 本研究の結果から, 学齢期における食生活指導を行う際には, 咀嚼能力の発達に考慮した指導内容とする必要性が示唆された。
著者
西川 真理子 西 一也 川野 留美 山本 啓子 小林 洋子 原田 由加 渡邊 達夫
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.682-688, 1992-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

The purpose of this study was to evaluate the plaque removal effect of a dentifrice containing granulated zeolite. Fifteen volunteers, who were nurses, dental hygienists and dentists between the ages of 21 and 42 years participated in the experiments. Following professional toothbrushing, the subjects refrained from toothbrushing for 3 days. Then daily professional toothbrushing was performed by trained dental hygienists with the experimental dentifrice for 5 days. No oral hygiene procedure was performed for 3 days after the first clinical trial. The second trial with the control dentifrice was done for 5 days. During each trial, the subjects stopped all personal oral hygiene procedures. The plaque removal effect was evaluated using plaque scores before and after toothbrushing. At 24 and 72 hours after toothbrushing, the inhibitory effect on plaque formation was calculated. The results showed that the experimental dentifrice was significantly more effective in removing plaque on the lingual surfaces and gingival margins and the interproximal gingival margins of the teeth than the control dentifrice. Significant difference was also found between the two dentifrices in removing plaque in pits on the occlusal surfaces. There was no significant difference in the inhibitory effect of the two dentifrices on plaque formation. This suggests that the dentifrice containing granulated zeolite improved the effect of toothbrushing. A questionnaire survey indicated that many subjects preferred the dentifrice containing granulated zeolite. No clinical side effects were observed in the two dentifrices.
著者
石黒 幸司
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.607-616, 1991-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

There is little information about the pattern of fluoride distribution in human bones relative to sex and age. The present study is the first of its kind to be undertaken to determine in detail the fluoride distribution profile in human bone.Human ribs were obtained from 119 patients (M: 72, F: 47) aged 20 to 93 yrs. The fluoride distribution from the periosteal to the endosteal was determined in each specimen using the abrasive micro-sampling technique. Fluoride was determined using the fluoride electrode as previously described by Hallsworth, Weatherell and Deutsch (1976), and phosphorus was determined by the colorimetric procedure of Chen, Toribara and Warner (1956).The concentration of fluoride was highest in the periosteal layer and then decreased gradually towards the interior of the tissue. The amount of fluoride leveled off and then rose again just before the endosteal surface. The difference between periosteal and endosteal fluoride increased with age. Overall, fluoride concentrations increased steadily with age in male subjects but leveled off until the age of 55 yrs and then increased markedly in female subjects over the age of 55 yrs.
著者
可児 瑞夫 可児 徳子 富松 早苗 新海 研志 山村 利貞
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.281-285, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

フッ化物洗口法による洗口時に口腔内に残留するフッ素量を調べることにより, フッ化物洗口法の安全性, う蝕予防効果の期待, さらに洗口方法そのものの再検討を目的として本研究を行った。某小学校児童80名 (3年生, 男子44名, 女子36名) を対象とし, 正確に秤取したフッ化物洗口液 (500 ppm F-, pH5.0, リン酸酸性フッ化ソーダ溶液) 10mlを用いて30秒間洗口をさせ, 次に蒸留水10mlで10秒間の洗口を2回行わせた。洗口カップに残したフッ素量, 吐き出した洗口液中のフッ素量および水による洗口で吐き出されたフッ素量をそれぞれ定量した。定量にはオリオン社製イオンメータ (801型) およびフッ素イオン電極を用いた。その結果, 男子では与えたフッ素量の93.79%, 女子では91.52%が洗口時に吐き出されることが認められた。すなわち, 現行のフッ化物洗口法による口腔内残留フッ素量は男子では0.31±0.12mg (6.21%), 女子では0.42±0.12mg (8.48%) であることが示された。児童80名中81.3%に相当する65名は残留量が0.5mg以下の値を示した。また, フッ化物洗口後に水で口すすぎを行うと残留フッ素量は男子で0.16±0.12mg (3.13%), 女子では0.27±0.12mg (5.46%) となることが示された。以上のことから, 現在行っているフッ化物洗口法における洗口液のフッ素濃度および液量は洗口方法を正しく実施すれば全く安全であり, フッ化物洗口法は効果的なう蝕予防法であることが再確認された。
著者
大橋 たみえ 徳竹 宏保 小澤 亨司 石津 恵津子 廣瀬 晃子 岩田 幸子 米永 哲朗 横井 憲二 福井 正人 小出 雅彦 磯崎 篤則
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.48-56, 2011-01-30 (Released:2018-04-06)
参考文献数
18

歯の切削時に発生する飛散粉塵には種々の口腔内細菌が付着している可能性があり,歯科医療従事者への細菌曝露の原因となる.そのため,特に発生源での切削粉塵の除去対策が重要である.本研究では,切削歯種を下顎中切歯として,患者,補助者,歯科医師の呼吸孔の位置および診療室中央での歯の切削による飛散粉塵濃度と口腔外バキュームの除塵効果を検討する目的で,レーザーパーティクルカウンター計4台を同時に稼動させて粉塵粒度別飛散粉塵濃度を測定した.その結果,下顎中切歯の位置での歯の切削粉塵は,本研究では,口腔外バキュームの使用により,粉塵粒度0.3〜1.0μmの粉塵を,患者の位置では75%以上,歯科医師の位置では60%以上,低減できることが示唆された.よって本研究の口腔外バキュームの設置位置は歯の切削時における患者,補助者,歯科医師の呼吸孔の位置での飛散粉塵濃度の低減に有効であることが示された.前報の上顎中切歯と下顎中切歯切削時との比較では,歯の切削により発生する粉塵濃度は,明らかに上顎中切歯のほうが高い.しかし,口腔外バキュームの使用により,ほぼ同じレベルまで低減することができる.除塵率は,患者と歯科医師の位置では上顎中切歯切削時前報のほうが高い傾向がみられた.本研究の補助者と診療室中央においては,粉塵粒度が小さいもので口腔外バキュームの使用により粉塵濃度が高くなる傾向がみられた.切削点からの距離やエンジンの回転方向,バーの向き等により,口腔外バキューム使用時でも,粉塵漏えいが認められ,全体換気の必要性も示された.今後,チェアサイドと診療室内の各位置で,最も除塵効果の高い口腔外バキュームの設定条件を検討していく必要がある.
著者
近藤 武 吉田 睦子 笠原 香
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.187-192, 1976 (Released:2010-03-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1

高濃度のフッ素はin vitroでコリンエステラーゼ (ChE) を阻害することを確認したので, NaFによるラットChEへの影響を検討することとした。先ず2%NaF溶液をラットの体重kg当り50mgを経口投与し, 投与後1, 3, 24, 48時間ごとに屠殺し, 解剖所見, 各重量を測定するため脳, 腎, 肝, 唾液腺, 血液などの採集を行った。各臓器および血清中のフッ素濃度とChE活性値を測定したが, フッ素はフッ素電極法, ChEはEllmanのDTNB法により定量を行った。血清, 腎, 唾液腺中のフッ素濃度は投与前の対照ラットと比較し, 1時間後には約100倍にまで達したが, 漸次減じ48時間後には投与前に回復した。またChEの抑制は1~3時間後に生じたが, 時間がたつと一部の臓器ではかえて上昇がみられた。ChEの抑制は, アセチルコリンの蓄積を促進させるので, 一般には副交感神経刺激症状を呈する。今回のラットの中毒でも一部のラットに流涎, 嘔吐様の症状などの中毒所見がみられた。
著者
竹下 哲生 岩倉 功子 高垣 勝 埴岡 隆 玉川 裕夫 雫石 聰
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.617-623, 1991-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
22

Porphyromonas gingivalisの赤血球凝集機構に関与するシアル酸の役割について追究するため, Prevotella loesheiiより精製したノイラミニダーゼを用いて, P. gingivalisの赤血球凝集反応に及ぼす精製ノイラミニダーゼの影響について検討した。ヒトO型赤血球を精製酵素で処理して, マイクロタイタープレートを用いた連続2倍希釈法でP. gingivalisの赤血球凝集活性を測定したところ, アシアロ赤血球 (血球表面の糖タンパク質よりシアル酸を取り除いた赤血球) にするとP. gingivalisの赤血球凝集能が増大した。次いで, 分光光度計による赤血球凝集活性測定法により, P. gingivalis 381株の赤血球凝集能に及ぼす種々の因子について追究した。P. gingivalis 381株菌体の赤血球凝集活性は, 正常赤血球, アシアロ赤血球いずれも, 供試した糖やアミノ酸では阻害を受けなかった。また, サルミン, cGMP依存性キナーゼ阻害因子, アンジオテンシンI, IIおよびIIIのようなアルギニンを含むペプチドでは正常赤血球ならびにアシアロ赤血球に対して, 程度に差はあるが, 凝集の阻害がみられたが, サルミンは双方の赤血球に対し低濃度で凝集を特異的に阻害した。次いで, 正常赤血球表面よりシアル酸を精製酵素で除去した際, 赤血球表面の荷電状態の変化を調べるために, 正常赤血球およびアシアロ赤血球表面のゼータ電位を測定した。その結果, 正常赤血球のゼーダ電位は-18.3±3.10mVであったが, アシアロ赤血球のゼータ電位は-4.4±1.16mVと著明に変動した。さらに, 酵素量を変化させて, 赤血球表面より段階的にシアル酸を除去したところ, 赤血球からの遊離シアル酸量が増大するにつれて, 赤血球表面のゼータ電位は0値に近づき, かつ, P. gingivalis 381株菌体の赤血球凝集活性は増大する傾向を示した。以上の結果より, 本菌とアシアロ赤血球との凝集能が, 正常赤血球と比べて増大する現象には, 赤血球表面のゼータ電位の低下が密接に関与していることが明らかになった。
著者
八重垣 健 末高 武彦
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.377-386, 1989-07-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
23
被引用文献数
4 27

口臭予防を目的として, 洗口剤が広く用いられているが, その効果には疑しいものが多い。そこで本論文では, 塩化亜鉛の口臭抑制効果およびその作用機序を検討した。口臭は, 口腔内空気中の揮発性硫黄化合物 (VSC) の測定により行い, VSC定量は, 炎光光度検出器付きのガスクロマトグラフ, 記録計および自動試料注入装置から成る分析システムを用いて行った。洗口剤による口臭抑制効果の判定は, 洗口前のそれぞれのVSC濃度を100%として, 洗口直後, 2時間後, 3時間30分後に行った。その効果, 0.5%塩化亜鉛洗口では, 3時間30分後でH2Sが17.7%, CH3SHが12.2%, (CH3) 2Sが68.7%および硫黄当量の総計で12.5%とVSCの減少を認めた。これに対し, 市販洗口剤および水による洗口では, それぞれ洗口3時間30分後, 2時間後に抑制効果がほぽ消失し, 塩化亜鉛の強い口臭抑制効果が確認された。次にパーコール密度勾配遠心法にて, 唾液中の遊離細胞の分解におよぼす塩化亜鉛の効果を検討し, VSC産生抑制の機序をしらべた。その結果, 0.01%塩化亜鉛にて, 24時間インキュベーション唾液中での細胞分解が抑制されることが明らかとなった。また, 唾液細胞成分中のタンパク分解酵素活性も, 0.05%以上の塩化亜鉛にて完全に阻害されることが明らかとなった。そこで, SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて, 24時間インキュベーション唾液におけるタンパク分解に及ぼす塩化亜鉛の影響を検討した。その結果, 唾液上清では, 分子量66.2Kおよび20.7K~14.4Kのタンパク分解が0.01%塩化亜鉛にて阻害され, 唾液沈渣においても, 66.2K, 84.4K, 27.2K, 24.6Kおよび15.3Kのタンパク分解が阻害されることが明らかとなった。以上の結果は, 洗口剤として使用される塩化亜鉛の濃度により, VSC産生の基質となるタンパク質の分解が抑制され, 口臭抑制効果が発揮されることを示唆した。