著者
豊田 一
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.263-267, 1995-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8

ステロイド軟膏は, 一時的には劇的に効果を表すかの如く見えるが, 長期の連用により種々の副作用が発現し, 逆に治療の妨げとなる。また皮膚乾燥防止に使用されているワセリンにも, 近時皮膚障害の報告がみられる。和剤局方の神仙太乙膏にはステロイド軟膏にみられる副作用はなくアトピー性皮膚炎に対して89.1%の治癒効果が得られたので報告する。
著者
尾崎 哲 森田 仁 下村 泰樹
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.957-968, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
43

東洋医学では心身一如という概念があり, 身体と精神が相互に影響を及ぼしうるとされる。この観点から, 我々は身体疾患に適応される漢方方剤について向精神作用を検討した。そして, 速効性で著明な作用を認めた。しかし, 漢方方剤が〈一定の身体臓器〉に有効であるのと同様, 有効な精神症状は各方剤ごと固有の〈一定の精神症状〉に限られていた。その一環として我々は八味地黄丸に関して向精神作用を検討した。その結果, 意欲賦活作用と抗焦燥作用という, 相反する向精神作用を指摘した。その結果を含めた, 種々の漢方方剤の検討から, 向精神作用の把握には〈五行論, およびその相尅理論〉が有用である事を推測した。しかし, 八味地黄丸の向精神作用には附子が関与している可能性があった。このため今回, 桂皮, 附子を除去した六味丸の向精神作用を検討した。2週後の時点で有効な精神症状は意欲低下, 焦燥感のみで2週後 (4週後) の有効率は66.7% (91.7%), 66.7% (83.3%) と非常に有効であった。その反面, 抑うつ気分の軽度悪化を4週後の時点で41.7%認めた。我々は補剤の長期投与時に, 二次的な精神症状の改善を伴うことを指摘した。そして, これらの知見と今回の結果を総括するためには, 2~4週後以降の時点で〈五行論およびその相生理論〉が有用であると考えられた。また, 附子の向精神作用について種々の方剤との検討から, 火 (か) の補剤である可能性が推測された。また, 陰陽虚実図と五行論の相互関係についても若干の考察を行った。
著者
宮本 康嗣 黒岩 中 岡田 秀親 古川 達雄
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.25-30, 1987-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
23

強い咳と痰を伴った急性気管支炎の患者に対する清肺湯の投与により, 症状の改善が認められた。清肺湯の投与前には, 患者の末梢血白血球の活性酸素化学発光は異常亢進を示した。この活性酸素化学発光の異常亢進は, 5週間の清肺湯の内服により正常化した。さらに in vitro の実験系においても清肺湯は, その添加によりオプソニン化ザイモザン刺激時のヒト白血球における活性酸素化学発光, および抗原刺激時の感作モルモット肺組織からのSRS-A遊離を用量依存的に抑制した。これらの結果は, 清肺湯が一部ではSRS-ロイコトリエンのようなケミカルメディエーターの生成をコントロールすることにより気管支炎の症状の改善に寄与しうるものと考えられる。
著者
松橋 俊夫
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-41, 1989-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
24
著者
伊藤 和憲 越智 秀樹 北小路 博司
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.331-336, 2004-05-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1

慢性的に全身の広範囲に及ぶ疼痛や倦怠感を訴える患者に, 線維筋痛症候群 (FMS) の概念を取り入れた鍼灸治療を試みた。対象は3ヵ月以上広範囲に及ぶ疼痛や倦怠感, さらには不眠や便通症状などの不定愁訴を訴える4症例とし, 自覚的な全身の痛み (VAS) と疼痛生活障害評価尺度 (PDAS) を用いて評価した。その結果, 東洋医学的な病態把握に基づいた鍼灸治療では症状 (VAS・PDAS) に大きな変化は見られなかったが, FMSに効果的とされる鍼通電治療を行うと治療3回後には症状が大きく改善した。このことから, 全身の疼痛や倦怠感を主訴とするような線維筋痛症候群の患者には鍼通電治療が1つの選択肢となる可能性が示唆された。
著者
久永 明人 伊藤 隆 新沢 敦 横山 浩一 喜多 敏明 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4-5, pp.501-505, 2002-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
9

閉塞性睡眠時無呼吸症候群に半夏厚朴湯が有効であった1例を経験した。症例は32歳の男性で, 21歳頃よりいびきと睡眠時無呼吸を指摘され, 27歳時に口蓋垂軟口蓋咽頭形成術を受けたが改善なく, 日中の過度の眠気を自覚するようになり来院した。「咽中炙臠」と考えられる咽喉部不快感を認めたため半夏厚朴湯エキス (ツムラ, 7.5g/日) を投与し, 2週間後には咽喉部不快感が消失した。1ヵ月後にはいびきが消失し, 日中の過度の眠気が自覚的に改善した。投与前と投与5ヵ月後に終夜睡眠ポリグラフィを施行したところ, 無呼吸指数は19.2から10.3に, 無呼吸低呼吸指数は19.2から12.8に改善していた。本例の経過から, 半夏厚朴湯が上気道抵抗を上気道下部において減弱させた可能性があると推察した。
著者
御影 雅幸 吉田 あい
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.411-418, 1996-11-20 (Released:2010-11-22)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

漢薬「大黄」は近年ではもっぱら瀉下薬として著名であるが, 古くから駆淤血薬としても利用され, 大黄の古来の薬効が駆淤血であるのか瀉下であるのかについては未だ明確な結論が得られていない。また, 近年薬用部位に混乱が見られる。本研究ではこれらの問題点を解決するために古文献をひもといて史的考察を行い, 次のような結果を得た。大黄の古来の薬効は駆淤血であったが, 瀉下その他の薬効でも使用されていた。清代までは Rheum palmatum を始めとする大型ダイオウ属植物の根茎が良質品大黄として使用されていた。近年, 根も使用されるようになったのは, 大黄が瀉下薬として評価された結果であると考える。大黄の薬効は多様であり, 今後は根茎と根の薬効の相違, 潟下活性以外の効能などについて詳細に検討する必要があろう。
著者
三谷 和男 若山 育郎 吉田 宗平 八瀬 善郎 上林 雄史郎 三谷 和合
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.83-98, 1989-10-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

SMON患者は多彩な病像を呈するが, 疾病の長期化と加齢により漢方的に類似の証に収束する症例も見られる。このような一群の症例の中に「血痺」と捉え得る症例があり, 我々はこれまで黄耆桂枝五物湯加紅参煎剤を5例に6年間投与し, その効果を舌証を中心に検討した。5例全例で舌質の色調が淡紫紅色から淡紅色に変化し, 1例では地図状苔が一様な白浄苔となった。つまりSMONに特徴的な〓血証が全例で改善されたことが舌所見より明らかとなった。腹証でも, 臍下の抵抗等の改善を認めたが, 舌証ほど著明ではない。また, 神経学的にも知覚・運動共に改善を認め, その後の経過も良好である。副作用は, 現在認められていないが, 長期投与は加齢による影響を考慮し慎重に行う必要がある。
著者
大野 健次 延原 弘明
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.55-61, 1995-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

三叉神経痛の患者34名に, 小柴胡湯と桂枝加芍薬湯のエキス顆粒を同時に投与し, 2週間後における効果を検討した。漢方薬開始前から carbamazepine (CBZ) を服用していた19名のうち11名において, CBZ を減量または中止することができ, 症状の変化から14名において漢方処方が有効であると考えられた。漢方薬のみを投与した11名中8名に痛みの消失ないし軽減がみられた。効果判定不能の4名を除くと, 30名中22名 (73%) において小柴胡湯・桂枝加芍薬湯が有効であった。小柴胡湯合桂枝加芍薬湯は基礎実験と臨床の両面から抗けいれん作用が確かめられており, 三叉神経痛治療の標準薬であるCBZと薬理学的な共通点が多い。小柴胡湯・桂枝加芍薬湯を単独で, あるいはCBZと併用して用いることにより, 三叉神経痛の薬物療法がより有効で安全なものとなる可能性があると思われた。
著者
佐藤 田實
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.211-215, 2002-05-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

治療に際し処方の効きが鈍いとき, 少量の附子を加えると効果を著しく高めた。これは附子と薬との相乗効果の結果と思った。その解明のため自験例と古典の記載を分析し考察を加えた。第1例は22歳女性の紅斑性狼瘡で小柴胡湯合当帰芍薬散に附子1gを追加し6週間で紅斑が消えた。第2例は25歳女性のニキビで当帰芍薬散+補中益気湯に附子末1gを追加して8週間でニキビが治った。第3例は44歳男性で慢性微熱に補中益気湯に附子末2gを加えて6週間で治癒した。附子はどんな症状に効果的なのか。3症例には冷えは認めずむしろ熱のある例も含まれた。また症状はまちまちで一定の傾向がなかった。そこで症例を増せば大凡の傾向が出るものか, 古典の附子加味の例を集め分析した。すると症状は陰陽虚実, 気血水で見ても, 自験例と同様に, 様々であった。この結果を説明するに, 多様な症状に応じ附子に各の効能を想定すると, 多数の効能が必要となりそれは不自然である。そこで附子は, 分量が少なくそれ自体の効果は少ないが, 組む相手薬の効能を高めると仮定すると, 説明し易いことを示した。以上の議論を集約し, 附子の働きには薬への感受性を高める間接効果即ち相乗効果と, 四逆湯のような熱薬としての直接効果との, 2通りの様式があることを述べた。最後に附子加味の臨床に有用な事柄を古典をもとに纏めた。
著者
渡辺 一郎
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.557-561, 1995-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
2

近年の社会構造の変革に伴い, 疾病の病態にも変化がみられる。桃核承気湯証の増加もその一つであろう。当院においても本方剤が頻用処方となったので, 1992年1月~10月末までの外来患者で本方エキス剤投与183例中効果判定可能な125例 (男12例, 女113例) につき臨床効果の検討を試みた。投与例数の多い順に有効率をみると, 月経困難症82%, 過多月経74%, 高血圧随伴症状69%, 更年期障害72%, 腰痛59%, 冷えのぼせ55%, 月経不順55%, しみ38%, にきび60%, 痔核57%, アトピー性皮膚炎60%, その他外陰打撲症, 前立腺肥大, 脳血栓後遺症がみられる。本方は古典 (湯液) の指示, 構成生薬から陽明病期・〓血病態で精神不安, 上熱下寒などの気逆を示すものに有効で, ストレスの多い, 美食で運動不足, 便秘などの背景をもつ今日的症例に幅広く適応されるべきと思う。