著者
夏秋 優 武田 裕美子 矢野 倫子
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.255-259, 2000-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

顔面の皮疹に対して紫雲膏, 太乙膏を外用していたところ, 激しい皮膚炎を生じた50歳の女性症例を報告した。皮膚炎はステロイド療法にて約2週間で略治し, 以後, 再発を認めていない。パッチテストの結果, 紫雲膏, 太乙膏, およびそれらの成分である紫根とミツロウで陽性反応を認めた。このことから, 自験例はこれらの外用剤によるアレルギー性接触皮膚炎と診断した。漢方外用薬による接触皮膚炎は少ないものの, 使用中に皮膚症状が悪化した場合はその外用剤による接触皮膚炎を疑う必要がある。
著者
八坂 達臣
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.331-337, 1994-10-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2

東洋医学的腹証の客観的評価及び解析の試みとして超音波エコーを用い臍下不仁の腹壁での変化を観察した。臍下不仁では腹直筋の厚さ, 白線部の厚さが共に菲薄化し, 両側腹直筋間の距離 (白線部の広さに相当) は開大した。この所見は臍下不仁を腹証上示し易い, 臍と恥骨上縁の中点で著明だった。これらの臍下正中部の浅い腹壁組織での変化により, 腹壁の緊張低下を生じ触診上臍下不仁として腹証に現れるものと考えられた。また, 超音波エコー法は臍下不仁の補助診断や経過観察に有効な手段のひとつになりえる事が示された。
著者
桂 敏夫
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.293-299, 1995-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

腹痛に対しては普通, 芍薬甘草湯 (以下芍甘湯とする) が用いられるが, 甘草湯もこれに劣らず有用である。外来で日頃遭遇する腹痛の中では, 急性の感冒やこれに伴う胃腸炎による一過性のものが多いが, 1年間子供を主とする130例に対してこの両者を内服と口に含むだけの2通りの方法で止痛までの時間を測定した。この2薬方と2方法の4通りのいずれにもほとんど差がなく, 大部分のものは数分から10分以内で腹痛が消失した。
著者
堀野 雅子
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1-2, pp.41-46, 2002-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1

傷寒論, 金匱要略において, 振り出し薬として唯一記載されているのは, 傷寒論の大黄黄連瀉心湯である。振り出し薬とした意味は, 緊急性が要求されているからであろうと思われる。筆者は, 大黄, 黄連, 黄苓三味の瀉心湯の振り出し薬を当院受診の高血圧患者32名 (男性5名, 女性27名) に使用し, 服用前, 服用後30分間経時的に血圧測定した。その結果, 収縮期圧10mmHg以上の降圧効果は, 全体の68.8%であった。平常時, 陽実証と思われない人においても降圧効果があった。今回の投与において, 下痢をした人はいなかった。振り出し薬は瀉下作用よりも, 鎮静作用が強調されていると思われた。緊急的に血圧上昇した場合の降圧剤として有用と思われる。
著者
山下 仁 高橋 昌巳 西條 一止 一幡 良利
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.457-464, 1996-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
16

黄色ブドウ球菌に対する生体の感染防御活性に及ぼす灸の効果を明らかにするため, 黄色ブドウ球菌 Smith 株を用いてウサギに免疫し, 施灸群4羽と非施灸群4羽の血清中の抗体産生能を enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) により比較検討した。施灸群のIgM抗体価は非施灸群よりも有意な上昇 (P<0.05) が認められた。また同株の感染防御抗原である Smith surface antigen (SSA) を用いた ELISA inhibition test では, 初回免疫後9週目における施灸群血清のIgMおよびIgGの抗体活性が有意 (P<0.05) に高かった。このことから灸は黄色ブドウ球菌 Smith 株に対する生体の抗体産生能を昂進させるとともに, 同株に対する感染防御活性も増強させることがわかった。
著者
矢久保 修嗣 小牧 宏一 八木 洋 上松瀬 勝男
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.795-802, 1997-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

葛根湯を肩こりに対して投与し, サーモトレーサーを用いて検討を行った。健常成人9例と肩こり患者19例に対しカネボウ葛根湯エキス細粒 (葛根湯) を投与し, 投与前, 投与30分後, 60分後, 90分後, 120分後にサーモトレーサーを用いて側頸部領域の体表温度の平均値を求めて検討した。投与120分後に肩こり患者群を対象にして, 葛根湯の肩こりの改善度と有用性を評価し, 副作用については全28例を検討した。葛根湯の投与により, 下痢が3.7%に認められた以外に副作用はなく, 肩こりに対しては, 著明改善21.1%, 改善42.1%, やや改善15.8%となり, 有用以上が63.2%, やや有用以上が78.9%であった。葛根湯投与前の健常成人群と肩こり群には側頸部の体表温に差はなく, また, 葛根湯により肩こりの改善した群と, 肩こりの改善が不充分な群の投与前にも差がなかったが, 葛根湯投与後の側頸部体表温の推移は異なっており,肩こりの改善群では葛根湯投与による側頸部体表温の上昇が大きかった。側頸部体表温の上昇が大きいものには葛根湯により肩こりの改善するものが多く, 葛根湯による頸部の血液循環改善がその効果の機序として考えられた。
著者
Eiichi TAHARA Tadamichi MITSUMA Yutaka SHIMADA Takashi ITOH Katsutoshi TERASAWA
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
Kampo Medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.341-348, 1997-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

今回我々はバセドウ病による甲状腺機能亢進症に対して抗甲状腺剤を用いることなく, 漢方方剤のみによる治療を行い, 寛解に至った症例を報告した。症例1は47歳, 女性。約2年前より動悸, 体重減少, イライラ感, 耳鳴, めまい感など多愁訴。TSH低値, fT3・fT4・TBII高値, 123I 24時間摂取率高値からバセドウ病と診断。動悸などを目標に炙甘草湯を処方。その後証に応じて柴胡加龍骨牡蛎湯などを併用した。1年10ヶ月後には, TSH, fT3, fT4, TBIIとも正常化し, 以後現在まで正常域。症例2は40歳, 女性。3年前より動悸出現。近医で甲状腺機能亢進症を指摘され, 約2ヶ月間チアマゾールを内服。初診時TSH低値, fT3・fT4正常, TBII高値。動悸などを目標に炙甘草湯を処方。約3週後にチアマゾールを自己中止。証に応じて柴胡加龍骨牡蛎湯などを併用した。fT3, fT4は徐々に増加したが動悸は消失。10ヶ月後からfT3・fT4は徐々に低下傾向にある。甲状腺機能亢進症に対して抗甲状腺剤を用いることなく, 漢方治療のみで寛解に至らしめ得る病態のあることが示唆された。
著者
矢数 道明 真柳 誠 室賀 昭三 小曽戸 洋 丁 宗鉄 大塚 恭男
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.103-112, 1987
被引用文献数
3

筆者らは日本の医科・歯科・薬科大学 (学部) における, 伝統医学教育についての調査を実施した。本報では当調査結果のうち, 以下の項目に関する統計分析を報告した。<br>1) 伝統医学教育における問題点<br>2) 教育の展望<br>3) 今後導入がなされるべき課程<br>この結果, 伝統医学教育を未実施校の過半数がその理由に教育時間不足と担当者の不在を挙げること。現在実施中と今後実施の可能性のある校を合わせると, 全体平均では37%に達っすること。医科・歯科大学では, 今後は臨床医学系教科と自由講座中にて教育が導入される傾向の高いこと。薬科大学では, 現況の独立教科以外に自由講座・卒後教育などにも導入が進む傾向のあることが知られた。
著者
緒方 芳郎
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋醫學會誌 (ISSN:1884202X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.223-225, 1980-01-30 (Released:2010-10-21)
参考文献数
4
著者
後藤 博三 籠浦 正順 嶋田 豊 小暮 敏明 諸橋 正昭 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.207-215, 2001-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19

菌状息肉症の腫瘍期の症例に対し, 電子線照射やIFN-γの局所療法などの西洋医学的治療に加え, 和漢薬治療を併用し, 長期間良好な経過を得ている症例を経験したので報告する。症例は40歳・男性・会社員。平成3年12月, 上肢を中心に紅斑が出現し全身に拡大した。平成9年7月, 体幹に皮膚腫瘤の形成を認め当院皮膚科にて皮膚生検により菌状息肉症腫瘍期と診断。同年9月に当部を初診し, 潰瘍を伴う皮膚腫瘤や皮疹を目標に, 十味敗毒湯, 托裏消毒飲, 内托散, 〓帰膠丈湯等を使用した。また, 電子線照射施行時の口渇や照射部の熱感に対して白虎加人参湯を, 併発する下痢や全身倦怠感に対して黄耆建中湯等を適時用いた。以後, 皮膚科におけるIFN-γと免疫療法を継続し, 小腫瘤の再発時に托裏消毒飲等を用い良好に経過している。今後も, 慎重な経過観察が必要であるが, 和漢薬の併用が本症例に有用であると考えられた。
著者
尾崎 崇
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.787-791, 2006-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

腎不全で特にBUN値の高い患者に対して大黄あるいは大黄含有方剤が有効であることが報告されている。しかし大黄は瀉下活性を有するために多量に投与しがたい。そこで筆者は瀉下活性を減少させる目的で加熱大黄を作成し, 腎不全患者に用いてみた。処理にあたっては高速液体クロマトグラフィーによるセンノサイドAの定量値を参考にした。第1例には100℃以下で4時間煎じた熱水処理大黄エキスを用いたが, 腎機能は改善しなかった。加熱により腎臓に対する保護作用も失ったものと推測された。第2例には130℃10分間の短期高熱で処理した乾熱処理大黄を用いたところ, 瀉下活性の著明な減弱により大黄として4g/日まで増量できただけでなく, 血液尿素窒素値 (BUN) の緩徐な低下を得た。その後BUN, 血清クレアチニン値 (Cr) が漸増したので, 温脾湯として投与を試みた。しかし, 温脾湯のエキス製剤はないので, 人参湯加大黄, 附子として投与したところ, 大黄単独よりより良い効果が得られた。乾熱処理大黄は瀉下作用が弱く窒素代謝改善作用は優れており, 今後は腎不全治療に使用が検討されるべきである。
著者
宮崎 瑞明
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.535-540, 1994-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

平成4~5年に当院で経験した小児マイコプラズマ肺炎で, CRPが陰性化するまで西洋薬を投与し, この時点で咳嗽と口渇の認められた19例に麻杏甘石湯エキスを1日2~3g投与したものを漢方併用群とした。千葉市立海浜病院小児科の西洋薬で治療した小児マイコプラズマ肺炎の軽症例16例を西洋薬治療群とした。使用抗菌剤はリカマイシン, 又はミノマイシンの内服で, 診断はペア血清のマイコプラズマ抗体価 (CF, HA) 4倍以上を基準とした。漢方併用群は全例, 麻杏甘石湯2~4日の投与により咳嗽が消失した。漢方併用群の平均抗菌剤投与日数は7.1±1.3日, 平均咳嗽消失日数は10.2±1.2日であり, 西洋薬治療群のそれぞれ10.8±2.0日, 12.3±4.7日と比べ短かった (P1<0.0001, P2=0.06)。小児マイコプラズマ肺炎の回復期にみられる咳嗽, 口渇を麻杏甘石湯の主証と一致すると考え, 本方投与によりこれらの症状が改善した。麻杏甘石湯がマイコプラズマ肺炎の咳嗽に有効であることが示唆された。