著者
服部 紀代子
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.141-146, 1994-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

現在まで嗅覚脱失症に関する治験報告は極めて稀で殆んど見られない。私は嗅覚脱失を主訴として来院した症例に随証的に香蘇散を使用し有効であった2症例を経験したので以下に述べる。症例1: 42歳 女性 風邪から発症した鼻炎が治癒した後に嗅覚脱失が生じなかなか治らず耳鼻科医より難治と診断され4ヵ月治療したが無効のため, 漢方を求めて来院。症例2: 75歳 男性 2~3年前から嗅覚の低下しているのを自覚していた。ある日こぼした香水が匂わないことが契機で自分が無嗅覚になっていると分りショックを受けて来院。以上2症例に香蘇散1日7.5g (分3食前) を投与し極めて良好な結果が得られ, 漢方治療の基本である随証治療の大切さを再認識したので考察を加えて報告する。
著者
木下 恒雄
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.607-611, 1994-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
22
被引用文献数
2

柴葛解肌湯 (浅田家方) は小柴胡湯と葛根湯の合方から人参と大棗を去り石膏を加えた合方的薬方であり, 薬方の構成や出典の記載内容から太陽病と裏的少陽証の併病に運用されるべきものと思われる。一方, 併病の治療において, このような病態に対しては太陽病と陽明病の治療原則に倣い先表後裏で対応するのが原則と思われるが, 本方証では例外的に表裏双解的効果を狙ったものと思われる。呈示した, かぜ症候群の症例は当初麻黄湯証と思われたが, 初診の翌日には裏的少陽証への転属すなわち太陽病と裏的少陽証の併病に移行したと診断した。そこで本方を用いたところ, 短時日で症状軽快をみた。このことは太陽病と裏的少陽証の併病の一病態に対する本方の有意性の一端を示すものではないかと思われる。併病治療に際しては治療原則を勘案の上, 本方証の如き例外的な薬方の運用もあることを念頭に置いておくべきではないかと思う。
著者
白尾 一定 前之原 茂穂 愛甲 孝
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.309-313, 1995-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
6

消化器外科に入院した患者84例を対象として, 栄養状態と虚実証の関連について検討した。虚実証の判定は, 大竹の虚実判定スコアーを用いて行った。癌患者の%理想体重は, 非癌患者より有意に低値であった (p<0.01)。癌患者と非癌患者の虚実証の頻度に差は認められなかった。虚実判定スコアーは握力 (r=0.6), %理想体重 (r=0.29), 血清アルブミン (r=0.27) との有意の相関が認められた (p<0.05~0.01)。とくに, 握力は一元配置分析にて虚証, 中間証と実証の3群間に有意差が認められた (p<0.01)。虚実判定スコアーは栄養評価の一つとして有用と思われた。
著者
松本 克彦
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.241-248, 1998-09-20 (Released:2010-03-12)

滋陰とは陰を潤すという意味で, 結局は体液を補う方剤ということになる。このような方剤群を歴史を追って整理すると, まず金匱要略に麦門冬湯, 白虎加人参湯があり, また陰陽双補剤と考えられる八味丸がある。次いで和剤局方には清心蓮子飲があり, ほぼ同年代の小児薬証直訣では六味丸が八味丸の受方として独立する。その後明代に滋陰清熱の概念が確立するとともに, 多くの処方が現れるが, 代表的なものとしては万病回春の滋陰降火湯があげられよう。これらの滋陰剤の適応となる陰虚証の診断には, 望診でるい痩, 皮膚の乾燥, 問診で口渇,足腰の弱り, 粘稠な痰などがあるが, 舌苔の減少, 舌質の萎縮を主とする舌診所見が最も簡単である。陰虚証は老化, 糖尿病, 慢性炎症性諸疾患等に一般的に見られ, 今後の高齢化時代における漢方治療に極めて重要な意味を持つと考えられる。
著者
橋爪 圭司 山上 裕章 塩見 由紀代 古家 仁
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.833-836, 1997-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

中枢神経 (脳・脊髄) の障害に起因する持続性の下肢痙性に, 芍薬甘草湯 (エキス剤) が有効であった2例を経験した。症例1は, 脊髄炎後遺症の61歳女性で, 冬期に左下肢の痙縮が増強し, 左膝の屈曲困難・歩行困難となった。症例2は, 痙直型脳性麻痺の29歳女性で, 坐骨神経痛の悪化と共に, 足尖の痙縮が増強し, 歩行困難となった。いずれも各種筋弛緩薬の効果が不十分であったが, 芍薬甘草湯の定期的投与により, 短期間で著明な痙性の改善を認め, 歩行が容易になった。
著者
和久田 哲司
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1-2, pp.71-75, 2002-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
22

漢代に成立した『黄帝内経』の以前もしくは以後の関係文献から, 手技 (按摩) 療法の発祥及び発展状況を考察したところ, 次の事項を確認した。中国における按摩療法の起源は, 甲骨文や『周禮』の記述から殷周代に求められ,『扁鵲伝』に按摩治法の名やその治効作用が示されていることから, その発祥を春秋戦国期に遡ることが出来る。また,『五十二病方』に按摩療法の記述が見られることは, 按摩治法が既に秦漢以前に行われていたことを実証するものである。そして『養生方』『神農本草経』などの薬物書において「摩」の術が膏薬と共に用いられていたことは,『黄帝内経』での「按」の術との表現が異なってはいるが, 按摩施術が存在していたことを裏付けている。以上のことから按摩療法は少なくとも周代には既に他の治法と共に併用されていた。しかし「按」と「摩」の術としての発展過程の相違が伺われ, 今後この点の検討を要する。

2 0 0 0 OA 蜂蜜薬効論 (2)

著者
渡辺 武
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋醫學會誌 (ISSN:1884202X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.26-34, 1955-03-31 (Released:2010-10-21)
参考文献数
40
著者
光藤 英彦
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.363-375, 1994-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14

鍼灸医学における穴位主治の伝承は, 古方における方と証に匹敵すると考えられる。しかし唐代以後, その伝承の整理にはほとんど手がつけられなかった。その最大の理由は, 明堂経の亡佚である。近年, 黄帝内経明堂類成の一部が我が国の仁和寺において発見され, この研究に端緒が生まれた。1980年代の善本の復刻事業がこの方面の研究に拍車をかけた。私共の研究も, この流れの一端に位置する。私共の研究の特徴は, 穴位主治条文の字列構成を解析するという方法論を用いている点と, 医心方穴位主治の執筆者の見識を研究対象にしている点にある。私共は, この2つの視点から, 穴位主治の伝承を整理し, 伝承の本来の姿を明らかにすることを試みた。
著者
王 元武 赤堀 幸男
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.49-64, 1988-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
29

中国の薬酒は疾病の治療・予防のために創製された方剤であり, 中医弁証に基づく組方原則により組成され, 多くの種類の疾病に対応できる方剤体糸を構成する。このような中国薬酒の本質を解明するために, 歴代典籍の記述を参照して, 酒と薬酒の歴史を考証し, 酒の種類・薬性・宜忌についての記述を引用して酒の本性と特徴を詳しく論述した。これら基礎資料をもとにして, 中医学基礎理論の組方原則に基づく薬酒方剤の組成解析を実施し, 薬酒中における酒の地位は君・使両薬としての二重性を持つことを明らかにした。君薬とは定義通りの主薬であり, 使薬とは引薬・行薬勢・薬性制約・薬効改変の四種の作用を包含する。この方中地位の二重性は, 極めて特殊な事例であり, 薬酒方剤の特質を構成する最も本質的な因子である。さらに, 薬酒方剤の分類を提示し, 著名な薬酒についての解説を行い, 薬酒使用上の注意点を指摘して安全有効な使用法を提言した。
著者
柴原 直利 嶋田 豊 伊藤 隆 新谷 卓弘 喜多 敏明 後藤 博三 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.43-50, 2000-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20

C型慢性肝炎は高率に肝硬変症へと進展し, 自然治癒の可能性は非常に低いとされている。筆者らは, 和漢薬治療によりC型肝炎ウイルスが消失したC型慢性肝炎の一例を経験した。症例は37歳の女性。1982年の第一子出産時に輸血を受けた。1983年1月頃に全身倦怠感を自覚し, 慢性肝炎と診断され治療を受けていた。1988年に肝生検により慢性活動性肝炎と診断され, 同年5月に当科を受診した。初診時より補中益気湯・桂枝茯苓丸を併用投与し, 自覚症状は改善したが, ALT値は不変であった。しかし, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与後より徐々にALT値に改善が得られ, 加味逍遥散料に転方した1996年5月以降は正常化した。ウイルス学的検査においては, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与中である1995年3月に測定したHCV RNA定量では104 Kcopies/mlを示したが, 1998年4月以降は検出感度以下となった。
著者
松田 邦夫
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.347-357, 2000-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
53
被引用文献数
2 1
著者
中田 敬吾
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.43-46, 1983-07-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1