著者
御影 雅幸 達川 早苗
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.1077-1085, 2001-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
34

漢方生薬「木通」は, 現行の『日本薬局方』ではアケビ科のアケビまたはミツバアケビの茎であると規定されている。一方, 中国では木通の原植物はかなり混乱し, 複数の科にわたる多くの異なった植物が木通や通草として使用されている。本草学的研究の結果, 唐代の医家がウコギ科のカミヤツデのやわらかな茎髄に由来する偽品の通草から区別するために原名の「通草」を「木の通草」の意味で「木通」に名称変化したと考証し, また正品「木通」はアケビ属植物であったことを考証した。現在中国では「通草」としてカミヤツデの髄を使用しているが,『傷寒論』などに記された古方にはアケビの茎を使用すべきである。
著者
鈴木 明 仁藤 博
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.877-879, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
3
被引用文献数
2 1

尿管結石の診断を受けた52名の患者に対し, 猪苓湯1日7.5gを服用させ結石の排石効果を検討した。長径4mm以下の結石では, 2週間で63.2%, 4週間で78.9%の排石を認めた。4~10mmの結石では, 2週間で10%, 4週間で33.3% であった。52例全体では, 2週間で28.8%, 4週間で50% の排石率であった。また, 猪苓湯服用による副作用は認めなかった。
著者
代田 文彦 光藤 英彦 五十嵐 宏
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋醫學會誌 (ISSN:1884202X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.75-82, 1972-10-30 (Released:2010-10-21)
参考文献数
5

The local hypalgesia is revealed using the new method.The hypalgesia is brought by the needles which are charged with electric stimulus.The 270 cases of surgical operations are performed with this new method without any troubles.The features of the new method are as follows;1) The thin needles layed under the skin conducts the spike wave, 50-70 volt, stimulate time 7.5×10-5 sec, 1 Hz frequent.2) The hypalgesic zone is dependent on the stimulate points under the same condition mentioned above.3) The hypalgesic zone is found in 30-40 minutes.4) The hypalgesic zone is very different every persons respectively.5) This method has no medical troubles except the hypalgesic phenomena.
著者
日笠 穣 山本 巌 成川 一郎
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.583-587, 1994-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

葛根湯など辛温解表薬の内服の際には, 経験的に温服が重要とされているが, 冷服との効果の差についてはほとんど報告はない。冷温水や温食物が体温に与える影響についても同様である。温服の意義を考察するために, 60℃の温湯180ml, 10℃の冷水180mlを成人10名に飲ませ, 鼓膜温を測定した。さらに70℃の汁400mlを含む天ぷらそばを食べた際の鼓膜温の変化も測定した。温湯の内服では8名に発汗があり, 鼓膜温の変化は一定の傾向は見られなかった。天ぷらそばの摂取では, 鼓膜温が0.73℃上昇した。10℃の冷水では鼓膜温が0.52℃低下した。葛根湯の内服では, 鼓膜温に変化は認められなかった。
著者
原田 英昭
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.861-867, 1997-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
5 3

当帰芍薬散が効果があったと思われる5症例につき報告した。臨床症状, CT, MRI, SPECTなどでアルツハイマー病と診断し, 脳代謝賦活剤を投与後しばらくしてから当帰芍薬散を上乗せして最低1年以上経過観察した。その結果, 俳徊, 多動, 意欲低下などの痴呆の周辺症状に効果を認めたものや, 知能スケールが改善した例もあり, 全体的に多少の改善, 進行の遅延が得られたという印象がある。アルツハイマー病では種々の神経伝達系の機能低下がみられ, とりわけアセチルコリン系の低下が著しい。当帰芍薬散はアセチルコリン合成酵素 (CAT) の活性をたかめたり, ムスカリン性レセプターを賦活してアセチルコリンニューロンの機能を改善することが知られており, こうした面でアルツハイマー病の症状が多少改善した可能性がある。アルツハイマー病に有効な治療法はない現状では, 当帰芍薬散は試みてよい薬剤と思われる。
著者
大竹 哲也 堀口 勇 家島 仁史 堤 哲也 木村 裕明 岡田 多雅
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.449-455, 1998-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

骨粗鬆症に対しては疼痛管理とともに, 骨量の減少を抑えることが重要となる。疼痛に関して漢方薬投与群 (48例) と非ステロイド系消炎鎮痛剤投与群 (18例) の比較を行った。両群間の比較では4週までは差はないものの, 8週・12週では, 漢方薬投与群の方が有意に疼痛の改善を示した。次いで, 長期にわたって漢方薬を投与された症例の中で, 症例数の多かった桂枝加朮附湯と牛車腎気丸の2剤に関して骨量を検討した。桂枝加朮附湯投与群は20例, 牛車腎気丸投与群は12例となった。骨量は DIP (Digital Image Processing) 法で初診時, 3, 6, 9ヶ月後に測定した。また比較・対照として, 約10ヶ月の間治療を受けなかった症例を無治療群 (11例) とした。対照群では約10ヶ月の間で骨量は有意な減少を認めた。桂枝加朮附湯投与群のMCIは全期間を通じて初診時との有意な差は認められなかった。m-BMDの初診時との比較では3, 9ヶ月後において有意な増加を認めた。牛車腎気丸投与群のMCIおよびm-BMD値はどちらも全期間を通じて初診時との比較で有意差は認められなかった。桂枝加朮附湯は骨粗鬆症患者の骨量の減少を抑制し, むしろ改善効果が示された。牛車腎気丸も初診時の骨量を維持した。
著者
小川 達次 木村 格
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.359-364, 1994-10-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

脊髄小脳変性症8例 (オリーブ核・橋・小脳萎縮症3例, 晩発性小脳皮質萎縮症2例, 家族性脊髄小脳変性症3例: 平均年齢59.3±11.3歳) に抑肝散を15日間投与し, その有用性を検討した。カウンタータッピング, 重心動揺面積と距離, 排尿回数, 臥位血圧と脈拍は有意の変化を示さず, 起立性低血圧の改善もみられなかった。しかし, 日常生活動作評価点 (総計100点) は74.8点から81.0点へと有意に改善した (P<0.05)。「立位や歩行時の安定」,「めまい感軽快」,「上肢が軽くなった」などの自覚的改善は, 8例中6例に認められた。OPCA症例では上記の改善は一時的ではあったが, 根本的な治療方法のない脊髄小脳変性症に対しては, 抑肝散をはじめとする漢方治療も試みる価値があると考えられた。
著者
有地 茂
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋醫學會誌 (ISSN:1884202X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.225-230, 1973-05-30 (Released:2010-11-29)

皮膚と内臓とが特殊の関連があり, 特定の皮膚部位と特定の内臓が関係があることを明らかにした. 特に皮膚の真皮, 皮下結合織, 筋膜が内臓と関係することを明らかにし, 家兎において実験的に証明した.
著者
牧野 健司
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.71-78, 1996-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17
被引用文献数
1

気管支喘息の本態に対する考えは, 免疫学の進歩と共に変遷があり, 近ごろでは遅発型喘息反応が病態の主たるものとの考えが浸透しつつある。しかしながら即時型反応による気道の狭小化も重要な因子となる。中医学的薬能から考えて, これらの病態に有効と考えられる処方を検討した結果, 既製の方剤では効果は十分ではないと考えられた。そこで, 新たに薬能及び薬理作用から組み立てた方剤を用いて治療を行った。これに用いた処方は, 漢方独特の古典的「証」や中医弁証を考慮せず, 薬効・薬理作用のみを考えて組み立てたものであるが, 優れた効果が認められた。
著者
古屋 聖児 高橋 謙之祐
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.183-189, 2003-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

経尿道的前立腺切除 (TURP) 術後の疼痛・不快感 (Post-TURP pain/discomfort, PTPD) に対する竜胆瀉肝湯の有効性を, The National Institutes of Health Chronic Prostatitis Symptom ndex (NIH-CPSI) 日本語版 (案) を用いて検討した。対象症例は15例で, 年令は57~77歳 (平均69.8歳), TURP術後経過年数は0.8~10年 (平均3.4年) であった。竜胆瀉肝湯 (7.5g/日) の投与前と投与後2週毎, 患者にNIH-CPSI日本語版 (案) に記入してもらった。竜胆瀉肝湯の投与終了までの期間は, 2~16週 (平均6.4週) であった。PTPDに対する竜胆瀉肝湯の効果は, 有効症例が11例 (73%), 無効症例が4例 (27%) であった。竜胆瀉肝湯投与前と投与終了時の疼痛の重症度, 疼痛の頻度およびQOLの各スコアの平均±標準偏差は, それぞれ5.8±1.5と2.6±1.9 (p=0.0014), 3.4±0.9と2.0±1.5 (p=0.0096), 4.5±0.7と2.6±1.4 (p=0.0033) で, 有意の低下を認めた。従って, 竜胆瀉肝湯はPTPDの治療薬の選択肢の一つとして有用であると考える。
著者
関矢 信康 地野 充時 小暮 敏明 巽 武司 引網 宏彰 柴原 直利 喜多 敏明 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.443-447, 2006-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10

腸癰湯は『備急千金要方』を原典とする処方で急性・慢性腸疾患, 皮膚疾患, 肺化膿症などに応用されてきた。我々は種々の疾患に対して腸癰湯が有効であった9症例を経験した。自覚的には更秘を訴える者が多かった。これらの症例を検討した結果, 共通した他覚所見としてこれまで重要であるとされていた右臍傍圧痛, 回盲部圧痛, 腹直筋緊張の他に, 皮膚乾燥, 浮腫傾向 (顔面, 上肢, 下腿), 舌質の色調が正常であるものが多い傾向がみられた。これらが新たな使用目標となることが示唆された。
著者
藤田 六朗 岸 勤
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋醫學會誌 (ISSN:1884202X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.12-18, 1955-03-31 (Released:2010-10-21)

Examination by means of the skin palpation technique developed by the author's co-worker Tsutomu Kishi yielded the following results. 1. A set of characteristic skin “Keiraku”(meridian) lines exists for each Keiraku. 2. As has been described by Sawada and Shirota, the “Bokokei”(VU) was found to coincide with the first, second, and third lines, and the T M 13 to be located at the seventh cervical vertebra. 3. Subcutaneous indurations belonging to “Yo-keiraku”(positive meridian) are seen as prominences, and those beloning to “In-keiraku”(negative meridian), as depressions, and those belonging to Keiraku of semi-positive, seminegative character included both types. 4. By studies on pulse diagnosis Fujita established the fact that the combination of intraand extra-vascular flow of the body fluids is helical in mode and came to the conclusion that the findings obtained by means of Kishis special technique could probably be analysed as a set of projections of mathematical curves braught about by some changes due to the heical motion of the body fluids. 5. Furthermore the cause of the undulatory change of the Keiraku is presumed to lie in the vibration of automatic movements of the twelve organs, among which the heart is of course the most important. Therefore the author considers that explanation of the undulatory character of Keiraku phenomena can be obtained by simultaneouly taking out the electric action current of each organ and measuring of its intensity in each of the Keiraku (1955, 19/II).
著者
岡 進 中嶋 義三
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.457-460, 1993-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
5

冷え症24人に対して当帰四逆加呉茱萸生姜本湯を投与しその効果を検討した。本剤は苦みが強く7日目までに3人が服用中止したので, 21人で効果判定を行った。著効は手と足の両者とも冷感が消失したもので5例, 23.8%。有効は手か足の一方の冷感が消失したもので13例, 61.9%。著効, 有効を合せた有効率は85.7%であった。効果発現時期は平均36日目で最短7日目, 最長105日目であった。投与期間は著効例で7.8ヵ月, 有効例で5.8ヵ月であった。無効例は3例, 14.3%であった。効果判定は平均19日目で無効の判定を下し, 投与期間は3.6ヵ月であった。本剤投与著効例では, まず手の冷感が改善し, ついで足の冷感が改善した。それにともない四肢末端の色調の改善, 爪変形の改善がみられた。本剤は「苦み」があり服用しにくいことを訴えるが, 効果があれば長期服用もいとわない漢方薬であり, 冷え症に対して有用である。
著者
遠藤 次郎
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.61-64, 1986-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1

著者は古典に散在する奇経八脈についての記述を再検討し, 次のように整理した。体幹の正中線 (督脈, 任脈) に貯えられている精気は衝脈と帯脈によって上下および左右の端の骨の塊に運ばれる。この骨の塊の精気は, 〓脈によって骨の塊附近に運ばれ, 維脈によってさらに離れた部位に運ばれる。このようにして, 奇経八脈は精気をそれぞれの体組織に灌漑する。
著者
三国 英一 戸田 静男 森田 義之 黒岩 共一 坂口 俊二 川本 正純
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.887-892, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

The levels of stress-related hormones in the blood were measured before and after doing Qi Gong health-maintenance exercises, and a control group of walkers with a similar level of movement selected for the basis of a comparative study. The adrenaline, noradrenaline and growth hormone responses of the Qi Gong group were compared with the pre-exercise values. Although no significant difference was observed immediately after exercise, there was a significant drop in all values 30 minutes after exercising. Similar changes in the blood cortisol were noted in the Qi Gong group and walker group. Compared with the pre-exercise value, both group exhibited significant reduction in blood cortisol both immediately following exercise and 30 minutes after exercise, with the lowest value occurring 30 minutes after exercise. In contrast to the increase in stress-related hormones typical after light exercise that was seen in the walker group, the significant reduction response seen in the stress-related hormones of the Qi Gong group with the similar amount of movement was seen as unusual. This suggested that Qi Gong may be a positive means of stress-reduction and a useful health-maintenance method in today's stressful society.
著者
中田 輝夫
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.205-210, 1997-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

主として中高年の, HRS得点で30点以下の軽うつ病の患者30例に対して, 加味帰脾湯の投与を試みたところ, 30例中76.6%が平均3.5週間の観察でやや有効以上の成績を得た。症例は虚証で, 自殺企図がない症例に限定し, 不眠, 不安, 食欲不振等の症状のある例にはその緩和のために Benzodiazepine 系の抗不安薬および十全大補湯の併用という条件であったが, 加味帰脾湯は有効であると考えられた。