著者
須見 洋行 大杉 忠則
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.73, no.12, pp.1289-1291, 1999-12-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
15
被引用文献数
2 4 8

In commercially obtained natto and experimentally-prepared natto preparations, relatively high concentrations of dipicolic acid, 20.55±13.67 mg/100g natto (0.006-0.048%, wet weight) were detected, using a simple method combined with ion-exchange column and colorimetric assay procedures. These values were less than that of the previous data (0.06-0.20%, wet weight) reported 60 years ago. Dipicolic acid was thought to be an intracellular component of natto bacilli and could be extracted in the water-soluble fraction by heat-treatment of the sample for 30min at 120°C. Furthermore, the partially purified material from natto bacilli caused very strong inhibition of the growth of sake yeasts (Kyokai 7 and Kyokai 9 mutant).
著者
須見 洋行 馬場 健史 岸本 憲明
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1124-1127, 1996-10-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
9
被引用文献数
3 6

納豆抽出液中に従来のナットウキナーゼでは説明できない強力なプロウロキナーゼアクチベーター活性を確認した.6種の市販納豆の活性はヒトプラズミンを標準として21.8±5.5CU/g湿重量であった.同酵素はゲル濾過法で分子量2.7万以上に3つ以上の活性ピークを示し,またDFPあるいはNPGBで阻害されるセリン酵素と思われた.この酵素を高力価含む乾燥粉末30gを5人の健常成人ボランティア(51~86歳,男女)に経口投与した結果,4~8時間目にわたるEFAの上昇あるいはFDPの増加から持続的な血中線溶亢進と血栓溶解の起こることが確認された.
著者
須見 洋行 赤木 玲子 H P Klocking 中島 伸佳 浜田 博喜 KLOCKING H P KLOKING H.P.
出版者
岡山県立短期大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

日本の伝統食品納豆より分離された新規の線溶酵素ナットウキナーゼは分子量約2万,等電点8.6で,血栓(フィブリン)に対する強力な分解活性の他,プラスミン基質であるH-D-Val-Leu-Lys-pNAへの反応性を示した。しかし,プラスミンのタイトレーターp-nitrophenyl-guanidinobenzoate(NPGB)には働かず,N-trans-cinnamoylimidazoleによるタイトレーションで53.0%activeであった。NKをLys-peptidase処理して得られた9個のペプチドを分析し、NKはN末端にAlaを持ち,S-S結合のない27個のアミノ酸からなるセリン酵素であること,従ってこれまでのいかなる線溶酵素とも異なり,分子内に“kringle"を持たない一本鎖ポリペプチド構造であることを明らかにした。納豆から得たPoly-Gluを含むNK-rich蛋白をウイスター系ラットに3ケ月間わたり経口投与した(4.8万単位/kg)。その結果,血漿ELTの著しい短縮(p<0.01),pyro-Glu-Gly-Arg-pNA及びH-D-Val-Leu-Lys-pNAでみた血漿アミダーゼ活性の増加(p<0.01)に加えて腎及び肺の組織プラスミノーゲンアクチベーター活性(t-PA)の亢進(p<0.1)を確認したが,血液凝固系であるAPTT及びRe-Ca^<++>Tの変化はなかった。また,純化したNKの腸溶カプセルをボランティアーヘ投与をした結果,血漿EFAの増加と共に血中での血栓溶解を示すFDP抗原量の著しい増加(p<0.001),さらにはendogenous酵素の産生を示すt-PA抗原量の増加(p<0.005)を確認した。今後さらに例数を増やし検討する必要があるが,以上の結果よりNK(あるいはNK-rich納豆)は血栓症の治療剤として,あるいは予防目的の機能性食品素材としてその応用開発が大いに期待できる。
著者
須見 洋行
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.137-146, 2014 (Released:2018-03-06)
参考文献数
26
被引用文献数
2 1

血液には,血液を凝固させる凝固系と凝固した血液を溶かす線溶系が存在し,そのバランスが大切である。筆者はこれまでに血液の凝固-線溶系について研究を重ね,1980年代に血栓を溶解するナットウキナーゼを発見し,納豆の健康食品としての有効性を裏付けた。本稿では,焼酎香気成分が線溶因子の1つであるt-PAの放出を促進し,血小板凝集を阻害することについてご紹介いただく。これまでに,適量飲酒は心臓疾患や脳梗塞に良いという結果が多くの疫学調査で報告されているが,焼酎香気成分の寄与もあるのではないだろうか。
著者
須見 洋行
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.513-519, 2001-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

昔から酒は百薬の長と言われる。お酒が持つ健康上の機能についてはお酒好きのみならず大変興味があるところであり, また酒類業界としても需要拡大を図る上で大きな期待がある。筆者は酒類の飲酒の比較実験の中で, 本格焼酎と泡盛には人間の血栓溶解活性を増大させる高い機能があることを明らかにした。そこでその実態を記述していただくとともに, 適正飲酒についても言及していただいた。

2 0 0 0 OA 納豆の機能性

著者
須見 洋行
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.518-524, 1990-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
42
被引用文献数
3

納豆という食品は, 世界中の発酵食品の中でも最もユニークなものといってよいであろう。それは, 利用される菌が枯草菌 (腐敗菌) に類縁の菌を利用しているところにある。しかも, 特有の香味と粘質物を産生することの他, 最近は人類にとって有効な生体機能調節機能を有することが, 科学的に解明されつつある。その研究分野での第一人者に最新の情報を解説していただいた。
著者
小泉 智史 矢田貝 智恵子 内藤 佐和 柳澤 泰任 須見 洋行
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.44, 2004 (Released:2005-04-02)

【諸言】ビタミンKは血液凝固因子の合成のみならず骨粗鬆症との関係が注目されている。これまで当研究室では納豆菌が生産するビタミンK2(MK-7),ナットウキナーゼ(NK)について報告してきた。今回,市販納豆及び納豆菌によるビタミンK2,NKについての培養温度,振盪速度による生産性の変化などを検討した。【実験方法】納豆菌は(Bacillus subtilis natto)納豆の製造に用いられる宮城野株,朝日株,高橋株,医薬用に用いられる日東株,目黒株,中国雲南省の納豆から分離した雲南株,金沢株の計7種類の菌株を基本培地2%ポリペプトンS(和光純薬),3%グリセリンを用い,液体振盪培養を行った。また比較対象として市販納豆7種類の乾燥物を試料とし,MK-7は当研究室で確立したHPLC法(Sumi et al.,Food Sci.Tech.Res,5:48,1999;農化,73:599,1999)で測定した。またNKの血栓溶解活性は標準フィブリン平板の溶解面積(mm2)(Sumi et al.Experientia,43:1110,1987)で測定した。【結果】市販納豆7種類でのMK-7含量は11.9±8.6μg/g(dry wt)で,液体振盪培養による菌体内MK-7含量は2,852.0±2,774.2μg/gとはるかに高含量であり,最も多く生産したものは29℃の金沢株の12,800μg/g(dry wt)であった。培養液上清の場合,特に目黒株は100rpmよりも30rpmの方が高い数値を示した。またNKの血栓溶解活性はMK-7とは相関せず,29℃よりも37℃,30rpmよりも100rpmの方が生産性のよいことが確認された。
著者
須見 洋行 岡本 猛
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.337-342, 2003-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

テンペ水抽出液に強い血栓溶解活性を確認した.水抽出液の凍結乾燥物1g当たりの活性はウロキナーゼに換算して450 IUであった.この血栓溶解活性を示す主要な酵素は, 等電点電気泳動の結果から, 等電点は約8.7であり, その分子量はゲルろ過の結果から約30,000と推測された.この酵素は血栓タンパク質 (フィブリン) だけでなく, 弱いながらSuc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNAおよび H-D-Val-Leu-Lys-pNAも分解し矢印は, 分子量スタンダードの溶出位置を示す. (1) : サイログロブリン (分子量670,000), (2) : γ-グロブリン (分子量158,000), (3) : 卵白アルブミン (分子量44,000), (4) : ミオグロビン (分子量17,000), (5) : ビタミンB12 (分子量1,350).た.さらに, 65℃以上で失活し, 1mM/lのジイソプロピルフルオロリン酸および1mg/mlのエラスタチナールによって強く阻害された.Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNA分解に対するエラスタチナールの阻害は競合的であり, Ki値は9.8×10-8Mであった.
著者
須見 洋行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.358-359, 2015-07-20 (Released:2017-06-16)

「納豆」という言葉が初めて登場したのは平安時代であるが,現在の「糸引き納豆」が紹介されたのは江戸時代に入ってからで,最も古い食べ物の辞典ともいうべき「本朝食鑑」にも記載されている。この糸引き納豆は日本人の多くが好きである一方,特に外国ではニオイや粘りを嫌う人も多い。しかし,蒸した大豆よりも栄養価が高く,さらに納豆にしか含まれない血栓溶解酵素ナットウキナーゼをはじめ各種効能成分が含まれている。本稿では世界に誇る日本の糸引き納豆の魅力について紹介する。
著者
須見 洋行 佐々木 智広 矢田貝 智恵子 小崎 泰宣
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.1259-1264, 2000-11-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
17
被引用文献数
6 7

納豆の水抽出熱処理物中には線溶酵素に対する強い賦活物質(FAS)が存在し,それをトリプシンーフィブリン平板を用いて測定することができた.この簡易法で市販7社の納豆100g (湿重量)中には平均7.41±5.45万単位(サーファクチンμg換算) (平均±標準偏差)という非常に高い活性が検出された. FASはプラスミン,トリプシン,あるいはミミズ酵素のような直接のフィブリン分解酵素だけでなく,ウロキナーゼのようなプラスミノーゲンアクチベーター,あるいはナットウキナーゼなどのプロ-ウロキナーゼアクチベーターに対しても強力な賦活効果を示すことがわかった.本物質は納豆抽出液から酸処理(pH 2.0沈殿)およびエタノール処理(可溶分画)の組み合わせで容易に分離でき, 1kgの納豆からの収率は約81.7万単位(乾燥品4.6g),純度は177.6単位/mg (乾燥重量)であった.
著者
須見 洋行 浅野 倫和
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.937-942, 2001-10-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15

ナットウキナーゼ活性を指標として納豆菌 (Bacillus natto NB-1株) による大麦の固体発酵が可能であることを明らかにした.その活性は37℃の発酵で1日目にピークを示す一過性のものであり, その後漸減したが, 1.0M尿素の共存下ではピーク後の濃度の減少は抑えられ, 酵素の生産量は持続的に高められることが分かった.この納豆菌による麦発酵物中にはナットウキナーゼが持つ強力なフィブリン分解能 (10万IU以上/100g乾燥物) と共に, Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNA, H-D-Val-Leu-Lys-pNA, Suc-Ala-Ala-Ala-pNAなどの合成アミド基質に対する分解能, そして大量のビタミンK2 (メナキノン-7) (約9,500μg/100g乾燥物) の存在が確認された.また, 未処理物に比べて発酵大麦は遊離アミノ酸含量が高く, 特にPhe, Val, Tyr, およびGlu濃度は10倍以上優れていることが分かった.
著者
須見 洋行 大杉 忠則 内藤 佐和 矢田貝 智恵子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.28-32, 2011 (Released:2016-06-13)
参考文献数
5
被引用文献数
1

納豆は日本人がこれまで慣れ親しんできた伝統的な発酵食品である。そのスターターである納豆菌の歴史や酵素ナットウキナーゼの特性を同属の枯草菌と比較して分かりやすく解説していただいた。ナットウキナーゼ活性がきわめて高いことが納豆菌の最大の特徴であると述べておられ,Bacillus subtillis nattoがこれまで長く使用されてきたことが首肯できよう。なお,Codex委員会に納豆やテンペなどアジアの大豆発酵食品の国際統一規格化の動きがあることから,その動きをフォローする必要性も述べておられ,業界も是非参考にしていただきたい。