- 著者
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北林 行雄
郭 立新
黒田 靖子
加藤 ジェーン
川田 勉
中山 剛
- 出版者
- 富山大学
- 雑誌
- 富山大学工学部紀要 (ISSN:03871339)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, pp.43-48, 1998-02
- 被引用文献数
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Cognitive property of Japanese surnames having peculiar intimacy to each of Japanese as an individual label was investigated. The frequencies of 5778 surnames taken from directory of a society including 30,000 members were investigated. Twenty subjects assessed the intimacy of surnames sampled from above mentioned 5778 surnames. Average scale values of intimacy for sampled surnames were found to be proportional to logarithms of frequencies . As a result of factor analytic study of intimacy, two factors were extracted. Quantitative relationship among frequencies and those factors was examined.人間による外界の認知は,機械認識と異なり,認知が能動的であることが特徴である。テレビカメラやマイクロホン等を通した機械的な情報の取り込みは,全く無選択的であるのに対し,視覚や聴覚による認知は極めて選択的であり,認知を行なう人間にとって必要のない情報は無視される。この現象は,聴覚の世界では,古くからカクテルパーティ効果として知られ,その機構の解明が試みられてきたが,まだ完全には明らかでない。この効果は,パーティなど,周囲で大勢の人の話し声がする場合でも,誰かが自分の名前を云うと聞こえたり,離れたところで話している人に注意を集中するとその人の話を聞くことができるといった聴覚における選択的認知に関するものである。また,視覚の世界でも,眼の網膜の解像度の特性は均一でなく,中心か(fovia)と呼ばれる部分を中心に視角にして+3度程度のごく狭い範囲だけが解像度特性が高く,それをとりまく周辺部は解像度が低い替わりに動きに対して敏感であるといわれている。したがって,人聞は外界の視覚的情報を得ようとする場合には,見ようとする対象に頭の運動と眼球運動を組み合わせ,かつ,レンズとして作用する水晶体の焦点を調整して,中心か上に像を結ぶような,能動的な活動が必要となる。近年,人工知能の世界で,人間の認知機構を計算機に取り入れ,計算機による外界の認識を柔軟なものにしようとする研究が行なわれている。我々も,こうした研究の一貫として,人間の姓のもつ認知的特徴に着目し,これを材料として認知の能動性の一貫を解明しようと考えた。姓は個人のラベルとしての特性を持ち,その認知は特定の個人にとって特別な意味を持っている。すなわち,自分の姓は非常に高度な親近性を持ち,カクテルパーティ効果に代表されるように,認知される度合も他の人の姓よりはるかに大である。したがって,姓の持つ特性を明らかにし,これと認知特性との関係を調べることにより,人間の認知特性の一側面を解明できるものと考える。その研究の第一歩として,本報告では,日本人の姓の出現頻度を調べ,同時に,個々の人聞にとっての姓の親近度の特性を明らかにし,頻度と親近度の関係付けを行なった。これをベースとして姓の認知特性の研究を進めたい。