著者
阿部 慶賀 中川 正宣
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.660-670, 2008 (Released:2010-04-23)
参考文献数
15

Previous studies (Cosmides, 1989, Cosmides & Tooby, 1989) have shown the Cheater Detection Module (CDM) to be an adaptive heuristic within social environments, and how it can improve human reasoning in many social exchange contexts. The purpose of this study is to examine the effects of the CDM on problem solving. To that aim, the ‘30 dollar room’ problem (Isaak & Just, 1992) is employed, which involves a social exchange context. Generally speaking, we use heuristics to efficiently solve normal problems. However, this particular problem can be considered to be a typical insight problem. While heuristics can function effectively in practical contexts, they can be obstacles to solving insight problems (Knoblich, 1999; Hiraki & Suzuki, 1998). We hypothesize that the CDM will make it difficult to find the correct answer for this insight problem. In order to investigate this hypothesis, we compare solution rates for the standard ‘30 dollar room’ problem with isomorphic problems that do not involve ‘social exchange’ contexts. The results indicate that the solution rates for the isomorphic problems were higher than for the standard version of the problem. The results are supportive of our hypothesis. The results indicate that there are situations in which the CDM, a cognitive system that has emerged in adaptation to social environments, has a negative influence as a cognitive constraint.
著者
深町 珠由 伊藤 由香 中川 正宣 前川 眞一
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.123-139, 2004 (Released:2004-04-16)
参考文献数
22

従来の相互作用論におけるパーソナリティは質問紙法で測定され,動態的相互作用という時系列変化過程を測定していなかった。本研究は,コンピュータ制御による相手との相互作用過程から動態的個人特性を測定し,従来の質問紙法による静態的指標と比較した。課題では,コンピュータ内の相手が反省エネ行動を繰り返し行う中で,被験者に省エネ行動と相手との友好関係維持という二律背反の目標を与えた。対人協調・非協調行動と対人友好感情評定値の時系列変化を測定し,この2変数相関を個人で求めて動態的個人特性とみなし,得点から高・低群に分類し,各群の代表的時系列特徴を主成分分析で求めた。実験条件には,相手が反省エネ行動を反復することを共通として,相手の攻撃的口調条件と非攻撃的口調条件とを設定した。結果として,対人友好感情評定値の時系列変化が動態的特性の高・低群と各実験条件とで変化傾向が異なり,相手の表面上の口調の影響と,口調と反復される反省エネ行動との一致感の認知の影響を受け,それが時間経過で変化する傾向が示された。動態的指標と静態的指標とを比較したところ,実験条件を通じて一貫した相関は確認されず,動態的指標が質問紙法で測定できない独自の個人特性を表現している点が示された。今後も動態的相互作用に基づく個人特性の測定研究が多くなされる必要がある。
著者
寺岡 隆 真弓 麻実子 中川 正宣 瀧川 哲夫
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

実験ゲーム研究における「因人のジレンマ」とよばれている心理学的事態は、いわゆる個人合理性と集団合理性に関する社会動機間の葛藤を示す典型的事態である。こ事態が何回も繰り返される場面では、この事態に参加するふたりのプレイヤーの選択は、しばしば最適解でない共貧状態に陥ってしまうことが多いが、この状態から共栄状態へ脱出するにはどうしたらよいかという問題がこの領域におけるひとつの主題になっている。本研究は、この主題を統制者が選択する反応系列によって相手側に協力反応を選択せざるを得ないようにする方略に関する視点と相手側に事態を規定している利得構造をいかに把握させるかという事態認知と情報統制とに関する視点に焦点をあてたものである。前者は「TITーFORーTAT」とよばれる方略,後者は申請者によって提起された「合成的分解型ゲーム」というパラダイムを基盤とする。本研究の目的は、これらのパラダイムが共栄状熊の実現に有効になり得るかということを実験的に検討することにある。本報告書は2部から成り、第1部はTIT-FOR-TAT方略に関する3系列の実験的研究,第2部は合成的分解型ゲームに関する2系列の実験的研究の成果を述べたものである。第1部における実験研究では、1)TIT-FOR-TAT方略には種々の型があり目的によって最適方略が異なること、2)利得和最大化のためには、可能ならば同時TIT-FOR-TAT方略が最適であること、3)利得差最大化にためには、当実験条件下では倍返しTIT-FOR-TATが最適であったこと、4)報復の遅延は効果を減ずること、などの結果が得られた。第2部における実験研究では、1)合成的分解型ゲームは理論的に標準的分解ゲームより効果があるにしても、そのままでは大きな効果を示さなかったこと、2)情報の統制効果は大で、相手に統制者の利得条件を示さない場合や相互の利得を示さない場合はとくに顕著であることなどの結果を得た。
著者
張 寓杰 寺井 あすか 董 媛 王 月 中川 正宣
出版者
Japanese Cognitive Science Society
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.439-469, 2013

This study, at first, constructs a computational model of inductive reasoning based<br> on the probabilistic concept structure estimated by the statistical analysis of large scale<br> Chinese language data. In order to examine the efficiency of the model, which has al-<br>ready been certified about the Japanese language (Sakamoto & Nakagawa 2008, 2010),<br>the study verifies the validity of the model using the psychological experiment. The<br> new computational model of inductive reasoning is constructed based on the statistical<br> analysis of extended Japanese language data, including not only the news paper articles<br> but also literature. The validity of the model is then verified using the psychological<br> experiment.<br> Furthermore, from the comparison between simulation results of both models, the<br> study examines the hypothesis that the inductive reasoning process does not necessar-<br>ily depend on the individual language system. Finally, through the detailed comparison<br> between the results of both models, the commonality and difference between both cul-<br>tures and social systems hidden in the back of both languages is discussed.
著者
中川 正宣 富家 直 柳瀬 徹夫
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.147-158, 1985-03-30
被引用文献数
8

本研究において, 我々は与えられた表色系から一意的に色彩感情得点が計算できるようなシステムの構成を行なった。まずEvaluation, Potency, Activityという3つの色彩感情因子を得るため, 色刺激のSD法の結果に因子分析(キャロル・チャン法)を行ない, 次にスプライン関数による平滑化を用いてそれらの感情因子得点と与えられた表色系指標(マンセルの明度, 彩度)との関数を構築した。最後に, 各因子とマンセル指標(明度, 彩度)との関数関係を表わす曲面を描くため, 得られた関数を用いて理論得点を算出した。将来はこの曲面の数学的特徴を探ることによって色彩感情系の一般的メカニズムに迫りたいと考えている。