著者
松本 和也 羽鳥 剛史 竹村 和久
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.165-172, 2015 (Released:2015-12-25)

本研究の目的は、オルテガの論ずる「大衆」とウェーバーの論ずる「官僚制」の概念を用い、今日の我が国における官僚批判の心理構造について実証的に検討することである。この目的の下、大衆性を測定する大衆性尺度及び官僚制化に関わる形式性追求傾向尺度、政治・社会の官僚制化に関わる態度指標を用いたアンケート調査(n = 400)を行い、これらの関連を調べた。その結果、大衆性尺度と形式性追求傾向尺度との間に正の関連性が示され、大衆性の高い個人ほど、マニュアル等の形式性を追及する傾向にあることが示された。また、大衆性と政治の官僚制化に関わる態度の関係性として、傲慢性と吏員型官僚支持意識との間に正の関連性が、自己閉塞性と政治的官僚支持意識との間に負の関連性が示された。さらに、大衆性と社会の官僚制化に関わる態度の関係性として、傲慢性と社会の官僚制化に関わる態度との間に総じて正の関連性が示された。最後に、本研究の結果が大衆による官僚制化の弊害を抑止する上で示唆する点について考察を行った。
著者
藤井 聡 竹村 和久 吉川 肇子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

いかなる社会システムにおいても,多様な価値観が共存している.こうした価値観の多様性は,共存共栄によって社会システムの潜在的な環境適用能力を確保し,より望ましい発展を遂げる重要な条件となる.しかし,一方で,深刻な対立を引き起こす"時限爆弾"でもある.例えば,現在深刻な問題を迎えている米国におけるテロ事件も,価値観の対立が生み出した悲劇と捉えることが出来よう.そして,平和と言われる我が国でも,局所的な価値の対立は近年の重要な社会問題を引き起こしている.本研究では以上の認識に基づき,人々の価値観,ならびに合意形成が問題となる社会行動についての調査を行い,社会行動における人々の価値観の演ずる役割を明らかにした.具体的には,原発事故や医療事故などの複数のリスク問題を例にとり,それぞれのリスク問題についてどのようにすれば「安心できるか」という質問を行った.その結果,そのリスクの規模が小さく,かつ,その確率が低い,といういわゆる客観的なリスクを最小化するような施策だけではなく,リスク管理者が「信頼できる」という条件がきわめて重要な役割を担っていることが明らかとなった.さらに,リスク管理者が関係する不祥事が発覚した場合,信頼は低下すること,ならびに,信頼が低下することで,リスク管理者を監視使用とする動機が増強されることも明らかになった.ただし,リスク管理者の対応が誠実であれば,信頼低下は抑制できることも示された.
著者
竹村 和久 吉川 肇子 藤井 聡
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.12-20, 2004
被引用文献数
3 5

本論文では, 種々の社会的リスクについて議論するための意思決定論的枠組を提供する. 筆者らには, これまでの伝統的リスク解析研究者, リスク社会学者, 予防原則を擁護する人々の間では, 社会的リスクに関連する環境の不確実性をどのように把握して, 考察するかということに関して, 共通の認識枠組がないように思われる. 本論文では, 不確実性を, 意思決定主体の環境の構造によって分類して, これらの社会的リスクに関わる問題がどのようなものであるかを, 不確実性下の意思決定問題として検討する. また, 本論文で提案する理論枠組が, 今後の社会的安全のための技術の一過程としてのリスク評価にどのような応用的含意があり得るのか考察を行う.
著者
清水 裕 水田 恵三 秋山 学 浦 光博 竹村 和久 西川 正之 松井 豊 宮戸 美樹
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-12, 1997
被引用文献数
1

The purpose of our study on the 1995 Hanshin Earthquake was twofold. First, we investigated the operation of the relief shelters, including relief activities. In this part of the study, we focused on the leaders of the shelters. The second purpose of this study was to reveal factors contributing to the effective management of the shelters. About three weeks after the Hanshin Earthquake, we conducted interviews with 32 leaders of the relief shelters and of volunteer workers. We were mainly concerned with the conditions of the emergency facilities, how leaders were selected and what managerial problems they faced. The result of our study showed three types of motivation for becoming leaders. The first occurred naturally as an outcome of their activities; the second by their own choice; and the last because of their regular job positions. These results were analyzed and categorized by the type three quantification analysis. We found that the most effective management of the relief shelters was under leaders chosen by the last method; that is, those who held positions of leadership in their regular jobs.
著者
竹村 和久 高木 修
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.57-62, 1988-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
3

“Ijime” (in Japanese, a rough equivalent of bullying) is a serious social phenomenon in which some school children are frequently and systematically harassed and attacked by their peers. In this study, differences of negative attitude toward a deviator and conformity to majority were investigated in connection with various roles (victims, assailants, bystanders, spectators, mediators, and unconcerned persons) in the “ijime” situation. The subjects, 195 junior high school students, were asked to respond to a questionnaire which measured (a) negative attitude toward a deviator and (b) conformity to the group in various situations. Major findings obtained were as follows: (1) Regarding attitude: there were no significant differences among the above six roles.(2) Regarding conformity: several significant differences were found in every role. In general, the conformity level of assailants was higher than that of mediators.(3) The result of multivariate analysis suggested that the victims were more deviant in both attitude and conformity than in any other roles.
著者
竹村 和久 村上 始
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.37-50, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
41
被引用文献数
1

本稿では,心理学と行動経済学との歴史的経緯について述べ,次に,両者が関連する現象として,プロスペクト理論にも仮定されている確率荷重関数を心理学的に解釈する研究の試みを例示して,心理学と行動経済学が密接に関係していることを説明する.
著者
川杉 桂太 竹村 和久 岩滿 優美 菅原 ひとみ 西澤 さくら 塚本 康之 延藤 麻子 小平 明子 轟 純一 轟 慶子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.18219, (Released:2019-06-20)
参考文献数
24

In this study, we proposed three image analysis methods (wavelet transform, singular value decomposition, and Fourier transform) to evaluate drawings of the tree test quantitatively, and demonstrated the analyses to three images of the tree test drawn by schizophrenic patients. Wavelet analysis suggested that information about the position of drawn trees (direction, depth and width of drawn lines) can be captured. Fourier analysis suggested that information about the direction and depth of drawn lines can be captured. Singular value decomposition suggested that information about the position and direction of drawn lines can be captured. Further research is needed to consider the features of mathematical image analysis in detail, and apply them to analysis of the tree test.
著者
岩満 優美 竹村 和久 松村 治 王 雨晗 延藤 麻子 小平 明子 轟 純一 轟 慶子
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.651-658, 2013-04-15 (Released:2013-06-05)
参考文献数
16
被引用文献数
3

精神医科学や臨床心理学においては,投映描画は個人の人格的理解と行動の全般的理解のために用いられている.特にコッホによって開発された樹木画(バウムテスト)は,医学的診断の補助や心理学的評価のために用いられることが多い.投映描画の解釈では客観性に乏しく,信頼性が低いため,われわれは,いくつかの画像解析技法の手法を統合した方法を用いて,精神障害患者の描画を解釈することを試みた.本研究で提案された方法は,下記のとおりである.(1)濃度ヒストグラム法(GLHM 法),(2) 空間濃度レベル依存法(SGLDM),(3)濃度レベル差分法(GLDM),(4)矩形行列を実行列または複素行列に分解する特異値分解,(5)画像の波形成分を分解するフーリエ解析,(6)画像解析をもとにした描画の臨床心理学的解釈である.これらの投映的樹木テストの画像解析諸技法は,精神障害の心理学的過程を解釈するために利用された.
著者
竹村 和久 岩満 優美
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

これまで描画や風景構成法は、解釈における客観性が乏しいという問題ががあったため、本研究では、社会的認知を測定するための投影的方法ついての統計的画像解析技法を提案した。本研究では、(1)画像の走査と分割、(2)濃度ヒストグラム法(GLHM)、空間濃度レベル依存法(SGLDM)、濃度レベル差分法GLDM)などのテクスチャー解析、(3)特異値分解、(4)フーリエ解析、(5)風景構成画や描画の心理的解釈という手続きである。我々は、今回提案した統計的画像解析で分析を行い、心理過程を考察した。併用した不安や抑うつに関する心理テストなどからも、これらの画像特徴との関係性があることがわかった。
著者
磯部 綾美 久冨 哲兵 松井 豊 宇井 美代子 高橋 尚也 大庭 剛司 竹村 和久
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.453-458, 2008
被引用文献数
6 3

This study developed a Japanese version of the "Regret and Maximization Scale" in decision making, which was originally constructed by Schwartz, Ward, Monterosso, Lyubomirsky, White, and Lehman (2002). This scale measures assess the tendency to experience regret, and individual differences in the desire to maximize or to satisfy. In Study 1, the original version of the "Regret and Maximization Scale" was translated into Japanese and administered to 307 Japanese university students responded the scale. Factor analysis did not replicate the finding of Schwartz et al. (2002). In Study 2, we developed new items, and constructed a "Japanese Version of the Regret and Maximization Scale", based on the interpretation of the factor analysis in Study 1. This new version of the scale was administered to 163 Japanese university students. The result of factor analysis and reliability analysis indicated that this "Japanese Version of the Regret and Maximization Scale" had a considerably high Cronbach's alpha and conceptual validity.
著者
西條 辰義 下村 研一 蒲島 郁夫 大和 毅彦 竹村 和久 亀田 達也 山岸 俊男 巌佐 庸 船木 由紀彦 清水 和巳
出版者
高知工科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007-07-25

特定領域「実験社会科学」の研究者のほとんどがその研究成果を英文の学術雑誌に掲載するというスタイルを取っていることに鑑み, 社会科学の各分野を超えた領域形成が日本で始まり, 広がっていることを他の日本人研究者, 院生などに伝えるため, 和書のシリーズを企画し, 勁草書房の編集者と多くの会合をもち『フロンティア実験社会科学』の準備を実施した. 特定領域におけるステアリングコミッティーのメンバーと会合を開催し, 各班の内部のみならず, 各班の連携という新たな共同作業をすすめた. 方針として, (1)英文論文をそのまま日本語訳するというスタイルは取らない. (2)日本人研究者を含めて, 高校生, 大学初年級の読者が興味を持ち, この分野に参入したいと思うことを目標とする. (3)第一巻はすべての巻を展望する入門書とし, 継続巻は各班を中心とするやや専門性の高いものにする. この方針のもと, 第一巻『実験が切り開く21世紀の社会科学』の作成に注力した. 第一巻では, 社会科学の各分野が実験を通じてどのようにつながるのか, 実験を通じて新たな社会科学がどのように形成されようとしているのかに加えて, 数多くの異分野を繋ぐタイプの実験研究を紹介した. この巻はすでに2014年春に出版されている. 継続の巻も巻ごとで差はあるものの, 多くの巻で近年中に出版の見込みがついた. さらには, 特定領域成果報告書とりまとめを業務委託し, こちらも順調にとりまとめが進んだ. 以上のように本研究は当初の目標を達成した.
著者
竹村 和久 原口 僚平 玉利 祐樹
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.368-388, 2015-09-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1

This paper examines two-stage multi-attribute decision strategies in different condi-tions where numbers of alternatives, and attributes are varied. A Monte-Carlo com-puter simulation using the concept of elementary information processes identified de-cision strategies that approximate the accuracy of normative procedures while savingcognitive effort in the two-stage decision making process. The elementary strategiesexamined in the simulation were nine decision strategies: lexicographic, lexicographicsemi-order, elimination by aspect, conjunctive, disjunctive, weighted additive, equallyweighted additive, additive difference, and majority of confirming dimensions strategies.Elementary information process and relative accuracy were computed for all combina-tion of two decision strategies for two-phased decision making process. The result ofthe computer simulation suggested that comparatively effortless and accurate heuristicwas the two-phased strategy that used lexicographic strategy to eliminate until a fewalternatives in the first stage and used weighted additive strategy in the second stage.Lastly, theoretical and practical implications of this study were discussed.
著者
竹村 和久
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.270-291, 1994 (Released:2019-07-24)
被引用文献数
6
著者
吉川 肇子 白戸 智 藤井 聡 竹村 和久
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-8, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
11
被引用文献数
15 11

本稿では,社会技術研究で重要となる安全と安心の概念について,以下の4つの視点から論じた.第1に,安心と安全について,日常的にどのような文脈で使われているかを主に新聞記事をもとに検討した.第2に,それぞれの概念について専門家はどのように考えているのかについて,各分野の安全基準を参照しながら検討した.第3に,以上の検討をもとに筆者らは,安全は技術的に達成できる問題であり,安心とは,安全と大いに関連があるものの,それだけでは達成できない心理的な要素を含むものであると考えた.第4に,安心と安全を能動型と無知型に分類し,社会技術研究で目指すべき能動型安心を達成するあり方を議論した.
著者
川杉 桂太 竹村 和久 岩滿 優美 西澤 さくら 塚本 康之 延藤 麻子 小平 明子 轟 純一 轟 慶子
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.63-71, 2020 (Released:2020-06-30)

In this study, the fuzzy inference technique was applied for preprocessing the clinical drawings of schizophrenic patients. The interpretation procedure for the clinical drawings was divided into two phases, namely preprocessing and interpretation phases. In the preprocessing phase, two analyses were conducted by employing the fuzzy inference technique and three analyses were conducted by applying Fourier transform, wavelet transform, and singular value decomposition on three images of the tree test. In the interpretation phase, the drawings and output images were psychologically interpreted. The contrast of each image was also examined for determining the feature associated with the corresponding output image of the fuzzy inference technique. Based on the compared interpretations and contrasts, it can be concluded that image analysis incorporating the fuzzy inference technique is superior as a preprocessing method employed before interpreting whole image. Further research is required for examining the relation between the empirical findings regarding schizophrenic patients and the parameter of the fuzzy inference technique.