著者
服部 陽介 本間 喜子 丹野 義彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.85.13060, (Released:2014-08-01)
参考文献数
47
被引用文献数
2 2

The purpose of this study was to clarify the contents of meta-cognitive beliefs about thought suppression and to investigate the relationship between these beliefs and the paradoxical effects of thought suppression. In Study 1, we developed a scale measuring the endorsement of meta-cognitive beliefs about thought suppression. This measure, the Meta-cognitive Beliefs about Thought Suppression Questionnaire (BTQ), has four subscales: Distraction, Paradoxical Effect, Regret, and Promotion of Concentration. In Study 2 and Study 3, the BTQ showed sufficient criterion-related validity and test-retest reliability. In Study 4, we conducted an experiment to investigate the relationship between meta-cognitive beliefs about thought suppression and its paradoxical effects. Results showed that the Paradoxical Effect subscale score significantly predicted the number of intrusive thoughts during thought suppression. The development process of meta-cognitive beliefs about thought suppression and implications for research about cognitive control are discussed.
著者
佐々木 淳 丹野 義彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.397-402, 2005-10-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

During adolescence, it is known that some experiences similar to mental disorders are observed in normal people. This study empirically examined the psychological factors causing the distress of egorrhea symptoms, i. e., the feeling that the internal state is “seen through.” Possible psychological factors were identified based on previous studies. A questionnaire battery was administered to undergraduate students and a series of multiple regression analyses was conducted on the questionnaire data with the degrees of distress as the dependent variable and psychological factors as independent variables. The results indicated that the distress of egorrhea symptoms in the situation of “blushing and dismay” was led by the idea of offending, the motivation for avoiding rejection, and suspicion; and that the distress of egorrhea symptoms in the situation of “disagreeable individual” was led by the idea of offending, motivation for avoiding rejection, and secrecy. The results suggest that the ideas of offending and the motivation for avoiding rejection have a significant influence on egorrhea symptoms. Finally, the relationship between egorrhea symptoms and communication was discussed.
著者
高野 慶輔 丹野 義彦
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-24, 2010
被引用文献数
4

自己注目には適応的な「省察」と不適応的な「反芻」があることが知られている。Papageorgiou & Wells (2001a) は,反芻の原因として,「反芻に対する肯定的信念」という概念を提案し,自己注目は問題解決のために有効な手段であるという信念が反芻を促進するとした。本研究では,この信念を測定する尺度Positive Beliefs about Rumination Scaleの日本語版を作成し,信頼性と妥当性を確認した(研究1)。さらに,この肯定的信念と抑うつ,反芻,そして省察との関連を検討した(研究2)。大学生を対象とした質問紙調査の結果,肯定的信念は反芻,省察の双方と正の関連がみられたが,反芻は抑うつと正の関連が,省察は抑うつと負の関連がみられた。自己注目を行う背景として肯定的信念が存在しているが,抑うつに陥るのは反芻を行った場合だけであり,省察を行った場合には適応的に働くことが示唆された。
著者
守谷 順 佐々木 淳 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.171-182, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
36
被引用文献数
4 3

本研究は,対人不安の維持要因として考えられている判断・解釈バイアスと自己注目との関連についての検討を行った。研究1では被調査者の大学生194名から対人不安高群53名,対人不安低群48名を対象に質問紙調査を行い,対人・非対人状況での判断バイアスと自己注目との関連について検討した。その結果,対人場面かつ自己注目時でのみ対人不安高群は対人不安低群に比べて否定的な判断バイアスが働くことを示した。研究2では,研究1と同様の被調査者を対象に肯定的とも否定的とも考えられる曖昧な対人・非対人状況での解釈バイアスについて質問紙調査を行った結果,判断バイアス同様,対人場面かつ自己注目時でのみ対人不安高群に顕著な否定的解釈バイアスが認められた。以上のことから,否定的な判断・解釈バイアスが対人不安高群に働くときは,対人場面であり,かつ自己注目状況であることが明らかにされた。
著者
飯島 雄大 丹野 義彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.232-236, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
18
被引用文献数
9 9

The present study investigated the effects of cognitive load on the temporal focus of mind wandering. Participants performed a cognitive-load task under three load conditions (0 back, 1 back, 2 back). During each condition, thought sampling was conducted to measure task-unrelated thoughts. When a thought probe was presented, participants responded what they were just thinking. The results showed that future-related thoughts were reduced with increasing cognitive-load. On the other hand, past-related thoughts were not reduced under moderate cognitive-load but were under high cognitive-load. This indicates that future-related thoughts require additional resources. Furthermore, future-related thoughts were more prevalent than past-related thoughts under low cognitive-load. These findings may indicate that a future prospective bias is important for survival.
著者
杉森 絵里子 浅井 智久 丹野 義彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.389-396, 2009
被引用文献数
7

Auditory hallucinations are important symptoms when making a diagnosis of schizophrenia. Since normal people may also experience auditory hallucinations, there may be a spectrum of auditory hallucinations ranging from those experienced in schizophrenia to those experienced by normal people. To assess the propensity to auditory hallucinations in a non-clinical population, we selected forty items from the questionnaire in Tanno, Ishigaki, & Morimoto (1998) and developed the Auditory Hallucination-like Experience Scale (AHES). Test-retest reliability showed that the AHES was internally consistent. There were high correlations between the AHES and the STA subscale and the overall O-LIFE (especially ‘unusual experiences’), both of which are thought to be strongly related to schizophrenia. Furthermore, the rate of false positives was higher in people more prone to auditory hallucinations than in the group less prone to auditory hallucinations. Factor analysis revealed that the AHES consists of four factors. The results suggest that the AHES has high reliability and validity as a measure of susceptibility to hallucinations.
著者
小堀 修 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.34-43, 2004 (Released:2004-11-25)
参考文献数
33
被引用文献数
22 21

本研究は,完全主義の認知を「自己志向的完全主義がセルフ・スキーマとして活性化した結果,意識化された思考であり,できごとの解釈や注意に影響を与えるもの」と定義し,その認知を多次元で測定するための尺度(Multidimensional Perfectionism Cognition Inventory: MPCI)を作成した.研究1では,MPCIの因子構造が明らかとなり,高目標設置,ミスへのとらわれ,完全性の追求の下位次元が特定され,これらの下位次元は十分な信頼性を示した.研究2では,MPCIの構成概念妥当性と基準連関妥当性が明らかとなった.
著者
杉浦 義典 杉浦 知子 丹野 義彦
出版者
信州大学人文学部
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.33-46, 2006-03-15

This study examined the psychometric properties of the scales intended to measure constructs related to Morita Therapy. Such scales are expected to be useful for empirical comparison of Morita Therapy with different but similar interventions (e.g., cognitive behavior therapy). Two scales were completed by college students: Self Report Morita -Neuroticism Inventory (SRMNI) and Self and Anxiety Questionnaire (SAQ). SRMNI is intended to measure vulnerability to neurosis (anxiety disorders); SAQ is intended to measure beliefs about anxiety, which is relevant to development, maintenance, and treatment of anxiety. Correlations with personality traits, anxiety, and depression revealed the psychometric properties of the subscales of each inventory. Morita-Neuroticism of SRMNI reflected per. 森田療法で仮定される病理学的要因や治療における変化プロセスを捉えることを目的とした尺度の心理測定的性質を検討した。このような尺度は森田療法を認知行動療法など他の心理療法と実証的に比較するために有用である。具体的には,神経症(不安障害)の素因とされる森田神経質を測定する神経質自己調査票,および「とらわれ」や「あるがまま」といった概念と密接にかかわる不安への態度を測定する自己と不安の質問紙を取り上げた。大学生データをもとに,他のパーソナリティ特性や不安や抑うつ症状との関連を検討した。神経質自己調査票の下位尺度である神経質傾向度は完全主義的傾向を反映しており,いわゆる神経症傾向(ネガティブ情動)とは異なった側面を捉えていた。一方,幼弱性という傾向が症状と一貫した関連を示した。幼弱性は,自己中心性や依存性を反映する。一方,自己と不安の質問紙については,不安感や不安を感じる自己を受容できる傾向および問題に対処する効力感が,特性不安などと負の相関を示した。神経質自己調査票の神経質傾向度や理知-感覚傾向度,自己と不安の質問紙の感情制御欲求は本研究では症状との関連が見いだされなかったが,理論的に有用な次元であると考えられた。それぞれの尺度は一定の妥当性を示したため,森田療法の関連概念を測定する研究は今後も継続する価値があると考えられる。しかし,尺度の項目など今後の洗練が必要であろう。
著者
佐藤 寛 丹野 義彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.157-167, 2012-09-30 (Released:2019-04-06)
参考文献数
40
被引用文献数
4

巻頭言である本論文では、日本において実施されたうつ病の認知行動療法に関する効果研究を対象とした系統的レビューを行った。国内で実施された12本の効果研究をもとに効果サイズを算出したところ、抑うつ症状の改善については自己評価尺度(研究数12本)では中程度の効果(d=0.78)、臨床家評定(研究数4本)では大きい効果(d=1.35)を示す効果サイズが得られていた。加えて、認知行動療法は抑うつ症状を改善するだけでなく、社会的機能を高める効果もあることが示唆された。治療に伴うドロップアウトは対象者の17.8%に認められた。認知行動療法の実施者の職種は心理士(91.7%)、医師(41.7%)、看護師(33.3%)、その他の職種(16.7%)の順に多く、国内でうつ病への認知行動療法を実施するうえで心理士が重要な役割を担っていることが示された。専門的なトレーニングを受けた心理士による認知行動療法をうつ病の保険診療の対象とすることが急務である。
著者
森脇 愛子 坂本 真士 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.12-23, 2002-09-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
2 3

本研究では,どのように開示するかを測定するための「適切な自己開示尺度」および「不適切な自己開示尺度」を作成し,その因子構造,信頼性および妥当性を検討した.さらに,被開示者の反応を測定するための「聞き手の受容的反応尺度」および「聞き手の拒絶的反応尺度」を作成し,因子構造,尺度の信頼性および妥当性について検討した.研究1では,適切な自己開示尺度および不適切な自己開示尺度についてそれぞれ3因子,4因子を採用した.聞き手の受容的反応尺度および拒絶的反応尺度については,それぞれ4因子を採用した.内的整合性がよく,再検査信頼性が高かった.研究2では,これらの尺度の併存的妥当性がある程度示された.今後はさらに,サンプル等を配慮して検討していきたい.
著者
高野 慶輔 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.261-269, 2009-05-01 (Released:2009-07-04)
参考文献数
40
被引用文献数
3 2

Trapnell & Campbell (1999) によれば,私的自己意識は反芻と省察に分けられ,前者は抑うつと関連する非適応的な自己意識,後者は精神衛生に貢献する適応的な自己意識とされている。本研究では,これらの2つの私的自己意識と抑うつ,およびストレスの因果関係を探るため,大学生を対象に,素因ストレスモデルに基づいて縦断調査を行なった。階層的重回帰分析の結果,反芻の主効果および反芻とストレスの交互作用が2週間後の抑うつを有意に予測した。このことから,反芻は抑うつの脆弱性要因であると考えられる。一方の省察は,私的自己意識の一種でありながら抑うつとの関連が見られなかった。この結果は省察が適応的な自己注目であることを積極的に支持するものではないが,省察のようなある種の自己注目により,否定的な感情を強めることなく自己制御が可能であることを示していると考えられる。
著者
浅井 智久 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.56-65, 2007 (Released:2007-10-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2 4

本研究の目的は,自己主体感の生起メカニズムを考察し,それに対する学習の効果を検討することであった。自己主体感とは,ある行為を自分自身でしている,という感覚のことである。フォワードモデルでは,自己主体感は「実際の結果」が「結果の予想」に合致するときに生起されるとしている。本研究では,キー押しをすると音が鳴る,という仕組みを用いた。その結果,「時間差知覚」と「自己主体感」は同じものではないことが示された。これはフォワードモデルを支持 するものであった。また学習の結果,より高い自己主体感を報告するようになったが,時間差知覚には学習の効果はなかった。これは学習によって「実際の結 果」ではなく,「結果の予想」が変わったために,その結果として自己主体感が変わったと示唆するものであった。本研究はフォワードモデルによる自己主体感の生起モデルの妥当性と,学習が自己主体感に影響をあたえることを示した。