著者
有賀 修 岡本 直樹 井上 貴由 久保 元 森山 洋憲
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.142-146, 2012-05-20 (Released:2017-12-24)
参考文献数
21
被引用文献数
1

紅藻類が生産する多糖類の中でアガロースとアガロペクチンを主成分とする寒天はゲル化剤などとして食品に利用されるだけでなく,DNAや生体関連物質の分離に使われる分子生物学には欠くことのできない材料である。アガロースはガラクトースとアンヒドロガラクトースがβ-1,4およびα-1,3結合で交互に結合してできる多糖類である。したがって,アガロースを分解できる寒天分解細菌はβ-アガラーゼとα-アガラーゼを生産しアガロースを唯一の炭素源として増殖できるが,その多くは海洋環境から単離されてきた。さらに,寒天分解酵素の精製や遺伝子のクローニングが行われ,遺伝子の解析も進んできた。筆者らは非海洋性の寒天分解菌を単離し,2つのβ-アガラーゼ遺伝子のクローニングに成功し,ネオアガロオリゴ糖の生産が可能となった。菌体破壊液からのα-アガラーゼの精製を行い,諸特性を調べている。寒天オリゴ糖の研究は少ないが,抗酸化作用,ビフィズス菌の増殖促進効果なども報告されてきた。この総説では寒天分解酵素や寒天オリゴ糖の最近の研究の紹介を行う。
著者
片岡 千恵 野津 有司 工藤 晶子 佐藤 幸 久保 元芳 中山 直子 岩田 英樹 渡部 基
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.535-544, 2014 (Released:2014-10-08)
参考文献数
29

目的 我が国の高校生における危険行動と睡眠時間との関連を明らかにする。方法 分析には,Japan Youth Risk Behavior Survey 2011のデータ(全国の高校から無作為に抽出された102校の 1~3 年生,男子5,027人,女子4,751人,計9,778人)を用いた。危険行動に関しては,「有酸素運動不足」,「朝食欠食」,「月喫煙」,「月飲酒」,「シンナー乱用経験」,「性交経験」,「シートベルト非着用」,「暴力行為」,「自殺願望」の 9 項目を取り上げた。結果 睡眠時間の実態は,6 時間未満の者が男女ともに40%前後を占める等,憂慮される状況であった。危険行動が最も低率であった,睡眠時間が「6 時間以上 8 時間未満」の群を基準として,他の群における危険行動のオッズ比を算出した結果,「4 時間以上 6 時間未満」の群では,男女ともの「有酸素運動不足」および「朝食欠食」等のオッズ比が有意に高値であった。さらに睡眠時間が短い「4 時間未満」の群では,男子では全 9 項目(オッズ比1.47~3.28),女子では「シートベルト非着用」を除く 8 項目(1.54~4.68)について,オッズ比が有意に高値であった。他方で,睡眠時間が長過ぎる「10時間以上」の群でも,男女ともの「月喫煙」および「シンナー乱用経験」等について,オッズ比が有意に高値であった。結論 我が国の高校生において,6 時間未満の短い睡眠時間および10時間以上の長過ぎる睡眠時間は危険行動に関連していることが示され,睡眠時間も危険行動の一つとして注目していくことの必要性が示唆された。
著者
山内 理恵 大野 修司 中島 りり子 井上 信宏 久保 元 浅井 和範
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-012, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

薬剤師国家試験の必須問題はCBTと共通点があり,その多くは4年次までに習得した基本的知識で対応できる.本研究では,星薬科大学の2015年度から2018年度に在籍した6年次生について,模擬試験等の成績を元に必須問題への学習到達度と国家試験成績との関連を検討した.各試験における必須問題の正答率は,6年次の9月以降大きな変動が認められなかった.また,国家試験合格者とそれ以外の学生との間には9月の段階で大きな差が生じており,合格者の正答率は常に70%以上を推移し,それ以外の学生ではほぼ70%を下回った.また,9月以降において必須問題の成績は大きく変動しなかった.これは全ての学生で必須問題に加え理論問題や実践問題への対策に多くの学習時間が費やされるためと考えられた.以上より,早期から基本的知識を身に付け,必須問題に対応できる能力を養うことが重要であると推測された.
著者
井上 信宏 中島 りり子 山内 理恵 大野 修司 久保 元 浅井 和範
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.2018-042, 2019 (Released:2019-06-08)
参考文献数
21

本研究では,薬学部6年生に対する改変型team-based learning(m-TBL)の成績向上効果を検討することを目的として,病態・薬物治療分野の問題を用いるm-TBL演習を実施した.従来のTBLと異なり,個人及びグループテストには難易度が同等になるように調整したそれぞれ別の問題セットを用いた.その結果m-TBL演習を行った試験群では,グループテストの得点が個人テストと比較して有意に高かった.また試験群と,同一課題を自主学習する対照群との,演習期間前後の試験成績を比較した結果,その得点向上率は試験群の方が有意に大きかった.さらにアンケートの顧客満足度分析の結果から各試験の難易度は同等と評価され,因子分析の結果と試験成績から,TBLに期待している学生ほど成績が高いことが明らかとなった.以上のことから,m-TBLが6年生の成績向上に効果的であることが示された.
著者
久保 元芳 赤荻 冴
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.127-141, 2023-08-31 (Released:2023-09-17)
参考文献数
26

目的:小・中学校におけるWBGTの測定状況とそれに応じた熱中症予防の取組,WBGTの活用の利点や課題等を明らかにすること.方法:横断的実態調査研究として,関東地方A県内で無作為抽出した小・中学校の保健主事を対象に質問紙調査を実施し,小学校65校,中学校64校分を分析した.WBGTの測定状況や場所について,校種等によるクロス集計を行った.自由記述項目のWBGTに応じた対応例,WBGT活用の利点と欠点については,その意味を吟味したカテゴリー化を行った.結果:小・中学校ともに約90%でWBGTを測定しており,校庭・グラウンドや体育館が多い一方,教室,プール等は少なかった.WBGTに応じた対応を行っている小学校は81.5%,中学校は64.1%であり,21°C以上から水分補給や休憩の呼びかけがみられ,WBGTの上昇に伴って対応が多様化し,31°C以上では多くの学校で屋外の運動や活動を中止していた.WBGT活用の利点として,各種教育活動の実施程度について妥当な判断ができたり,児童生徒や教職員の熱中症予防への意識向上が図れたりすること,欠点として,WBGTに応じた対応で教育活動の計画的な実施に支障が出る場合があること,児童生徒の観察が疎かになること等が挙げられた.結論:小・中学校の多くでWBGTが測定,活用されているが,教育活動の計画的な実施との調整など,活用上の課題も明らかとなった.
著者
井上 信宏 大野 修司 山内 理恵 久保 元 浅井 和範
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.2022-044, 2023 (Released:2023-04-15)
参考文献数
18

学習効果を高めるために学生が実践する学習方法(認知的方略)が,薬学生の学習成果にどのような影響を与えているかを推察するため,薬学生の認知的方略と卒業試験成績との関連性について解析した.学年を区別して確認的因子分析を行う多母集団同時分析により,「深い処理方略」,「まとめ作業方略」,「反復作業方略」の3つの認知的方略が共通に使用されていることが抽出され,また因子間相関から各認知的方略の使用傾向が学年によって異なることが示された.これらの認知的方略と薬学科6年生の卒業試験との関連性について,「深い処理方略」の使用が卒業試験成績に対し正の影響を示した.一方「反復作業方略」を多く使用する学生ほど成績が相対的に低く,この方略による学習は卒業試験成績に反映され難いことが推定された.以上より,将来の卒業試験に向けた「深い処理方略」の使用促進のため,低学年のうちからその有効性を認知させることが重要であると考えられた.
著者
久保 元彦
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1969, no.19, pp.263-276, 1969

Im Mittelpunkt der Philosophie Immanuel Kants steht die Problematik des Grundes des Daseins, um die sein Denken, sowohl in der vorkritischen als auch in der kritischen Periode, immer kreist. Die Frage nach dem Grunde des Daseins offenbart sich in der vorkritischen Periode als die nach dem letzten Grunde des Daseins &uuml;uherhaupt. In der traditionellen Metaphysik, und vor allem in der Lehre von Leibniz, gegen die Kant sich wendet, ist dieser letzte Grund das Wesen des ens necessarium. Kant sucht ihn dagegen in dessen Dasein. Nach seiner Ansicht ist das Dasein beim ens necessarium dem Wesen &uuml;bergeordnet. Diese These des unbedingten Vorranges des Daseins vor dem Wesen, die er auch durch seine eigenen Beweise vom Dasein Gottes best&auml;tigt zu sehen glaubt, stellt aber der traditionellen Metaphysik gegen&uuml;ber nichts gr&auml;ndsatzlich Neues dar. Denn diesen beiden Standpunkten liegt das Gemeinsame zugrunde: die Annahme, da&szlig; die Bestimmung des Zusammenhanges von Dasein und Wesen beim ens necessarium zugleich den eindeutigen Begr&uuml;ndungszusammenhang des Daseins des Seienden im Ganzen entstehen lasse. Insofern Kant nur unter dieser fundamentalen Annahme zur Anerkennung des unbedingten Vorranges des Daseins vor dem Wesen gelangt, bleibt die Weise, wie er auf die Frage nach dem Grunde des Daseins antwortet, noch immer im Rahmen der traditionellen Metaphysik stecken.<BR>In seiner Kritik an den &uuml;berlieferten Gottesbeweisen der spekulativen Theologie fa&szlig;t Kant diese unter einem einheitlichen Prinzip zusammen und widerlegt sie aus einem einzigen Grunde der Unbestimmbarkeit des Begriffes vom ens necessarium. Durch diese Kritik wird der Rahmen jener gemeinsamen fundamentalen Annahme uberschritten. Kant in seiner kritischen Periode mu&szlig; nun in einer grunds&auml;tzlichen Neuorientierung des Denkens nach dem Grunde des Daseins fragen. Ein neuer Ausblick auf das Problem dieses Grundes ergibt sich nur dann, wenn es sich erhellt, da&szlig; das synthetische Urteil zu diesem Problemkreis geh&ouml;rt. Nachdem jene fundamentale Annahme der vorkritischen Periode widerlegt wurde, kann der Satz &uuml;ber das Dasein Gottes nicht mehr als eill analytischer Satz angese-hen werden. Der Satz &uuml;ber das Dasein Gottes ist auch synthetisch. Kant mu&szlig; daher sagen: &ldquo;Ein jeder Existentialsatz ist synthetisch&rdquo;. Als ein Urteil &uuml;ber das Dasein &uuml;berhaupt wird das synthetische Urteil von besonderer Bedeutung. Die Frage nach dem M&ouml;glichkeitsgrunde des synthetischen Urteils erh&auml;lt in der Kr. d. r. V. eben darum eine Sonderstellung, weil sie mit dem Problem vom Grunde des Daseins, mit diesem Kernproblem der Kantischen Philosophie, verklammert ist.
著者
久保 是一 久保 元敏 井上 勝平 出盛 允啓
出版者
日本皮膚悪性腫瘍学会
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.439-446, 1993-12-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
13

The true route of contamination of the Namikata arsenical poisoning incident in Shikoku, which took place in 1933-1935, has remained unclarified, in spite of intensive on-the-spot investigations. The Toroku mine in Miyazaki, Kyushu, had produced arsenicals for scores of years until its complete discontinuance of operations in 1962. The arsenious acid produced there increased between 1921 and 1941, most of which was transferred to Ohkunojima, an islet in Tadanoumichou, Hiroshima Prefecture as materials for lewisite [ (CHCl: CH) 2 AsCl], a poisonous gas, it has been disclosed.Marine shipping agents in Namikata and nearby towns, well aware of the Inland Sea, transported various things in small boats carrying only 2 to 4 persons, often family members from Kyushu to Osaka and Kobe areas. We assume that this was the route of contamination in the Namikata arsenical poisonig incident because of the following reasons: Most of the patients were young 20 to 30 year-old seamen, most of them were family members, such as a man and his child, man and wife, man and cousins, no aged persons or children had been affected. An episode which was told one of us (Kubo, who has worked in Namikata where the incident took place) was that there was a strong demand of a man that there should be no mention of the death in connection with her job when a 47 aged wife died of lung cance in 1956 and her death certificate was prepared, because it would inform her relatives that poisonous materials had been sent with them.
著者
上村 睦美 久保 元子 伊藤 恭子 阪東 健司 桑山 直人
出版者
日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.385-388, 2002-10-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
5

集中治療室と一般病棟という2つの異なる職場環境における新卒,新任看護師を対象に,気分・感情の変化をprofile of mood states (POMS)を用いて経時的に調査,検討した。20~29歳の健康成人女性のPOMSの結果と比較すると,集中治療室勤務の新人看護師は,調査期間中,常に高い「緊張・不安」状態であった。これに対し,一般病棟勤務の新人看護師は調査期間中,健康成人女性に比べ,常に過度の「疲労」「混乱」を感じており,両者に差がみられた。当施設においては,一般病棟新人看護師のほうが,集中治療室看護師よりも疲労感が強く,怒りを表出できない抑うつ状態であり,精神的に疲弊した状態であることが明らかになった。