著者
田中 和子 亀田 温子
出版者
国学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

すでに計画調書に明記したように, 本研究は「性差別意識」の構造的解明への第一歩を踏み出す試みであった. 昭和61年度には, 女性社会学, 帰属理論, 情緒社会学, 世代論等, 性差別意識や性別役割分業にかかわる理論的・実証的文献研究の成果をふまえて, アンケート調査およびインタヴュー調査を実施した. これを受けて昭和62年度には, 補足アンケート調査およびインタヴュー調査を遂行するとともに, 収集した調査資料の分析を行なった. ここで得られた知見の主要なものは, 以下のとおりである.1.国際的規模での性役割の流動化を背景に, 日本の大学生のあいだでは, 古典的な意味での性差別意識を持つ層は, もはや少数派となっており, 女性の社会進出も, 少くとも一般論の事柄にとどまる限りにおいては肯定的に受けとめられている.2.しかし, 性別役割分業意識は依然として根強く, しかも性役割の不均等配分が性差別としては意識されにくいという状況が現出している.3.上述の不均等な性役割の配分は, 旧来の男尊女卑思想やストレートな生物学的決定論に依拠することによってではなく, 能力や効率性, 好き・きらいといった選好など, 性別以外の要因に帰属させることによって合理化・正当化され, 結果的に性差別が容認されていく.4.社会一般の事象という水準では着々と進みつつあるかにみえる性役割の流動化も, 問題設定が被調査者にとってより身近なレベルに及ぶにしたがってその度合が減じる. 今回の調査結果から, 両性の日常的関係性にまでおよぶ性別役割分業の変容には, さらにかなりの時間がかかることが予測される.
著者
菊地 栄治 池田 賢市 亀田 温子 栗原 真孝 白川 優治 高田 研 高橋 亜希子 永田 佳之 仁平 典宏 丸山 英樹 宮古 紀宏 椋本 洋 吉田 敦彦 吉本 圭一 和井田 清司 平塚 眞樹
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究を通じて、私たちは現代日本の若者たちが力を奪われている実態について共通認識を得た。とはいえ、具体的な事例の協働的研究を通して、さまざまな難題に直面しつつも多くの若者たちがエンパワーされていく可能性が明らかになった。総じて、〈一元的操作モデル〉にもとづく施策と実践はかれらの力を奪い取りがちである。これに対して、〈多元的生成モデル〉はかれらをエンパワーできる。多くの事例において、かれらを〈若年市民層〉へと育む実践に共通するのは、相互的主体変容を促しているという特徴であった。〈多元的生成モデル〉は、エンパワメントの実践に共通する本質的特徴であり、今後の教育改革のあり方を示唆している。
著者
亀田 温子 池谷 寿夫 遠藤 恵子 入江 直子
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1 公立高校の男女共学進行状況の動向研究・戦後の男女共学制度実施の中で、現在も公立高校の男女別学率が高いのは、宮城県、福島県、群馬県、栃木県、埼玉県など、北関東、東北地方の県である。しかし、1990年代以降15歳人口減少期に入り高校再編成計画のなかで、男女共学化への動きが具体的に進行している。本研究では、その実態をとらえた。・福島県については、1994年から始まった公立高校の男女共学化10年計画により2003年で、すべて男女共学校となった。その背景、実施のプロセス、推進に向けた市民運動の力、を分析。・宮城県、群馬県については、教育委員会の明確な方針と指導により学校再編計画により共学化進行計画が進みつつある。全部ではないが、いわゆるエリート校の共学計画も進んでいる。・埼玉県については、苦情処理委員会への苦情から「共学推進」の勧告が出される形で、問題が顕在化した。同窓会などを中心に強い共学反対運動が展開した。高校再編計画でも実質的に女子高が統廃合になるケースはあるものの、共学方針は出されぬまま、戦後50年を経てもエリート校の男女別学を存続する「現状維持」体制としている。2 大学共学化把握のための資料作り戦後の大学に見る男女共学化、近年共学化の動きをとらえる資料作りをおこなった。3 ドイツ・アメリカの動向研究・ドイツについては、新たな男女共学ついての動きをドイツの男女共学の中心的研究者であるヴィーラントの協力を得、現地調査を行うことから現在の状況をとらえた。・アメリカについては共学大学における女子学生の支援プログラムから、実際の動きを捉えた。