- 著者
-
伊永 隆史
- 出版者
- 公益社団法人 日本アイソトープ協会
- 雑誌
- RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.4, pp.219-233, 2013 (Released:2013-04-26)
- 参考文献数
- 60
- 被引用文献数
-
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多元素安定同位体分析法が食物起源問題を解決するため利用されるようになった。食品試料(例えば,コメ,牛肉,ウナギ)のH,C,NとOのような軽元素の安定同位体比が元素分析/同位体比質量分析法によって正確に分析された。試料は主に4か国で採取された;日本と比較としてのアメリカ合衆国,オーストラリア,中国。全てのコメ試料は,有機肥料あるいは人工肥料の施肥により成長した。牛肉試料は,日本,アメリカ合衆国とオーストラリア3か国から採取された。輸入牛肉試料は農林水産省(日本)から提供され,判別関数式により比較された。ウナギ試料は,オーストラリア,中国,台湾の3国・地域から採取された。全ての国産食品試料は,δX値がなんらかの違いを示し,アメリカ合衆国,オーストラリア,中国の試料から明らかに特徴的であった。これらの結果は生育した国の気候,利用された栄養や潅漑水質の同位体に特有の地域的な違いによって説明できるであろう。統計的には,日本で育った食品(米,肉,魚など)を他の国で成長した食品から抽出するのに役に立つ測定基準の一つとなる。ヒトの代謝にかかる安定同位体の動態(すなわち,アイソトポミクスisotopomics)の解析研究は,近い将来,新しいサイエンスの樹立が期待されている。