- 著者
-
伊藤 崇達
- 出版者
- 京都教育大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
日本の高等教育では,アクティブ・ラーニングが理念として掲げられてきており,その実証的な検討が求められている。本研究は,「自己調整学習(self-regulated learning)」と「社会的に共有された学びの調整(socially shared regulation of learning)」をグランドセオリーとし,「I」「You」「We」の学び手の3視点から「真正なる学びあい」がいかに成立するかについて,心理尺度をもとに実証的に検討を行った。尺度の作成にあたっては,「I」視点が,「自己調整学習」,「You」視点が「共調整された学習(co-regulated learning)」,「We」視点が「社会的に共有された学びの調整」によるものと捉え,調整を支えている中核的な心理的要素として,「動機づけ」と「動機づけ調整方略」に焦点をあてることとした。動機づけの自己調整に関する研究では,内発的な動機づけ,すなわち,興味や関心を高めるような自己調整がパフォーマンスの向上において重要であることが明らかにされている。グループ活動において,自分自身,グループのメンバー,グループの全体のそれぞれの動機づけをいかに調整しているかについて,新たに尺度を作成し,検討を行った。学びあいの真正性は,実社会での学びあいとの接続を考慮することで検討することとした。具体的には,すでに職を得ている社会人にも同様の調査を行い,大学生との比較検証によって明らかにした。グループ活動への自律的動機づけ,グループ活動のパフォーマンス指標,期待,価値といった変数との関連について検証を行い,高等教育における実践への示唆を得たところである。