著者
瀧川 渉 伊達 元成 小杉 康
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.49-74, 2011 (Released:2011-12-22)
参考文献数
71

北海道・噴火湾北岸の豊浦町小幌洞窟では,1952・1961年の発掘調査により7個体の人骨が出土しているが,このうち出土状況が明らかな人骨は1個体のみで,それ以外は撹乱を受け帰属層位すら不明である。2006年の第二次調査では,洞窟東方の岩陰から頭部を欠いた男性人骨の埋葬が確認された。今回,これらの人骨の帰属時期と性格を明らかにすべく各人骨から試料を採取し,放射性炭素(14C)年代を測定した。噴火湾沿岸の出土人骨は海洋リザーバー効果と海洋深層水の湧昇流の影響で年代測定値が数百年古く示される傾向にあるため,安定同位体分析の結果を参考に陸上・海洋起源の炭素混合比を見積り,これを基にIntCal09とMarine09を合成した暦年較正プログラムにより年代補正を試みた。この方法は伊達市有珠4遺跡において火山灰の降下年代との照合からその有効性が確認されている。検討の結果,小幌洞窟出土人骨の多くが続縄文時代に属すると見なすことができ,一部個体は頭蓋や歯の形態学的検討からも大きな矛盾は生じないが,2号人骨のみ擦文時代に位置づけられる可能性が浮上した。また,岩陰出土人骨は較正年代と副葬品の煙管,四肢長骨・手骨・下顎骨の形態学的検討から勘案し,17世紀後半以降のアイヌと判断された。
著者
青野 友哉 西本 豊弘 伊達 元成 渋谷 綾子 上條 信彦 大島 直行 小杉 康 臼杵 勲 坂本 稔 新美 倫子 添田 雄二 百々 幸雄 藤原 秀樹 福田 裕二 角田 隆志 菅野 修広 中村 賢太郎 森 将志 吉田 力 松田 宏介 高橋 毅 大矢 茂之 三谷 智広 渡邉 つづり 宮地 鼓 茅野 嘉雄 永谷 幸人
出版者
伊達市噴火湾文化研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

北海道南部の噴火湾沿岸は日本有数の貝塚密集地帯であり、1950年代から貝塚研究の中心地の一つであった。この60年以上にわたり蓄積された調査成果と、現代的な視点で行った近年の発掘調査による新たな分析は、当該地域の環境変遷と人類活動の実態の復元を可能にした。本研究では、噴火湾沿岸の遺跡データの集成と、伊達市若生貝塚及び室蘭市絵鞆貝塚の小発掘により得た貝層サンプルの分析の成果として、時期ごとの動物種の構成比を明示した。これは縄文海進・海退期を含む気候の変動期における当該地域の環境変遷の詳細なモデルである。
著者
飯泉 克典 国府田 良樹 小池 渉 西本 豊弘 安藤 寿男 伊達 元成
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.5, pp.243-251, 2010 (Released:2010-10-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

茨城県つくば市の花室川河床から海生哺乳類である鰭脚類の化石骨を発見し,ニホンアシカZalophus japonicusオスの左上腕骨と同定した.また,中島ほか(2002)に中手骨あるいは中足骨と報告されていた標本を再検討の結果,Z. japonicusメスの左距骨と同定した.Z. japonicusの左上腕骨の骨組織について14C年代測定を行い,27,900±120 14C BPの年代値と31,950~31,300 cal BPの暦年較正年代値が得られ,この化石の供給源は化石の産状も考慮して桜川段丘堆積物に相当する緩斜面堆積物であると推定された.この年代は,ナウマンゾウPalaeoloxodon naumanniに代表される花室川の哺乳類化石群の含有層の年代が後期更新世末期であることを裏付けるものである.また,陸生哺乳類を主体とする花室川の哺乳類化石群から鰭脚類の左上腕骨と距骨が産出した理由については,後期旧石器時代人による人為的行為の可能性を検証する必要性が指摘される.
著者
檜皮 瑞樹 久留島 浩 伊達 元成
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、19世紀に北海道へ集団移住した武家家臣団(亘理伊達家家臣団を中心に仙台伊達家家中を対象とした)に関する基礎的な資料調査を実施するとともに、資料群の目録化作業を行った。また、有珠郡をモデルに移住者と先住者(アイヌ民族・先住和人)との接触と軋轢に関して、蝦夷三官寺の一つである有珠善光寺の果たした役割、及び有珠郡の領主権力としての亘理伊達家の果たした役割について明らかにした。
著者
山本 光正 宇田川 武久 齋藤 努 三宅 宏司 保谷 徹 山本 光正 坂本 稔 PAULJACK Verhoeven 前川 佳遠理 高塚 秀治 村上 藤次郎 法華 三郎信房 法華 三郎栄喜 伊達 元成 服部 晃央
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

国内・国外に所蔵される銃砲に関する文献史料(炮術秘伝書)および実物資料(銃砲)の調査を行い、16世紀なかば鉄炮伝来から19世紀末の明治初年までの日本銃砲史が5期に区分できることを示し、またその技術的変遷を明らかにした。鉄炮銃身に使用されている素材である軟鉄を作るための精錬方法である大鍛冶はすでに技術伝承が途絶えていたが、文献記録にある各工程の意味を明らかにし、その再現に成功した。