著者
瀬野 悍二 清水 信義 佐藤 弘毅 西本 毅治 西島 正弘 花岡 文雄
出版者
埼玉県立がんセンター
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1984

細胞増殖において染色体DNAが複製を完了した後正しく娘細胞に分配される際、染色体凝縮は必須の反応である。この染色体凝縮の調節遺伝子を変異株の利用によってヒトDNAからクローン化し、さらに同cDNAをクローン化した。その結果、本遺伝子は421アミノ酸からなる蛋白質をコードし、約55アミノ酸を単位とする7回繰返し構造を含むユニークなものであった。同遺伝子座をヒト第1染色体に決定した。DNA複製の主役を担うDNAポリメラーゼαの温度感受性変異株を高温にさらすと、M期において高頻度の染色体異常及び姉妹染色分体交換が誘発された。このことは、DNA複製の阻害がDNA2重鎖切断を介して染色体の不安定性を引き起し細胞死につながることを明確に示す。ヒトチミジル酸合成酵素mRNAの5'側非翻訳領域は28塩基を基本単位とする3回反復構造からなり、3通りのstem-loopを形成しうる。本構造を改変し翻訳活性との対応をみたところ、上記stem-loop構造が翻訳を抑制することが示唆された。高温にさらすと染色体異常や姉妹染色分体交換を誘発する変異株を14株分離したが、同条件下に外来遺伝子を移入すると形質転換頻度が正常値より40-70倍高いもの、あるいは低いものがあった。この結果は、染色体不安定性が遺伝子組換えと関連することを示す。また、遺伝子組換えのin vitroの測定系の樹立に関し、基礎検定を終えた。ホスファチジルセリン(PS)要求変異株を分離しPSが細胞増殖に必須であること、PSはホスファチジルコリンを前駆体としてリン脂質・セリン交換酵素によって生合成されることを解明した。また、Sindbisウイルス感染に際してPSがウイルスとエンドソーム膜との融合過程に必須の膜成分であることを示唆した。
著者
佐藤 弘明 吉田 則信 宮永 喜一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.954-963, 2001-10-01
被引用文献数
22

フォトニック結晶は, ある波長帯の光を強く遮へいするストップバンド特性(フォトニックバンドギャップ:PBG)を有し, 光ファイバやスラブ導波路のような弱導波の導波路では実現できない波長程度の鋭い曲がり等を有する微細構造デバイスの製作の可能性が期待されている.しかし, それらの設計・製作には多くの困難が予想され, シミュレーションによる特性の把握と予測は必要不可欠であり, これまでFDTD法やBPM等で解析されてきている.特に, 機能的光回路デバイス製作のためには, 分散性や非線形効果を有する誘電体を含むフォトニック結晶光導波路構造の全体的解析が必要不可欠である.本論文では, 凝縮節点空間回路網における媒質条件の取扱いの特長を生かして, 種々の媒質を含んだフォトニック結晶光導波路構造の基本特性について明らかにする.
著者
長坂 晶子 柳井 清治 長坂 有 佐藤 弘和
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.73-84, 2006-07-25 (Released:2008-07-18)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

北海道南西部噴火湾に流入する貫気別川流域において, 流域住民が河川や沿岸域の環境変化に対してどのような認識を持っているか聞き取り調査によって把握した. さらに, コレスポンデンス分析と等質性分析を用いて, 居住地区や従事する産業形態の違いが, 濁りに対する認識にどのような影響を及ぼすのか考察した.コレスポンデンス分析の結果, 濁りの原因に対する認識は上下流で大きく異なっており, 上流の農業従事者は川の濁りを農地利用に起因するものと捉えているのに対し, 河口域の漁業従事者は河川改修や道路工事などの開発行為に起因すると捉えていることがわかった. 農業従事者をさらに5流域に分け, 川の濁りと崩壊発生との関係をどう認識しているかを等質性分析により解析したところ, 支流ごとに特徴が見られたが, 概してこの2つを一連の現象として認識していることがわかった. 「漁場環境の変化」, 「変化の要因」, 「ホタテ貝養殖環境の変化」に対する漁業従事者の認識についても等質性分析を行ったが, 回答された項目間に明瞭な対応関係は見られなかった.漁業従事者が上流の土砂供給源の実態をよく把握できていない要因としては, 自治体の違いによって情報が分断されていること, 地形条件によって土砂供給源に気付きにくいことなどが考えられた. また漁業従事者が漁場環境悪化の原因をはっきりと回答できない要因には, 海域では現実に様々な要因が複合してしまうため, 環境悪化について一対一の因果関係を見出しにくい側面もあると考えられた.今回の分析により, 流域住民が身近な環境の変化をどう捉え, 上下流の意識がいかに異なるかが浮き彫りにされた. 今後, 貫気別川ならびに沿岸河口域の環境保全策を流域レベルで計画し実施していく際には, 上下流で情報を共有するとともに, 異なる利害関係者どうしの合意形成をいかに図るかが重要であると思われた.
著者
柳井 清治 永田 光博 長坂 有 佐藤 弘和 宮本 真人 大久保 進一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.340-346, 2001-11-16
参考文献数
23
被引用文献数
4

北海道南西部を流れる積丹川において, 冬期間のサクラマス幼魚の生息環境と河畔植生の関係を1995年と1996年の2ヵ年にわたって調査した。調査方法として, 河川を1 m四方のメッシュに区切り幼魚の分布と物理環境を調べたところ, 川岸よりの流れが緩く積雪により押しつぶされた植生下で多く捕獲された。具体的な越冬環境の物理条件としては流速が0.2 m/s以下で高いカバー被覆率がある細粒の底質が好まれており, 水深に関しては一定の深さを好む傾向が見られなかった。さらに越冬時のサクラマス幼魚の胃内容物を調べたところ, 夏と比べて胃内容物指数が小さく, 周辺に生息する小型の水生昆虫をわずかに摂食しているにすぎなかった。メッシュを幼魚の密度により3タイプに分類し判別分析を行なったところ, 水中カバー, ついで表面流速などの環境因子が越冬場を決定する重要な要因として選択された。以上のことから, 冬季間サクラマス幼魚は流速の緩い積雪に覆われたカバー下を主に利用しており, こうした環境を創る上で倒木や河畔林から伸びる枝はきわめて重要な要素となることがわかった。