著者
藤井 叙人 佐藤 祐一 若間 弘典 風井 浩志 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.1655-1664, 2014-07-15

ビデオゲームエージェント(ノンプレイヤキャラクタ:NPC)の振舞いの自動獲得において,「人間の熟達者に勝利する」という長年の目標を達成する日もそう遠くない.一方で,ユーザエクスペリエンスの向上策として,『人間らしい』NPCをどう構成するかが,ゲームAI領域の課題になりつつある.本研究では,人間らしい振舞いを表出するNPCを,開発者の経験に基づいて実現するのではなく,『人間の生物学的制約』を課した機械学習により,自動的に獲得することを目指す.人間の生物学的制約としては「身体的な制約:"ゆらぎ","遅れ","疲れ"」,「生き延びるために必要な欲求:"訓練と挑戦のバランス"」を定義する.人間の生物学的制約の導入対象として,アクションゲームの"Infinite Mario Bros."を採用し,本研究で獲得されたNPCが人間らしい振舞いを表出できているか検討する.最後に,獲得されたNPCの振舞いが人間らしいかどうかを主観評価実験により検証する.Designing the behavioral patterns of video game agents (Non Player Character: NPC) is a crucial aspect in developing video games. While various systems that have aimed at automatically acquiring behavioral patterns have been proposed and some have successfully obtained stronger patterns than human players, those patterns have looked mechanical. We propose the autonomous acquisition of video game agent behaviors, which emulate the behaviors of human players. Instead of implementing straightforward heuristics, the behaviors are acquired using techniques of reinforcement learning with Q-Learning, where biological constraints are imposed. Human-like behaviors that imply human cognitive processes were obtained by imposing sensory error, perceptual and motion delay, physical fatigue, and balancing between repetition and novelty as the biological constraints in computational simulations using "Infinite Mario Bros.". We evaluated human-like behavioral patterns through subjective assessments, and discuss the possibility of implementing the proposed system.
著者
小倉 拓郎 水野 敏明 片山 大輔 山中 大輔 佐藤 祐一
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
pp.22-00012, (Released:2023-09-06)
参考文献数
37
被引用文献数
1

河川管理事業において,従来の掘削事業は,定型形式で施工管理されることが慣例であったが,近年は河川環境への配慮が重視されてきたことから,中小河川であっても定型形式の技術指針と異なる掘削方法が必要とされている.そのためには,河道の三次元情報を詳細に把握し,綿密な測量計画を立案する必要がある.そこで本研究は,滋賀県を流れる A 川において,希少種に配慮した掘削事業を対象とし,RTK-UAV を用いて効率的に掘削土砂量を把握する方法について検討した.RTK-UAV を用いることで,河道掘削範囲に立ち入ることなく 10 分程度で撮影することができた.また,河道掘削事業前後の測量成果から差分解析を試みた結果,8,851.08 m3の掘削土砂量が算出された.この値は,施工者が算出した掘削土砂量である8,332 m3 に近い値を示した.RTKUAV を用いた地形測量成果から差分抽出を行う際には,写真測量が不得意としている水域,植生などの扱いに留意する必要がある.とくに,植生高は植生被覆の異なる 2 点の標高差を用いて概算で計算し,体積を計算した.総じて,RTK-UAV を用いた掘削土砂量の算出方法は,測量の設定や植生に留意することで,実務レベルで使用できることが明らかとなった.
著者
佐藤 祐一
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.351-362, 2012-03-10

The whole discussion presents a critique of Wittgenstein's rule-following problem based on Dummett's theory of meaning in educational relevance. Despite the admission that meaning is use and the emphasis of ostensive training in language acquisition, Wittgenstein and Dummett elaborated decisively irreconcilable arguments over explicability of meaning. Repudiation of Frege's realism and obliteration of systematic accounts of verbal practices in Wittgenstein identify themselves with the exegesis that a blind correspondence of an act is the only criterion for rule-following. Contrastingly Dummett, contending that this assumption embodies constant danger of incommunicability, formalises, on grounds of Frege's distinction among sense, reference, and force, a theory of meaning which reasonably clarifies our knowledge in understanding a sentence. It is conjectured that Dummett's proclamation that a theory of sense, the mode of representation of understanding, can not only be shown but also be stated infers that a harmonious transformation between these two states arises in the process of conservative expansion; namely a sense firstly presented in an ostensive manner becomes constitutive of effectively decidable statements instrumental both in systematic refinement of our learning and in a grasp of another newly shown. Nonetheless, the question of how this transformation practically manifests itself, largely depending on subject matters, still remains unsolved, which has to be meticulously scrutinised in diverse curriculum studies. A concluding remark also notifies that "philosophy of thought" proposed by Dummett, which should elucidate in what a grasp of meaning expressed by language consists, must be established as a philosophical basis of education.
著者
佐藤 祐一 小早川 紘一
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

Ni極を使用したアルカリ系二次電池(Ni-Cd電池,Ni-MH電池)は,使用時最後まで完全放電せず,浅い放電状態からの充電を繰り返すと,規定容量より少ない容量しか得られなくなるメモリー効果といわれる現象を生じる。その原因については様々な報告があり,Ni極で部分的な放電サイクルの間,一部の活物質だけが充放電に携わり,サイクルに関与していない活物質が蓄積し,内部抵抗が増大する,またCd極でNi-Cd合金が生成するために,メモリー効果が発生するという報告等がある。我々は原因解明のため,Ni-Cd電池を取り上げ検討したところ,主にその原因は正極活物質であるβ-NiOOHがγ-NiOOHに変化するために発生すると報告した。しかし企業から実用電池において,メモリー効果が表れてもγ-NiOOHの存在は確認できないと反論があった。そこで我々は,Ni極容量規制の試作Ni-Cd電池を使用して,さらに検討したところ以下のことを解明した。試作Ni-Cd電池で浅い放電と充電を繰り返した後,充電状態のNi極について,X回折(XRD)測定,X線光電子分光(XPS)測定を行った結果,通常充放電後には存在しないγ-NiOOHの回折ピークが確認でき,γ-NiOOHは集電体/活物質界面から徐々に生成し,浅い放電と充電のサイクル数が増加すると,その生成量は増大し,容量劣化が大きくなることを確認した。さらに交流インピーダンス法により,Ni極中のγ-NiOOHの生成量が増加すると、電荷移動抵抗が大きくなり,メモリー効果が発生すると推定した。そしてγ-NiOOHの生成がメモリー効果の原因であることをより明確にするため,メモリー効果の温度依存性について検討した結果,低温になるに従って,メモリー効果は発生しやすく,γ-NiOOHの生成量も増加することがわかった。
著者
藤井 叙人 佐藤 祐一 若間 弘典 風井 浩志 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.1655-1664, 2014-07-15

ビデオゲームエージェント(ノンプレイヤキャラクタ:NPC)の振舞いの自動獲得において,「人間の熟達者に勝利する」という長年の目標を達成する日もそう遠くない.一方で,ユーザエクスペリエンスの向上策として,『人間らしい』NPCをどう構成するかが,ゲームAI領域の課題になりつつある.本研究では,人間らしい振舞いを表出するNPCを,開発者の経験に基づいて実現するのではなく,『人間の生物学的制約』を課した機械学習により,自動的に獲得することを目指す.人間の生物学的制約としては「身体的な制約:“ゆらぎ”,“遅れ”,“疲れ”」,「生き延びるために必要な欲求:“訓練と挑戦のバランス”」を定義する.人間の生物学的制約の導入対象として,アクションゲームの“Infinite Mario Bros.”を採用し,本研究で獲得されたNPCが人間らしい振舞いを表出できているか検討する.最後に,獲得されたNPCの振舞いが人間らしいかどうかを主観評価実験により検証する.
著者
藤井 叙人 佐藤 祐一 若間 弘典 風井 浩志 片寄 晴弘
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.26-33, 2013-09-27

概要:ビデオゲームエージェント(COM)の振る舞いのデザインにおいて,『強い』COM の自律的獲得は「熟達者に勝つ」という目標を達成しつつある.一方で,獲得されたCOM の振る舞いは,過度に最適化され機械的に感じるという課題が浮上している.この課題を解決するため,著者らは,『人間の行動原則』を課した強化学習や経路探索により,人間らしいCOM を自律的に構成するフレームワークについて提案してきた.しかし,それらのCOM が本当に人間らしいと解釈されるかどうかの検証が不十分であった.本論文では,自動獲得されたCOM の振る舞いについて主観評価実験を実施する.
著者
高野 洋雄 鎌倉 和夫 峯松 宏明 依岡 幸広 久重 和久 清水 栄一 佐藤 祐一 福永 昭史 谷脇 由彦 谷條 薫一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.845-856, 2006-11-30

2004年8月30日,九州から中国地方を進んだ台風第16号により,瀬戸内海沿岸では記録的な高潮が発生した.これにより,高松港や宇野港などでは既往最高潮位を更新した.この高潮事例について,潮位データの解析を行い,高潮モデルを用いて数値実験を行った.その結果,今回の高潮に最も寄与したのは吹き寄せ効果であり,台風の移動に伴って高潮域が瀬戸内海を東進する状況を再現できた.特に,この過程の中で,高松付近では最大偏差の発生時刻が台風第16号の最接近時より2時間程度遅れて,大潮期間の満潮時刻とほぼ一致したことが既往最高潮位につながったことがわかった.また,瀬戸内海の形状と台風の移動に伴う風向の変化を考慮することにより,瀬戸内海における吹き寄せ効果を6つの海域に分けて考えることができた.さらに,海域毎で吹き寄せ効果と吸い上げ効果の寄与の比率の違いについても評価した.その結果,それぞれの効果の顕著なタイミングは,台風の位置や風だけでなく,地形などの影響も受けて,海域毎に異なることがわかった.
著者
佐藤 祐一 市田 隆文 原田 武 伊藤 信市 朝倉 均 加藤 仁 橋倉 泰彦 池上 俊彦 川崎 誠治 松波 英寿 幕内 雅敏
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.684-689, 1997-11-25
被引用文献数
2

症例は52歳の成人女性で, 1984年に皮膚掻痒感で発症し, Scheuer I期の原発性胆汁性肝硬変 (PBC) と診断され, 外来で経過観察されていた. 1992年頃より黄疸が出現し, 1993年3月に当科入院したが, 黄疸の高度進行, 腹水の増加, 肝性脳症の悪化, 肝腎症候群を認め, 血漿交換を含めた内科的治療も奏功しなかった. そこで本人と家族が肝移植を強く希望したため, 正式にインフォームド・コンセントを得て, 1993年10月20日信州大学第1外科へ移送し, 同年11月2日, 長男 (25歳) をドナー (グラフト肝重量402g) とする成人間生体部分肝移植を施行した. その後, 原病の再発とも思われる組織像と, 抗糸粒体抗体, 抗PDH抗体, IgM, ALPの上昇を認めた. 術後約3年半を経た現在, 上述のように血清学的には原疾患の再発が示唆されるが, QOLはよく, 日常生活に支障は生じていない. 一方, ドナーである長男も結婚し, 普通と全く変わらない生活を送っている. 以上PBCに対する治療として, 生体肝移植は我が国で選択されうるべき治療法の一つであり, 今後その推進に力を注ぐ必要があると思われた.