著者
カラーヌワット タリン 北本 朝展
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.3-10, 2020-12-05

人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)と国文学研究資料館が2016年に日本古典籍くずし字データセットを公開した後,くずし字認識研究は大きく進展した.そして2019年のKaggleくずし字認識コンペティションを経て,CODHはKuroNetくずし字認識サービスを公開した.本論文はこうした流れを振り返り,くずし字認識と物体検出アルゴリズムの関係,KuroNetの進化,くずし字認識のサービス化,Kaggleコンペの教訓,くずし字認識スマホアプリの開発,くずし字認識研究の課題とデータセットの拡大など,くずし字研究の多岐にわたる展開をまとめる.
著者
市野 美夏 増田 耕一 北本 朝展
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.31-38, 2020-12-05

「れきすけ」とは,史料を利用するさまざまな分野の研究者をはじめとする史料に関わる人々が,協働して史料の知識や経験を共有するプラットフォームである.複数の情報提供者によるデータ構築,複雑な史料のデータ構造,多分野で利用するための時空間情報など,史料の情報共有における課題と,研究データである側面における課題の双方を解決するため,情報を複数のカードに分けた,データベースとそのためのユーザインターフェースを構築した.
著者
北本 朝展
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.295-299, 2019-06-24 (Released:2019-08-30)
参考文献数
11

エレクトリカル・ジャパンは、日本を中心に電力データを収集・統合・可視化するウェブサイトであり、消えゆくデータを保全して長期的かつ網羅的なデータベースを構築する役割を果たしている。まず可視化手法を把握型可視化、魅力型可視化、洞察型可視化の3つに分類し、エレクトリカル・ジャパンが洞察型可視化から状況認識、データジャーナリズムへという方向を目指すことを論じる。次に可視化のケーススタディとして、電力使用状況、発電所マップ、電力統計「見える化」の3つを取り上げ、可視化で重視したポイントを説明する。最後に、データ収集から統合、可視化に至るワークフローを説明し、公共データの公開に関する課題を取り上げる。
著者
北本 朝展
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.194-199, 2019-05-01 (Released:2019-05-01)

デジタル台風は,台風に関する様々なデータを収集し,統合し,分析・検索可能とする,台風ビッグデータを対象としたプロジェクトである。その特徴は,防災情報への活用を念頭に置いた「状況認識のための検索技術」にある。状況認識とは,いま何が起こっており,今後どのように行動すればよいか,という意思決定のプロセスを指す。デジタル台風では,データベースの情報を利用者が深掘りするプル型サービスと,データベースの情報を利用者に届けるプッシュ型サービスのハイブリッドにより,意思決定の迅速性と適応性の両立を目指す。本稿では,画像データ,経路データ,観測データ,テキストデータなど,多様なデータに対する状況のモデル化と並べ替え基準の設定などに関して,その背景にある考え方も含めて紹介する。
著者
北本 朝展 西村 陽子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は新しい史料批判の方法論であるデータ史料批判(デジタル史料批判)を提案し、これを主に非文字史料に適用するための情報プラットフォームDCPを構築した。写真や地図を照合するための各種ツールをDCPに統合することで、照合というエビデンスを結合したエビデンスネットワークを構築することができた。さらにエビデンスネットワークをSPARQL言語を用いて意味的に検索し、各種史料に出現するシルクロード遺跡の関係を信頼度に基づき結合する新しい方法を提案した。ついで、データ史料批判の方法を実際のシルクロード遺跡の探索に適用することで、シルクロード遺跡の全体像を把握する見通しを得ることができた。
著者
西村 陽子 北本 朝展
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.9, pp.1-8, 2009-07-18
参考文献数
12

本論文は、北京という都市を対象として古地図と古写真を統合した Historical GIS を構築する試みを紹介する。約 250 年前の古地図『乾隆京城全図』と約 100 年前の古写真を「空間画像史料」として統合的に扱うためには、古写真の場所を同定する問題が本質的に重要である。そこで本論文では古地図等の複数の情報源を利用しながら古写真をマッピングする問題に取り組み、簡単な事例から困難な事例までに適用可能な一連のマッピング方法を提案する。また Historical GIS を実現するために Google Earth というツールを活用することの利点を示し、古写真を地理的な文脈で閲覧し解釈できるような環境を実現することが北京の都市景観の再現には必要であることを論じる。This paper introduces the construction of a historical GIS on the city of Beijing by integrating old maps and old photographs. We use the old map, Complete Map of Peking, Qianlong Period, made about 250 years ago, and old photographs, taken about 100 years ago, and defined them as "spatial visual sources." We claim that the mapping of old photographs is an essential step toward dealing with old maps and old photographs as spatial visual sources in an integrated manner. We therefore focus on the problem of mapping old photographs using information and hints from various sources, and propose a set of mapping methods that are applicable from simple cases to difficult ones. We also show that Google Earth is a useful tool for realizing a historical GIS, and discuss that, for reconstructing the historical space of Beijing, we need to realize an environment in which old photographs can be browsed and interpreted under geographical context.
著者
北本 朝展
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.293-304, 2016

<p>「デジタル台風」とは,台風に関するあらゆる情報を整理し,誰でもアクセス可能なデータプラットフォームの構築を目標とするプロジェクトである。気象データや社会データなどさまざまな大規模データを統合するだけでなく,データの意味を類似性やランキングといった相対値の文脈で解釈する機能など,「デジタル台風」にしか存在しないユニークなデータや機能が人気を集めている。本稿はこのデータプラットフォームを2つの観点から考察する。第1に,公開から約13年間の約1億6,300万ページビューのアクセス解析に基づき,時間変動する情報価値や情報流通におけるソーシャルメディアの価値などを考察する。第2に,デジタル台風が直面するさまざまな持続可能性の問題を,パスファインダーによるキュレーションや,市民科学とオープンサイエンスのかかわりといった観点から論じるとともに,持続可能なデータプラットフォームに向けて目指すべき方向を展望する。</p>
著者
北本 朝展 高木 幹雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.2582-2597, 1998-11-25
被引用文献数
15

一般に「画素」は画像処理の最小単位とみなされているが, 実際は「ミラクル」と呼ばれる画素, すなわち1画素の内部に複数の分類クラスを含むような画素の内部構造に関する考察が必要となる場合がある.本論文は, このような画素の内部構造を表現する指標として, ミクセルの内部で各クラスが占める面積の比率を表す「面積占有率」に着目し, 画像中に出現するミクセルの集合を母集団として考えた場合の面積占有率の分布である面積占有率密度」という確率モデルの特徴・性質に関する研究を目的とする.このモデルは従来は暗黙的に一様分布と仮定されることが多かったが, 本論文では簡単な図形モデルを用いた解析的な計算や, フラクタル合成画像に基づくシミュレーションなどから実験的な面積占有率密度を求め, 続いてこれらの結果を一般化した面積占有率密度のモデルとして「ベータ分布」の適用を提案する.この確率モデルを筆者らが提案した方法である「ミクセル密度を含む混合密度推定を用いた画像分類法」に応用した結果, 衛星画像の分類実験では提案モデルが画像ヒストグラムに優れた適合を示すことを情報量規準によって確かめた.
著者
村田 健史 鵜川 健太郎 村永 和哉 鈴木 豊 渡邉 英伸 是津 耕司 北本 朝展 篠原 育 笠原 禎也 能勢 正仁 岡田 雅樹 小嶋 浩嗣 山本 和憲
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.118-124, 2014-05-24 (Released:2014-12-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本稿では,Web2.0で提案された集合知の概念を学術分野に拡張し,専門知・学術知を提案する.集合知ではインターネット上で一般市民からの情報を収集することで新しい情報を構築するのに対 し,専門知では異なる学術研究情報を融合し,一般社会に向けて情報を発信する.専門知においては,どのような情報をどのように集約し,提示するかが肝要となる.本研究では収集した科学データを融合して表示するための科学データ融合表示ツールを開発した.