著者
福田 一史 井上 奈智 高倉 暁大 高橋 志行 橋崎 俊 日向 良和 藤倉 恵一 松岡 梨沙
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.275-282, 2020-12-05

近年,多くのテーブルトップゲームが創作され消費されるようになった.また図書館でのボードゲームの活用が進むなど文化資源として注目が集まっている.すでにいくつかの民間のデータベースなど実践が存在するが,体系的な目録作成や利用には課題がある.本研究は,1) 既存DBの記述要素分析,2) サンプル資料の分析,3) 産学で組織したワーキンググループでの検討,を通じて概念モデルを策定した.記述テストにより本モデルの有効性が確認できたものの,その妥当性検証や精緻化などの課題が示唆された.
著者
北本 朝展 鈴木 親彦 寺尾 承子 堀井 美里 堀井 洋
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.171-178, 2020-12-05

本論文は,歴史地名の構造化と統合のための地名リソースの構築を進めるとともに,地理的史料と地名リソースの間でのエンティティリンキングの可能性を複数のケーススタディの結果に基づき検証する.またこうして構築した地名情報基盤の上で「歴史的行動記録」を構造化しつつ,江戸という都市または時代に関するビッグデータ分析を進めていく上での現状と研究課題について議論する.
著者
関野 樹
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.101-106, 2020-12-05

年表や時系列グラフは,時間情報を可視化する方法として一般的であるものの,これらを利用者間で共有するため仕組みは作られてこなかった.本研究では,年表や時系列グラフを生成,加工する機能を持つ時間情報システムHuTimeをプラットフォームとして,これらを共有・交換するための仕組みを構築した.
著者
村井 源
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.157-164, 2020-12-05

複雑な物語構造をもった物語ジャンルに対して,基本的な物語のパターンの重ね合わせとして物語構造をデータ化する手法を提案した.また提案手法を用いてブラック・ジャック98話の構造を43種類のパターンで記述し,パターンの共起から7つの因子を抽出した.さらにこれらの抽出結果に読者の人気投票を合わせて用いることで,読者の評価に強く影響する物語の要素を計量的に特定した.
著者
劉 冠偉 李 媛 池田 証壽
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.203-208, 2020-12-05

本研究は国語学国文学の研究における重要文献の観智院本『類聚名義抄』を対象に,漢字字形共有データベースGlyphWikiによるその写本字形を再現することを目標とする.筆写体である字形を可能な限り字体上の特徴を残し,書写の影響を捨象して活字化を行う.本稿はGlyphWikiで再現した字形とその利用についての詳細を報告する.
著者
永崎 研宣 大向 一輝 下田 正弘
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.75-80, 2020-12-05

IIIF(International Image Interoperability Framework)の登場と普及は,仏教文献研究において様々な課題をもたらした.とりわけこれまで閲覧が容易ではなかった典拠資料の確認を容易にしたことは,研究環境の在り方に大きな変革を引き起こした.これをより適切な形で解決するためには,IIIF APIの特徴を活かした協働的な仕組みが有用であり,本稿では,その事例としてSAT2018における画像とテキストデータのリンク機能とSAT2020におけるテキスト公開のモデル,及びそれを実現する協働的なAPIについて報告する.そして,このようなコラボレーションに基づく「人文学のためのAPIチェーン」の構築の有用性を示す.
著者
小川 潤 永崎 研宣 中村 覚 大向 一輝
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.215-222, 2020-12-05

本研究の目的は,時間的文脈情報を含む社会ネットワーク分析に利用可能なデータを構築することである.既存モデルにおいても,人物間の関係性に時間情報を付加することは可能であったが,それは年月日など絶対的な時間情報に基づくものであった.だが歴史史料,とくに古代史史料では,物事の前後関係といった非常に曖昧な時間情報しか入手しえないことが往々にしてある.そのような問題に対処すべく,本研究は史料中に言及される出来事の継起関係をもとに時間的文脈情報を表現し,それを用いて人物および人物間の関係性に「相対的な」時間情報を与えるためのモデルを設計するとともに,一次史料を用いてその有効性を検証した.
著者
近藤 伸郎 正田 備也
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.297-302, 2020-12-05

本研究では,「全共闘世代」と呼ばれる世代とその周辺を対象としたアンケート・データをテキスト分析した.高齢化し鬼籍に入る者も少なくない全共闘世代の実態解明を目的として行われたのが本アンケートで,基本的な情報に関する設問に加えて,政治運動に参加した動機やメンタリティ,それを今どう考えているかの総括に関する設問もあり,回答者からは多数の自由記述的な言葉が寄せられた.それらを分析することで,世代の何らかの特徴を得られないか.今回は,テキストをまとめて形態素解析し,特定の二値カテゴリにしたがって分類器に学習させ,その分類器において重要度の高い特徴量を重要な単語としてあぶり出した.その上で,その重要語の特徴を考察した.
著者
吉田 拓海 村井 源
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.143-148, 2020-12-05

物語自動生成において,神話物語は大きな価値があると考えられる.しかし,従来の神話物語の研究には,物語分析の特性上,反証可能性において問題がある.本研究では,分析の各段階の評価基準を設けることで,客観性を高めた分析を行った.物語が課題解決のプロセスであると考え,ギリシア神話53編,北欧神話26編,ケルト神話21編の物語から課題を抽出した.抽出した課題は,各神話物語の特徴を表していることが明らかになった.
著者
鈴木 親彦 髙岸 輝 本間 淳 Alexis Mermet 北本 朝展
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.67-74, 2020-12-05

本論では,美術史の様式研究の大規模化を試みた.まず,顔貌データセットの構築に機械学習とIIIF Curation Platform(ICP)を活用し,さらにICPの新ツールであるIIIF Curation Boardを利用して大規模な画像を対象に様式比較・図像比較を行う方法論を提案する.そして『遊行上人縁起絵巻』の写本の一つである『清浄光寺甲本』を対象とし,500を超える顔貌から,絵巻内の様式の異同と僧侶・尼僧の描き分けを分析する.
著者
カラーヌワット タリン 北本 朝展
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.3-10, 2020-12-05

人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)と国文学研究資料館が2016年に日本古典籍くずし字データセットを公開した後,くずし字認識研究は大きく進展した.そして2019年のKaggleくずし字認識コンペティションを経て,CODHはKuroNetくずし字認識サービスを公開した.本論文はこうした流れを振り返り,くずし字認識と物体検出アルゴリズムの関係,KuroNetの進化,くずし字認識のサービス化,Kaggleコンペの教訓,くずし字認識スマホアプリの開発,くずし字認識研究の課題とデータセットの拡大など,くずし字研究の多岐にわたる展開をまとめる.
著者
市野 美夏 増田 耕一 北本 朝展
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.31-38, 2020-12-05

「れきすけ」とは,史料を利用するさまざまな分野の研究者をはじめとする史料に関わる人々が,協働して史料の知識や経験を共有するプラットフォームである.複数の情報提供者によるデータ構築,複雑な史料のデータ構造,多分野で利用するための時空間情報など,史料の情報共有における課題と,研究データである側面における課題の双方を解決するため,情報を複数のカードに分けた,データベースとそのためのユーザインターフェースを構築した.