- 著者
-
阿部 広和
花町 芽生
神原 孝子
白子 淑江
吉岡 明美
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.0877, 2016 (Released:2016-04-28)
【はじめに,目的】脳性麻痺児における粗大運動能力の評価は,粗大運動能力尺度(GMFM)が一般的に使用されている。現在,GMFM-66はReference percentilesを用いることによって,粗大運動能力の予後を予測できるようになり,効果判定としても用いられている。また,日常生活動作の遂行度との相関関係も立証されている。しかし,GMFM-66のスコアが何点に達すれば日常生活でどのような歩行をしているのかは明らかになっていない。本研究の目的は,粗大運動能力尺度(GMFM)を用いて日常生活での歩行能力を予測することである。【方法】対象者の取り込み基準は脳性麻痺の診断を有するもので,GMFCSレベルI-IVとし,カルテにGMFM-66と日常生活での歩行能力が算出できるデータや記述があるものとし,後方視的調査研究とした。以上の取り込み基準を満たす対象者は脳性麻痺児90名(男児53名,女児37名,平均年齢10.0±4.5歳,年齢範囲:2歳7ヶ月-18歳7ヶ月)であった。GMFCSの内訳はlevel I 42名,level II 17名,level III 11名,level IV 20名(痙直型片側性麻痺18名,痙直型両側性麻痺69名,混合型3名)であった。粗大運動能力はGMFM-66で評価を行い,Gross Motor Ability Estimator 2を使用してGMFM-66スコアとした。日常生活における歩行能力は,「歩行能力の有無」と「独歩の制限の有無」のカットオフ値を算出することとした。歩行能力の有無は,カルテより日常的生活において独歩・クラッチ杖で歩行しているものを「歩行している」とし,車輪付き歩行器や車椅子で移動している場合は「歩行していない」とした。独歩の制限の有無は,階段で手すりを必要としない場合を「制限なし独歩」,階段で手すりを必要とする場合は「制限あり独歩」とした。統計分析については,日常生活での歩行能力を予測するGMFM-66のカットオフ値をReceiver Operating Characteristic(ROC曲線)を用いて分析した。統計的処理にはRを使用し,有意水準は5%とした。【結果】GMFM-66の平均値は68.7±21.1(スコア範囲16.4-100)であった。ROC曲線による分析の結果,「歩行能力の有無」・「独歩の制限の有無」のカットオフ値は,60.0(感度98.4%・特異度100%)・76.75(感度84.6%,特異度92.1%)であった(p<0.05)。【結論】GMFCS level IIIのGMFM-66が歩行能力の有無のカットオフ値前後に多く分布している。そのため,カットオフ値がGMFCS level IIIの脳性麻痺児が日常生活で歩行できるかできないかを判断する指標として有用と考える。独歩の制限の有無は,GMFCS level I-IIの脳性麻痺児の歩行能力を予測するのに役立つと考える。また,このカットオフ値をGMFM-66 Reference percentilesと合わせて使用することにより,より詳細な粗大運動能力の予後予測が行えると考える。