- 著者
-
吉田 満梨
- 出版者
- 日本マーケティング学会
- 雑誌
- マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.4, pp.16-32, 2018 (Released:2019-05-31)
- 参考文献数
- 43
- 被引用文献数
-
1
本研究の目的は,不確実性の高い市場環境に直面したマーケターが,いかに課題解決を行うのかを分析し,近年アントレプレナーシップ研究を中心に注目されている「エフェクチュエーション」(Sarasvathy 2001, 2008)の論理のマーケティング課題への適用可能性を明らかにすることにある。具体的には,マーケターを対象に,マーケティング実践における8つの意思決定課題への回答を,シンクアラウド法による発話プロトコルデータとして収集する調査を実施した。分析の結果,第一に,市場創造の経験を持つマーケターが課題解決においてエフェクチュエーションに基づく意思決定を行っていること,第二に,起業家ではなくマーケターの文脈における,エフェクチュエーションに基づく意思決定の様式が明らかになった。以上から,起業家の論理としてのエフェクチュエーションを,大企業におけるマーケティングや新規事業開発にも有用な知識として精緻化し,既存のマーケティング理論を補完する知識開発に寄与できる可能性が示された。